ギャラリー  ときの忘れもの

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全国同時展「島州一・関根伸夫クロスカントリー7500km」
会期:1975年10月31日〜11月9日
会場:東京目黒区・自由が丘画廊
共催:現代版画センター、自由が丘画廊

オープニングパーティ:10月31日17時〜

関根伸夫の新作版画を一挙に17点制作した。すべての刷りは石田了一氏である。
限定部数は75部から200部だった。
つまり理論的には75会場で同時に展覧会が可能となる。
既にエディションしていた島州一の版画とともに、「島州一・関根伸夫クロスカントリー7500km」展のパッケージをつくり、全国一斉に展覧会を開催するという計画をたてた。
全国55会場開催というプランをたて(実際に開催にこぎつけたのは20数会場)、島組と関根組の二チームが全会場のオープニングに出席するという全国行脚を繰り広げた。
全国の先駆けをきって自由が丘画廊で二人の作家が出席してオープニングが開催された。

1975年10月島・関根全国同時展・自由が丘画廊


1975年島・関根全国展共通DM



後年、関根伸夫はこのときのことを回顧して以下のように著書に記している。
〜〜〜
一九七五年 島州一とともに版画による全国同時展 クロスカントリー 7500 (現代版画センター企画)

 環境美術の仕事以外に、僕自身の想像力や構想の底辺にある心理的意識を版画にする「絵空事シリーズ」を制作していた。そして絵描きの島州一さんとともに「クロスカントリー 7500」なる全国の会場をめぐる同時開催の展覧会をやったことがある。これは現代版画センターという版画普及を目的とする会員組織が企画したものだが、版画は一つの原画で数十枚、数百枚の単位で制作が可能である、ゆえに全国同時開催の展覧会ができるわけである。僕は事務局長の綿貫不二夫さんと汽車やバスを乗り継いでは、全国津々浦々まで、支部が開催する展覧会のオープニングをめぐり歩いた。たしか山陰地方と九州地方の二十五所までは訪れた記憶がある。
 「絵描きとは、酒が強いことと見つけたり」というほど、画家なる人は各地の名産品である銘酒や料理をいただきながら、地元の文化人や知識人やコレクターとしゃべるわけで、これまでの日本文化が成立してきた背景を知るうえで興味深かった。
 昔の安藤広重や葛飾北斎、放浪の円空や奥の細道の松尾芭蕉や小林一茶なども、おなじ土壌のもとに活かされていたのである。彼らは旅をしながら絵を描き、仏像をつくり、歌や句を詠んだ。地方に行くほど、人々は当世の都会の様子を知りたく思う。画描き、俳人は耳寄りな情報をたずさえ、それを待ち焦がれる人びとに歓待され、宿泊させてもらい、その後の路銀を受けとり、歓迎されるつぎの訪問さきを聞き出した。
 彼らの背後には、彼らを支える情け深き地方の篤志家や、文化を希求する一群の同志たちがいたのである。
 旅先でサインを求められる場合、出されるのはかならず色紙である。まずほとんど間ちがいなく、墨と筆と色紙が目のまえにあらわれ、作家は座興のうちに即興でためらいなく、イッキに得意とするものを描かなければならない。一瞬のうちに芸事が決まらないのは、昔から恥ずべき行為である。しかし感心してしまうのは、そこで作家と知りあい友達になると、かならず作品を買い、のちのちまでサポートしてくれる人の多いことである。ここに地方が元来持っている、母なる大地性というか、故郷という文化を支えている基盤を感じることができる。決して文化は大都市に育まれるのではなく、そこでは流行が表層面を通過するのであって、内実は母なる故郷である地方に育ち根づくものである、このことが実感できた。
 未だに時節のおりおりに、わが家に故郷の品々を贈って下さる人たちもいる。なんとその人はただ一回会っただけなのに……。

 事務局長の綿貫不二夫さんの特技にもふれておこう。彼は汽車に乗る直前になると、キオスクや売店で調達して、ビールか酒と弁当をかかえてきて乗り込む。それを威勢良く飲みかつ食い、僕と一しきり喋ったあと、一瞬の内に寝てしまう、そして目的地に近づくと熟睡したとは思えない速さで、パッと目覚める。そして「先生、着きましたよ」といって、ここにはどういう人たちがいるか、どう対応して欲しいかについて簡単に打ち合わせると、勢い良く電車を降り走り出すのだ。僕にはどうしても目的地の直前で目覚める技がなく、旅がながくなるとしだいに疲れてくるが、彼はますます元気になるのだ。

関根伸夫『風景の指輪』(2006年3月10日発行 株式会社図書新聞)103〜105ページより転載
〜〜〜
*文中「事務局長の綿貫不二夫さん」とあるが、正確には「事務局次長」です。現代版画センター創立の1974年から最後の日まで事務局長は尾崎正教さんでした。

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