ギャラリー  ときの忘れもの

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佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第29回

「ネパール(とインド)に行って学んだことを持ち帰る」

 5月頭、日本が平成から令和に切り替わっている最中、ネパールとインドへ行ってきた。
 ネパールは石山修武さんのWhite Mountain Moon Collage (WMMC)という名前の短期学校へ。詳しくは石山さんの日記に詳述されていますが、自分にとっては、
・Patan市内の鋳造工房の制作プロセスを実見したこと
・自分の日本とインドでの仕事の連関について、ネパールから考え、近未来の実践(これは日本の福島・大玉村で)に結びつきつつあること
が収穫だった。
 Patanでの仏具鋳造工程(Metal Casting)は、蜜蝋(WAX)でモデルを作り泥を塗って鋳型を作るもの。中心部から少し離れた工場集積エリアの中の鋳物工場を見学した。
 真鍮の溶解温度は800度程度なので、石炭と木材程度の火力で十分に制作が可能だということがわかった。また、どの鋳物もまず元となる蜜蝋モデルを手で作り、土の鋳型を作って鋳込むので、原理的に一品生産型の方法である。つまりおおよその作る大きさと仕組みが同じであれば、細部は一つ一つ異なるようにもでき、小規模生産と大中規模生産の間をすり抜ける別種の生産モデルとなるのではないかという可能性が見える。日本の古代・中世頃も同種の鋳造方法が行われていたようである。現代彫刻においてももちろんやられている(蝋型鋳造彫刻)。

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2 (蜜蝋モデルは、ナイフを熱で温めて外形を切り出し、水牛の角でできたいくつかの大きさのヘラで形を整えていく。あとは素手のモデリング。)

3(成型した蜜蝋モデルの表面に、まずシルトと牛糞を混ぜたものを塗り、さらにその上に泥とコメ殼を混ぜたものを塗って鋳型をつくる。)

4(そして出来上がったダルマのような鋳型を石炭と堅木の薪で焼いて、中から蜜蝋を注ぎ出し、出来上がった空洞に溶かした金属を入れていく。)



 日本へ帰国した後、福島県の大玉村で、さっそく蜜蝋モデル作成までを実験してみた。蜜蝋の扱いがいまいちで、うまくモデリングができないが、勝手は分かった。鋳込むために必要な湯道の付加など、おそらく原型となる形から予期せぬ次の形が生まれてきそうな予感もある。
 どうにか、建築に付随する金物を作るところまで進めたい。

5 (ネパールで買った蜜蝋。800rs-/KG)

6(湯道を造形に貫入させてみようかと思って作った蜜蝋モデルの一部)



 蜜蝋は、蜂の巣板から精製して作られる。であれば、その材料入手のために、ここ大玉村でミツバチの養蜂からするべきじゃないかと考えた。けれども、どうやら大玉村を含む安達群では、数年前からミツバチの姿が一切見られなくなってしまったという。原因はダニの発生の可能性が高いらしいが、農薬散布などの自然環境の変容も無視はできないかもしれない。ミツバチの帰還を目指すことは、この村の環境の恢復にも繋がることだろうと思う。そうした環境の回路(サイクル)あたりが、蝋型鋳造の一品生産性と繋がってきもするだろう。
 そういえば、今回のネパール滞在中偶然出会った、カトマンズに暮らす日本の人に昨年末ときの忘れもの個展「囲い込みとお節介」で作った木製写真機(「囲い込むためのハコ1」など)の写真を見せたら、「養蜂してるの?」と言われてしまった。その時は、ただただ「いや、まさか!」なんて答えてしまったが、そんな過去に作ったモノが今現在の思考に意図せずに合流するなんてことは、実はとても嬉しい。その意図せずの合流を本筋にしてみたいとも企んでいる。
7(「囲い込むためのハコ1」2018年、クリ,ナラ,アルミ,柿渋、H80cm Photo by comuramai)


 先のネパールWMMCの中で短いレクチャーをする機会を得、インドでの仕事について若干の発表をやらせてもらった。改めて、いま自分が移動しているその意味(意気込み)を考えてみれば、やはり福島とインドそれぞれが今現在に持ち得る「技術」(Technology)の可能性を捉えるためだろうという内容。そしてその双方の技術の交わる部分、あるいは両者を繋げることで生まれる別種の途を探そうとしている、いうところまで考えた。
 震災後の福島と、近代化が進むネパールとインドの農村。安易にカテゴライズはできないが、ともかく異種のローカル、Local Technologyの掛け合わせを探したい。

8 (発表のために描いたアジア地図)


9 (「Project in Santiniketan」についてのお手製資料)


 帰りがけに寄った、IndiaのKolkataでは、現地の建築家Milon Dutta氏と住宅プロジェクトについて打ち合わせ。このプロジェクトは、今年10月大阪で開催され出展する、「U-35展」にて紹介させてもらう予定。タイトルは「『工作』あるいは、”わざわざ”と呼んでみる『技術』」。
 Milon氏には、同じく今年9月、福島県大玉村で開催する予定(準備中)の「In-Field Studio 2019」に参加してもらうことにもなっている。
 上記二つの活動は、始めに述べた蝋型鋳造の試行や、養蜂恢復への意思と、半ば直接に、正直に合流させるつもりだ。
さとう けんご

佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

●本日のお勧め作品は、佐藤研吾 です。
sato-20佐藤研吾 Kengo SATO
《中心について考える1》
2018年
印画紙
23.5×23.5cm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●『一日だけの須賀敦子展 in MORIOKA第一画廊
会期:2019年6月29日[土]
会場:岩手県盛岡市・MORIOKA第一画廊・舷

●『DEAR JONAS MEKAS 僕たちのすきなジョナス・メカス
会期:2019年5月11日(土)〜6月13日(木)
会場:東京白金・OUR FAVOURITE SHOP 内 OFS gallery

●『倉俣史朗 小展示
会期:2019年5月25日(土)〜6月9日(日)
会場:大阪・Nii Fine Arts

◆ときの忘れものでは「第311回企画◆葉栗剛展 」を開催しています。
会期:2019年5月24日[金]―6月8日[土]11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊
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出品No.1 <男気>《鬼/烏天狗》 H. 235cm

葉栗展
ときの忘れものは毎年アジアやアメリカのアートフェアに出展し、木彫作家・葉栗剛の作品をメインに出品しています。今回は、2014年以来二回目となる個展を開催し、国内未公開作品11点をご覧いただきます。

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18〜24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。*日・月・祝日は休廊。
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