<迷走写真館>一枚の写真に目を凝らす 第63回

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みんな前のめりになって、身を右に傾けている。彼らから見ると左側になるが、なにか心奪われることがその方角で起きているのだ。いちばん左の男性は、シャッターが切られる直前に画面に踏み込んできたかのようだ。左足を踏ん張って身を低くし、どれどれ、という感じでみなの視界を覗き込んでいる。直立していては見えない位置で、それが起きているのだ。真ん中の男性が片足を下におろしているのも、視線を下げたいからだろう。

双眼鏡で見ている人が複数いることから、事態の起きている場所が肉眼ではディテールがわからないほどここから遠く離れていることが察せられる。身を低くして傾けたら見えるくらいの、かすかな気配なのだ。
それは獲物の姿であるのまちがいない。中央の男性がもっている鉄砲からそう思う。

でも、もし鉄砲が写っていなければ、まったく別の想像をすることも可能である。
木立のなかで素っ裸で踊っている女がいて、男がそれを撮影している、とそんな情報がはいってきて、村の男たちがその木立がみえる場所に結集し、どうしたものかねえ、と言いながら好奇心をかられて見つめている。男たちの表情が、モデル撮影会の雰囲気を連想させたせいかもしれない。

左側の男性は肩ベルトのついた長い包みを背負っている。この中身は何だろう。咄嗟に浮かんだのは組み立て式のイーゼルだが、雪山で絵を描く人がいるはずがないし、かといって鉄砲とも思えない。もしそうならば、隣の男のように出して手に持ってもよさそうではないか。

いちばん右の男も肩に何かさげている。これは別の形をした道具である。飛び出ている部分から想像するに、ノコギリではないかと思われる。柄だけが出ていて、刃の部分は布袋のなかにしまわれているのだ。

彼はほかの人たちのように身を屈めてはいない。そのことが彼に特別な雰囲気を与えている。視線が高く、外界を見下ろすような平然とした様子で佇むさまが、まるで彼だけがこの事態を別の角度から眺めているかのようだ。

彼の腰の後ろに尻当て皮のようなものが写っているのも気になる点だ。他の人も付けているのか知らないが、彼の佇まいと尻皮は実にお似合いだ。事態を引いて眺めるリーダーの風格が感じられる。
また、ほかの人たちは帽子をかぶっているのに、彼だけがねじり鉢巻きをしていることもそのイメージを強めており、彼の役割や人柄について想像をはせずにはいられない気分になる。

全員の体が片側に傾いてしまうと、冷静な判断ができなくなる。彼はぴんとのびた背筋でみんなの熱を支え、受け止め、視線を高く保って状況を観察している。手を当てた口元から、みんなを深くうなずかせる一言がまもなく飛び出すだろう。

大竹昭子(おおたけあきこ)

■亀山亮 Ryo KAMEYAMA
1976年千葉県生まれ、写真家。『AFRIKA WAR JOURNAL』で第32回土門拳賞受賞。八丈島在住。凪の日は基本的に魚突きが生業。

●写真集のご紹介
上掲の写真作品は、亀山亮さんの写真集『山熊田』に収録されています。
yamakutama_h1+obi亀山亮写真集『山熊田』
2018年
夕書房 刊行
128ページ
B5変形
巻末テキスト:亀山亮、山川徹(ルポライター)、大滝ジュンコ(アーティスト)
装幀:鈴木聖


アフリカやパレスチナなど「戦場」の写真で知られる写真家・亀山亮の4年ぶりとなる新作写真集です。 舞台は新潟県村上市山熊田。人口50人足らず。新潟と山形の県境に位置するこの小さな集落にあるのは、山と熊と田だけ。 亀山はそこに暮らす人々が今も静かに続けている、生きるという行為、「生と死」をめぐる原初の生業を写し出していきます。 山焼きと熊狩り、そしてシナ織。これは山とともに生きる人々の暮らしの、現代の記録です。
夕書房HPより転載)

*画廊亭主敬白
画廊は本日(1日)と明日(2日)は休廊です。
植田正治2018DM植田正治写真展−光と陰の世界−Part II 」は駒込移転後では最も多い来場者があり、大盛況のうちに昨日に終了いたしました。
日本経済新聞に出品作品が大きく掲載されたのをご覧になった方も多く、新発掘のポラロイド写真という話題性もあり、植田人気の高さをあらためて感じました。来場者の皆さん、お買い上げいただいたお客様には心より御礼を申し上げます。

○<本駒込のときの忘れもので植田正治写真展「光と陰の世界 PartII」を鑑賞。話題の新発掘のポラロイド写真は既に売れてしまったのもあり、一組しかなくて残念。
実は最終日の今日まで南青山から移転した事を知らず、遅れて閉廊時間ギリギリの来訪になりましたが、それでも暖かく対応して頂き、大変感謝。

(20180331/乙城蒼无@4/1おもしろ同人誌バザールさんのtwitterより)>

○<本駒込・ときの忘れものにて植田正治展。初めて見つかったポラロイド写真を中心とした展示。インスタントな写真で時間をゆったりと切り取る。3/31まで https://ift.tt/2J6DIsj
(20180330/ムチコさんのtwitterより)>

○<ときの忘れもの「植田正治写真展−光と陰の世界−Part II」にて。
こういう鮮やかな作品、幻影シリーズにもあったけれどなんか珍しいと思って撮らせてもらった。
画廊での鑑賞ってあまりやったことないから勝手がよく分からず、部屋の中に飾ってあったポラロイドの作品は見られなかった。

(20180327/猫珠 深鈴さんのtwitterより)>

○<ギャラリーときの忘れもので開催中の植田正治「光と陰の世界 Part II」ですが、去年の5月には移転前の南青山でPart Iをやってたのですのね。これはPart Iで展示していたシリーズ「光の筐」の1枚。これが綺麗だったんです
(20180319/michiroさんのtwitterより)>

○<本日は駒込の【ときの忘れもの】という小さな会場で、植田正治写真展を観てきた。
帰りに最寄りの一駅前で降り、買い物袋とティッシュペーパーを手にして桜吹雪の中を歩く。桜は満開よりも散る時が好き。

(20180328/Eikoさんのtwitterより)>

○<ギャラリーときの忘れもの @Watanuki_Ltd の植田正治展、ポラロイドの他にもいろいろありますが代表作は今回少なめ、珍しいヤツ多めです。ヌード作品は他にもあるけど外国人モデルを撮ってるのは初めて見ました。飾り方もちょっと凝ってます。見た目ふつうの家みたいですが、この貼り紙が目印ですよ pic.twitter.com/tWIM11q0iL
(20180320/michiroさんのtwitterより)>

○<こだま和文さんのライブ前に美容院行ってのんたんに女っぷりをあげてもらい、映画観ようかなーって思ったけど、駒込へ。植田正治のポラロイド写真展@ときの忘れもの。すぐそこにみんないるような気がした。みんなといるような気がした。私のi Phoneもおなじだったらしく、顔認証してた。
(20180315/シブヤメグミさんのtwitterより)>

●本日のお勧め作品は浅田政志です。
toujin_600浅田政志
「浅田家『唐人踊り』」
2010
Cプリント
A.P.
27.4x35.1cm
サインあり

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◆大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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