ギャラリー  ときの忘れもの

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「DEAR JONAS MEKAS −僕たちのすきなジョナス・メカスー」@白金・OFS Gallery
ジョナスへの、ジョナスからの手紙のような展覧会を

岡本零


911の前日。2001年9月10日月曜日に、僕はジョナス・メカスと出会った。

彼が創設したアンソロジー・フィルム・アーカイヴスを訪ねたものの、休館日で鍵がしまっていて、扉の前から中を覗き込んでいたところ、鍵が開いた。扉の向こう側に、秋の光に照らされたジョナスが立っていた。扉を開けてくれた女性が「アポイントメントはあるの? 何しにきたの?」と聞いてきて「ないんだけど、ジョナス・メカスの本や作品がほしくて」というと、彼女は僕を中に入れてくれた。そしてジョナス本人に案内されて、僕はアンソロジーの書架の中を歩いていった。「この本はどう? これは? 君はほとんど持ってるんだね。これはどうだろう?」と丁寧にすすめてくれたジョナスは、買った本にサインをしてくれた。こんなことがニューヨークでは起こるんだ、と思った。

そして翌朝。宿泊していたソーホーのホテルから800メートルの距離にあるワールドトレードセンターに、ハイジャックされた飛行機が突っ込み、ふたつのビルは崩れ落ちた。

封鎖されたニューヨークをただ歩いた。白煙にまみれたウォール街、街路が新聞を読む人であふれていたチャイナタウン、雨にぬれた花束と静かなビートルズの歌声あったユニオンスクエア。そして9月14日金曜日の夜。ダウンタウンを歩いていたところ、また偶然ジョナスに再会したのだった。ジョナスはふたりの女性といっしょで、これからビールを飲みにいくところだという。あつかましく「いっしょに行っていいですか?」と聞く僕に、彼は「もちろん」と答え、スプリングストリートのバーに連れていってくれたうえで、ブルックリンラガーをおごってくれたのだった。

帰国後「ときの忘れもの」で開かれたジョナス・メカスのフローズン・フィルム・フレームズの展覧会に行った僕は、そこで作品を購入する。ギャラリーのオーナーの綿貫さんは「『あのときあなたがビールをおごった彼が作品を買ってくれましたよ』とメカスさんに伝えておきます」と笑った。

2009年9月。『ときの忘れもの』でジョナス・メカス新作展が開かれ、それにあわせて息子のセバスチャンが来日した。吉増剛造さんのイベントの打ち上げに向かう途中、なぜか綿貫さんは「岡本さん、英語できるよね。セバスチャンの通訳よろしく!」と言った。まったくいい加減な英語で、まだ作家デビューする前の朝吹真理子さんや、他のお客さんのあいだに入って通訳をした。セバスチャンは僕よりかなり年下なのだけれど、ものすごく穏やかで、でもどこかユーモラスで、そんなに深く話をしたわけではないのだけれどメールアドレスを交換し、「次はニューヨークで会いましょう」みたいなことを話した。

それは社交辞令にはならなかった。

2010年3月。ブルックリンのメカス家を訪ねた。一度も詩を書いたことがなかった僕を、ジョナスはポエトリーリーディングのライブや打ち上げに誘ってくれて、「He is my friend. He is a poet!」と友人たちに紹介した。

それから。

札幌のこどものアートスクール「まほうの絵ふで」でジョナスの作品を塩ビ板に描く授業をして、作品をふたりに見てもらいにいったり。
白金のOFS Galleryで、そのこどもたちの作品を含めてジョナス・メカス展を開いたり。

京都の誠光社でジョナスの映画『幸せな人生からの拾遺集』をかけながら、いしいしんじが「その場小説」を書き、その小説をニューヨークのボニー・エリオットが「その場翻訳」し、YouTube LIVEで全世界配信する、というようなライブを企画したりした。

今年の1月にジョナスが亡くなったというニュースがめぐった後、OFS Galleryの森谷健久・植原亮輔から「展覧会をやりたい」という連絡があった。ジョナスが亡くなった後、京都・誠光社と東京・スタジオ35分で井戸沼紀美さんが企画した展覧会〜上映会が開かれ、東京・Nap Galleryでも展覧会が開かれた。これらの展覧会は、ジョナスが亡くなる前に企画されていたものだ。

これから開こうとしているのは、ジョナスが亡くなった後に、考えて、開く、展覧会だ。


はじめての出会いから今まで。こんなに何度も、ジョナス・メカスとセバスチャン・メカスと会い、時間をいっしょにできたのは、もちろん、僕が特別におもしろかったとか気に入られれていたからとかということではない。ときの忘れものや、メカス日本日記の会や、新宿のナジャや、吉増剛造さんや、たくさんの友人たちが日本にいて、たまたまニューヨークによく行ったのが僕だったから。みなさんの分も、いろんなものを、僕があずかった、ということだと思う。

今回の展覧会は、ジョナス・メカスの写真作品を展示するだけでなく、リトアニア語や英語の詩も紹介したいと思っている。ただ、ジョナスの仕事は広く、深く、大きい。美術館のように広くはないギャラリーで、それらをカバーするのは不可能だ。だからこれは、僕の視点から、友人たちとつくる、プライベートな展覧会になる。ジョナスにあてた手紙のような。ジョナスからもらった手紙のような展覧会にしたい、と思う。そしてこの展覧会は、さっきあげた、たくさんのジョナスの「友人たち」に協力いただき、いっしょに作るものだと思っている。

ジョナスは日記映画の創始者であり、大きなことよりも小さなことがすきな人だった。

だから、この展覧会のこともきっと歓迎してくれるはずだ。

「Go Ahead!」突き進め、というジョナスの声が聞こえる。
おかもと れい

■岡本零 Lei OKAMOTO
ライター・エディター・クリエイティブディレクター。これまでの仕事に、鏡リュウジ・荒井良二『はじめてのタロット』の編集や、カードゲーム Rocca(ロッカ)シリーズのディレクションなどがある。http://rocca-game.jp

●展覧会・イベント情報
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DEAR JONAS MEKAS僕たちのすきなジョナス・メカス』
会期:2019年5月11日〜6月13日

会場:OUR FAVOURITE SHOP 内 OFS gallery
〒108-0072 東京都港区白金5-12-21
TEL.03-6677-0575
OPEN 12:00-19:00(ただし展示最終日は17:00まで)
CLOSE 月・火(祝日を除く)

●関連イベント
いしいしんじ その場小説
ライブで書かれる小説。展覧会場の空気と音のなか、ジョナス・メカスと「いまここ」と「いつかどこか」をつなぐ文章がつむがれます。
5 /11(土)17:30開場 18:00開演 1500円(ワンドリンク付)
 〜〜〜〜
いまだ失われざる楽園、あるいはウ−ナ3歳の年」(1979・90分)
娘のウ−ナとともに、故国リトアニアに母の90歳の誕生日を祝うために訪れるジョナス。

貴重な16mmフィルムによる映写を予定。※画面の一部に傷が入ることがあります。ご了解ください
5/18(土)17:30開場 18:00開演 1500円(ワンドリンク付)
 〜〜〜〜
セバスチャンの教育、あるいはエジプトへの回帰」( 1992・5時間27分)
ジョナスが息子セバスチャンに贈ったビデオ日記映画。お酒を飲んだりしゃべったりしながら、特別な時間を過ごしましょう。入退室・再入場自由、軽食販売あり
6/2(日)12:00 開演(〜20:00)1500円(ワンドリンク付)※店舗及びギャラリーは11:30よりオ−プン

●ご予約方法
reserve@ofs.tokyoまで、メ−ルをお送りください。件名に「その場小説」「ウ−ナ3歳の年」もしくは「セバスチャンの教育」と記載してください
本文に 1)お名前 2)電話番号 3)参加人数をご記入の上、お申し込みください

●本日のお勧め作品は、ジョナス・メカスです。
mekas_39_tokyo_10ジョナス・メカス Jonas MEKAS
"Shirley Clarke, June 12, 1971"
1971年 (2013年プリント)
アーカイバルインクジェットプリント
イメージサイズ:34.0×23.0cm
シートサイズ :39.8×29.1cm
Ed.7  サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆ときの忘れものでは「第311回企画◆葉栗剛展 」を開催します。
会期:2019年5月24日[金]―6月8日[土]11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊
葉栗展
ときの忘れものは毎年アジアやアメリカのアートフェアに出展し、木彫作家・葉栗剛の作品をメインに出品しています。今回は、2014年以来二回目となる個展を開催し、国内未公開作品11点をご覧いただきます。
初日5月24日[金]17時よりオープニングを開催します。


●ときの忘れものは4月28日(日)から5月6日(月)まで休廊します。連休中のお問い合わせには5月7日(火)以降にお返事いたします。

●『光嶋裕介展〜光のランドスケープ
会期:2019年4月20日(土)〜5月19日(日)
会場:アンフォルメル中川村美術館
[開館時間]火・木・土・日曜日 祝日 9時〜16時(連休中は全日開館しています

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18〜24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。
*日・月・祝日は休廊。

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