小林美香のエッセイ

小林美香のエッセイ「歌謡写真論」第1回

小林美香のエッセイ「歌謡写真論」第1回

写真歌謡論 はじめに

01cameraer(図1)「CAMERAer」(表・裏・付録の御神籤)

02 (図2)荒井由美〈あの日にかえりたい〉(1975)

いつも当連載をご愛読いただき有難うございます。これまでに「写真集と絵本のブックレビュー」として執筆し、いろいろな書籍をその内容や蔵本、装丁などを含めて紹介して参りましたが、一つ区切りをつけてこの度新しく「写真歌謡論」という連載を始めさせて頂きたいと考えております。写真+歌謡という意外な組み合わせのように感じられるかも知れませんが、この連載の構想を思いついた一冊の本『CAMERAer』から連載の内容・構想を記しておきたいと思います。
『CAMERAer』(図1)は、美術家の野村浩 https://twitter.com/exdoranomu(1969- )の手によるコミックブックで、2018年7月に刊行されました。この作品は、野村が2013年から15年にかけてSNS上に不定期に連載した3コマ漫画をまとめたもので、カメラと写真のモモノケのようなさまざまなキャラクターが登場し、写真やカメラを取り巻く世界が描き出されています。私は、本書の解説を担当しておりますので、是非お読みいただければと思います(都内では POETIC_SCAPENADiff a/p/a/r/tNADiff BAITENSO BOOKSオリエンタルホビー、オンラインブックショップflotsambooksで扱っています)また、2019年1月から、横浜市民ギャラリーあざみ野にて、本作品と連動した横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展「暗 くて明るいカメラーの部屋」の開催が予定されています。以下の文章は、解説の冒頭で書いた文章「『CAMERAer(カメラー)』から見る写真の世界」の中で記したものです。
「野村浩は1969年生まれ、私は1973年生まれでともに40代の中年である。幼少期から青少年期にはフィルムの写真に慣れ親しみ、成人した後にインターネットの普及と写真のデジタル化を経験し、現在はデジタル ネイティヴ、スマートフォン世代の子どもを育てる親でもある。フィルムの写真で育った世代として、写真を撮る・見る経験を通して「もの」としての写真への愛着が身体に深く刻み込まれている。子どもだった 1970年代、80年代を振り返ると、歌詞の中に写真が登場する歌謡曲のフレーズが過る。たとえば、荒井由美の〈あの日にかえりたい〉(1975)は、「泣きながら ちぎった写真を てのひらに つなげてみるの」(歌詞、楽曲へのリンクは下記参照)(図2)と歌い出し、松田聖子の〈蒼いフォトグラフ〉(1983)は、「一度破いてテープで貼った 蒼いフォトグラフ」とか「写真はセピア色に 褪せる日がきても」と、写真の状態をこと細かく描き出す(歌詞、楽曲へのリンクは下記参照)。 このような歌詞が示すのは、写真の「もの」としてのあり方が、それを所有し、見る人の感情に強く作用するということであり、写真が想いを寄せる相手を召還し、その縁(よすが)を証立てる大切な「もの」であるからこそ、ちぎったり、切れ端を掌にのせたり、テープで貼り合わせたりする行為や、褪色という写真の経年変化に、相手の存在や自分の感情が託されるということである。スマートフォンやPCの画面に表示される画像として写真に接することが圧倒的に多くなった現在、写真への想いの込め方、扱い方は変わっているのだろうか?「あの日の写真にかえりたい」、つまりフィルム写真の時代に戻りたいわけではないけれども、そもそも写真とはどのようなもので、これまでに自分たちは写真とどのような関わり方をしてきたのかということを、振り返って確かめてみたいという想いは、現在の中年(もしくはそれ以上の世代)の心の奥底に溜まっているのではないだろうか。」
03(図3)写真歌謡祭ポスター画像

04(図4)お土産として制作されたカセットテープ (中のテープは、未使用の状態で、ラベルの中にYoutube の再生リスト と、ミックステープへのリンクが記されている)

05(図5)カセットテープのラベル

上記のように書いた後に、『CAMERAer(カメラー)』についての解説を進めているのですが、文中で挙げた〈あの日にかえりたい〉や〈蒼いフォトグラフ〉のほかにも、歌詞の中に写真やカメラ、写真に関連す る言葉が登場する楽曲(それらを「写真歌謡」と名づけました)には以前から関心を持っていたので、この 文章を執筆した後にも検索したり、SNS上で友人や知人から教えてもらったりしてリサーチを進めていきま した。8月18日には、「CAMERAer 発売記念トーク&写真歌謡祭」と題したイベントを開催し、選曲した24曲を聴きながら、楽曲の歌詞を分析し、時代の変遷に伴い、社会と写真の関係がどう変化してきたのかを探りました。選んだ曲は、ポール・サイモンが1973年に発表した「Kodachrome(邦題:僕のコダクロー ム)」から、K-POPシンガー、DEAN が2017年に発表した「Instagram」までに及び、ジャンルは歌謡曲、 ロック、テクノポップ、J POP、ヒップホップなどジャンルも様々です。(図3、4、5)40年以上の時間の流れの中で、写真が辿ってきた技術的な進歩や、写真が歌詞の中に登場することで、ストーリーの時間軸が どのように設定されているのか、写真を介した歌の中の感情の動きなどを読み取ることができました。ポピュラーソングの歴史と写真の歴史を重ね合わせ、歌われた写真と写された写真を掛け合わせて写真のあり方を考える「歌謡写真論」を構想してみたいと思いが湧いてきたので、毎回一曲か二曲の楽曲を取り上げ、その時代背景、楽曲にちなむPVのような映像作品、歌詞の内容を連想させる写真家の作品を取り上げながら、 論じていきたいと考えております。どうぞよろしくおつきあいください。
荒井由実 あの日にかえりたい (1975)https://www.youtube.com/watch?v=36d-SKvLh4o
作詞・作曲:荒井由実(松任谷由実) 歌詞 http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=35507

松田聖子 蒼いフォトグラフ (1983)https://www.youtube.com/watch?v=ZXL3Xx0jXwQ
作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂(松任谷由実)歌詞 https://www.uta-net.com/song/176/
こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

●本日のお勧め作品は、吉田克朗です。
london-05
吉田克朗 Katsuro YOSHIDA
『LONDON II』より「Eaton Gate」
1975年 フォトエッチング  
シートサイズ:31.0x43.3cm
たとう入りオリジナルプリント12点組
各作品に限定番号と作者自筆サイン入り
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


●小林美香のエッセイ「歌謡写真論」は毎月25日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第28回

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第28回

Carmen Winant『My Birth』

01(図1)
「Being: New Photography 2018」展
「My Birth」インスタレーション
ニューヨーク近代美術館


02(図2)
「My Birth」(部分)


今回紹介するのは、アメリカの芸術家カーメン・ワイナント(Carmen Winant, 1983-)の『My Birth(私の出産(誕生))』(2018)です。この作品は、現在ニューヨーク近代美術館で開催されている展覧会「Being: New Photography 2018」(会期2018年8月18日まで)の中で、インスタレーションとして公開されている作品(図1)をもとに構成されています。この展覧会は、人間という存在を写真がどのように捉え得るのかということをテーマに、アメリカ国内外のさまざまな作家(主に、30代から40代前半の若手の作家)が出展しています。
ワイナントは、「My Birth」の着想を、第一子を出産し、その後さらに第二子を妊娠した経験から得ました。出産がその当事にとって「言葉には言い表すことのできないほど大きな経験」と位置づけられていて、産みの苦しみや痛み、その後の喜びや感動は主観的な言葉で語られるのに対して、それ以外の方法で言い表す言葉、表現する手段がほとんど存在しないのは何故だろうか、出産を主観的、個人的な経験としてだけではなくより広い社会的な営みの中に位置づけて表現したいという考えが、写真のコラージュという方法に結びついたのです。確かに、妊娠・出産ほど、当事者(妊産婦)と当事者以外の間で、大きく見方や関心の持ち方に違いがあらわれる事象も少なく、それゆえにその過程や身体感覚を、個人的な立場以外から言明し難いというのは事実です。そのことを踏まえた上で、出産を捉えた写真を蒐集、分析、編纂することで、女性の身体に対する見方を再検証したい、とワイナントは考えたのではないでしょうか。

ワイナントは、数年間かけてパンフレットや雑誌、書籍、個人的な写真(助産師や妊産婦から提供を受けたもの)などから蒐集した出産にまつわるよそ2000点の写真(臨月期から、分娩、出産直後の授乳までも含む)を、展示室をつなぐ幅およそ6メートル通路の壁に、作業用の青い粘着テープで壁を埋め尽くすように貼っています(図2)。展示に使用された写真は白黒写真とカラー写真が入り混じり、妊産婦の外見や周辺に配置された医療器具や室内の状況から、1960年代以降に撮影されたものと推察されます。印刷物として発表された分脈や付随する文章などの情報などが削がれ、匿名性を高めた状態で断片として展示されているために、妊娠や出産という極めて私的な経験の局面を捉えた写真でありながら、個人性や主観性が削り取られ、鑑賞者は無数に繰り返される妊娠と出産という現象そのものを捉えた写真の集積に対峙することになります。
妊産婦の身体と、胎内から新生児が出てくる瞬間を捉えた写真が壁を埋め尽くすインスタレーションは、展覧会全体の中でもとくに迫力のある作品として話題になり、鑑賞した多くの人たちがインスタレーションの一部を撮影した写真をSNSで公開しています

03(図3)


写真集の表紙(図3)は、展示の壁面の一部を再現するように(設営に用いられた青いテープはほとんど使用されていない)構成されたポスターサイズの紙が写真集を包むようなデザインになっていて、その紙の裏面と写真集の冒頭には出産した女性に、出産の時の状況を具体的に、事細かに問いかける50余りの質問が印刷されています(喉が乾いたか?多幸感を感じたか?目を開けることはできたか?分娩時に脱糞したか?近くで他の女性が分娩している音を聞いたか?などなど)。写真集では、インスタレーションのようにランダムに写真が貼り付けられるのではなく、妊娠の段階(およそ7か月頃から臨月頃)から、陣痛、分娩、出産後の授乳にいたるまでの時系列に沿ってページに貼り込まれています。見開きでは、同じような段階にある写真が選ばれて組み合わせられていて、写真同士が共鳴し、陣痛から分娩へといたる過程が、個別の経験を超えた、大きなうねりを伴う現象のように立ち現れてきます。(図4、5、6、7)

04(図4)
写真集『My Birth』より
陣痛中の妊婦


05(図5)写真集『My Birth』より
陣痛中の妊婦


06(図6)写真集『My Birth』より
硬膜外麻酔などの処置を受ける場面


07(図7)写真集『My Birth』より
分娩直後 臍帯を切る瞬間


個別の写真からは、さまざまな女性たちが出産を経る中で痛みに耐えて顔を歪める表情や、自宅出産で配偶者や助産師が介助する様子や妊産婦のさまざまな姿勢、医療機関での処置、子宮口が開いて膣から赤ん坊の頭が母胎から出てくる様子など、出産過程の詳細を仔細に見て取ることができます。写真を撮った人たちが、どのような立場としてーー配偶者、家族、助産師のような介助者、産科医などーー出産を見つめているのかということを写真から判断することはできませんが、一連の写真のシークエンスは、出産の場面に擬似的に立ち会って観察しているような感覚を読者にもたらします。写真集は、新生児を胸に抱き、乳房をふくませる母子の写真群で締めくくられますが、その直前には、分娩時に胎内から出てきた胎盤を捉えた写真が10点余り(中には、ページ全体を覆う大きな図版もある)掲載されています。このように胎盤を即物的に提示することは、出産を個人的な経験として主観的な視線から捉えて描き出すのではなく、生命活動、生殖という現象の一部として位置づける表現を追求するワイナントの姿勢の表れともいえるでしょう。

08(図8)
写真集『My Birth』より
胎盤を差し出して見せる医療者の手


こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

●本日のお勧め作品は、植田正治です。
作家については、飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」第4回をご覧ください。
20180210_02植田正治《無題》
1977  Type-Cプリント, 木製パネル
27.0×40.0cm
『植田正治作品集』(2016年、河出書房新社)P132参照
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


●小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第27回

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第27回

『私はあなたのニグロではない』

01(図1)
『私はあなたのニグロではない(I AM NOT YOUR NEGRO)』


今回紹介するのは、ドキュメンタリー映画『私はあなたのニグロではない(I AM NOT YOUR NEGRO)』(ラウル・ペック監督(1953-)、2016年 日本公開2018年)です(図1)。この映画は、アメリカの作家ジェームズ・ボールドウィン(1924-1987)が、暗殺された公民権運動の指導者たち、メドガー・エヴァーズ(1925-1963) 、マルコム・X(1925-1965)、マーティン・ルーサー・キング・Jr (1929‒1968)について執筆した回想録「Remember This House」(1979年から着想され準備が進められたが、未完に終わった)の原稿を元に、アメリカでの人種差別の歴史に対する考察が描かれています。公民権運動を主題にした映画としては、マルコム・Xの生涯を描いた『マルコム・X』(1992)や、マーティン・ルーサー・キング・Jr が先導したアラバマ州セルマからモンゴメリーまでの選挙権獲得をめざす大行進(1965)を描いた「グローリー 明日への行進」(原題:SELMA, 2014) が知られていますが、本作品は、彼らの人生や公民権運動の動向を描くことよりも、現代もブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)運動が展開するように、根深く残る人種差別とその歴史的背景に対して、ボールドウィンの言葉を通して洞察を深めることに重点が置かれています。
ジャンルとしてはドキュメンタリー映画という形式を取っていますが、時間軸上に沿って進むのではなく、様々な時代、種類の映像ーーボールドウィンが出演したテレビ番組や講演の映像、公民権運動の記録映像、ニュース映像、広告、人種差別的な色濃く反映された娯楽映画、写真、現在の人種差別や暴行に端を発するデモの映像、記録写真などーーを入念にコラージュのように縒りあわせて構成されています。公民権運動の最中に公的な場所で熱弁を振るうボールドウィンの肉声と、公民権運動から10数年以上を経た1970年代末に、当時のことを振り返り、銃弾に倒れた3人の同世代の指導者のことを内省するボールドウィンの言葉(ナレーションは、俳優のサミュエル・L・ジャクソンが担当)は相互に響きあい、映画の中に時間的な重層性をもたらしています。エンドロールでは、ラッパーのケンドリック・ラマー(1987-)が人種差別や社会的な不正を激しく糾弾する「The Blacker the Berry」(2015)が流れ、ボールドウィンの言葉と精神が現代を生きるラッパーの中に引き継がれていることが示されています。

02(図2)
ダグラス・マーティン「ハリー・ハーディング高校に入学する女子学生ドロシー・カウンツ」(1957)


先にも述べたように、映画の中には、人種差別には公民権運動に関わるさまざまな写真が使われており、その中のいくつかを発表された背景を交えて紹介します。(図2)は、ノースキャロライナ州、シャーロットのハリー・ハーディング高校に入学する女子学生ドロシー・カウンツを捉えたもので、(ノースキャロライナ州では、1956年に教育機関での人種統合を目的とするピアソール計画が実施された)、周囲を白人たちに取り囲まれ、唾を吐かれ、嘲笑を浴びています。彼女は白人の通う学校に初めて転入する黒人生徒の一人でしたが、壮絶な迫害に遭い、程なく退学を余儀なくされました。この写真は1957年の世界報道写真賞を受賞しました。ボールドウィンは生まれ育ったニューヨークを、人種差別から逃れるために1948年に離れ、パリに渡って執筆活動を行なっていましたが、新聞でこの写真を見て衝撃を受け、人種差別の最も激しい地域、アメリカ南部への旅に出ることを決意します。つまり、この写真はボールドウィンに、公民権運動家として活動する契機を与えたものと言っても良いでしょう。

アメリカ南部の州では、1876年から1964年にかけてジム・クロウ法(黒人による一般公共施設の利用を禁止制限した州法の総称)が存在し、1950年代後半以降に州が支援する人種統合学校が登場した後も、統合に反対して人種隔離を保持することを主張する白人たちの運動が続きます。(図3)

03(図3)
テネシー州クリントンのクリントン高校で、人種統合に反対する白人の少年たち。首から「ニグロ(黒人の蔑称)とは一緒に学校に行かない」というプラカードを下げている。(1956)


04(図4)
ゴードン・パークス、「ウィンドウ・ショッピングをする オリンダ・タナーと彼女の祖母 アラバマ州モービル」(1956)


05(図5)
ゴードン・パークス「デパートの黒人用入口 アラバマ州 モービル」(1956)


人種隔離政策が布かれていたアメリカ南部を捉えたゴードン・パークス(Gordon Parks, 1912-2006)のカラー写真は、黒人たちのおかれている状況を、鮮明に描き出しています。1950年代当時は、フォトジャーナリズムでは白黒写真が主流でしたが、カラー写真による描写は、奴隷制の後に長らく続いた人種隔離の状況が遠い過去のことではなく、現在と地続きのことであることを伝えています。(図4、5)これらの写真は、グラフ雑誌「LIFE」 1956年9月24日号で、“The Restrained: Open and Hidden”というフォトストーリーとして掲載され、近年は写真集『Segregation Story』(2014)としてまとめられるています。

06(図6)
レオナード・フリード「ノーベル平和賞を受賞後、凱旋パレードで歓待を受けるマーティン・ルーサー・キング・Jr . メリーランド州、ボルティモア」(1964)


公民権運動を記録した写真は映画の中に数多く挿入されていますが、(図6)は、1964年に当時史上最年少でノーベル平和賞を受賞したマーティン・ルーサー・キング・Jr .が、ボルティモアで帰国後の凱旋パレードで黒人市民から熱狂的な歓待を受ける場面を捉えており、苦闘の末に人種差別を禁じる公民権法が成立した時代を象徴する一枚と言えます。
車上で警護をする男性たちに囲まれながらも、なんとかキング牧師と握手をしたいと手を伸ばす黒人女性たちと、背後に居並ぶ白人警官が画面の中に捉えられており、黒人たちの熱狂と、それを見つめる白人の視線という関係の中に、当時の状況が凝縮されています。

雑誌や新聞のようなマスメディアで報道に用いられた写真だけではなく、私的な家族写真、司法写真、公民権運動が展開する以前の19世紀から20世紀初頭に撮影された写真も用いられています。中でも、強烈な印象を残すのが黒人奴隷をリンチして殺害し、その遺体を木の枝に吊るして、地域の白人たちがその様子を見世物のように楽しんでいる様子を捉えた写真です。20世紀初頭から数多く撮影されたこれらの残酷極まりない写真は、写真絵葉書として販売され、土産物のように扱われていました。これらの絵葉書を、骨董コレクターのジェームズ・アレン(James Allen)は蒐集し、写真集『Without Sancuary』としてまとめ、白人たちが繰り返し行っていた残虐行為を証しだてています。

07(図7)
写真集『Without Sanctuary』より リンチされ、木から吊るされた黒人の遺体(1930年)


監督のラウル・ペックが、ボールドウィンの遺族の協力を得て、何年もかけて調査を行って集めた資料や映像、写真は、映画の中で過去の出来事の記録としてだけではなく、現在をかたち作る「歴史」の相貌を浮き上がらせます。映画の終盤で、ボールドウィンは次のように語りかけます。

"History is not the past.
It is the present.
We carry our history with us.
We *are* our history.
If we pretend otherwise, we literally are criminals."

「歴史は過去ではない、現在だ。
我々は歴史を携えている、
我々こそが、歴史だからだ。
この事実を無視するのは、犯罪者であるに等しい。」

『私はあなたのニグロではない』は、アメリカでの人種差別の歴史を主題としていますが、人種差別に限らず、あらゆる差別や暴力がなぜ存在し、存続してきたのかということを、いま私たちが携えている「歴史」の視点から考える上でのヒントを得られる作品です。また、言葉や映像、写真が残されることの意義や、それらが再編纂されることで、そこから何を学ぶことができるか、ということにも想いを巡らせることができるでしょう。
こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

●今日のお勧め作品は、普後均です。作家については飯沢耕太郎「日本の写真家たち」第9回をご覧ください。
20180525_bodybar4普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 4》
2014年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり


こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください
〜〜〜
群馬県高崎市のレーモンド建築ツアーを開催します
日時:2018年6月23日(土)13時高崎駅集合
inoue_house1952年竣工の旧井上房一郎邸
画像は高崎市役所ホームページより。
1961年竣工の群馬音楽センター、1991年開館の高崎市美術館を見学し、明治14年(1881年)創業の魚仲で会食懇談します。
講師:熊倉浩靖塚越潤(高崎市美術館館長)
詳しくは、メールにてお問い合わせください。

◆ときの忘れものは没後70年 松本竣介展を開催しています。
会期:2018年5月8日[火]―6月2日[土]
11:00-19:00  ※日・月・祝日休廊

ときの忘れものは生誕100年だった2012年に初めて「松本竣介展」を前期・後期にわけて開催しました。あれから6年、このたびは素描16点による「没後70年 松本竣介展」を開催します。
201804MATSUMOTO_DM

「没後70年 松本竣介展」出品作品を順次ご紹介します
1出品No.1)
松本竣介
《人物(M)》

1947年8月
わら半紙にペン、筆、インク
Image size: 22.0x15.0cm
Sheet size: 27.4x19.2cm
サインあり
※『松本竣介素描』(1977年、株式会社綜合工房)p.121所収


こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●本展の図録を刊行しました
MATSUMOTO_catalogue『没後70年 松本竣介展』
2018年
ときの忘れもの 刊行
B5判 24ページ 
テキスト:大谷省吾(東京国立近代美術館美術課長)
作品図版:16点
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
税込800円 ※送料別途250円



◆小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第26回

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第26回

李岳凌『Raw Soul』

01(図1)
『Raw Soul』(赤々舎、2018年)表紙


今回紹介するのは、台湾を拠点に活動する写真家、李岳凌(Lee Yehli/リー・ユエリン、1976-)の第1作目の写真集『Raw Soul』 です。この写真集は、2011年から2017年にかけて、主に彼の生活する台北周辺の地域で撮影された写真により構成されています。
写真集の表紙は、藍色の地の色に、写真に捉えられた発光するオレンジ色の光線が映えて、表紙全体がマジックアワーと呼ばれる限られた時間帯の光景のようにも見えます。「Raw Soul」の「Raw」とは「生の」とか「皮の剥けた、ヒリヒリする」といった意味を持ちます。「剥き出しになった生の魂」という、内側から湧き上がってくる鮮鋭な身体感覚から導き出された言葉と、明暗の狭間にある世界を捉えた写真が相互に共鳴することが、示唆されているようです。表紙の写真をよく見てみると、画面の左側には木の幹の表面が捉えられているようにも見えますが、散らばる白い断片のようなものや、うねりのように広がる青緑がかった色面が何であるのか、また画面の奥行や広がりも定かではありません。李岳凌自身もその場では何を撮っているのかは判らず、撮った後に写真を見返して、写っているものに惹き込まれていったのではないでしょうか。写真を撮る際に、目の前の光景に具体的な何かを把握し、判断して画面の中におさめるというよりも、その場での直感的な反応としてシャッターを切った結果が画面に定着されていること、そのことが「Raw」という状態を指しているようにも思われます。
写真集の後書きの中で、李は次のように綴っています。「自分の故郷である台湾の土地なのに、疎い感じがするかもしれない。気がつけばいつも日暮れの時間に、カメラを手にして都市の周辺を徘徊する自分がいた。具体的に何を撮るのかはわからないが、抑圧された状況での生命力、そして人や光景の奥に潜んでいるある種の精神の強さにいつも惹かれている」李がここで言う「生命力」や「精神の強さ」は、タイトルの「Raw Soul」という言葉に集約されますが、彼は「魂・精神」を動植物のような生命体や、人間という個別の存在の中に宿るものとして捉えるとよりも、彼がみをおく時空の中で同時に起きるさまざまな現象に、より高次な抽象的なレベルで反応し、捉えようとしているようです。つまり、李岳凌の写真に対するアプローチの仕方は、周辺の現象に反応するような態度の中でも、音がに注意を向け、音の反響や、音の微細な入り混じり方に耳をすます、聴覚的な反応に根ざしているとも言えます。このことは、彼が写真に取り組む以前にサウンドアートに関心を持ち、作品制作を手がけ、音を聴くことを通して自分自身に向き合う方法を模索していたこととも密接に結びついています。李の写真には、対象を間近に捉えたものも含まれていますが、撮るべき対象を探し求めてフォーカスを定めるという視覚に絶対的な優位性を置く態度ではなく、より融合的な知覚の働きに裏づけられているように思われます。彼はこの知覚の働きのことを「「聞く」感覚を「見る」ことに伸ばしていくこと」と言い表しています。
このような「「聞く」感覚を「見る」ことに伸ばしていく」アプローチの仕方は、個々の写真の撮り方だけではなく、写真集の中での写真の選び方やシークエンス、写真展の構成の仕方にも反映されているように思われます。

02 (2)(図2)
『Raw Soul』展 (地点 アンダースロー、京都 2018年3月)


地点×赤々舎 連続企画展『About the photographs, About us,Asia』の中で開催された『Raw Soul』展では、写真は天井から吊るされ、写真の面と面が向き合い、鏡面のように反射する金属板も所々に挟まれることによって、写真同士が相互に重なりあって、反響するような効果が作り出されていました。写真の中に捉えられた、台北の市街地周辺の日暮れの時間を照らし出す人口照明の独特の色合いは、写真同士が乱反射することでより一層強められていました。

02(図3)


53(図4)


45-_DSF2506(図5)


写真集(ここで写真集全体のプレビューをることができます)では、写真の間に十分な空間を置きつつ、ストーリーとしての流れを作ることは念頭におかれていないものの、ページを繰り返し捲りながら写真を眺めていると、写真の間に、写真と写真との間に何らかの具体的な関係が示されてはいないものの、ある写真に内包されている感覚が、別の写真の中で姿を変えて宿っているかのようにも見えてきます。このような写真同士の関係は、皮膜を介して内的な世界と外的な世界が相互に共鳴するような感覚と言い表しても良いかもしれません。たとえば、写真集の冒頭に現れる、妊婦のはちきれそうな腹部とその表面を掴むような手を捉えた写真(図3)は、お腹の中に宿る胎児の胎動や鼓動の音を触知することができるかのような近さを印象づけます。(図4)では、花柄の幕のような表面の上に、反射像とも透過像とも見分けのつかない人物のシルエットのような像が写し込まれており、(図3)とはアプローチとしては対照的ですが、存在が放つ微細な気配やそこから発せられる音の響きに対する反応の仕方と距離感のあり方を見て取ることができます。写真集を通して見ると、光景の中に現れるさまざまな皮膜として、鏡面やガラス面のような、透過や反射のような現象を発生させるものが所々に効果的に挟まれています。(図5)は、壁面に円形にくり抜かれた窓枠とその奥につづく階段を捉えており、画面の左側の鏡像とあいまって、異次元へと続くような奥行きが画面の中に定着されています。「「聞く」感覚を「見る」ことに伸ばしていく」李岳凌の繊細で鋭い感覚は、日常の時空から不可視の領域を掬い上げ、視線を画面の奥へ奥へと誘うような世界を現出させています。
こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

●今日のお勧め作品は、普後均です。作家については飯沢耕太郎「日本の写真家たち」第9回をご覧ください。
20180525_bodybar4普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 4》
2014年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり


こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆ときの忘れものは「ボブ・ウィロビー写真展〜オードリー&マリリン 」を開催しています。
会期:2018年4月10日[火]―4月28日[土]
11:00-19:00  ※日・月・祝日休廊

数々のスターが主演するハリウッド映画のメイキング・シーンを撮影してきた「スペシャル」フォトグラファー、ボブ・ウィロビーが1950-60年代に撮影したオードリー・ヘップバーンとマリリン・モンローのポートレートをご覧いただきます。詳しい出品リスト(25点)はホームページに掲載しました。
また10万冊を所蔵する雑誌図書館六月社の協力を得て、映画専門誌以外のオードリー・ヘプバーンとマリリン・モンローのゴシップ記事などを掲載した30年ほど前の雑誌60種類を図書室で公開しています。ぜひ手にとってご覧になってください。
201804_willoughby

●出品作品を順次ご紹介いたします
13_BWP122-Audrey-with-Dean-ボブ・ウィロビー
《Hepburn, Audrey, 1953
Audrey Hepburn sits between Dean Martin and Jerry Lewis, 1953》(BWP122)

1953(Printed in 2018)
Archival Digital Pigment Print
Image size: 32.0×45.6cm
Sheet size: 40.6×50.8cm
Ed.25
クリストファー・ウィロビーによるスタンプとサインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜〜土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第25回

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第25回

エミリー・シュア『Super Extra Natural!: Images from Japan 2004-2016』

01(図1)
『Super Extra Natural!: Images from Japan 2004-2016』(KEHRER, 2018)表紙


02(図2)
Playground, Atami (熱海、公園)


今回紹介するのは、ロサンゼルスを拠点に活動する写真家エミリー・シュア(Emily Shur)の写真集『Super Extra Natural!: Images from Japan 2004-2016』です。(こちらのページで写真集全体を通覧する動画を見ることができます)タイトルにもある通り、この写真集は彼女が2004 年から2016 年の間に、16 回日本を訪問して撮影した写真をまとめたものです。シュアのウェブサイトを見ると明らかなように、彼女は拠点とするロサンゼルスでは著名人のポートレート写真や広告写真などの仕事を手がけていますが、この写真集は彼女の個人的な作品であり、コミッションの仕事の写真とは趣が大きく異なっています。
日本の自然や文化に惹かれ日本で写真を撮る外国の写真家の作品というと、なにがしかのテーマ(観光地、自然や、文化、歴史、都市、産業など)に基づいて制作され、土地の固有性を描き出すドキュメンタリー作品が連想されることが多いですが、この写真集は、特定のテーマによって構成されているのではなく、彼女が関心の赴くままにさまざまな土地を訪れ、その時々の状況に反応するようにして撮影した写真が集積してできあがっています。写真の中には、場所を特定できるような建物や史跡が捉えられているものもありますが、多くにはごくありふれた街角、自然の景色、路上の光景や事物などが捉えられており、強いて言えば彼女の視点から捉えられた日本のストリートフォトをまとめた写真集であるといえます。写真のシークエンスによって具体的なストーリーが展開するよう構成ではなく、一点一点の写真を通して、それぞれの場所に足を止めて周囲を見渡し、そこでシャッターを切ることを決めた彼女の判断の仕方を追体験できるように丁寧に編集されています。
『SUPER EXTRA NATURAL!』というタイトルは、彼女が日本で日本の写真を撮る中で抱いた感覚や驚きを表したものであり、そのことは写真集の表紙のデザインにも反映されています(図1)。小川のながれる風景の中にピンク色の曲線が重ねあわせた奇妙な画面ですが、写真集を見ていくと、風景は伊勢志摩で撮影され、ピンク色の曲線は熱海の公園で撮影された遊具の一部であることがわかります(図2)。風景と遊具を重ねあわせるのは、一見突飛なアイデアのようにも思われますが、異なる要素(自然なものと人工物)が組み合わさって思いがけない様相を表すことへの驚きを視覚的に表したものと見ることもできます。
シュアは、日本では時間や季節によって光が豊かな表情を持つことに惹かれ、日本で歩き回りながら写真を撮ることは、周辺の状況に反応しながら感覚をチューニングするような行為だと語っています。また、その時々の光の中で空間とものとの関係を探りながら捉えていくような繊細なアプローチを見て取ることができます。たとえば、宮島の厳島神社の鳥居とその周辺の光景を捉えた写真(図3)や江ノ島の岩場の窪みに置かれたものを捉えた写真(図4)は、空間の広がりやものの形、色合いが相互にどのように関わっているのかを注視する視線を意識させます。

03(図3)
宮島厳島神社


04(図4)
江ノ島
所持品


都市部の路上で撮影された写真では、人物や動物との偶発的な出会いやその動作に反応しながら、画面の構図を作り出しされています。駅の階段から階下を見下ろす視点とらえた(図5)や、路上に現れた一羽の白鳥をとらえた(図6)はそういった作品の好例と言えるでしょう。

05(図5)
大阪
大阪駅


06(図6)
水戸
一羽の白鳥


クローズアップで被写体を捉えた写真は、彼女の光と形、構図への強い意識を際立ったかたちであらわしており、一見すると、なぜこのようなものに興味を持ったのだろうと不思議に思われるものを画面の中にとらえています。たとえば、公園の遊具の一部と思しきオレンジ色の梯子を捉えた(図7)や雪の残る日に洗濯物を干している(図8)は、断片的な景色でありながら、光と影、空間とものの色の組み合わせなどへの関心から目を向けたことを伺わせます。

07(図7)
東京
オレンジ色の梯子


08(図8)
山ノ内町
洗濯物


エミリー・シュアの写真は、日本にフォーカスをあわせ、その空間や事物の特徴を精緻にとらえ、なおかつ「外国人の目から見た日本」という安易なエキゾチシズムには回収されない、芯の通ったものの見方に裏打ちされているように思われます。
こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。
〜〜〜〜〜〜〜〜
◆「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展は本日が最終日です。

○<現代版画史上、最強のセンター
埼玉県立近代美術館の「版画の景色」展もいよいよ3月25日まで。1974年に会員制の共同版元として発足、80人の作家による700点の版画を世に送り出した「現代版画センター」の十年の軌跡をたどる展覧会です。草創期の数年に関わった私も、先週日曜はトークショーに参加。44年前の記憶が昨日のように鮮明なことに自分の年齢を痛感しました(笑)。ビュールレ・コレクション展出品のルノワールが「絵画史上、最強のセンター(美少女)」であるならば、こちらはまさに「現代版画史上、最強のセンター」といえるでしょう。
作品は草間彌生『南瓜』1982 → 

(20180322/西岡文彦さんのfacebookより)>

現代版画センターのエディション作品を展覧会が始まった1月16日から毎日ご紹介してきましたが、最終日の本日は西岡さん推薦の草間彌生「南瓜」です(エディション番号523)。
20180325草間彌生
「南瓜」
1982年
シルクスクリーン(刷り:美学校研修科)
Image size: 69.0×55.0cm
Sheet size: 86.0×63.0cm
Ed.50
サインあり
*美学校シルクスクリーン研修作品、
監修:岡部徳三

展覧会をご覧になった後、どうぞ駒込の「ときの忘れもの」にもお立ち寄りください。JRで北浦和駅〜田端駅で山手線に乗り換え〜駒込駅下車、徒歩8分です(地図)。
ときの忘れものは本日25日(日)開廊しています
現代版画センターと「ときの忘れもの」についてはコチラをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログはお勧めです。ぜひご購入ください(2,200円)。
現代版画センターは会員制による共同版元として1974年〜1985年までの11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、約280点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。
西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色は1月24日、2月14日、3月14日の全3回掲載しました。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

スタッフたちが見た「版画の景色」(2月4日ブログ)

倉垣光孝さんと浪漫堂のポスター(2月8日ブログ)

嶋吉信さんのエッセイ〜「紙にインクがのっている」その先のこと(2月12日ブログ)

大谷省吾さんのエッセイ〜「版画の景色−現代版画センターの軌跡」はなぜ必見の展覧会なのか(2月16日ブログ)

植田実さんのエッセイ「美術展のおこぼれ 第47回(3月4日ブログ)

土渕信彦さんのエッセイ<埼玉県立近代美術館「版画の景色ー現代版画センターの軌跡」展を見て(3月8日ブログ)

現代版画センターに参加した刷り師たち(3月11日ブログ)

現代版画センターの生みの親 井上房一郎と久保貞次郎(3月13日ブログ)

○中村茉貴さんのエッセイ「美術館に瑛九を観に行く 第22回埼玉県立近代美術館」(3月20日ブログ)

塩野哲也さんの編集思考室シオング発行のWEBマガジン[ Colla:J(コラージ)]2018 2月号が展覧会を取材し、87〜95ページにかけて特集しています。

毎日新聞2月7日夕刊の美術欄で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が紹介されました。執筆は永田晶子さん、見出しは<「志」追った運動体>。

○3月4日のNHK日曜美術館のアートシーンで紹介されました。

朝日新聞3月13日夕刊の美術欄で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が紹介されました。執筆は小川雪さん、見出は<版画に込めた情熱と実験精神>。

○月刊誌『建築ジャーナル』2018年3月号43ページに特集が組まれ、見出しは<運動体としての版画表現 時代を疾走した「現代版画センター」を検証する>。

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。
パンフレット_05
出品作家45名:靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄

●書籍・カタログのご案内
表紙植田正治写真展―光と陰の世界―Part II』図録
2018年3月8日刊行
ときの忘れもの 発行
24ページ
B5判変形
図版18点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:800円(税込)※送料別途250円

ueda_cover
植田正治写真展―光と陰の世界―Part I』図録
2017年
ときの忘れもの 発行
36ページ
B5判
図版33点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:北澤敏彦(DIX-HOUSE)
価格:800円(税込)※送料別途250円


◆小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第24回

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第24回

『〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する』(青弓社、2018)

nimpu-art(図1)
『〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する』表紙
(表紙の写真は、第64 回東京芸術大学卒業修了作品展(2016)の菅実花作品の展示風景)


今回紹介するのは、私が共著者の一人として参加した『〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する』(青弓社、2018)です。本書の出版は、妊娠した女性型愛玩人形(ラブドール)を写真に収めた菅実花さんのアート・プロジェクト「ラブドールは胎児の夢を見るか?」が契機になっています。「ラブドールの妊婦像」は、妊娠、人形、セクシュアリティ、生殖技術などさまざまなテーマに絡み合い、鑑賞者にインパクトを与え、インターネット上でも大きな話題になりました。この作品が引き起こした反応を受け、イメージ&ジェンダー研究会により、ミニ・シンポジウム「孕む身体表象―その身体は誰のものなのか?」が2016 年9 月に開催され、登壇者と参加者により、美術史、文学、ジェンダー研究さまざまなアングルから妊娠と表象に関して活発な議論が交わされました。
私はシンポジウムの登壇者ではなく、一参加者として聴講していたのですが、菅さんが作品制作に際して、私が過去に「母さん目線の写真史」と題した本ブログ連載の第1回「マタニティ・フォト」の流行と、イモージェン・カニンガムの「Pregnant Nude(妊婦のヌード)」(2013年6月25日)を読んでいたということで知己を得て、シンポジウムの記録集にマタニティ・フォトについての論を寄稿して欲しいとのご依頼を頂き、共著者として参加させて頂くに至った次第です。本書の内容については、評論家・児童文学者の野上暁氏がWEBRONZA掲載の書評で各論の論旨と本書の意義を丁寧に解題して下さっているのでそちらをお読み下さい。
私が第2章の「マタニティ・フォトの四半世紀 メディアの中の妊婦像」を執筆するなかで「マタニティ・フォト・ウォッチャー」として、モデルや女優のような著名人のさまざまなマタニティ・フォトの事例を探しまわり、それらが注目された経緯や背景などを調べる過程で気になった事柄を、執筆後記として記しておきたいと思います。タイトルに「四半世紀」と記しているように、デミ・ムーアのマタニティ・フォト(図2)が『Vanity Fair』の表紙を飾った1991年から現代にいたるまでのおよそ25 年間をマタニティ・フォトの事例を辿ることは、雑誌のような印刷物に掲載され流通する写真が読者にインパクトを与え、世論に影響をもたらしていた時代から、写真のデジタル化が進み、インターネットの普及や、インスタグラムのようなSNS の台頭によって、画像が瞬時に拡散する時代へと、写真やメディアのあり方が大きく変わる変遷を辿ることでもありました。

07(図2)
デミ・ムーア(Vanity Fair 1991年8月号)
撮影アニー・リーボヴィッツ


beyonce(図3)
歌手のビヨンセがインスタグラムに投稿したマタニティ・フォト(2017
年2月2日)


ファション雑誌の表紙という多数の人の眼にさらされる公的な空間に現れた妊婦のヌードがセンセーションを引き起こした後に、マタニティ・フォトは妊娠後期、臨月期に撮影する記念写真として定着し、写真産業の中に組み込まれていきました。その過程を加速させたのが、スマートフォンの登場によるセルフィ(自撮り)やSNSの浸透です。SNSの中でも2010年にサービスを開始したInstagramのユーザ数は急激に増加し(2018年1月時点で8億人)、著名人が私生活の写真や動画を公開するアカウントは、夥しい数のフォロアーを獲得していきます。たとえば、歌手のビヨンセ(フォロアー数1億1千万人)が2017年2 月2 日に双子の妊娠を発表するために投稿したマタニティ・フォトには、大反響を引き起こし、2018年2月現在には1124万を超える「いいね!」を獲得しています。また、最近になってカイリー・ジェンナー(アメリカのリアリティ・ショー番組で有名になったカーダシアン家の一人で、いわゆるハリウッドのセレブリティ、化粧品をプロデュースする実業家としても知られる。彼女もビヨンセと同様に1億人を超えるフォロアーを持つ)が出産を報告する投稿(生まれたてのの赤ちゃんがジェンナーの親指を握っている様子を捉えた写真)では、瞬く間に1700万以上の「いいね!」がつき、ビヨンセの記録を塗り替え
た、ということがニュースとして取り上げられたりもしています。妊娠・出産という女性のプライベートな事象がSNSを通して世界中の注目を集めることが、数字によって可視化され、その数字の記録がニュースとして報じられ手いる現状、私的な写真と、新聞や雑誌のような既存の公的なメディアが担ってきた役割の間の境界線がぼやかされている状況を端的に物語っていると言えるでしょう。

kylie-jenner(図4)
女児の誕生を公表したカイリー・ジェンナーの投稿(2018 年2 月7 日)


bazzar(図5)
「カイリー・ジェンナーのインスタ写真がビヨンセを抜いて史上最多の
“いいね!”をゲット」



ちなみに、カイリー・ジェンナーは1997 年生まれの20歳。デジタル・ネイティヴで、子どもの頃からスマートフォンを持って育ってきた世代です。
Instagramの「いいね!」の数やYouTubeの動画再生回数によって、世の中での注目度が数値化されることを幼少時から体験的に知り、また自らもその中で注目を得るように振る舞うことは、彼女のように突出した例ではなくとも、世代に共通する感覚として醸成されつつあるのでしょう。アナログの環境が主流だった時代に生まれ育ち、成人して年齢を重ねてゆく過程の中でデジタル化の進行を体験してきた中年世代の私から見ると、若い世代、子どもたちが、メディアとのつき合い方や意識の仕方はどのように変わっていくのかということは、一人の親としても興味があることですし、そういったことも今後考えていきたいと思っています。
こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

◆小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。

◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されています。現代版画センターと「ときの忘れもの」についてはコチラをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログはお勧めです。ぜひご購入ください(2,200円)。
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
埼玉チラシAY-O600現代版画センターは会員制による共同版元として1974年〜1985年までの11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、280点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。

○<埼玉近美の版画センターの展示、よかった。こうして70-80年代のアートシーンが検証されて、充実した記録が残されていくのは熱いです。コレクション展はあまり引っかからなかったけど、印象に残ったのは元永定正と田中保かな。
(20180127/留樹さんのtwitterより)>

○<埼玉県立近代美術館で谷川賢作さんのコンサート。
やよいちゃんよかった!
版画展では主にジョナス・メカスを見た。
アンディ・ウォーホルの高橋悠治さんコンサートポスターがよかった。

(20180217/笹久保伸さんのtwitterより)>

○<予てより興味があった中銀カプセルの実物を見れたのは嬉しかった。「版画の景色」展では、ジョナス・メカスの作品と、大沢昌助の《机上の空論》に惹かれた。
(20180208/すなさんのtwitterより)>

○<この年譜だけでもゾクゾクする😮
構成、作品、カタログ、すべてから熱気が伝わる「かっこいい」企画、埼玉県立近代美術館の「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展。

009
(20180218/MasuoikedaArtさんのtwitterより)>

西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。草創期の現代版画センターに参加された西岡さんが3月18日14時半〜トークイベント「ウォーホルの版画ができるまでーー現代版画センターの軌跡」に講師として登壇されます。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

スタッフたちが見た「版画の景色」(2月4日ブログ)

毎日新聞2月7日夕刊の美術覧で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が紹介されました。執筆は永田晶子さん、見出しに<「志」追った運動体>とあります。

倉垣光孝さんと浪漫堂のポスター(2月8日ブログ)

嶋吉信さんのエッセイ〜「紙にインクがのっている」その先のこと(2月12日ブログ)

大谷省吾さんのエッセイ〜「版画の景色−現代版画センターの軌跡」はなぜ必見の展覧会なのか(2月16日ブログ)

塩野哲也さんの編集思考室シオング発行のWEBマガジン[ Colla:J(コラージ)]2018 2月号が展覧会を取材し、87〜95ページにかけて特集しています。

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。

現代版画センターエディションNo.141 菅井汲「赤い太陽」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
菅井赤い太陽菅井汲《赤い太陽》
1976年 
マルチプル(アクリル+シルクスクリーン、刷り:石田了一)
10.0×7.0×2.0cm
Ed.150  Signed

パンフレット_05
出品作家45名:靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円


●日経アーキテクチュアから『安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言』が刊行されました。
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。日経アーキテクチュア編集長のコラム<建築家・安藤忠雄氏の言葉の力:第3回>で、出江寛先生、石山修武先生の次に紹介されています。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第23回

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第23回

『幼き衣へ』石内都「石内都 肌理と写真」展

26996227_10215492640972912_1243041754_n(図1)
「石内都 肌理と写真」展会場


26940342_10215492641012913_640928812_n(図2)
「石内都 肌理と写真」展会場


今回紹介するのは、石内都(1947-)の写真集『幼き衣へ』(蒼穹舎、2016)
です。この写真集の収録作品は、現在横浜美術館で開催中の「石内都 肌理と写真」展(会期:2017 年12 月9 日〜2018 年3 月4 日)に出展されています。展覧会では、展示室毎に異なる色で壁が塗り分けられており、『幼き衣へ』は、絹を題材として銘仙や繭、織物工場、製糸工場などを撮影した『絹の夢』と織り交ぜるようにして、大小さまざまなサイズの作品として、銀色の壁面にかけられています(図1)。天井近くまで散りばめられた色鮮やかな着物は、天空を舞い上がる羽衣のような輝きと神々しさ放っているように感じられました。
『幼き衣へ』は、明治・大正時代に幼い子どものために作られた着物——子どもが産まれた時に近所の人たちや親類縁者が祝いに布裂を持ち寄ってパッチワークのように縫いあわせた「百徳着物」や、背中の方から魔物が入らないように糸で印をつけた「背守り」——をとらえた写真により構成されています。小さな着物の全体を捉えた写真と、背守りの部分を捉えた写真、布裂を縫い合わせる縫い目や布の重なり、布端のほつれをクローズアップで捉えた写真がシークエンスの中で交互にあらわれるように編集されており、ページを捲るうちに小さな着物の手触りや布の厚み、縫い目に眼が引き込まれていきます。

26941068_10215493056263294_526327813_n(図3)
『幼き衣に』より


26994999_10215493056223293_1407819984_n(図4)
『幼き衣に』より


「石内都 肌理と写真」展で大きく引伸ばして展示されていた作品(図2)は、首の後ろに奉納と記されていることから、子宝祈願のためにお寺に奉納されたものと思しく、布裂を寄せ集めることで形作られた着物の佇まいが、丹念に写し取られています(図3)。着物の表面の凹凸の影は、布裂一つ一つの色鮮やかさをより一層際立たせ、遠い過去の遺物としてではなく、今、そこに存在しているものの有り様がくっきりと浮かび上がっています。この生き生きとした着物の姿の立ち現れ方は、縫い目や、布裂の織り目が、皮膚の肌理や浮き上がる血管の筋に重ね合わせて見られるからかもしれません。また、その皮膚とは、着物を纏う子どものものだけではなく、布裂を寄せる人、縫い合わせる人それぞれものでもあります。布裂が放つ彩りと輝きは、クローズアップで捉えられられた写真(図4)のなかで、着物という「もの」としてだけではなく、より抽象的な「形象」としての表情を表しています。石内が100 年近く前に作られた着物の中に見出す形象や彩りは、子どもの誕生や無事の成長を祈り、未来へと続く時間に託した願いを映し出しているのではないでしょうか。
こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

◆ときの忘れものは「Art Stage Singapore 2018」に出展しています。
Art_Stage_Singapore_2018_logo2018年1月25日(木)〜28日(日)
会場はマリーナベイサンズのコンベンションセンター。3回目の出展となりますが、今回は葉栗剛、安藤忠雄、光嶋裕介の三人展です。


◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が始まりました。現代版画センターと「ときの忘れもの」についてはコチラをお読みください。
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
埼玉チラシAY-O600現代版画センターは会員制による共同版元として1974年〜1985年までの11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、約300点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。同館の広報誌もお読みください。

西岡文彦さんのエッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。

○<年明け早々懐かしい一報を頂き過ぎし日の思いが蘇って来ました。40年の歳月は私を現在89歳という年齢まで引き上げてくれましたが,当時の収集作品は既に殆ど散逸し手元には僅かしか残っていないのが実情です。機会があれば拝見したいと思います…今後のご活躍をお祈りします。
(KSさんからのメール)>

現代版画センターエディションNo. 13 木村利三郎「57st & 5th Ave. New York」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
 New York》木村利三郎
《57st & 5th Ave. New York》1974年
シルクスクリーン(作家自刷り)
Image size: 39.0×32.0cm
Sheet size: 43.2×35.6cm
Ed.200  サインあり

ど素人集団の事務局の若いメンバーに、アメリカ美術界のこと、エディションとは何か、ヨーロッパのコレクター組織について懇切に教えて下さったのがNYから一時帰国した木村利三郎先生でした。
1974年10月7日_ (5)左から、岡部徳三、木村利三郎、木村満志子
1974年10月7日「エディション発表記念展」オープニングにて

パンフレット_05


◆国立近現代建築資料館で2月4日[日]まで「紙の上の建築 日本の建築ドローイング1970s-1990s」展が開催中。磯崎新、安藤忠雄らの作品が出品されています。展覧会については戸田穣さんのエッセイをお読みください。
磯崎新「還元GYMNASIUM 」磯崎新
「GYMNASIUM」
1983年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:55.0x55.0cm
シートサイズ:90.0x63.0cm
Ed.75  サインあり
*現代版画センターエディション
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

ギャラリートーク「建築版画の世界」のご案内
植田実(住まいの図書館出版局編集長)× 石田了一(石田版画工房)× 綿貫不二夫(ときの忘れものディレクター)
司会:日埜直彦
日時:1月27日(土曜日)14時から
場所:文化庁国立近現代建築資料館
住所:〒113-8553 東京都文京区湯島4-6-15
入場方法:旧岩崎邸庭園からの入館となりますので、入園料400円(一般)が必要となります。

野口琢郎さんが「日曜美術館」に出演します
今週28日(日)放送のNHK Eテレ 日曜美術館のクリムト特集にVTRで出演します。
クリムト関係のテレビ出演は2回目、箔画やってると海外のアートフェアなんかで「まるでクリムトね、あはは」と笑われて通り過ぎて行かれる事もあり悔しい思いは何度もしましたが、クリムトのお陰でテレビに出られるので有り難いかもです 笑
恐らく2〜3分のVTRになるかと思いますが、今回は半笑いでモゾモゾ話さないように気をつけたつもりなので 笑 ぜひご視聴くださいませ、どうぞよろしくお願い致します。
NHK Eテレ 日曜美術館 「熱烈!傑作ダンギ クリムト
1月28日(日) 9:00〜9:45
2月 4日(日) 20:00〜20:45 (再放送)
(野口さんのfacebookより)

◆ときの忘れものは「Arata ISOZAKI × Shiro KURAMATA: In the ruins」を開催しています。
会期=2018年1月9日[火]―1月27日[木] ※日・月・祝日休廊
磯崎新のポスト・モダン(モダニズム)ムーブメント最盛期の代表作「つくばセンタービル」(1983年)に焦点を当て、磯崎の版画作品〈TSUKUBA〉や旧・筑波第一ホテルで使用されていた倉俣史朗デザインの家具をご覧いただきます。他にも倉俣史朗のアクリルオブジェ、磯崎デザインの椅子なども出品します。
版画掌誌第2号
版画掌誌第2号
オリジナル版画入り美術誌
2000年/ときの忘れもの 発行
特集1/磯崎新
特集2/山名文夫
B4判変形(32.0×26.0cm) シルクスクリーン刷り
A版:限定35部:120,000円(税別 版画6点入り)
B版:限定100部:35,000円(税別 版画2点入り)


●日経アーキテクチュアから『安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言』が刊行されました。
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。日経アーキテクチュア編集長のコラム<建築家・安藤忠雄氏の言葉の力:第3回>で、出江寛先生、石山修武先生の次に紹介されていますので、お読みください。

◆小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第22回

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第22回

「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」展(板橋区立美術館)

今回紹介するのは、「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」展(板橋区立美術館(会期2017 年11 月25 日〜2018 年1 月8 日(年末年始の休館期間12/29〜1/3)愛知県の刈谷市美術館に巡回予定2018 年4 月21 日〜6 月3 日)です。この展覧会は、インドのチェンナイを拠点に活動する出版社タラブックス(Tara Books)の出版物と絵本の原画、本の制作過程を紹介するものです。
ギータ・ウォルフとV.ギータという二人の女性が1994 年に設立したタラブックスの存在は、2008 年のボローニャ・ブックファアで絶賛され、ラガッツィ賞を受賞した絵本『The Night Life of Trees』(2006)を通して世界的に広く知られることになりました。この絵本は、中央インド出身のゴンド民族の芸術家が描いた木をめぐる神話的な世界と物語を一枚一枚の紙にシルクスクリーンで印刷をして、手作業で製本されています。(世界で8 カ国語に翻訳され、日本では、『夜の木』として2012 年にタムラ堂から刊行され、2017 年現在にいたるまで6 版と版を重ねています。)

01(図1)
カタログ表紙


02(図2)
カタログ見開き『むらさきいろになったすずめ』(1998)


03(図3)
カタログ見開き『世界の始まり』(2014)


展覧会に併せて刊行されたカタログhttp://amzn.asia/ePHWi5M (図1)には、本の解説や年譜、絵本の原画の図版、タラブックスの工房やチェンナイの情景や人々の生活をとらえた写真、ギータ・ウォルフとV.ギータへのインタビューなどが収録されています。本の解説のページでは、本の表紙や見開きをそのまま複写した写真ではなく、本を手に取りページを捲る人の手と共にさまざまな捉えた写真が用いられていて、本の大きさや紙の風合い、印刷や製本の特徴、実際に手に取った感触や立体感が伝わるように工夫が凝らされています。

04(図4)
本の閲覧コーナー


05(図5)
絵巻物のような絵本を天井から吊るした展示


06(図6)
『夜の木』の原画と、各国語版の表紙の展示、及びインド中部のゴ ンド族の村パタンガルの風景を撮影した写真パネルの組み合わせ


展覧会では、毎年板橋区立美術館で開催されるボローニャ国際絵本原画展の時と同様に、展示されている原画から制作された絵本や、関連書籍を手に取って閲覧できるコーナーが設けられています(図4)。また、絵巻物や布製の本など、それぞれの本の特徴や素材、ものとしての本の魅力を体感できるような展示方法(図5)が用いられています。タラブックスの存在を広く世に知らしめた『夜の木』の原画と各国語版の表紙を展示したスペースでは、インド中部のゴ ンド族の村パタンガルの風景を撮影した写真のパネルが組み合わせられ、絵本の中に描かれた神話的な世界とそれらを育んでいった地域の光景や人々の姿が響き合っています。(図6)
会場には本の制作過程や、ギータ・ウォルフとV.ギータへのインタビュー映像を上映するモニターが設置されています。また、インタビューでの彼女たちの発言(カタログにも収録)の一部が絵本の図とともに抜粋として紹介されていて、タラブックスの掲げている目標や、社会に向けられたメッセージがそれぞれの作品と結びついて読み取られるように会場の随所に配置されています。

07(図7)
「明確な価値観を持った本をつくりたいのです」


08(図8)
「どうして私たちが読むのは外国の本ばかりなのかしら」


この展覧会の意図は、絵本やその原画を作品として紹介することのみならず、本というものを作り出す仕組みや、世の中に流通させることで、人々の意識に働きかけ「世界を変える」ための活動を地道に続ける姿勢を立体的に伝えることにあると言えるでしょう。インターネットやSNS 全盛の時代にあって、本というものを作ることやコミュニケーションのあり方を考え直す視点を与える志の高い展覧会だと感じました。年末年始の休館期間を挟み、板橋区立美術館での会期は残り短いですが、是非足お運び下さい。
こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

◆小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。

●昨日は敬愛するジョナス・メカスさんのお誕生日でしたが、今日12月25日はスペインのというよりはカタルーニャを代表する画家ジョアン・ミロの命日です(1893年4月20日 - 1983年12月25日)。
本日のお勧め作品はミロのオリジナル木版入カタログ「Joan Miro. Bois graves pour un poeme de PAUL ELUAR」です。
ベルグラン画廊 ミロ表紙(オリジナル木版)
1958年 ベルグラン画廊
木版画32頁  21.7x11.2cm
*ベルグラン画廊の第25回企画展のカタログとして、1958年にフランスで発行。
ジョアン・ミロによるポール・エリュアールの詩"A toute epreuve"にささげた木版画が各ページを彩る豪華なカタログ。
ベルグランのことはこのブログで幾度かご紹介しました。2014年3月2日のブログをお読みください。

ベルグラン画廊 ミロ 中

ベルグラン画廊 ミロ 中1各ページにすべて色彩木版
右ページの黒丸はコラージュ

ベルグラン画廊 ミロ 中2

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

◆埼玉県立近代美術館で2018年1月16日〜3月25日「版画の景色 現代版画センターの軌跡」が開催されます。
パンフレット_02


●書籍のご案内
版画掌誌5号表紙600
版画掌誌第5号
オリジナル版画入り美術誌
ときの忘れもの 発行
特集1/ジョナス・メカス
特集2/日和崎尊夫
B4判変形(32.0×26.0cm) シルクスクリーン刷り
A版ーA : 限定15部 価格:120,000円(税別) 
A版ーB : 限定20部 価格:120,000円(税別)
B版 : 限定35部 価格:70,000円(税別)


TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別) *送料250円
*『瀧口修造展 I』及び『瀧口修造展 II』図録も好評発売中です。


安藤忠雄の奇跡安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言
2017年11月
日経アーキテクチュア(編)
B5判、352ページ
価格:2,700円(税別) *送料:250円
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。
ときの忘れもので扱っています。

国立新美術館の「安藤忠雄展―挑戦―」は、大盛況のうちに終了しました。
展覧会については「植田実のエッセイ」と「光嶋裕介のエッセイ」を、「番頭おだちのオープニング・レポート」と合わせ読みください。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第21回

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第21回

伊丹豪『photocopy』(Rondade, 2017)

01(図1)
『photocopy』(Rondade, 2017)表紙


今回紹介するのは、伊丹豪(1976-)の写真集『photocopy』(Rondade, 2017)(図1)です。伊丹は、エディトリアルや展覧会を通して近年国内外で高い評価を得ています。彼の写真を特徴づけるのは、展示な縦位置の構図で、画面の隅々までピントが合っているような鮮鋭な描写と、ものの形状を際立たせるようなフレーミングの仕方にあります。画面の中に細かく写っているものを注視させ、写真の平面性を強く意識させる撮影の仕方は、これまでに刊行されてきた写真集『study』(Rondade ,2013)や『this year's model』(Rondade, 2014)に収録されている写真やブックデザイン、見開きを平面として見ることができるような綴じ方の造本にも見て取ることができます。また、写真集の中にはテキストやストーリーを読み取らせる要素が一切含まれておらず、写真集を手に取って見る人は「一点一点の写真に対峙する」という行為そのものを強く意識することになります。

02(図2)
『photocopy』綴じられた写真を


03(図3)
『photocopy』綴じの部分


『photocopy』は、これまでの写真集に見られる姿勢を引き継ぎつつ、68 点の写真を左上角でビス留めすように束ねるという造本の技法を取り入れています。この束ね方は、写真集のタイトルが示すように、ホチキスやクリップで束ねられる書類のように、印刷された紙としての写真のあり方を強く印象づけます。また、ビス留めの部分を軸として、束ねられた写真を扇のように広げると、上に置かれた写真の全体と、その下の写真の断片が同時に視界に入り、写真同士の関係がランダムに発生するような効果が生み出されます。また、写真が束ねられている順番は、制作された1000 部それぞれに異なっているため、写真同士の関係は、作り手の意図を超えたところに発生し、写真集を見る人がページを捲るという動作を通して写真にはたらきかけることで、写真のイメージを増幅させることが意図されているとも言えるでしょう。

04(図4)
『photocopy』より


05(図5)
『photocopy』より


収録されている写真は、被写体や撮影された場所、距離感もさまざまで、写真を繰り返し眺めるうちに、それぞれに写し込まれたディテール、対象のスケール感が相互に関わり合いつつも、個々の写真の強度が際立ったものとして立ち現れてきます。先にも述べたように、伊丹の写真は画面の隅々までピントがあっているような鮮鋭な描写が特徴的ですが、『photocopy』では、光の反射や透過、影の作り出す視覚的な効果が遠近さまざまな距離から捉えられており、その効果を意識しながら写真を見ていると、画面の中の奥行きが強く感じられ、写真同士が組み立てるトロンプルイユ(騙し絵)の中に眼が迷い込むような感覚が引き起こされます。(図4)(図5)
膨大な画像の中から選び出された写真を、選び出し、見返し、重ねるという過程を経て作り出されたこの写真集は、シークエンスや具体的なストーリーを通して見る者に語りかけるという類いのものではなく、見る者が写し込まれたディテールや光の効果に意識を向けることで、光景の断片が寄せ集まって、頭の中に回路が開くように作用してくるものです。この写真集は、知覚することと撮影すること、写真の表面にとらえられることとの関係を真摯に追求してきた伊丹の新機軸を切り拓いた作品と言えるでしょう。
こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

●今日のお勧め作品は、奈良原一高です。
20171125_narahara_17_wthv3奈良原一高
写真集〈消滅した時間〉より
《インディアンの村の二つのごみ缶、ニューメキシコ》

1972年 (Printed 1975)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:26.9×39.9cm
シートサイズ:40.6×50.8cm
サインあり


こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆「細江英公写真展」は本日が最終日です。
会期=2017年10月31日[火]―11月25日[土]
293

細江先生は秋の叙勲で旭日重光章を受章されました。
●会期中、細江英公サイン入り写真集を特別頒布しています。

◆ときの忘れものは「メキシコ地震被災地支援・チャリティー頒布会」を開催します。
201711mexico
会期:2017年11月28日(火)〜12月2日(土)
出品100点のリストは11月11日ブログに掲載しました。
全作品、一律8,000円で頒布し、売上金全額を被災地メキシコに送金します。
※お申込みの返信は、翌営業日となります。(日・月・祝日は休廊です。)


◆銀座のギャラリーせいほうで宮脇愛子展が開催されています。
201711MIYAWAKI「宮脇愛子展 last works(2013〜14)」
会期=2017年11月20日[月]〜12月2日[土] ※日・祝日休廊
会場=ギャラリーせいほう 
〒104-0061 東京都中央区銀座8丁目10-7 東成ビル1F
電話:03-3573-2468
最後の新作である油彩を中心に立体(ガラス、真鍮)、ドローイング、版画など。


●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円
*『瀧口修造展 I』及び『瀧口修造展 II』図録も好評発売中です。


安藤忠雄の奇跡安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言
2017年11月
日経アーキテクチュア(編)
B5判、352ページ
(NA建築家シリーズ 特別編 日経アーキテクチュア)
価格:2,700円+税 *送料:250円
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。
安藤先生のサイン本をときの忘れもので扱っています。

六本木の国立新美術館では「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
番頭おだちのオープニング・レポートはコチラを、光嶋裕介さんのエッセイ「安藤忠雄展を見て」と合わせてお読みください。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第20回

小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」第20回

『はな子のいる風景 イメージをくりかえす』(武蔵野市立吉祥寺美術館2017)

01(図1)
「はな子のいる風景―イメージを(ひっ)くりかえす」表紙

今回紹介する「はな子のいる風景―イメージを(ひっ)くりかえす」は、武蔵野市吉祥寺美術館で開催された展覧会に併せて刊行されたものです。この本は1947 年にタイで生まれ、1949 年に日本に贈られ、1954 年から井の頭自然文化園で暮らし、2016 年に69 歳で生涯を終えた象のはな子についての記録集です。制作にあたって、はな子が写った写真や映像が募集され、提供された写真の収集・保存・活用を通して、象のはな子、井の頭自然文化園、武蔵野市周辺の、さらには戦後日本の歩みをたどることが目的として掲げられ、プロジェクトが進められていきました。展覧会と記録集の出版に結実ししたこのプロジェクトの企画に携わったのが、NPO 法人remo(記録と表現とメディアのための組織)の運営者であり、AHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]を主催する研究者の松本篤です。彼は多くの市民から寄せられた写真を、それらが撮影された日付順に整理し、写真を提供した人それぞれの写真にまつわる想い出が綴られた文章を別冊子として編集し、記録集にまとめあげました。記録集には、はな子が来日した1949 年に刊行された新聞紙面の複写版、はな子が飼育された象舎の設計図も付属品として含まれています。
写真集には1 ページに一点ずつ写真が掲載され、写真が撮影された日付と、同じ日に書かれた飼育日誌の文面が同じページに記されています(1960 年代末までの飼育日誌は現存していないため、記されていません)。写真は縦位置、横位置、正方形といった画面比の違いはあるものの、ほぼ同じサイズのモノクロのイメージに転換され、画面のコントラストも一様になるように調整されています。提供された写真の殆どは、家族でのお出かけや遠足のような行事で、井の頭自然文化園を訪れた記念写真として象のはな子を背景にして撮影されたものです。さまざまな人の家族アルバムの中に収められていたような写真が寄せ集められ、日付順にはな子の飼育日誌と併置されることによって、それぞれの写真の中で背景にいたはな子の存在が前景に押し出されてきます。記録集の題名に「イメージを(ひっ)くりかえす」とあるのは、このように、はな子が他界した現在の視点から、はな子を偲びつつ、彼女を写真の中で背景に佇み写り込んでいたものから主役的なものとして倒置させて見るような見方を含みもっていると言えるでしょう。はな子の存在を軸に編集された写真群は、1950 年から2016 年までの時間の流れと、彼女と共に写真に撮られた人たちの記憶とその時代をつなぎとめています。

02(図2)
図版の上に貼られた写真の複製

03(図3)
写真の複製をひっくり返してみた状態

04(図4)
写真と別冊子の文集

05(図5)
写真の複製をひっくり返してみた状態

この記録集の際立った特徴は、いくつかのページにおいて、大きさを揃えて図版として印刷された写真の上に、実際に提供された写真を実寸大で複写したものーー写真の表面だけではなく裏面までも複写されている——が、図版の上に重ねるように貼られているということにあります。(図、2,3,5)読者は、写真を手で触り捲り、つまり文字通り、(「ひっ」くりかえす)ことをしながら、元々の写真のあり方(色や大きさ)とモノクロに転換された図版との違いを確かめつつ、写真のものとしてのあり方を感触として味わうことができるのです。70 年近くにもわたる時間の流れを、写真のシークエンスとして眺めていると、それぞれの時代による自然文化園の変化、写っている人たちのポーズや表情、衣服などの豊かなディテールが立ち現れてきます。記録集に付属した別冊子(図4)の文章を、写真の日付をたよりに照らし合わせながら読むと、写真を提供した人の綴る言葉の端々から、はな子の存在が人々の記憶の中にいかに根を下ろしているのかということが伝わってきます。また、はな子の写っている写真を提供して欲しいという、このプロジェクトの呼びかけに応えるために、アルバム
の中の写真を探すことが契機となって、はな子にまつわることだけではなく、その当時の生活や家族のことを振り返り、思い出すことにもつながっていったことが伺われます。この記録集は、はな子という象の生きた時間を軸としながら、人が記録し、記憶に留めておこうとする営みや、残された記録から掘り起こされ、探り出される時間と記憶の交差する豊かな位相を示しているようです。
こばやし みか

■小林美香 Mika KOBAYASHI
写真研究者・東京国立近代美術館客員研究員。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007-08年にAsian Cultural Councilの招聘、及び Patterson Fellow としてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)及びサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。
2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

◆小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。

●今日のお勧め作品は、尾形一郎 尾形優です。作家と作品については飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」第3回をご覧ください。
20171025_07_Kolmanscop-4-16-2006尾形一郎 尾形優
"Kolmanskop-4-16-2006"
2006年(2011年プリント)
ライトジェットプリント
124.0x100.0cm
Ed.5 サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


●図録を刊行しました
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料250円


中村美奈子さんが瀧口修造にオマージュした文鎮を制作しました。
中村美奈子 文鎮こげ茶、赤、緑、オレンジの4色あります。
一個:大5,500円 小5,000円(税別)
二個組:10,000円(税別)
三個組:14,000円(税別)
紙ケース付、送料は一律500円(何個でも)。
瀧口ファンならずとも手元に置きたくなるような色彩豊かな佳品です。特別頒布中ですのでどうぞご注文ください。


●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12
ときの忘れもの
blogランキング

ギャラリー&編集事務所「ときの忘れもの」は建築家をはじめ近現代の作家の写真、版画、油彩、ドローイング等を扱っています。またオリジナル版画のエディション、美術書・画集・図録等の編集も行なっています。
ときの忘れもの
ホームページはこちら
Archives
Categories
最新コメント
記事検索
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ