ギャラリー  ときの忘れもの

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「個展について」

木坂宏次朗


この度、綿貫ご夫妻よりご縁をいただき「ときの忘れもの」にて作品を発表致します。
この展覧会「AT THE STILL POINT」は、T.S Eliot(T.S.エリオット)著「Four Quartets(四つの四重奏)」の長編詩に含まれる様々なテーマを取り上げ、土、水、空気、火の四つの象徴を経てStill Point(静止点—永遠の時間と現在の時が重なる時。)を表現しようとする試みです。また別の角度から申しますと、取り上げたテーマは、永らく私が抱え続けてきた個人的なテーマでもありました。エリオットの詩の世界との対話を通して、自ら抱えて来た設問と向かい合い答えを探す(ある景色に辿り着く)旅のようなものでもありました。
ここで、皆さまに作品についてご説明しなければならないのですが、作品が完成した今となっては、言葉でご説明することは大変困難なことであります。努力はしてみたものの、どうしても取って付けたようなご説明しか思いつきません。あれや、これやと以前の制作メモなどひっくり返していますと、2010年に書いた小さな舞台のための脚本(草稿)がでてきました。その頃は、エリオットシリーズの終盤の作品にさしかかった頃です。おそらく、当時の制作に対しての考えを反映しているものだと思います。作品説明の掲載面に的外れになるかもしれず、恐縮致しますが、制作渦中の文章故、皆さまに何か印象をお持ちいただけるかもしれず、ここにその文章を掲載致します。

春の即位式

草木が芽吹く今
ヒバリが囀り、猫の恋がはじまる季節
春光まぶしく、菜の花を照らし
風は自由にその光の中を駆け巡る。

ここに全ての時があり、そしてすぐ側に死がある。
何気ない仕草や、声の中に
歳月を経たひとときの美しさがあり
また、これからも聞く事のない調べが奏でられている。

人は目に見えるものを求めるが
実際に、その前に立つと目に見えない崇高なものを感じる。

山嶺で見る暮色。人の通わぬ森の中。そして初めての恋。
もしや、終着点とは出発点の事かもしれない。
目的への旅路の中で始まりの意義が明らかになることがある
始まりのない終わりはあり得ず
目的に向かわなければ出発点を知る事はできない。
辿り着いてはじめて、出かける時には見えなかったものが見えてくるのだろう。

思索と意匠のあいだに旅人は空の下で夢を見た。

『意義の蘇った過去の体験は
ひとりの人生の体験に留まらず
幾世代の人々の体験。
—おそらくは全くいいようのないことまでも含んでいる。』

私が見たこの景色は、また誰かも見た景色であり
私の時間の中で見た景色とは異なり
それは絶えず動きながら静止した季節なのかもしれない。

その季節は時間の概念の内にはない。

存在の不安。時間への郷愁
人は現在の中に多くの時間を過去と未来に費やし
幻想の時を造り上げ
その時間の中を漂い生きているのかもしれない。

森の中
不意に獣と目が合い
互いの時間の接点が生まれると
裸になったような気がする。

我ら,獣のいとなみに学ぶべく
過去や未来を現在に持ち込まず
時々の瞬間に存在し
その踏み出す一歩が神秘に満ちて
またその一歩は、同時に過去と未来を創り出すように
目を閉じて見なければならない。

目を閉じて見える景色があり。
耳を塞ぎ聞こえる音楽がある、
思索を止めて光明を得
意匠を捨てて美は生まれる。

古代の美を見よ
意匠などなく、もはや時間の外にあり
今も輝いているではないか。
そこには只、祈りの姿が存在しているだけ。

祈りの姿こそが美に近づく一縷の希望。
 
それは寺院や終焉の床の祈りではなく
求めず、照らす祈り
私と空との約束の祈りだ。

野の百合はどうして咲くのか。

私の声と空の声がもし同じひとつの声に聞こえたなら
私の光を空が自分のものと思うかもしれない。
(平成二十二年 五月 記述)

平成27年6月20日
きさか こうじろう

1_ReprosKojiro01_MG_7413_WRK_FIN_M
1. 木坂宏次朗 Kojiro KISAKA
Still Point
2010
卵テンペラ/木パネル、綿布、石膏
Egg tempera / wood panel, cotton, gypsum
48.0×110.0cm
Signed

2_ReprosKojiro04_MG_7433_WRK_FIN_M
2. 木坂宏次朗 Kojiro KISAKA
Purgatory
卵テンペラ/木パネル、綿布、石膏
Egg tempera / wood panel, cotton, gypsum
41.0×75.0cm
2013
Signed

3_ReprosKojiro08_MG_7446_WRK_GapWhite_FIN_M
3. 木坂宏次朗 Kojiro KISAKA
Still Point ― 4 Segments
卵テンペラ/木パネル、綿布、石膏
Egg tempera / wood panel, cotton, gypsum
94.0×232.0cm(1枚94.0×58.0cm×4枚)
2009
Signed

◆ときの忘れものは2015年6月24日[水]―7月11日[土]「木坂宏次朗展 AT THE STILL POINT」を開催しています(*会期中無休)。
木坂宏次朗展DM600京都の画家・木坂宏次朗は、T.S.エリオットの詩に触発され、土、水、空気、火の四つの象徴を経てStill Point(永遠の時間と現在の時が重なる時)を表現する作品を作り続けています。本展ではその繊細なテンペラ作品やドローイングを約15点ご覧いただきます。
*価格リストをご希望の方は、「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してメールにてお申し込みください。
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●レセプションのご案内
6月26日(金)17時より作家を囲んでレセプションを開催します。同日18時よりチェリスト富田牧子さんの演奏をお楽しみいただきます。

●図録刊行のご案内
表紙『木坂宏次朗展 AT THE STILL POINT』図録
2015年
ときの忘れもの 発行
16ページ
25.7x18.2cm
執筆:島敦彦
掲載図版:17点
デザイン:北澤敏彦(株式会社DIX-HOUSE)
税込864円 ※送料別途250円

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