ギャラリー  ときの忘れもの

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靉嘔のレインボー・ディナーショー

「虹のディナー」ふたたび

中村惠一

 軽井沢のニューアートミュージアムにおいて3月16日から6月30日まで「靉嘔 レインボー 88」という展覧会が開催されており、期間中に88歳の誕生日を迎えた靉嘔の米寿を祝う意味もあって1964年にニューヨークのCAFE AU GO GOで開催された「レインボー・ディナー」を再現するイベントが6月8日に開催された。虹のアーティストである靉嘔が1964年に設定したレシピの通り紫・青・緑・黄・橙・赤の6色(藍が抜けているが)の食事と今回はバースデーケーキの7種の食事が供され、30人の参加者がそれを楽しんだのだった。そのメニューは〇腓離クテル、▲┘咾入ったコニーアイランドの青い海水に見立てたトマトジュレ寄せ、Dどれ野菜のグリーンサラダ、せ匍蹐離好董璽黄色のかぼちゃソースがけ、ゥレンジ、赤い水のフィンガーボール、Д弌璽好如璽院璽である。美術館にはイタリアン・レストランが併設されていて、そこのシェフによる調理と見事な盛りつけであった。

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 このイベントは、靉嘔も参加していた「フルクサス」の代表的なスコアをパフォーマーが次々に演じるフルクサス・コンサートの形式をとっており、「レインボー・ディナー」もその一つでもあった。その冒頭、バースデーケーキが靉嘔のもとに運ばれ、Eric Andersenの「Halving Piece」の指示の通り、正確にサイズを計測して半分にカットされた。食事の最中もBen Vautierの「Audience Piece No.10」というスコアに基づいてのパフォーマンスが続けられた。会場の様子を見えない場所から言葉によって描写し続けられた。

20190628中村惠一007“Halving Piece”を演じる靉嘔
撮影者:土渕信彦

食事が終わった直後に演じられたスコアは靉嘔の「Rainbow No.1 for Orchestra, Variation」。今回のイベントの全体のディレクションを担当した村井啓哲が指揮棒をもって来て、なんと私に渡した。私は命じられるままに舞台に立ち、ほかの6人のパフォーマーが作るしゃぼん玉を指揮棒で割っていかねばならない。大量のしゃぼん玉が空間を埋めて美しい作品だったと聞いたが、当事者になってしまった私は息があがってしまって単に苦しかったのだった。

20190628中村惠一008“Rainbow No.1”
撮影者:土渕信彦

Phillip Cornerの「Temple Bell」では小さな木魚が一撃された。Albert M. Fineの「Concerto for Solo Piano and Performer」ではヴァリンダがピアノを一音響かせるたびに1枚着衣を脱いでゆくというスコアを演奏した。

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Lee Heflinの「Fall」では大きな脚立の上に座ったアスラ・サンペルがお菓子を食べてその包装紙を投げてみせるというスコアが演じられた。最後には観客に向けてお菓子が投げられ、私もキャッチしたのだった。

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Joe Jonesの「Mechanical Orchestra」では高須修をはじめとしたパフォーマーが各テーブルにゼンマイ仕掛けの音の出るおもちゃを置いた。おもちゃはゼンマイがゆるむまで演奏を続けた。Alison Knowlesの「Newspaper Music」では工藤万馬、アスラ・サンペル、ヤリタミサコ、中村惠一が村井啓哲の指揮によって持参した新聞や本を4つの言語によって読み上げた。腕の指示によって発声の強度を変化させ、発音方法を変化させることによって声による音楽に変化を与えるのだった。

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George Maciunasの「In Memoriam to Adoriano Olivetti」はメトロノームが指揮者だ。メトロノームによって演奏者の動きがコントロールされた。次のYoko Ono「Sky Piece for Jesus Christ」とNam June Paikの「One for Violin」は圧巻だった。バイオリンを演奏する矢野礼子を村井啓哲が包帯によって拘束してゆく。最初に顔面、すぐに目をふさがれてしまう矢野。やがて包帯は腕も拘束する。ほとんど演奏できなくなった矢野は会場の外まで村井によって担がれて運びだされた。

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次はパイクの作品だ。バイオリンをもった村井が一人で立っている。しずかに持ち上げられてゆくバイオリン。頭上に構えられた。次の瞬間、振り下ろされたバイオリンは粉々になり激しい音を奏でた。破壊されたバイオリンは靉嘔がサインをし、ふたたびケースに収められた。今回の演奏の記念として美術館に展示されるという。
  
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Mieko Shiomiによる「Rainbow Music for AY-O’s 88th birthday」は今回のために作曲された曲。工藤万馬がピアノで演奏した。

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 最後はRobert Wattsの「C/T Trace」だ。投げられた生卵をシンバルで受ける作品。シンバルも音を出すが生卵も飛び散る。最後も食べ物で終わるという「レインボー・ディナーショー」にふさわしいラストであった。

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 わずか30名の観客だけを迎えて開催された「レインボー・ディナーショー」はこうして終了した。なかなか体験できないイベントの印象とともに、それぞれが目撃し、聴いた音を身体に取り入れて帰宅したのだろうと思う。

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なかむら けいいち

中村惠一(なかむら けいいち)
北海道大学生時代に札幌NDA画廊で一原有徳に出会い美術に興味をもつ。一原のモノタイプ版画作品を購入しコレクションが始まった。元具体の嶋本昭三の著書によりメールアートというムーブメントを知り、ネットワークに参加。コラージュ作品、視覚詩作品、海外のアーティストとのコラボレーション作品を主に制作する。一方、新宿・落合地域の主に戦前の文化史に興味をもち研究を続け、それをエッセイにして発表している。また最近では新興写真や主観主義写真の研究を行っている。
・略歴
1960年 愛知県岡崎市生まれ
1978年 菱川善夫と出会い短歌雑誌『陰画誌』に創刊同人として参加
1982年 札幌ギャラリー・ユリイカで個展を開催
1994年 メールアートを開始
1997年 “Visual Poesy of Japan”展参加(ドイツ・ハンブルグほか)
1999年 「日独ビジュアルポエトリー展」参加(北上市・現代詩歌文学館)
2000年 フランスのPierre Garnierとの日仏共作詩”Hai-Kai,un cahier D’ecolier”刊行
2002年 “JAPANESE VISUAL POETRY”展に参加(オーストリア大使館)
2008年 “Mapping Correspondence”展参加(ニューヨークThe Center for Book Arts)
2009年 “5th International Artist’s Book Triennial Vilnius2009”展に参加(リトアニア)
2012年 “The Future” Mail Art展企画開催(藤沢市 アトリエ・キリギリス)

*画廊亭主敬白
オープニングや内覧会には不義理が続く。
社長はともかく、亭主は歳で(といっても1931年生まれの靉嘔先生から見れば一回り以上の下の若僧ですが)、遠路(といっても新幹線で僅か一時間)を赴くイベントにはほとんど欠席を決め込んでいたのですが、企画したのが青山時代のお隣さん、GALLERY 360°の菅谷幸さんで、現代版画センター以来の恩人・靉嘔先生の米寿のお祝いとあらば万難排して行かねばならぬ。友人たちを誘い温泉がてら軽井沢に行ってまいりました。
その夜のレインボー・ディナーショーのパフォーマーとして出演したのは、村井啓哲、矢野礼子、ヴァリンダ(盛由子)、工藤万馬、高須修、アスラ•サンペルさんたち。そして会場からのゲスト出演は、中村惠一、ヤリタミサコさんでした。
20190608軽井沢AY-O展車椅子でしたが、靉嘔先生とてもお元気でした。
夜の美術館で開催された「レインボー・ディナー」の様子を同じテーブルに座った中村惠一さんにレポートしていただきました。中村さんは当日のゲストでもあり、出演者でもあります。

20190608軽井沢AY-Oディナー東京を出る前にふと思い出し1981年の「AY-O 虹の全国展」のカタログを書庫から探し出し持参、靉嘔先生はじめ出席者全員にサインをいただきました。
撮影者:土渕信彦
20190608軽井沢AY-Oディナーサイン120190608軽井沢AY-Oディナーサイン2

●プレゼントのお知らせ
日頃からブログをご愛読いただいている皆様にプレゼントのお知らせです。
DSC_0192靉嘔先生のオリジナルレターパッドを抽選で3名様にプレゼントいたします。
応募はメール(info@tokinowasuremono.com)で受け付けます。
締め切りは本日6月27日24:00迄。
サイズはA4サイズ、50枚つづり

20190620173147_00001【応募要項】
件名に『靉嘔レターパッドプレゼント企画』と書いて、【氏名】【住所】【メールアドレス】【お電話番号】を本文に書き入れinfo@tokinowasuremono.comまでメールをお送りください。
抽選の結果は発送をもってかえさせていただきます。

※レターパッドは40年ほど前、靉嘔先生にお願いしてつくったオリジナル(現代版画センター製作)のものなので角にスレがあったり表紙に若干の汚れがあります(便箋本体は良好)。


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●本日のお勧め作品は、靉嘔です。
IMG_1898_3_trim_900靉嘔 Ay O
《グッドバイ・ムッシュウ・ゴーギャン》
1973年
シルクスクリーン8枚組、屏風
143.0×214.0cm(版画部分のみのサイズ)
Ed.90(レゾネにはEd.95と記載)
サインあり

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18〜24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。*日・月・祝日は休廊。
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