中島秀雄のエッセイ

銀塩写真の魅力 第5回〜中島秀雄

ゾーンシステムを巡って 中島秀雄
アダムスによるとビジュアライズは、ファインプリント制作のための必要条件としている。この考え方は特別なことではなく、ただ、日本の写真教育の中では大きく扱われてこなかった。私達は、撮影に露出計を使う。しかし、どの露出計にも数値が並んでいるだけで視覚に訴える表示は他に何もない。この露出計で様々な被写体の輝度から平均値を捉え、露出のキーを決定し撮影を終える。これではビジュアライズ(想定、予知)は難しい。アダムスのゾーンメーターには小さなゾーンスケールが貼られ、被写体とゾーンの関係が分かるようになっている。メーターの露出マーク(▲)のところがゾーン垢箸覆蝓△修海らプラス側に此↓察↓次↓宗▲泪ぅ淵溝Δ豊検↓掘↓供↓気醗豺覆蟶垢離勝璽鵑並んでいる。
ゾーンスケール

メーターを被写体に向け、仮につぶしたくない暗部がメーターにEV8と出たとしてそれをゾーン靴飽銘嵒佞韻襪斑羇嵒瑤魯勝璽鶚后銑(EV10-11)となる。次に、必要な明部がEV13と出てそれがゾーン爾鮖悗靴討い譴弌△弔屬譴覆す、飛ばない白、中間部を含め豊かなゾーンのプリントになることがその場で分かる。これがビジュアライズです。そのときに組み合った露出のキー(仮にISO100、絞りf8 1/15秒)で撮影すればバランスのとれたネガとなり、プリントも容易になる。つまり、被写体の重要な暗部はどこか、飛ばしたくない明部はどのくらいか、全体に印画紙の再現域の中にあるのか、もし印画紙の再現域を超えてしまう強い光なら柔らかな光になるまで待つか、そのまま撮影してフィルムの現像時間を減らせば(マイナス現像)よいこともその場で確認できるのです。
ゾーンシステムは、被写体をゾーンとして捉えることでビジュアライズが可能となり、その後の露出、ネガ作り、プリントまで流れを明快にしてくれる理にかなった方法と言えるのです。しかし、ゾーンシステムは写真制作のための一つの技法であり、これを使ってどのような写真を撮るかは1人1人の中にあることはいうまでもありません。(なかじま ひでお)

銀塩写真の魅力◆ときの忘れものでは6月9日[火]―6月27日[土]「銀塩写真の魅力〜Gelatin Silver YES! 」展を開催しています。ゾーン・システムを考案したアンセル・アダムス、それを現在日本で実践する中島秀雄、複数のネガを用いてひとつの画像を作り上げるジェリー・ユルズマンなど暗室作業にこだわった作家のほか、ウィン・バロックの代表作「森の中の子供」、エドワード・ウェストンの「ヌード(1936)」をはじめ、ルイス・キャロル、レスリー・R・クリムス、ハーブ・リッツ、植田正治、今道子、クリス・ジョンソン、安齊重男、アレン・ダットン、フレッド・シール、ジル・ペランの15作家の写真を展示しています。
出品作品を収録したリーフレット(A5判、20頁、テキスト:中島秀雄)が完成しました。(@300円、送料120円、切手可)、メールにてお申し込みください。

銀塩写真の魅力 第4回〜中島秀雄

ゾーンシステムを巡って 中島秀雄
手に取ったポケットサイズの表紙には、”Zone System Manual”と書かれている。本文の大きな英文字に意味は取りやすいと思ったが、最初のワードZone System, Visualizeからは、およそ写真の意味は取れなかった。著者は、M.I.T.の写真教授マイナー・ホワイトであるから、白黒写真の撮り方のようだと勝手に考えページをめくった。しかし、日本にある写真の撮り方本とは違っていた。“フィルムの感度テスト 、標準現像時間テスト、ゾーンルーラー、カリブレーション、マイナス現像、プラス現像” と気になる項目が次々と現れた。ページには写真、ゾーンステップ、ゾーンメーター、所々にイラストが描かれ、光、露出、現像、プリントの関係が視覚的に分かるようになっていて、私が今まで聞いたこともない新たな技法に引き込まれていった。冒頭に、 ”アンセル・アダムスは、長年ゾーンシステムによって撮影してきた” との一行を知ったとき、私は、アダムスのファインプリントの秘密はこのゾーンシステムにあると直感した。
アダムスの考えるゾーンシステムはこうだ。まず、銀塩写真の中核である印画紙に現せる最大黒から最大白までを1絞り差で10段階のトーンステップを作り、これにローマ数字をつけてゾーンルーラーとする。最大黒をゾーン0、中間をゾーン(18%グレー)、最大白をゾーン修箸掘△海譴魍阿忙ち出し、露出計を使ってなだらかな色彩の風景を10ゾーンで区分けして見る。そこからプリントに必要なシャドー、ハーフトーン、重要なハイライトがどこなのか分かり全体としてどんなプリントになるのか、どんなプリントにしたいのか、その場でビジュアライズ(想定・予知)が可能になる。次に、ゾーンの確認から露出のキーを見つけ、ゾーンに見合うフィルム現像の予測、被写体、時間、場所、絞り、シャッタースピードのデーターを含め専用のノートに記録してから撮影となる。そして、記録ノートに従って現像、プリント処理へとシステムにしていくというものなのです。(なかじま ひでお)

◆ときの忘れものでは6月9日[火]―6月27日[土]「銀塩写真の魅力〜Gelatin Silver YES! 」展を開催しています。ゾーン・システムを考案したアンセル・アダムス、それを現在日本で実践する中島秀雄、複数のネガを用いてひとつの画像を作り上げるジェリー・ユルズマンなど暗室作業にこだわった作家のほか、ウィン・バロックの代表作「森の中の子供」、エドワード・ウェストンの「ヌード(1936)」をはじめ、ルイス・キャロル、レスリー・R・クリムス、ハーブ・リッツ、植田正治、今道子、クリス・ジョンソン、安齊重男、アレン・ダットン、フレッド・シール、ジル・ペランの15作家の写真を展示しています。
出品作品を収録したリーフレット(A5判、20頁、テキスト:中島秀雄)が完成しました。(@300円、送料120円、切手可)、メールにてお申し込みください。

銀塩写真の魅力 第3回〜中島秀雄

ゾーンシステムを巡って 中島秀雄
新たな仕事は、男と女がテーマになっていた。しかし、最初に仕上げたプリントではイメージが弱く、作品にはならなかった。次に、製版用フィルムに転写してネガを作ってみたが、これもうまくいかなかった。そこで、画像マスクを作ってプリント露光の際に光をさえぎる方法に切り替えてみたところ、これはうまく行った。しかし、画像マスクを操作するためにもう1人の助手を必要とするときもあり、結局、全作品の完成まで半年間、根気と集中力を必要とする仕事になった。写真表現の可能性を広げる貴重な経験にはなったが、いくらうまく行ったからといって私の作品を作ったわけではなく、満足感はすぐに消えてしまった。そして、この経験から私は、写真の全てを1人で進めるためには、撮影から現像、プリントまでのよどみない技法を構築しなければならないと考えるようになった。
一日の仕事が終わった後の楽しみは、写真集や海外から収集したオリジナルプリントを眺めることだった。ウィン・バロック、エドワード・ウエストン、中でもアンセル・アダムスのシャープなファインプリントには、印刷では味わえない深い黒から豊かなハーフトーン、そして、輝くようなハイライトに写真の美しさ、強さを感じ、写真に関ってきた幸福感、これからも写真を続けることの決意のようなものを感じさせてくれた。同時にどうしたらこんなプリントが出来るのか、写真が撮れるのか、新たな好奇心と欲望がプリントを持つ指先から伝わってきた。
仕事が終わるのは夜になることもある。この日は、いつもと違う本棚に目が向いた。写真集の黒い背表紙に挟まれ、黄色の小さな本に目が止まった。ZONE(ゾーン)という文字が目に入った。(なかじま ひでお)

Wynn Bullockウィン・バロック Wynn BULLOCK
Child in the forest"
1951 printed later
Gelatin Silver Print 19.2x24.2cm signed
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◆ときの忘れものでは6月9日[火]―6月27日[土]「銀塩写真の魅力〜Gelatin Silver YES! 」展を開催しています。ゾーン・システムを考案したアンセル・アダムス、それを現在日本で実践する中島秀雄、複数のネガを用いてひとつの画像を作り上げるジェリー・ユルズマンなど暗室作業にこだわった作家のほか、ウィン・バロックの代表作「森の中の子供」、エドワード・ウェストンの「ヌード(1936)」をはじめ、ルイス・キャロルレスリー・R・クリムスハーブ・リッツ植田正治今道子クリス・ジョンソン安齊重男アレン・ダットンフレッド・シールジル・ペランの15作家の写真を展示しています。

銀塩写真の魅力 第2回〜中島秀雄

ゾーンシステムを巡って 中島秀雄
 銀塩写真のネガは、版画の版木(原版)に似ている。版の良し悪しで、その後のプリントに大きな影響を与えるのもネガと同じだ。しかし、版木は試し刷りによって修整できるが、ネガ修整はほとんど不可能にちかい。それゆえに写真は、信憑性が保持されている。表現のためにあえてネガにキズをいれたりする写真家もいるが、二度と元に戻らない。しかし、一般の人たちはネガに興味を持つことはなく、写真家も見せない。実は、ネガには、それまでに費やした時間と空間、瞬間と永遠、現実と幻影、アイディア、思索、そして、生活のすべてが銀粒子の一粒一粒に埋もれているのだ。
 私は、それまで、表現のためにはアイディアやコンセプトが大事で、ネガは付随的なものとしか考えていなかった。ネガの重要性を知ったのは、写真家の細江英公氏の助手になってからだ。細江さんは、写真作家としてすでに高い評価を得ていて、多くの作品を世に送り出していた。驚いたのは、細江さんの強烈な作品からは想像できないくらい几帳面にネガ整理が出来ていたことだ。ネガ台帳、コンタクトプリント、ネガファイル、そして全てに共通する通し番号が書き込まれ、ネガ台帳から日付、内容、番号を確認し、コンタクトプリントからネガを見つけることまでスムーズ進められるようになっていた。ネガやコンタクトプリントを見ることは、作家の創作プロセスや作品の秘密に触れることに等しく、夢中で眺めたことを記憶している。そして、さらに驚いたのは、作品のテーマに合わせるようにネガの様態は、それぞれまったく違っていた。ある作品には製版用のフィルムが多用され、別の作品には多重ネガ、他の作品には薄いネガというように、作品の強烈な個性の秘密はこれらのネガにあることを知った。
そして、助手の私は、ネガ作りからプリント制作までの一切をまかされるときがついにやってきた。(なかじま ひでお)

中島秀雄
中島秀雄「教会」

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銀塩写真の魅力 第1回〜中島秀雄

ゾーンシステムを巡って 中島秀雄
 写真は科学と化学、そして、アートがつながったもので、テクノロジーの進歩と共にその表現領域を広げてきた。従来の写真は、撮影のためのフィルムにしてもプリントにしても銀の化学変化によって画像形成するもので、暗室作業という独特のプロセスゆえに勘や経験と多少の忍耐と時間を必要とした。昨今、デジタル技術の飛躍は、写真の世界に大きな変革をもたらした。フィルムに代わる記憶素子とパソコン・プリンターによる処理に切り代わり、速写性や通信機能という面から見ればこれほどすぐれたものはない。
しかし、従来の銀塩写真に魅力が失われてしまったといえるかというとそんなことはまったくないと思っている。
 学生時代、私は、プリンターに選ばれた。文化祭のための学年クラス作品提出のために全員のネガを集め、私がまとめてプリントすることになった。ところが、このときに集めたクラス仲間25人ほどのネガは、その濃度、ネガサイズはバラバラで、そのバラバラなネガからのプリント制作にはほとほと苦労したことを記憶している。
銀塩写真の大きな特徴は、言うまでもなくまずこのネガにあるといえる。そして、ネガ作りこそ銀塩写真の魅力の一つであり、強さであると思っている。
 アメリカの有名な写真家アンセル・アダムスは、10代の頃、写真に深く関っていたが、すでにコンサート・ピアニストになる決意を家族の前で語り、メイソン&ファミリンのグランドピアノまで買ってもらっていた。しかし、ニューメキシコ州タオスへ撮影旅行に行ったときに、当時有名だった写真家ポール・ストランドに会い、彼のネガを見せてもらいその美しさに感動して写真家に転向してしまった。その頃、アダムスは、すでにすばらしい作品を創っていたが、やはりネガ作りには苦労していて、すばらしい銀塩プリントを創るための理想的なネガがあるはずだとたえず考えていたのだろう。たった一枚のネガが、1人の人間の人生を変えてしまったのだ。(なかじま ひでお)
アンセル・アダムズ
Ansel ADAMS アンセル・アダムス
"Forest Detail, Winter Yosemite National Park, California "
1949 printed later
Gelatin Silver Print
24.0x19.2cm signed"AA"
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銀塩写真の魅力
画廊亭主敬白
 ときの忘れものでは、明日6月9日(火)より27日まで「銀塩写真の魅力 Gelatin Silver YES!」展を開催します。
 写真の歴史は僅か200年にも満たない、人類が創ってきたさまざまな表現(芸術)分野の中では最も新しいものの一つですが、既に「銀塩写真」は廃れ行く運命にあるかに思われます。
 今回、G氏の協力により、短い写真史の中でも古典ともいうべき評価を得ている作品を中心に銀塩写真の魅力を伝える展覧会ができることとなりました。
 アンセル・アダムスの提唱したゾーンシステムを実践している中島秀雄先生に、銀塩写真の魅力を執筆していただきます。ぜひ会場で15作家の実作を見ながらお読みください。

◆ときの忘れものは「銀塩写真の魅力 Gelatin Silver YES!」展の会期中、6月20日[土]17時より「オリジナルプリントをコレクションする愉しみ」と題して、写真評論家の飯沢耕太郎氏によるギャラリートークを開催します。
参加費1,000円(1ドリンク付)
※要予約/氏名・電話番号を明記の上、メール( info@tokinowasuremono.com )、電話(03-3470-2631)、又はファックス(03-3401-1604)でご予約ください。
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ギャラリー&編集事務所「ときの忘れもの」は建築家をはじめ近現代の作家の写真、版画、油彩、ドローイング等を扱っています。またオリジナル版画のエディション、美術書・画集・図録等の編集も行なっています。
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