ギャラリー  ときの忘れもの

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「小特集:関根伸夫と現代の美術」について

川越市立美術館
濱田千里


 川越市立美術館では3月25日(日)まで、常設展内に「小特集・関根伸夫と現代の美術」と題した展示を行っています。
関根伸夫(1942- )は大宮市(現・さいたま市)に生まれ、当館にほど近い県立川越高校を卒業しています。関根は同校の門柱を手掛けており、市内の公園にも作品が設置されている本市とゆかりの深い作家です。
 関根は多摩美術大学で絵画を学びますが、よく知られているのは「もの派」を代表する作家であるということです。それを決定づけたのは1968年に神戸須磨離宮公園現代彫刻展に出品された《位相―大地》でした。これは地面に高さ2.7m、直径2.2mの円柱形の穴を掘り、掘った土で同型の円柱を大地の上に構築するという作品でした。スケールはもちろんのこと、多くの人がその圧倒的な存在感に度肝を抜かれました。そうした作品により、関根はむしろ彫刻家として名を知られるようになりました。またパブリックアートなどの言葉が今ほど普及する前から「環境美術」と呼ぶ、周辺環境との調和を図った作品を設置し、時には環境デザイナーのような仕事をしてきました。自身で「環境美術研究所」を設立し、単なる彫刻にとどまらない、環境と一体化した作品への取り組みを積極的に行ってきました。当館では、そうした側面に光を当てた内容で、公立美術館において2003年に初の個展を開催したこともあり、関根を「環境美術家」と表記しています。
 当館のコレクションに目を向けると、関根の彫刻は6点(内1点は屋外に恒久設置)、平面は51点あり、数の上では平面作品を多く所蔵しています。中でも「位相絵画」は35点あります。鳥の子和紙にアクリルを塗り、その上に、金箔や、銀箔、黒鉛などの箔を張り付け、切り取られたものは、同じ作品内の他の部分で用いて1つの作品に完結させています。金属で作られた重量感のある作品だと思われやすく、素材を知ってその意外性に驚く方も多く見られます。
 また今回は、同じく「もの派」の理論面での立役者である李禹煥(1936-)の版画作品(寄託)を併せて紹介しています。東洋思想に学んだ独自の表現をご覧ください。
 そのほか、現代の美術として滝沢具幸(1941‐)の日本画を展示しています。昨年度、当館で開催した特別展「池田幹雄×滝沢具幸―「日本画」のその先へ」を契機に収蔵品となった2点を常設展として初めてお披露目いたします。滝沢は東京藝術大学大学院を修了し、創画会会員として活躍しながら、2012年まで武蔵野美術大学教授として教鞭を執ってきました。人間をも含めた自然をモティーフに、抽象的で色彩豊かに構築された力強い画面は、日本画の現代性を感じさせてくれます。
 また今年度で武蔵野美術大学教授を退任する画家・長沢秀之(1947- )の作品を1点出品しています。埼玉県狭山市出身で、川越に隣接する川島町在住の長沢は、関根と同じ県立川越高校を卒業し、武蔵野美術大学産業デザイン学科(現・工芸工業デザイン学科)で学びました。1980年代、90年代から現代美術の最先端に身を置き、「風景」と題した抽象画のシリーズを通して平面作品における奥行の問題を問うような作品を描いてきました。展示している1994年の《風景―網膜》(図版1)は、当館のコレクションの中で一番大きい平面作品(218.2×333.3僉砲任后

長沢秀之《風景-網膜》長沢秀之
《風景−網膜》
1994年
川越市立美術館蔵


 さらに洋画家・齋藤研(1939‐)の油彩画3点を特別出品しています。当館では同作家の作品を2点所蔵していますが、どちらも近年の作ではなく、今回は作家本人の協力により、最近作を含めた3点を常設展に出品していただける事になりました。当館の所蔵品《旅》(図版2)と共に、合わせて4点を展示しています。川越市在住の齋藤は独立美術協会会員として活躍し、長い間、女子美術短期大学で教授として後進の指導にもあたってきました。この特別出品の関わりから、会期中に作家本人にご講演いただけることになりました。「藝術作品における翻案・引用・独創について」というタイトルで、過去の巨匠の作品と自身の作品を照らし合わせ、スライドを用いてお話をいただきます。3月10日(土)午後2時から当館で行います。直接作家に会って話を聞くことのできる又とない機会です。皆さまのお越しをお待ちしております(予約不要)。

齋藤研《旅》齋藤研
《旅》
1998年
川越市立美術館蔵


 最後に、3月11日(日)まで開催中の特別展「生誕130周年 小村雪岱―「雪岱調」のできるまで―」に関連し、常設展の一部で「小村雪岱とその周辺」と題した展示を行っています。小村雪岱(1887-1940)は、東京美術学校(現・東京藝術大学)で日本画を学びましたが、本の装丁、挿絵、舞台美術など、多分野で活躍した作家です。特別展と同時期に雪岱に関する著書が複数出版され、現在静かなブームが湧き起こっています。常設展では、当館所蔵の雪岱の日本画、挿絵原画、版画のほか、雪岱の叔父にあたる川越出身の日本画家・小田容亭(1859-1905)の作品も展示しています。こちらも特別展と一緒にお楽しみいただければ幸いです。
はまだ ちさと

■霤沈蚓ぁChisato HAMADA
川越市立美術館学芸員。学習院大学大学院修了。近年担当した展覧会は「中林忠良銅版画展」(2017年)、「ペインティングの現在」(2015年)。

●展覧会のご紹介
「小特集 関根伸夫と現代の美術」
会期:2018年1月5日[金]〜3月25日[日]
会場:川越市立美術館
時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館:月曜日(休日の場合は翌火曜日)

◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されています。現代版画センターと「ときの忘れもの」についてはコチラをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログはお勧めです。ときの忘れもので扱っています。
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
埼玉チラシAY-O600現代版画センターは会員制による共同版元として1974年〜1985年までの11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、280点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。

○<東京国立近代美術館 大谷美術課長が語る「版画の景色−現代版画センターの軌跡」はなぜ必読のエッセイなのか
大谷様、情熱的な文章を誠にありがとうございました!!

(20180216/埼玉県立近代美術館さんのtwitterより)>

○<→RT 「版画の景色」展の大谷先生のご執筆読んでから、展覧会に行けば良かったです。作品を鑑賞しただけで、現代版画センターの「運動」には意識がいっていませんでした。影像も参考資料かとさらりと流してしまいました。展覧会の意図を見落としています。反省
(20180217/ミズノワ‏ さんのtwitterより)>

○<今日、埼玉県立近代美術館に行ってきました。版画をあんなにいっぱい見たのは初めてでした。版画の多様性、可能性に感動しました。版画のプリント様式にもずいぶん種類があるのですね。なんか初期の写真現像と似ているのが面白かったです。昔からモノクロ写真の表現力に興味があったのですが、版画にも共通のものを感じました。それから、綿貫さんの仕事のすごさに今更ながら感服しました。版画センターの立ち上げや、版画の美術品としての評価を高める活動など、日本の美術界へ貢献していますね。いい仕事をなさっているんですね。また、いろいろ面白い話を聞かせていただきたいと思います。
 実は、私の次女が三月に駒込に転居することになりまして、ベビーシッターで、月に何回かは通うことになると思います。その折、お邪魔したいと思いますので、よろしくお願いします。お会いできるのを楽しみにしております。
                
(20180217/SKさんのメールより)>

西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。草創期の現代版画センターに参加された西岡さんが3月18日14時半〜トークイベント「ウォーホルの版画ができるまでー現代版画センターの軌跡」に講師として登壇されます。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

スタッフたちが見た「版画の景色」(2月4日ブログ)

毎日新聞2月7日夕刊の美術覧で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が紹介されました。執筆は永田晶子さん、見出しに<「志」追った運動体>とあります。

倉垣光孝さんと浪漫堂のポスター(2月8日ブログ)

嶋吉信さんのエッセイ〜「紙にインクがのっている」その先のこと(2月12日ブログ)

大谷省吾さんのエッセイ〜「版画の景色−現代版画センターの軌跡」はなぜ必見の展覧会なのか(2月16日ブログ)

塩野哲也さんの編集思考室シオング発行のWEBマガジン[ Colla:J(コラージ)]2018 2月号が展覧会を取材し、87〜95ページにかけて特集しています。

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。

現代版画センターエディションNo.510 関根伸夫「石のベクトル」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
20170912_3_sekine_18_ishi関根伸夫
《石のベクトル》
1982年  
リトグラフ(刷り:高月仁)
90.0×63.0cm
Ed. 45  サインあり
*現代版画センターエディション
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

パンフレット_05
出品作家45名:靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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