ギャラリー  ときの忘れもの

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「眼差しの肖像画コレクション」
会期:2019年8月23日(金)―9月7日(土)

ときの忘れものの夏休みも終わり、スタッフたちも気分一新して出勤してまいりました。
猛暑はまだまだ続くようですが、秋の第一弾はときの忘れものには珍しく肖像画展です。

11_Gazing Portrait_0729両面卓抜な表現力と、深い人間観察に基づいて描かれた7人の作家による異色の肖像画コレクションを約14点ご覧いただきます。
出品作家:細江英公五味彬E.J.ベロックジョセフ・コーネル小野隆生森村泰昌三上誠

E.J.ベロック(1873-1949)
べロックE.J.ベロック Ernest James BELLOCQ
ストーリービル・ポートレート
1911年頃
ゼラチン・シルバー・プリント
(リー・フリードランダーによるプリント、金調色P.O.P.プリント)
20.2×25.2cm
リー・フリードランダーのサインあり

べロック_UntitledE.J.ベロック Ernest James BELLOCQ
"Untitled"
ゼラチンシルバープリント
25.2×20.2cm
裏面にリー・フリードランダーのサインあり

長く忘れられていた写真家ベロックが撮影したのはすべてニューオリンズの紅燈街「ストーリーヴィル」の娼館で働いていた女性たちです。臆することなくカメラを見つめる娼婦たちの眼差し。撮影者との信頼なくしては生まれなかった写真です。
しかし、それは撮影されてから長く埋もれていました。
ベロックの存在が写真史に登場したきっかけは、1958年ニューヨークからやってきた写真家リー・フリードランダーがあるギャラリーを訪れ、ベロック撮影の乾板を見出しことにあります。1966年フリードランダーは、ベロックの乾板89点を買い取り、印画紙に焼付けます。
1970年にニューヨーク近代美術館で公開され大きな反響を呼んだのがこれらの写真です。

ジョゼフ・コーネル(1903-1972)
ジョセフコーネル_アンドレ・ブルトン肖像ジョセフ・コーネル Joseph CORNELL
アンドレ・ブルトン
1960年頃
Collage by Joseph CORNELL on the photo by Man Ray
24.6x17.9cm  Signed

アッサンブラージュの先駆者にして第一人者のジョゼフ・コーネルは箱の作品がよく知られています。この作品は、マン・レイが撮影したブルトンの肖像のうちでもっとも著名なソラリゼーションによる写真に、コーネルがブルーの水彩で縁どりを施したもの。 裏面全体もブルーに塗られ、コーネルによるサインとタイトルが記されています。


小野隆生(b.1950)
ono_takuboku小野隆生 Takao ONO
肖像図・啄木
1970年代  油彩・画布
33.5×24.0cm  Signed


ono_vermeer小野隆生 Takao ONO
剽窃断片図(フェルメール)
1976年  油彩・画布
33.0x24.3cm  Signed


ono_rambo小野隆生 Takao ONO
肖像図ランボー
1976年  油彩・画布
33.3×24.3cm  Signed


小野隆生_zanzo小野隆生 Takao ONO
残像図
1976年  油彩・画布
23.0x16.2cm(SM号) Signed


小野隆生発掘と調査の日に小野隆生 Takao ONO
発掘と調査の日に
1998年  テンペラ・板  175.0x176.0cm  Signed

岩手出身の小野隆生は1971年にイタリアにわたり、国立ローマ美術学校・フィレンツェ美術学校・国立ローマ中央修復研究所絵画科で学ぶ。77〜85年イタリア各地の教会壁画や美術館収蔵作品の修復に携わりましたが、それは修復家になるためではなく、自らがライバルと称するルネッサンスの画家たちの作品に直接触れたいがため。ペルジーノに憧れ、小さな山岳都市にアトリエを構え、テンペラ画手法による肖像画を一貫して制作しています。今回ご紹介する初期の油彩作品はいずれも小品ですが、小野の資質が如実に現れています。1990年代に手がけたポプラ合板を切り抜いた大作は、実物より遥かに巨大な肖像画で圧巻です。

森村泰昌(b.1951)
森村泰昌_若いセルフポートレイト1629_A森村泰昌 Yasumasa MORIMURA
若いセルフポートレイト 1629(A)
1994年
カラー写真(キャンバス加工)
イメージサイズ:21.5x18.0cm
額装サイズ:38.3x34.3cm
Ed.5   Signed


morimura_selfportrait_B森村泰昌 Yasumasa MORIMURA
若いセルフポートレイト 1629(B)
1994年
カラー写真(キャンバス加工)
イメージサイズ:41.0x33.0cm
額装サイズ:57.5x49.5cm
Ed.5   Signed

いわずと知れたレンブラントの自画像に扮した森村の代表作、二点とも作者自ら額装したものなので、額も作品のうちでしょう。
森村泰昌は京都市立芸術大学美術学部卒業後、1985年ゴッホに自ら扮したセルフ・ポートレート写真を発表、誰でもが知る名画の登場人物に扮する「美術史シリーズ」で脚光を浴びました。最初の頃はキワモノ扱いでなかなか理解されませんでしたが、海外に先駆け森村の作品をコレクションしたのが知る人ぞ知る奈良の西田画廊の西田考作さんでした。今回の2点の作品も西田さんの旧蔵作品です。
森村泰昌は2014年にはヨコハマトリエンナーレ2014「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」のアーティスティック・ディレクターに就任。昨2018年11月には自身の美術館「M@M(モリムラ@ミュージアム)」を大阪・北加賀屋に開館しました。国内外多数の美術館にパブリックコレクションされています。

三上誠 (1919-1972)
三上誠「作品」
三上誠 Makoto MIKAMI《作品
1967年  ミクストメディア 121.0×30.5cm(額サイズ:140.0×49.8cm)
*『三上誠画集』(1974年、三彩社刊)所収No.90

三上誠は大阪生まれ、福井市で育ち、1940年東京美術学校油画科受験に失敗し、京都市立絵画専門学校(絵専)日本画科予科に入学。1944年絵専本科を卒業し、同校副手となる。1949年下村良之介、不動茂弥、星野真吾、山崎隆ら11名と日本画の前衛グループ「パンリアル美術協会」を結成、戦後の前衛美術運動の一角を担います。コラージュやフロッタージュの技法を日本画にとりこみ、段ボールや木、印刷物を使い幾何学的形態のなかに独自の宇宙論的な作品を制作しましたが、病を得てからは手術や治療体験を想起させる、変形されたり分断された人体をモティーフとした作品を多く制作。シュルレアリスム的作品から抽象的コラージュ作品へと展開し、治療のための東洋医学に触発された独自の作風に至る。1952年から療養のため福井に帰郷、福井大学学芸部で非常勤講師として教鞭をとる。1971年肺結核が再発、翌年亡くなりました。

細江英公(b.1933)
細江英公_薔薇刑32_1961細江英公 Eikoh HOSOE
「薔薇刑 作品32 Ordeal by Roses #32」
1961年(printed later)
ゼラチンシルバープリント
51×61cm  Signed

細江英公の文字通り代表作。三島由紀夫をモデルに撮ったこの「薔薇刑」で写真家として確固とした評価を確立しました。三島の目線の強さといい、それを真正面から捉えた細江のカメラの目の凄さといい、この作品ほど世界に流布した写真はないでしょう。今も清里フォトアートミュージアム館長として若い写真家の発掘評価に取り組み、若いときデモクラート美術家協会の瑛九と出会ったのが自身の原点だと述懐されています。

五味彬(b.1953)
gomi_09_8p_upac五味彬 Akira GOMI
"8P_UP・AC"
1991年
ヴィンテージ・ゼラチンシルバープリント
86.0×68.0cm   Signed


村上麗奈17五味彬 Akira GOMI
村上麗奈 CP vintage 1989-17
1989CA
ビンテージ・ゼラチンシルバープリント
12.2x10.3cm   Signed

五味彬は日本大学芸術学部写真学科を卒業後、1977年渡仏、ローレンス・サックマン、ミッシェル・ベルトンに師事する。1983年帰国後はファッション誌『流行通信』『エル・ジャポン』などを中心に活躍します。93年日本初のCD-ROM写真集『YELLOWS』を発表し、2000年までに14タイトルを発表。1997年には東京都写真美術館で《アウグスト・ザンダーと五味彬》展を開催しました。
ときの忘れものでも幾度か個展を開催、その作品については2009年8月の「五味彬写真展」についての飯沢耕太郎のレビューが最も的確に指摘しています。

もうだいぶ前の話なので忘れている人も多いと思うが、1991年に五味彬の写真集『Yellows』が、マガジンハウスから刊行直前に裁断・廃棄されるという事件があった。五味は1989年頃から「世紀末の日本人の体型がどうだったのかという記録として」、若い女性モデルのヌードを撮影してきた。『Brutus』誌などにも掲載されたそのシリーズを出版しようとしたところ、いわゆる「ヘア」が写っているということで、上層部の判断で出版中止に追い込まれたのだ。「へア・ヌード解禁」直前の混乱ぶりがよくあらわれているエピソードといえるだろう。
昨年、その幻の『Yellows』のプリントをコラージュして、屏風仕立てで展示したのに続いて、今回は『月刊PLAYBOY』の掲載作品、写真集『nude of J』(朝日出版社、1991)のためのポラロイド作品などを中心に出品している(着衣の作品もあり)。写真を見てまず感じる「懐かしさ」は、ヌードというジャンルの「記録」性をよく示している。モデルの体型や髪型、さらにたとえば眉毛や体毛の処理にあらわれている微妙な違和感、さらに彼女たちを取り巻いている空気感としかいいようのないものの違いが、1990年前後(もう20年も前だ!)という時代のイコンとなっているのだ。当時この作品を見た時に感じた生々しさがきれいに削ぎ落とされ、西欧社会とは異質の慎ましやかさ、きめ細かさを持つ「日本人(Yellows)の裸」というもっと抽象的な概念が浮かび上がってきているのが興味深かった。

artscapeレビュー 2009/08/14(金)飯沢耕太郎

◆ときの忘れものは8月11日(日)〜8月19日(月)まで夏季休廊です。
休み中のお問い合わせには8月20日以降に順次応答いたしますが、返信まで若干お時間をいただくことを予めご了承ください。

「中村哲医師とペシャワール会を支援する頒布会」の申し込み締め切りは8月21日19時です。
草間「かぼちゃYB-C」毎月11日、珍しい作品数点を特別価格にて提供し、売り上げ金全額をペシャワール会に送金します。第一回支援作品はヤコブ・アガム、荒川豊蔵・虎渓山 水月窯、イチハラヒロコ、豊島弘尚、草間彌生の5作品です。皆さんのご支援、お申し込みをお待ちしています。

◆ときの忘れものは眼差しの肖像画コレクションを開催します。
会期:2019年8月23日[金]―9月7日[土] *日・月・祝日休廊
11_Gazing Portrait_0729両面卓抜な表現力と、深い人間観察に基づいて描かれた7人の作家による異色の肖像画コレクションをご覧いただきます。
出品作家:細江英公五味彬E.J.ベロックジョセフ・コーネル小野隆生森村泰昌三上誠

◆ときの忘れもの・拾遺 第11回ギャラリーコンサートのご案内
日時:2019年9月3日(火)18:00
会場:ときの忘れもの
守安功・雅子出演:守安功、守安雅子(アイルランド音楽の演奏家)
プロデュース:大野幸
要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

◆ART FAIR ASIA FUKUOKA 2019に出展します。
AFAF2019Official-LOGO(再送)_600
一般公開:2019年9月6日(金) 11:00〜20:00
     2019年9月7日(土) 11:00〜19:00
     2019年9月8日(日) 11:00〜18:00
会場:ホテルオークラ福岡 9階
〒812-0027 福岡市博多区下川端町3-2
Toki-no-Wasuremono Room No. 925
公式サイト:https://artfair.asia/
出品作家:瑛九磯崎新森下慶三
、他
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18〜24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。*日・月・祝日は休廊。

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