ギャラリー  ときの忘れもの

3月31日建築家のザハ・ハディッドさんが急逝されました。
無名だった彼女を最初に認め、建築界の大舞台に引き上げたのが磯崎新先生でした。
建築のみならず、思想、美術、デザイン、映画などの国際的な舞台で活躍、評論や設計競技の審査を通じて、世界のラディカルな建築家たちの発想を実現に導くうえでのはかり知れない支援を果たしてきた磯崎新先生の新著が刊行されましたのでご紹介します。

20160412磯崎新
『偶有性操縦法(コンティンジェンシーマニュアル)
何が新国立競技場問題を迷走させたのか』

2016年
青土社 発行
213ページ
19.0x13.2cm
1800円(税別)

目次:
まえがき 都市モデルと戦争モデル

I 理不尽なアーキテクチュア
 1 うつふね ARK NOVA
 2 フクシマで、あなたは何もみていない。
 3 近代国家のエンブレム
 4 瓦礫と隊列
図版 成都の巨大建築とザハ・ハディド案

II 偶有性操縦法(コンティンジェンシーマニュアル)
 1 「ハイパー談合システム」
 2 「日の丸」排外主義(ショービズム)
 3 奇奇怪怪建築(ウィアード・アーキテクチュア)
 4 「魔女狩り」
 5 「空地」が生まれた
図版 祝祭都市構想―プラットフォーム2020

あとがき 磯崎新私譜
〜〜〜〜〜
内容についてはぜひ書店でお求めになって読んで欲しいのですが、今回亭主が注目したのは<あとがき 磯崎新私譜>でした。
数字遊びの好きな磯崎先生らしく、満州事変のあったゼロ歳から、3.11の80歳まで十年刻みでご自分の生涯のできごとを語っています。そのまま引用します。

●あとがき 磯崎新私譜(212ページより)
一九三一年(〇歳)満州事変
物心ついてすぐに、我が家の先祖は慶長大地震の際、別府湾の海中に沈んだと伝えられる瓜生島から流れ着いた、と聞いた。

一九四一年(一〇歳)日米開戦
小学生の頃、軍艦のデザインをやりたいと考えていた。動くものの設計に興味を持っていた。

一九五一年(二〇歳)朝鮮戦争
両親を亡くし、自宅は焼失、家財はのこらず処分されて上京。住所は転々と変り、東京流民となる。

一九六一年(三〇歳)キューバ革命
グランド・ツアーとしての世界の旅に出た。建築は現場に立って考えるものだと悟り、仕事場をアトリエと呼んだ。各地を渡り歩く「流れ」職人を、モデルにする。

一九七一年(四〇歳)世界文化大革命
旅先で「方丈記」を英訳でよんで、はじめてこれが災害の書であったことを思い知る。仮設の小屋こそが「建築」なのではないか。

一九八一年(五〇歳)イラン革命
「時は飛去する」とする道元の言葉を手がかりに「有時庵」を構想した。この頃、マンハッタンとサンタ・モニカのホテルが仮の栖であった。

一九九一年(六〇歳)ソ連崩壊
還暦を機に、「無所有」を私の人生の信条と決めた。つまり流民のままでいること。マカオ沖に蜃気楼のように立ち現われる「海市」展を構成する。

二〇〇一年(七〇歳)九・一一
近代住宅の名作をえらんで『栖十二』をメールアートの形式で発行した。自邸はふくまれていない。誰もが「流れ」建築家だった。さしあたり私はパラサイト。

二〇一一年(八〇歳)三・一一
まれびとが「うつふね」に乗って訪れる民話から移動演奏会場ARK NOVAのアイディアがうまれた。「方丈」が大八車で運ばれたように、これは折りたたまれてコンテナーに収まっている。いまでも次の寄港地をさがしている。
〜〜〜

七〇歳の項で<近代住宅の名作をえらんで『栖十二』をメールアートの形式で発行した>とあります。
ときの忘れもののエディションである『栖十二』とは、1998年夏から一年間にわたり、磯崎先生が住まいの図書館出版局(植田実編集長)の企画でひそかに発信し続けた書簡形式の連刊画文集『栖 十二』のことで、十二章のエッセイと十二点の銅版画よりなり、十二の場所から、十二の日付のある書簡として限定35人に郵送されました。
その後、十二章のエッセイは、1999年に住まい学大系第100巻『栖すみか十二』として出版されました。

磯崎先生の版画制作は1977年から始まりますが、フリーハンドによる描画を極力抑制してきたのが、このときばかりは一挙にフリーハンドによる制作に集中され、実に50点もの銅版画を生み出しました。
そのうちの12点が、ファーストエディションとして書き下ろしエッセイとともに、十二の場所から、十二の日付のある書簡として限定35人に郵送されました
メールアート形式によるファーストエディションが完了後に、40点(内12点はセカンド・エディション、28点は未発表)を選び『磯崎新 銅版画集 栖 十二』にまとめることができました(A版(手彩色)が限定8部(VIII)、B版(単色刷り)が限定27部)。

メールアートの形式で発行した連刊画文集『栖 十二』の制作から郵送までの経緯は以前、このブログでご紹介しました。下記のリンクでお読みいただけます。

第1信より挿画1_A
磯崎新
〈栖 十二〉第一信より
挿画1
クルツィオ・マラパルテ[カサ・マラパルテ] 1938-40 カプリ島
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:10.0×15.0cm
シートサイズ:28.5×38.0cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第2信より挿画5_A
磯崎新
〈栖 十二〉第二信より
挿画5
ル・コルビュジエ[母の小さい家] 1923-24 レマン湖畔
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:10.0×15.0cm
シートサイズ:28.5×38.0cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第3信より挿画7_A
磯崎新
〈栖 十二〉第三信より
挿画7
アドルフ・ロース[ミュラー邸] 1928-30年 プラハ
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:15.0×10.0cm
シートサイズ:38.0×28.5cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第4信より挿画13_A
磯崎新
〈栖 十二〉第四信より
挿画13
アンドレア・パッラディオ[ラ・マルコンテンタ(ヴィッラ・フォースカリ)] 1559-60年 ヴェネツィア西郊
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:10.0×15.0cm
シートサイズ:28.5×38.0cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第5信より挿画17_A
磯崎新
〈栖 十二〉第五信より
挿画17
チャールズ・レニー・マッキントッシュ[ヒル・ハウス] 1902-03年 ヘレンズバラ
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:15.0×10.0cm
シートサイズ:38.0×28.5cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第6信より挿画19_A
磯崎新
〈栖 十二〉第六信より
挿画19
アイリーン・グレイ[ロクブリュヌE1027] 1926-29年 カプ・マルタン
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:10.0×15.0cm
シートサイズ:28.5×38.0cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第7信より挿画22_A
磯崎新
〈栖 十二〉第七信より
挿画22
コンスタンティン・メルニコフ[メルニコフ自邸] 1927年 モスクワ
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:10.0×15.0cm
シートサイズ:28.5×38.0cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第8信より挿画25_A
磯崎新
〈栖 十二〉第八信より
挿画25
ルートウィッヒ・ウィトゲンシュタイン[ストンボロウ邸]
1928 ウィーン
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:10.0×15.0cm
シートサイズ:28.5×38.0cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第9信より挿画28_A
磯崎新
〈栖 十二〉第九信より
挿画28
フランク・ロイド・ライト[サミュエル・フリーマン邸] 1924-25 カルフォリニア州ハリウッド
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:10.0×15.0cm
シートサイズ:28.5×38.0cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第10信より挿画31_A
磯崎新
〈栖 十二〉第十信より
挿画31
小堀遠州[孤篷庵 忘筌] 1643(寛永20)年 京都
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:10.0×15.0cm
シートサイズ:28.5×38.0cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第11信より挿画37_A
磯崎新
〈栖 十二〉第十一信より
挿画37
ミース・ファン・デル・ローエ
[レイクショア・ドライヴ] 1948-51年 シカゴ
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:15.0×10.0cm
シートサイズ:38.0×28.5cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

第12信より挿画40_A
磯崎新
〈栖 十二〉第十二信より
挿画40
磯崎新[ルイジ・ノーノの墓] 1994年 ヴェネツィア サン・ミケーレ島
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:15.0×10.0cm
シートサイズ:38.0×28.5cm
Ed.8(E.A.)
サインあり

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