ギャラリー  ときの忘れもの

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柳正彦のエッセイ「アートと本、アートの本、アートな本、の話し」第22回

屋上でのインタビュー、30年前の思い出

 8月の連載にも書きましたが、クリスト、ジャンヌ=クロードとの最初の大仕事は、東京の佐谷画廊で1984年に開かれた「包まれたポン・ヌフ」展のカタログのためのインタビューでした。佐谷画廊では、続いて1986年に「包まれたライヒスターク」展、1988年と1990年に「アンブレラ」展、そして1991年10月、ちょうど茨城とカリフォルニアでアンブレラが実現した時期に「クリスト:初期の作品1958−64」展が開かれました。

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 その全てのカタログのために、文章を書かかせて貰いましたが、数ヶ月前にウェッブ上で見た映像が、最後の一冊を手がけた時、30年前の思い出をよみがえらせてくれました。
 5月末にアップされた映像ですが、見たのがクリスト死去の前だったか、後だったかは思い出せません。内容はニューヨークでの新型コロナウィルス蔓延の後、完全な自主隔離をしているクリストへのインタビューでした。その中にクリストが、住居とスタジオがあるSOHOの5階建てビルの屋上で話をするシーンが含まれていました。この屋上は、マンハッタンのダウンタウンやクイーンズなどが眺望できるスペシャルなスペースです。周辺部に手摺りなどもなく、高所恐怖症の私にはちょっと怖い場所ですが・・・91年の「初期の作品」展カタログのための取材の一部はこの場所で行ったことを思い出させてくれました。
 インタビューは2回か3回に分けてでしたが、多分一回目が終わった後、食事をしている際にジャンヌ=クロードが、「次は屋上でピクニックをしながらにしましょう」と言ったのだと思います。その数日後、近所のレストランからデリバリーして貰ったサラダやハンバーガーなど、そしてワインを持って屋上へ上がり早めの夕食をしながらの取材となったわけです。30年近くも前のことで細かいことは覚えていませんが、多分、クリストの大好物だったガスパチョもメニューには入っていたことでしょう。

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 話をカタログに戻します。掲載された文章は、「梱包されたナイトテ−ブル」、「パッケージ」といった出品作品、一点、一点についての彼らの話をまとめたものです。
 質問、回答といったインタビュー形式をとらず、クリストとジャンヌ=クロードに自由に話してもらい、それもとに記事を作成しました。さらに、パリ時代(1958〜64)の生活についても回想してもらい、それを「パリのスタジオ」というセクションに纏めましたが、ピクニックスタイルの夕食は、野外での食事にちょうど良い時期だったのに加えて、二人にとっては若い頃の生活につながるものだったのかなと、今頃になって思い始めています。
 それまでのインタビューでは、私対クリストの対話形式で、時々あったジャンヌ=クロードの発言も、クリストの言葉として収録していました。(二人の意向です。)しかし、このカタログのための文章では、クリストとジャンヌ=クロードの言葉を別々に扱いました。これも作品だけではなく、パリ時代の生活についても語ってくれているからでしたが、同時にプロジェクト作品だけではなく、初期のオブジェ作品などでもジャンヌ=クロードが係わっていたことの記録ともなりました。
 ちなみに展覧会のために、2種類の大判のポスターが作られました。クリストが基本デザインをしましたが、そのスケッチが私の手元に残っています。クリストとジャンヌ=クロードのロフト近所のレストランで夕食をしながら、クリストが私のノートに書いたものです。コピーをとって東京へファックスし、現物は僕が持っているようにと、For Masa と書いてくれてあります。その横にある58 days to goは、アンブレラ・プロジェクトの実現予定日までの日数です。

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 ここ数ヶ月は、5月末に急逝したクリストの思い出を、本をキーに綴らせて貰ってきました。クリストとジャンヌ=クロードとの思いでは、本当に尽きることはありませんが、今回で一区切りとさせて頂きたいと思います。来月からは、通常の内容に戻らせて頂きます。
やなぎ まさひこ

柳正彦 Masahiko YANAGI
東京都出身。大学卒業後、1981年よりニューヨーク在住。ニュー・スクール・フォー・ソシアル・リサーチ大学院修士課程終了。在学中より、美術・デザイン関係誌への執筆、展覧会企画、コーディネートを行う。1980年代中頃から、クリストとジャンヌ=クロードのスタッフとして「アンブレラ」「包まれたライヒスターク」「ゲート」「オーバー・ザ・リバー」「マスタバ」の準備、実現に深くかかわっている。また二人の日本での展覧会、講演会のコーディネート、メディア対応の窓口も勤めている。
2016年秋、水戸芸術館で開催された「クリストとジャンヌ=クロード アンブレラ 日本=アメリカ合衆国 1984-91」も柳さんがスタッフとして尽力されました。

●柳正彦のエッセイ「アートと本、アートの本、アートな本、の話し」は毎月20日の更新です。

●本日のお勧め作品はクリスト&ジャンヌ=クロードです。
christo-27クリスト CHRISTO
《ゲート》
オフセット・リトグラフ 
イメージサイズ:28.3×21.8cm 
シートサイズ:40.0×30.0cm 
クリストとジャンヌ=クロードのサイン入り
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●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18〜24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。*日・月・祝日は休廊。
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