テレビのCM、電車の中吊り、雑誌、新聞折り込みチラシ、ネットの検索結果やコンテンツなど、私たちは広告に囲まれて生活していると言っても過言では無いでしょう。
その広告に優良誤認や有利誤認といった不当表示があれば、そうした広告表示をした者が景品表示法に抵触する責任を問われることになっています。

しかし、現代社会はあまりに多量の広告が溢れては消えているため、不当表示があったとしても見過ごされている実態があります。
あたかも高速道路で法定速度オーバーの車が多発しているのに、取締りで捕まるのはごく一部の違反車だけという構図によく似ています。
取締りを受けた人が「(多くが違反しているのに)どうして自分だけが捕まるのか?」という悪態をつくのも共通します。

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不当表示も法定速度違反も放置すれば重大な問題を引き起こします。
だからといって個々の監視や取締りを厳しくしすぎると経済活動の停滞や行政による過剰規制の問題が起こります。
そこはバランス感覚が必要になるところですが、事業者・消費者・行政のそれぞれが広告表示ルールについての理解を深めて、あからさまな不当表示は姿を消すような状況を作り上げていきたいものです。

本記事の目次
・注目を浴びるネット広告
・消費者契約法専門委員会や最高裁判例で示された広告の勧誘性
・景品表示法の不当表示とは
・不当表示への措置命令
・措置命令に違反した場合の罰金
・不当表示への課徴金制度
・不当表示への相当の注意をしていれば課徴金が免責される場合も
・SNSが普及した社会では行政処分の悪評は経営危機に直結
・適正表示のポイントと公正取引の推進


このブログでもグラブルのガチャ騒動やDeNAのキュレーションサイト非公開、アフィリエイトサイトの実態など、主にインターネット上で展開される広告の不当表示問題について採り上げてきました。


グラブル炎上とコンプガチャ問題の再燃と景品表示法|遠山桂ブログ(2016年01月22日)


ウェルク(DeNA)の大炎上から非公開とグーグル検索の特性|遠山桂ブログ(2016年11月30日)


フェイクニュースの有害性や不当表示の氾濫とアフィリエイトの方向性|遠山桂ブログ(2017年02月13日)


こうしたネット上の不当表示の問題については、“ネット行政書士”と自称する筆者にとって昔から身近で切実な問題という意識があるのですが、同じようにネットで活動される人々の中の一部には広告表示に関するコンプライアンスに疑問符が残る対応をされている例も目にすることから、そうした問題の改善に努めたいと思う気持ちが高くなっております。


注目を浴びるネット広告



PCやスマートフォンなどの情報端末でインターネットにアクセスして、検索エンジンやSNSを使用するとほとんどの画面で広告が表示されるようになっています。
Yahoo!JAPANのトップページにも検索結果表示画面にも様々な広告が並んでいますし、フェイスブックやツイッターのタイムラインにも広告が挿入されています。
ゲームアプリで遊んでいても、その画面の片隅に他のゲームの広告が表示されることも多いです。
もはや情報端末を使うには広告を目にしないという選択肢は無いような状況になっています。

こうしたインターネット広告の市場は、やはり急成長しています。
電通が公表した「2016年(平成28年)日本の広告費」によれば、「インターネット広告費」の市場規模は年間1兆3,100億円にも上り、前年比113.0%の成長をしているそうです。
その一方で「新聞広告費」は5,431億円(前年比95.6%)、「雑誌広告費」は2,223億円(前年比91.0%)と減少傾向であり、紙媒体の広告をネット広告が浸食している様相になっています。

広告を利用する販売事業者(広告出稿者)の視点で言えば、紙媒体は発行部数が退潮傾向であり、成長の著しいネット広告を活用したいということでしょう。
しかもネット広告はネット閲覧者の地域・年齢・性別・嗜好などを絞り込んで広告を表示することができるため反応率を高める工夫が可能です。これにより広告費のムダ撃ちを減らせるというメリットもあります。
更には広告予算が少額であっても、その範囲内で広告出稿ができるという合理的な活用もできます。

このようにインターネットは広告に適した場を確立したと言えるでしょう。
そのインターネット広告の活用例は当ブログの過去記事でも触れております。

Yahoo!JAPANのネット広告の活用と広告表示を巡る課題|遠山桂ブログ(2016年02月09日)

このようにネット広告の利便性が高くなって多くの事業者が参入するようになると、そうした中で行儀の悪い広告を行う事業者も出現しています。
いわゆる景品表示法に抵触する不当表示を連発して強引な販売をしようとする問題事例です。

東京都生活文化局消費生活部取引指導課によれば、2015年(平成27年度)には366件(349事業者)の不当表示に関する改善指導を行ったことを公表しています。
また、国民生活センターのPIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)の統計によれば、インターネット通販に関する相談のうち表示・広告に関する相談件数は2013年度の10,872件から2014年度の13,449件に急増しています。
これらの指標は氷山の一角に過ぎないので、厳密に景品表示法や医薬品医療機器法などの不当表示に抵触する広告を洗い出したら途轍もない数量になるのではないでしょうか。

このようにネット広告には経済活動の活性化というプラス面と不当表示による消費者被害の発生というマイナス面が存在します。どちらの面も注目される状況です。
マイナス面を抑制してプラス面の効果を高めていくという取り組みが求められています。


消費者契約法専門委員会や最高裁判例で示された広告の勧誘性



ネット広告には不当表示が多いという実態があると、そうした不当表示によって誤認をして買った商品やサービスについては契約解除をしたいし、何より返金して欲しいという消費者の要望も多くなります。
しかし、景品表示法でも特定商取引法でも不当表示に対する行政罰の規定はあるものの、消費者の契約取消権は認められていません。

特定商取引法では不意打ち性の高い「勧誘」行為に対してはクーリングオフなどの契約取消権を認めていますが、「広告」に関しては契約取消権の規定がありません。
これは「勧誘」と「広告」が区別されており、「広告」は消費者を拘束するものではなく、消費者の購買意思に直接作用する「勧誘」とは異なると解釈されてきたことによります。

そうした前提があるのですが、これも揺らぎ始めており「不当表示の広告」に対して取消権を導入するべきでは無いかという議論も増えています。
そうした議論に大きな影響を与える最高裁判例があります。
平成29年1月24日の最高裁判決で「チラシ広告も勧誘にあたる場合がある」との初判断が示されたのです。


広告も差し止め対象=健康食品めぐり初判断―最高裁

健康食品のチラシ広告が、消費者契約法に基づき差し止めを請求できる「勧誘」に当たるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は24日、「広告のような不特定多数への働き掛けも、勧誘に当たる場合がある」との初判断を示した。

最高裁の判断は、広告も差し止めの判断対象となり得ることを示したもので、消費者の利益保護につながる可能性がある。

訴訟は、京都市の消費者団体が、健康食品会社「サン・クロレラ販売」(同市)に新聞折り込みチラシの配布差し止めを求めた。

時事通信 1/24(火) 15:49配信


この最高裁判例は消費者契約法の改正のための調査をしている消費者契約法専門調査会の議論にも影響を与えることは想像に難くありません。
不当表示に対して現行の行政罰と課徴金制度の他に、民事ルールとして契約取消権が導入されることになれば、問題の多発しているネット広告界隈に与えるインパクトは多大なものになります。
そのような規制強化を回避するには、ネット広告の運用に携わる事業者が襟を正して不当表示の撲滅を図る自主努力をして範を示すしかないでしょう。


ネット通販広告に取消権は導入されるか?|消費者契約法専門調査会の審議再開|遠山桂ブログ(2017年01月10日)

消費者契約法専門調査会の議論は粛々と進められており、即時に不当表示のトラブルを減少させることが出来るのか否かが問われています。


景品表示法の不当表示とは



景品表示法には、「景品規制」と「表示規制」の2つの規制があります。
更に「表示規制」は、「優良誤認」と「有利誤認」と「特定分野」の3つの規制に分かれています。

具体的には次のとおりです。

景品規制>(過大景品の禁止)
(1)一般懸賞
  くじ引きやクイズなどの懸賞の景品最高額は購入価格の20倍まで。
  (購入価格が5,000円以上の場合は10万円まで。)
(2)共同懸賞
  商店街などの懸賞の景品最高限度額は30万円まで。
(3)総付(そうづけ)景品
  購入者全員に景品を提供する場合は購入額の20%まで。
  ポイントや金券は値引きと判断され、景品の制限は受けない。
(4)オープン懸賞
  商品購入や入会を条件としない懸賞は最高金額の制限が無い。

表示規制
(1)優良誤認表示
   製品の品質等の内容が実際よりも著しく優良であると表示すること。
  (例)「過剰なダイエット効果の宣伝」「産地偽装の食品」など
(2)有利誤認表示
   製品の価格等の取引条件が実際よりも著しく有利に表示すること。
  (例)「携帯電話がO円」「上げ底包装」「定価と売価の二重価格」など
(3)特定分野の表示
   ・無果汁の清涼飲料水についての表示
   ・商品の原産国に関する不当な表示
   ・消費者信用の融資費用に関する不当な表示
   ・不動産のおとり広告に関する表示
   ・おとり広告に関する表示
   ・有料老人ホームに関する不当な表示

この「景品規制」と「表示規制」に違反する広告表示が「不当表示」として規制の対象になります。


不当表示への措置命令



景品表示法(第7条)では、不当表示を行う事業者に対しては、消費者庁や都道府県の表示対策部門が不当表示を止めさせるための措置命令を行う権限を与えています。

これらの行政庁は関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められた場合は、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令が行われます。
調査の結果、違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は指導の措置が採られます。

近年は措置命令の件数については低く推移していますが、前述の東京都生活文化局消費生活部取引指導課の例のように行政指導の件数については、特にインターネット広告の分野で増加しています。


措置命令に違反した場合の罰金



消費者庁は、景品表示法の違反が認められた場合は事業者に対し、一般消費者に与えた誤認を排除すること、再発防止のための必要事項やその違反行為を取りやめることなどを命ずること(措置命令)ができることは前述のとおりです。

その措置命令に違反した者には、景品表示法第36 条の規定に基づき、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科され、情状によっては懲役と罰金が併科されます。
この罰則に加え、措置命令に違反した事業者(法人、自然人又は法人でない団体)にも3億円以下の罰金刑が科されます(景品表示法第38 条第1項第1号、第2項第1号)。

このように消費者庁や都道府県の発する措置命令に従わない事業者に対しては厳罰が課せられることになります。
実際には措置命令に従わない事業者はあまりなく、この罰則が適用される事例は少ないという実態があります。
措置命令の件数自体が少ないこともあり、措置命令違反の罰則は活用することが滅多に無い「伝家の宝刀」ともいうべき存在になっています。

その一方でネット広告には不当表示に対する行政指導が多いという実態があり、措置命令には至らない行政指導段階の不当表示広告をいかに減らすかが課題と言えるでしょう。


不当表示への課徴金制度



2016年4月1日に景品表示法の改正事項が施行され、不当表示等に対する課徴金制度が導入されました。
従来の景品表示法でも、表示違反があった場合に措置命令で対策することができるのですが、それが有効に作用していないこともあって「課徴金」という経済的不利益をもって、不当表示による実益を無くして逃げ得を許さないようにしようという趣旨です。

その課徴金の金額は、対象期間(上限3年)の該当商品の総売上額に対し3%とされているので、不当表示を放置して課徴金を課せられる事態になれば相当のダメージを受けることになります。
ただし、消費者庁の調査が開始される前に自主的に違反を消費者庁へ申告した事業者は課徴金の額が半額になるという自主申告制度も用意されています。
更に消費者庁の認定を受けて被害者に被害弁償を行えばその返金額が課徴金から差し引かれる返金制度もあり、事業者の自主対応を動機づけする内容になっています。

この課徴金の適用には次の3つの要件があります。

(1)不当表示に関して相当の注意をしていなかった

(2)表示違反の商品・役務の売上額が5,000万円以上

(3)不当表示を止めた日から5年を経過していない


これらの要件を全て満たす場合には課徴金の対象になるわけです。
販売事業者としては、この中で(1)の要件に注目したいところです。
というのは「不当表示について相当の注意をしていた」ことを証明できれば、課徴金の対象にはならないわけです。
それでは具体的にどのような注意が必要なのかという点については次のとおりです。


不当表示への相当の注意をしていれば課徴金が免責される場合も



景品表示法の課徴金制度導入に先立って、2015年11月14日に「事業者が講ずべき景品表示の管理上の措置についての指針」が公表されました。
これは景品表示法の課徴金制度についての「相当の注意」に連動しています。
この指針で示されている事項を満たせば、「不当表示について相応の注意をしていた」ことになり、表示違反があったとしても課徴金までは課せられないということになります。

具体的には「表示等の管理上の措置」として次の7項目が示されています。

(1)景品表示法の考え方の周知・啓発
(2)法令順守の方針等の明確化
(3)表示等に関する情報の確認
(4)表示等に関する情報の共有
(5)表示等を管理するための担当者等を定めること
(6)表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置をとること。
(7)不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応


(2)については社内規定を整備し、(3)については業界団体や第三者機関に照会するという対処が一般的です。
社内で適正表示の取り組みをしていることを可視化するために、表示に関するチェックリストを作成して運用するケースも多いです。

この「表示等の管理上の措置」7項目を完全に実施していれば不当表示をするリスクは予防できるので、それが「不当表示について相当の注意をしていた」とみなされて不当表示に対する課徴金が免責されるということになります。


SNSが普及した社会では行政処分の悪評は経営危機に直結



フェイスブックやツイッターなどのSNSの普及によって、ネット上では好評も悪評も瞬時に拡散するようになりました。

販売事業者が良いサービスを提供すればSNSによって好評の口コミが広がり、売上を一気に拡大できるチャンスがあります。

それとは逆に不当表示の広告を行って、それが叩かれる事態になると悪評が一気に伝播します。更に行政指導の内容が公表されると、その汚点は長くネット上に残ることになります。

また、自作自演のステルスマーケティングも消費者に嫌われる手法のため、そのような手法を採用して発覚したときにはネット炎上を誘発するリスクがあります。
ステルスマーケティングに関しては消費者庁もガイドラインを示しています。


消費者庁は平成24年5月9日に「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を改訂し、口コミサイトの問題について次のような解釈を示しています。

「商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該口コミ情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認させるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。」

この消費者庁の見解によれば、「販売事業者に依頼を受けた消費者がブログ等に誇張された商品記事を書く」という行為は景品表示法上の不当表示になりうるということになります。

つまり、販売事業者が第三者に評価してもらうように装い、第三者のブログ等に誇張された商品記事を書かせることはアウトです。
(ただし、誇張された表現は無く、適正な記事であれば第三者のブログ等に記事掲載を依頼するのはセーフです。)

口コミや「いいね!」の偽装・自作自演をするステマと不当表示|遠山桂ブログ(2013年08月09日)


このように不当表示やステルスマーケティングは事業者の経営にとってリスクの高い問題だという認識を持ち、そうした禁断のブラック営業法は採用しないようにしなくてはなりません。


適正表示のポイントと公正取引の推進



販売事業者にとってインターネット広告は魅力的な広告手法であることは間違いがありません。うまく活用すれば小規模事業者であっても多くの顧客との接点を作ることが可能です。

消費者にとってもネット通販サイトは便利なツールであって、その利用価値は大きなものです。

この販売事業者と消費者をつなぐネット広告が、景品表示法の規制に沿ったものであれば問題はありません。
しかし、広告に不当表示が混ざると両者の関係性はおかしなものになってしまいます。

そこで、販売業者は売るための魅力的なキャッチコピーを考えつつも、広告・表示規制の内容を理解した上で、過剰な広告表現は避ける判断力が求められます。
広告表現を検討する上で必要なのは、「その表現について根拠を示すことができるか?」という自問自答です。これが適正表示のポイントになります。

もし、広告に不当表示が懸念される表現が見つかった場合は、その表現について根拠を示すことが出来るかを検討して下さい。その表現について根拠を示す資料があるなら、その資料をサイトに併記することで対処するとよいでしょう。不当表示が懸念される表現で、しかもその根拠を示すことが困難な場合は、該当の広告表現は削除して他の広告表現に差し替える必要があります。
広告表現だけの問題ではなく、販売する商品やサービスが法令に違反することが判明したときは、即座にその取り扱いを中止する決断力も必要です。

景品表示法や特定商取引法といった消費者関連の法律やガイドラインは改正頻度が高いため、そうした改正情報もチェックして公正取引を推進し、インターネット取引を活発なものにしていきたいものです。

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