ギャラリー  ときの忘れもの

001_外観1
このブログ上の図版、写真、文章等のすべてについて無断転載・無断引用を禁止します。

<迷走写真館>一枚の写真に目を凝らす 第93回

A-20-20(画像をクリックすると拡大します)
大きな河のほとりにある石の寺院。
壁にはいろいろな文字で説明が書かれている。
そのうち解読できるのは英語だけで、それによれば歴史的ネパール寺院であるらしい。
いちばん上の文字の横には矢印が描かれている。
この建物が歴史的ネパール寺院ですよ、と言っているのか。
それとも、この壁の後ろにそれがありますよ、と示しているのか。

壁面の高い位置にアーチ型の立派なくぼみがある。
精緻な彫刻がほどこされ、玉座のようだ。
そのスペースに、ひとりの男がヨガポーズを組んで座している。

首に幾重にも数珠をかけ、腕輪をはめ、額や腕には色が塗られ、むきだしの肌は黒光りしている。
一瞬、作り物の像かと思ってしまったが、それほどくぼみにぴたりとはまって馴染んでいる。

サドゥーと呼ばれる行者が瞑想をしているところだろう。
そう想像してみるのだが、どうしたことかユーモラスな空気を感じてしまう。
思わず姿勢を正してしまうような厳粛さが感じられない。
見ているとむしろ朗らかな気持ちになってくる。

屋外だからだろうか。それもあるかもしれない。
陽はだいぶ傾きかかり、アーチの下の蓮のつぼみのような彫刻の影が壁に映っている。
焼き付けたようなその黒いシルエットに、躍動するようなリズムがある。
しかも、この場所はくぼんでいるが、張り出してもいるらしく、結構込み入った構造だ。
ディスプレイの台座のようで、置物らしさはそこにも出ている。

壁にはほかにもくぼみがふたつある。
ひとつは高い位置にあってお供えをする場所を連想させる。
もうひとつはそれより大きく、低いところにあり、なにのためかわからないが、床が汚れている。何かを燃やした跡のようでもある。

そのふたつのくぼみのところに、布きれが二枚下がっている。
ひとつは腰巻きだとわかるが、もうひとつの漏斗型をしたものは何?
と見ているうちにはた気がつく。
これはふんどしではないか!
三角の部分をお腹に当て、腰のところで紐を縛り、長く垂れた部分を股に通して尻のほうにくぐらせ、紐にひっかける。
まちがいなくそうだ。

きっと河で洗濯して、干したのだろう。
乾くまで瞑想している。
いや、瞑想しているあいだに乾かしているのである。
そばには犬が二匹いて、遠くにちらりと人の姿が見える。
のどかだ。あくびがでてきそうなほどに。
おかしみの元がだんだんとわかってきた。
なにかが緩んでいる。厳密でない方向に空気が流れていて、
それが神々しいほど朗らかな気分を運んでくる。

大竹昭子(おおたけあきこ)

●作品情報
写真集「NAKED CITY VARANASI」より

●作家紹介
石川武志
1950年、日本の四国に生まれる。1971年、東京ビジュアル・アーツ卒業。1971年9月から1974年10月、W、ユージン・スミスのミナマタ・プロジェクトでアシスタントを務める。1975年3月 W、ユージン・スミスの「MINAMATA」の写真展や出版に立ち会うため渡米、以後フリーランスになる。
1980年 インドでヒンドゥー教の修行者「サドゥー」とインドのトランス・ジェンダー社会「HIJRAS」の取材を開始する。1982年 写真展「YOGI」ニコンサロン新宿。1988年 写真展「HIJRAS」ミノルタギャラリー。1995年 写真集「HIJRA - THE THIRD GENDER IN INDIA」を青弓社から出版(日本語)。2008年 写真展「HIJRAS THIRD GENDER OF INDIA」をForeign Correspondents’ Club of Japanで開催。
2008年 再度ミナマタの取材を開始する。2011年 写真展「ガンガー巡礼」ニコンサロン銀座で開催。2012年 写真展「MINAMATA - NOTE 1971〜2012」ニコンサロン銀座で開催。2012年「MINAMATA - NOTE 1971〜2012」を千倉書房より出版。2014年 写真展「MINAMATA NOTE 1971〜2012」をミナマタ・ミュージアムで開催。
2015年 写真展「MINAMATA NOTE 1971〜2012」をギャラリーEM 西麻布で開催。
2018年 写真展「THE UNGUARDED MOMENT」をSteve McCurryとETHERTON GALLERY Tucson Arizonaで共同開催。2019年 写真展「NAKED CITY VARANASI」ギャラリー・プレースMで開催。

ISHIKAWA Takeshi
Born on Shikoku island, Japan, in 1950, Ishikawa Takeshi graduated from Tokyo Visual Arts in 1971. He worked with W. Eugene Smith on the Minamata project from 1971 to 1974. Ishikawa moved to New York in 1975 to be a part of publishing Smith’s Minamata and its subsequent exhibition. Following completion of the Minamata project, Ishikawa became a freelance photographer.
In 1980, Ishikawa began photographing in India and focused particularly on the Hindu religious practitioners called sadhus and the transgender community known as hijras. He published the photobook HIJRAS: The Third Gender of India with Seikyusha in 1995. In 2008, Ishikawa once again began to photograph the aftermath of Minamata poisoning in the city of Minamata, located in the Kumamoto Prefecture.
Ishikawa’s solo exhibitions include Yogi at the Nikon Salon Shinjuku (1982); HIJRAS at the Minolta Gallery (1988); HIJRAS: The Third Gender of India at the Foreign Correspondents’ Club of Japan (2008); Ganges: A Pilgrimage at the Nikon Salon Ginza (2011); the traveling exhibition Minamata Note 1971–2012 at the Nikon Salon Ginza (2012), the Minamata Disease Municipal Museum (2014), and the Gallery EM Nishiazabu; and Naked City Varanasi at the Gallery Place M in Shinjuku (2019). Two-person shows include The Unguarded Moment with Steve McCurry at the Etherton Gallery in Tucson, Arizona (2018).

●写真集のお知らせ
書影石川武志写真集『NAKED CITY VARANASI』
発行:蒼穹舍/2020年8月20日
サイズ:A4変型/モノクロ
装幀:原耕一
ページ数:上製/114ページ
写真点数:95点
定価:6000円 + TAX

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆書籍のご案内
4c997155-s『室内室外 しつないしつがい 大竹昭子短文集』発売中
発売日:2020年7月7日初版
サイズ:文庫版 80P
著者:大竹昭子
編集協力:大林えり子(ポポタム)
校正:大西香織
装幀:横山 雄+大橋悠治(BOOTLEG)
表紙・挿画:工藤夏海
ロゴデザイン:宮地未華子(古書ほうろう)
印刷・製本:株式会社シナノパブリッシングプレス
©2020 Otake Akiko/Katarikoko Bunko Printed in Japan
サイン入り 税込価格 990円
『室内室外 しつないしつがい』のなかの一編「エイリアンになる」が著者自身の朗読でYouTubeにて聴けます。



●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18〜24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。*日・月・祝日は休廊。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット