ギャラリー  ときの忘れもの

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佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第57回

8月の終わりに再び秋田を訪れた。「アキタノユメのイエ計画」では秋の宮という農村をフィールドにモノを作っていたが、その展開として今度は秋田市近郊で作ろうと考えた。
そこでまず古道具屋へ向かった。何か現地のハコのようなものを探し、それを改造してピンホールカメラを作ろうと考えたからだ。秋田市と五城目の中間あたりに位置する、名前もわからない古道具屋を知っていたので、迷わずそこへ向かった。およそ1年前にも訪れたことがあったが、変わらず店のおばちゃんはとてもお喋りだし、ご主人は奥でずっとテレビを見ている。彼らはもう30年か40年ほど前からこの地で古道具屋をしているらしい。聞けば宮城の方まで買い付けにも出かけるらしいのだ。
そのご夫婦のお店でハコを探す。当然たくさんのハコを見つけるわけだが、その中でもカメラにしたら面白いだろうな、と思うハコをいくつか購入した。

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(古道具屋で購入したハコ。特に、イエ型の貯金箱の佇まいがとても気になった。)

購入したハコに穴を開け、おなじみの、それこそ小学生の自由研究と全く同じやり方でピンホールカメラを作っていく。ピンホールカメラの制作は簡単だけれども、かなり奥深い。そのハコの形状がそれぞれの焦点距離や画角を定め、それぞれの写真を作り出す。ハコ作り、ハコ選びがすでに最終的な成果物となる写真の内実と不可分な関係になっている。建築において空間、という言葉があるが、カメラが写した写真を空間とするならば、そのカメラが建築、ということだ。そんな建築作りと空間の密接な関係を、それこそ模型のようにスケールを縮小させてピンホールカメラ作りに勤しんでいる。

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そうして幾つかのピンホールカメラができ、それぞれを屋内外の各所に置いて撮影してみる。それぞれのハコが全く違う仕様なので、当然、光の取り込み方も異なり、露光時間の調整が個別に必要である。作ったその日は、それぞれのカメラの特徴を知るので精一杯であった。(全くうまく写らないカメラハコもいた。考究したい)

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(幾つかのピンホールカメラで写した写真(ネガのまま))

私たちの秋田での滞在制作はここまでであったが、後日、秋田市文化創造館に通う市民の方々に、ピンホールカメラを作って撮影してもらうワークショップを開催させてもらった。(実際には私自身はその時秋田に行くことができなかったので、文化創造館のスタッフの方にとてもお世話になった。)
参加者は、それぞれの生活の中からハコを選び取って持ち寄り、そのハコに細工をしてピンホールカメラとしていく。そしてそれぞれの生活のどこかを撮影する、というもの。押入れに長らく眠っていた郵便ポスト型の貯金箱や、その辺にあった空き箱など、参加した方々の人となりの気配がなんとなく漂うハコが出来上がり、集結した。それらのハコが撮影した写真の図像はもちろん持ち主自身が撮影地を選んだものだが、実際に出来上がった写真を見てみると、どこかその持ち主の意図からは抜け出ている感じがするのが面白い。作り手の意図を超えて生み出されるモノ。それは作り手自身の写しでもあるだろうし、またその像の輪郭を揺さぶるものであった。写真機という、近代知性の賜物ではあるが、モノと作るヒトとの関係としてあるべき形、モノ自体の可能性をあらわし得るな、の実感があった。

このときの忘れものでの連載では、日頃、自分自身がやっている建築(特に設計)の仕事から、さらにもう一歩モノの世界、スケールに歩み入った領域について、言葉を並べている。仕事、活動に分断があるかといえばそうでは無いが、こうしたピンホールカメラ作りを始めとして、いわゆる工作、微細なモノのウゴメキらしきことをコツコツと確かめる作業こそが、自分自身の活動の全体に対して、こう進むべしの筋道を与えてくれていることは確かだ。
これからも続けていきたい。

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(秋田市文化創造館のピンホールカメラ作りワークショップでの、参加した方々による制作物。)

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さとう けんご

佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。「一般社団法人コロガロウ」設立。
URL: http://korogaro.net/

・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

●この秋はじまる新連載はじめ執筆者の皆さんを9月4日のブログでご紹介しました

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18〜24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。*日・月・祝日は休廊。
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