建築家の版画とドローイング

倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」 第10回

倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」

第10回 歳月の手触り ラ・トゥーレットの修道院


倉方俊輔(建築史家/大阪市立大学准教授)


画:光嶋裕介(建築家)
原画

 裏方であったはずのコンクリートが、いつしか表に現れるようになった。ラ・トゥーレットの修道院は、そんなル・コルビュジエの作品の傾向を代表している。カトリックのドミニコ会の修道院として、フランスの南東部のローヌ県に1956年に着工し、1960年に完成した。
 コンクリートが主役であることは、第一印象から鮮明である。近づいて初めに視界に入るのは、一面の打ち放しコンクリートの壁だ。窓はまわりこむと下部に少し見えるだけでディテールも何もないから、建築の一部というよりも土木構築物のようだ。西に下る斜面をものともせずに続く眺めもダムを思わせる。地面まで充填されたコンクリートは荒々しく、型枠の跡を露呈している。構築物をつくって、工事は完了。
 同じことは手前に突き出た形についても言える。こちらは曲面だが、完全にフリーハンドの形状ではなく、直線を空中で移動させてつくられた形であって、上部に突出した3本の筒と同じく幾何学な操作だ。まっすぐな壁とは独立した原理が感じ取れる。これら最初に目にする光景だけでも、これから体験する造形が容易には統一して把握できないことを予告しており、共通するのはコンクリートそのものが表現になっている点である。
 入り口に進むと、造形と仕上げの変奏の幅がさらに広がる。まず出迎えるのは、打ち放しコンクリートでできたシンプルな正方形の門。同じ素材がその先で水平面となって、傾斜地にかけたブリッジの役割を果たしている。渡った先に曲面の壁が立つ。門番控室と応接室の機能をもつこれら小室の平面は、自由な房状であり、ロンシャン礼拝堂の壁と同様の吹き付け塗装で仕上げられている。ザラザラとした表面は、どんな形にも造形できるコンクリートの本性を示し、隣に置かれた凝固したコンクリートのオブジェが粘土のような性質を強調している。まわりを取り囲む型枠で構築された直線とは対照的だが、どちらもコンクリートという素材が可能にする手触りである。
 前方にコの字型の全貌がうかがえる。右手には先ほど反対側を目にした打ち放しコンクリートの箱。前方と左手の吹き付け塗装の翼と一緒になって、中庭を閉じている。中庭を囲む回廊を重視する伝統的な
修道院の構成に範をとっているのは明らかだが、それだけに逆転劇は一層、鮮やかである。
 中庭は人間によって使われていない。伝統的な修道院とは異なる。そこは傾斜地のままに残され、板状の壁で持ち上げられたピロティが、囲われているようであり、周辺と連続してもいる外部空間を形成している。西洋の中庭や庭園が多くの場合そうであるような人工の外部とは違って、ほったらかしにされた地面だ。板柱はというと、人工大地を持ち上げるマルセイユのユニテのような力強い身振りではなく、ただ地面とは無縁のレベルに床を設定しているだけで、下部が重厚で上部が軽快という古くからの建築の規範とは、これも逆である。
 これらの原理に収まらないのが、近づいたときに見た箱だ。ただ一つ、中庭の空間を堰き止めている。上下や軽快・重厚の区別もない。この部分が教会堂である。コルビュジエは飾りたてに抗し、建築であるのかどうかを疑わせる寡黙なデザインを、精神的な支柱である教会堂の証としている。

*****

 コンクリートは建築の全体だけでなく、細部のキャラクターも決定しているから、主役と呼ばざるを得ないのだ。入り口は建物の3階にあたる。目の前の2階レベルに左手の翼と右手の教会堂を結ぶ通路が走っている。通常の建物のようなディテールがないので、スケールは判断しづらい。建築と人間との関係性が鮮明になるのは、人の動きが入ったときだ。間隔が変動している方立越しの人影は、ガラスで筒抜けの状態から、いくぶん隠されたようになり、また明快にとリズミカルに変化する。方立には厚みがある。
だから、今度はこちらがガラスに斜めに向き合うように移動すると、抑揚の波を保ちながら壁へと近づいてゆく。
 このオンデュラトワールと呼ばれる窓割は、コルビュジエが考案した寸法体系であるモデュロールをもとに、当時コルビュジエの事務所に勤務していたヤニス・クセナキスによってアレンジされた。現代音楽家としても知られる人物による時間の中の芸術。ここでコンクリートはガラスに直接に接合され、互角に渡り合っている。ほっそりとした線材に姿を変えながらも、動かしがたい存在感はそのままに、人の動きで奏でられる強靭な弦であり続けている。弱い木材や金属では果たせない役割だ。
 ラ・トゥーレットの修道院において、コンクリートは内外の関係を繊細に規定し、個々の場所を性格づける役目を担っている。
 中庭から見た3階レベルは矩形を組み合わせた造形。先ほどのオンデュラトワールと同様に、縦長の形に準備された回転窓で換気が可能だ。壁面の印象は最上部が最も重たい。この4・5階の細い横長窓の向こう側に廊下が通り、修道士の個室群にアクセスできる。同じデザインが3階の外周にも見られる。こちらの内側も廊下だ。館内見学の際、入り口から最初に通過する特徴的な空間である。どちらの廊下の幅も建物の規模の割には狭い。上下に短い窓は視界を限定し、光の帯をつくる。外光のみが入る窓が角に設けられ、前方に伸びる空間の性格を強めている。外部からの光景が種明かしだ。窓の造形を見ると、前方を隠しながら上部から光を取り入れる仕組みがよくわかる。
 コンクリートの造形は場所ごとに内部と外部との関係を特徴づける名脇役であり、人懐っこいキャラクターとなっている。紹介を続けると、4・5階の外周に突き出た庇はブリーズ・ソレイユ(日除け)として内外の環境を調整すると同時に、重々しい造形と小石を混ぜた仕上げを通じて、個々が独立して内面に向き合う場所としての個室という性格を物語っている。最初に見た円筒形の筒は、教会堂から続いた空間である礼拝堂に光を届けるのだが、向きがまちまちなので太陽の動きに伴う日差しの変化は一層強調されて、それぞれの内側でコンクリートの荒い地肌に塗られた色彩を変容させる。反対の中庭側では鋭角的な筒型が一列に空に向けられている。キャノン・リュミエール(光の大砲)という物騒な命名。それもおかしくない形の強さで、下部の聖具室などに光を導入している。そして、メインの教会堂では単純な長方体のヴォイドに対して、コンクリートの造形が最小で最大の効果を挙げている。穿たられた亀裂から割り込む外光は変わりゆくことで、コンクリートの素材感を変化させ、寸法では規定できない空間の体験を生む。ここで証明された線の多さや素材の多様性に頼らなくても内部空間の変化と劇性と精神性が獲得できるという事実は、やがて東洋の安藤忠雄という建築家によって展開されることになる。

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ラ・トゥーレットの修道院
竣工年│1960年
所在地│Route de la Tourette_69210 Eveux_,France
(撮影:倉方俊輔)
日曜の午後にガイドツアーが実施されている。
宿泊は8月とクリスマス休暇以外の時期に可能であるが、門限に注意

*****

 以前のコルビュジエは、このようにはコンクリートを使っていなかった。1920年代の作品は時に壁面に色彩を施し、抽象的な面の構成として扱っていた。本作でも設計当初は鉄骨による建設も検討されていたから、コンクリートの可能性だけに邁進していたわけではない。予算が限られていたのは事実で、仕上げを削減したきっかけはそこにあるだろう。また、竣工当初のコンクリートはもっと白く、シャープだったから、現在訪問して抱く感慨はオリジナルではなく、歳月による付加物に過ぎないと判断することもできる。
 しかし、すでに見てきたように、本作のコンクリートは決して仕上げの欠落ではなく、素材のもつ味わいの十分な発露となっている。コルビュジエは素材を抽象化し、幾何学化するのではないやり方を1930年代以降、試みていった。それらを総合し、豊かさを獲得する手法として説得力をもって提出したのがラ・トゥーレットの修道院と言える。
 即物性による豊かさは、コンクリート以外の素材にも通底している。植物の扱いもその一つだ。本作の屋根は薄い土の層で覆われ、勝手に草が生えている。コンクリートの湿度と温度を一定に保ち、熱による膨張と収縮から守るために屋上を庭園にするという主張は1920年代と同じだが、かつてのようなつくり込まれた屋上庭園からは変化している。各部に見られる電球をむき出しにした照明や鉄を曲げただけの手すりにも、乏しさゆえの味わいがある。少ない決定を研ぎ澄ませ、偶然に委ねるほどに、コンクリートの肌理や植物の表情のように対象の手触りが浮上する事実にコルビュジエは一層、覚醒したようだ。光という素材に対しても同じだ。概念では一つとして処理されてしまうものに含まれる手触りを愛で、単純さの中
にある豊かさを引き出し、過ぎゆく時間を慈しむように、刹那を知覚しようとしている。
 コルビュジエは老いたのだろうか?
 老いたのだろう。工業化・資本化が進行する第二次世界大戦後の世界で、清貧な修道院という過去のロマンに想いを託した建築。時代と隔たり、個人的な変化を反映させているのだから、彼に規範を求めていた人々は戸惑うばかりだ。
くらかた しゅんすけ

■倉方俊輔 Shunsuke KURAKATA
建築史家。大阪市立大学大学院工学研究科准教授。1971年東京都生まれ。著書に『東京レトロ建築さんぽ』『ドコノモン』『吉阪隆正とル・コルビュジエ』、編著に『吉祥寺ハモニカ横丁のつくり方』ほか。
生きた建築ミュージアム大阪実行委員会委員

表紙
『建築ジャーナル』
今年の『建築ジャーナル』誌の1月〜12月号の表紙を光嶋裕介さんが担当することになりました。
テーマはル・コルビュジエ。
一年間にわたり、倉方俊輔さんのエッセイ「『悪』のコルビュジエ」と光嶋裕介さんのドローイング「コルビュジエのある幻想都市風景」が同誌に掲載されます。ときの忘れものが企画のお手伝いをしています。
月遅れになりますが、気鋭のお二人のエッセイとドローイングをこのブログにも再録掲載します。毎月17日が掲載日です。どうぞご愛読ください。

●今日のお勧め作品は、光嶋裕介です。
20171017_05
光嶋裕介 《ベルリン》
2016年 和紙にインク
45.0×90.0cm   Signed
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜〜土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。

◆ときの忘れものは「細江英公写真展」を開催しています。
会期=2017年10月31日[火]―11月25日[土]
293

細江先生は秋の叙勲で旭日重光章を受章されました。
●会期中、細江英公サイン入り写真集を特別頒布しています。

◆ときの忘れものは「メキシコ地震被災地支援・チャリティー頒布会」を開催します。
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会期:2017年11月28日(火)〜12月2日(土)
出品100点のリストは11月11日ブログに掲載し、予約受付を開始しました。
全作品、一律8,000円で頒布し、売上金全額を被災地メキシコに送金します。


●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
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21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円
*『瀧口修造展 I』及び『瀧口修造展 II』図録も好評発売中です。


安藤忠雄の奇跡安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言
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日経アーキテクチュア(編)
B5判、352ページ
(NA建築家シリーズ 特別編 日経アーキテクチュア)
価格:2,700円+税 *送料:250円
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。
安藤先生のサイン本をときの忘れもので扱っています。

六本木の国立新美術館では「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
番頭おだちのオープニング・レポートはコチラを、光嶋裕介さんのエッセイ「安藤忠雄展を見て」と合わせてお読みください。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
 ・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
 ・frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
 ・小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
 ・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
 ・杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
 ・関根伸夫のエッセイ「〈発想〉について[再録]」は毎月12日の更新です。
 ・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
 ・倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」は毎月17日の更新です。
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 ・小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。
 ・スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
 ・森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
 ・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」はしばらく休載します。
 ・大野幸のエッセイ<ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート>は随時更新します。
 ・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
  同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」と合わせお読みください。
  「本との関係」などのエッセイのバックナンバーはコチラです。
 ・中村茉貴のエッセイ「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
 ・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」英文版とともに随時更新します。
 ・深野一朗のエッセイは随時更新します。
 ・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
 ・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は終了しました。
 ・森下隆のエッセイ「鎌鼬美術館——秋田県羽後町田代に開館」は終了しました。
 ・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は終了しました。
 ・夜野悠のエッセイ「書斎の漂流物」は終了しました。
 ・普後均のエッセイ「写真という海」は終了しました。
 ・八束はじめ・彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は終了しました。
 ・光嶋裕介のエッセイ「和紙に挑む」は終了しました。
 ・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は終了しました(時々番外編あり)。
 ・荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は終了しました。
 ・森下泰輔のエッセイ「戦後・現代美術事件簿」は終了しました。
 ・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイや資料を随時紹介します。
 ・「オノサト・トシノブの世界」は円を描き続けた作家の生涯と作品を関係資料や評論によって紹介します。
 ・「瀧口修造の世界」は造形作家としての瀧口の軌跡と作品をテキストや資料によって紹介します。
土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
 ・「関根伸夫ともの派」はロスアンゼルスで制作を続ける関根伸夫と「もの派」について作品や資料によって紹介します。
 ・「現代版画センターの記録」は随時更新します。
今までのバックナンバーの一部はホームページに転載しています。

番頭おだちの「安藤忠雄展」トークレポート

先日、安藤忠雄先生のギャラリートーク(10時20分の回)に出席しました。この日は雨模様で、午前のトークは人も少ないだろうと甘く見ていましたが、人の多さに気分が悪くなる人がいるほどすし詰め状態でした。
今回は青木茂さん、木下庸子さん、鈴木明さんを交えてのトークショーで、自分より少し若い世代の話を聞こうということでお呼びしたそうです。
それぞれ3名との出会いを話し、一緒に建築のツアーに行ったことなど話されました。
興味深かったのは、[住吉の長屋]で日本建築学会賞を受賞した翌年訪米された際、当時ハーバード大学で学んでいた木下庸子さんに案内するようご指名があったそうで、安藤先生が希望されたのは「シェーカー教徒村」だったそうです。車で5時間かけてお連れして、シェーカー教徒村の家具などを熱心にご覧になっていたそうですが、シンプルな暮らしが残るシェーカー教徒村をご覧になり、何を感じ、何を得たのか、またその後の建築にどのように生かされたのか、もっと詳しく聞きたかったです。

安藤先生の教えは、

これからは偏差値の時代じゃない
本を読め
コンビニの弁当ばかり食べるな
朝ごはんはしっかり食べろ
好奇心を持て
お金は貯めずに社会に還元しろ


とのこと。息子に聞かせたかった・・・。

鈴木さんは以前、安藤さんの大阪のマンション(ゲストルーム)に泊まったことがあり、そこには安藤さんの本しか置いておらず、窓からは安藤さんが設計した物件が見え、これは信者になりますよねと。
磯崎新先生の話題になり、「磯崎さんは我々にとって神様みたいな存在だから」とおっしゃっていました。
朝日新聞にも磯崎先生について「今でも会うと緊張する」と書かれてありましたが、大先生にも緊張する存在はいるのだなぁと少し驚きました。

こんな朝早く来たんじゃぁ好奇心はあるけど、朝ごはんも食べずに来てるでしょうから、あたなたちは65歳までしか生きまへんなぁとか、
大阪っていうとなぜか嫌う人が多いから「私は神戸に住んでます」と言うてるんです。など、まるで落語を聴いてるようで面白かったです。
全然嫌味に聞こえないのは、安藤さんのユーモアのセンスや人柄なのでしょう。私もすっかり信者になりました。

ギャラリートークの後は、休む間もなく展覧会カタログのサイン会を行なっていました。そのエネルギーはどこから湧いてくるのでしょう。私ももっとエネルギッシュに挑戦して行かなければ!と、活を入れられたようでした。

そして、もう終わりましたが、朝日新聞の安藤さんのインタビューの記事は毎日楽しく拝見しました(我が家は新聞をとっていないので、母が切り抜きを届けてくれました)。
安藤先生を育てたご祖母様が、アルバイトでたまったお金について「忠雄、お金ためてどうすんの。お金は自分の体の中に蓄えないと」と言い、名建築を頭と体にたたき込もうと船でソ連に渡り、シベリア鉄道でヨーロッパに入ったというエピソードがあり、ご祖母様もそれはそれは素晴らしい方だったのだろうと思いました。

会場では、元磯崎新アトリエの方に久しぶりにお目にかかり立ち話。以前はよくアトリエと行き来していたこと、愛子さんや網谷さん(私にとってお二人は超絶緊張する存在でした)がいらっしゃった日々をふと思い出し、六本木を後にしました。
おだちれいこ

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亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。
安藤忠雄の奇跡
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厳選した「50の建築」と、独自取材による「50の証言」を通じて、安藤忠雄氏の約50年におよぶ活動と人物像を浮き彫りにする。
50の証言:伊東豊雄/石山修武/竹原義二/隈研吾/出江寛/東佐二郎/藤塚光政/植田実/馬場璋造/綿貫不二夫/松葉一清
藤森照信/福武總一郎/井上章一/コシノヒロコ/城戸崎博孝/金森秀治郎/豊田郁美/坂茂/青木茂/芦澤竜一/豊田啓介/長田直之/相坂研介/鈴木丈晴/末光弘和
李禹煥/樋口武男/三宅一生/野口健/森稔/金箱温春/岩田弘三/中田義成/上村洋行/RCRアーキテクツ/堀安規良/高橋敏彦/段偉紅/頼素鈴/馬衛東/曽梵志/内藤廣/藤村龍至/西田善太/五十嵐太郎/大西若人/磯達雄

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ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。
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左)安藤忠雄《住吉の長屋》、右)安藤忠雄《光の教会》

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左)安藤忠雄《近つ飛鳥博物館》、右)安藤忠雄《セビリア万博日本館》

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安藤忠雄《大山崎山荘 I》

20171004_安藤忠雄展


20171004_安藤忠雄展_裏


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JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第20回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第20回 軽やかなコンクリート


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今回はクールを拠点に活躍する女性建築家Angela Deuber(アンジェラ ドイバー)による学校建築を紹介しようと思います。

この学校建築は2013年に竣工。できて間もない頃に僕は一度訪れたことがあったのですが、夏休みの時期であったため中を見学することができませんでした。
実はこの間、Beton Suiss主催のコンクリート建築を対象にしたコンクール“Beton17”があり、1977年から四年ごとに開催されているその名誉あるコンクールで受賞したこともあって、再び気になってきてしまいました笑。ということで、今回は内部も見学できるようにきっちりとアポイントを取ってからの再訪です。


建築空間での体験は、その日の天気(とりわけ外光の状態)によって、季節や時間帯によって、また自身の体調や気分、時には一緒に訪れてまわる人が誰かによっても感じ方が大きく変わります。
雑誌やインターネットで見る建築写真やイメージは(図面でさえも)一見ニュートラルに建築を紹介しているようで、その投稿者である設計者、記者の意図によって上手く切り取られて固められた表現です。そうしてデザインの意図を正確に第三者に伝えることは作り手としてとても大切である一方で、良くも悪くも強い印象や先入観を与えてしまうこともあります。
それと比べて建築を見に行って出会うのは、“建築とそれにまつわる事柄が安定していない状態” です。そしてそこでの体験とは、建築とその周りの環境に次々と起こる、時に人間も含めた振る舞いのやり取りを見るようなものです。建築が開口部を通してどうやって移りゆく太陽の光を上手く取り入れ、室内に美しい光と影を現してくれるのか?同じ時間帯の同じ方向からの光でも異なる開口部を介することでドラマチックな強い光になったり、柔らかい優しい光になったりと建築は光を自在に変化させます。また建築は外の騒音をシャットアウトして室内に静寂をもたらしながらも、例えば書斎にあるグラモフォンから聞こえる演奏を心地良く響かせることができます。雨や雪の日に暖かい部屋で木材やコンクリートの少し湿った匂いを嗅いだ時、建築は確かに外の環境から自分を護ってくれているんだと感じることができます。

建築を生き生きと健康的に生き永らえさせるには建築と人と環境との間に良いコミュニケーションができているかどうかがとても大切なことだと僕は思います。実際に建築を訪れて、時には驚きがっかりしながらもその交流を見届け、また新たな発見をしていくことが多くの時間をかけてデザインし、大変なお金とまた労力をもって作られた建築に対する敬意と責任ではないでしょうか。



話を戻して学校を見ていきます。

IMG08

クール(Chur)から電車でオーストリア方面へ。国境手前の駅で一度乗り換えてザンクトガレン(St.Gallen)へ向かう途中の駅シュタート(Staad)で降ります。ここはボーデン湖に面していてお隣はオーストリア、反対側はドイツです。駅から緩い坂を登って少し降りてちょっとした谷間まで、10分くらいで目的の場所に着きました。

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外観の印象は三角形がなんだかいたるところにある。。です。その男らしい思い切りの良いデザインから女性建築家が設計したと初めに聞いた時は正直驚きました。構成はコンクリートでできた逆三角形のトラス壁が各階のスラブ(床)を支えて。。と思いきや(笑)その逆三角形の頂点が地面に着地していない!遠くから見ると逆さにした王冠が浮いているかのように見えます。

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実はこれがこの建築のミソです。逆三角形の頂点を支えている、上階から壁を通して頂点へ流れてくる力を下階スラブに流している“短い柱“は壁と比べて少しだけ室内側に引っ込んでいて、またガラスの反射も相まって外からはよく認識できません。木の窓枠全体は外からはしっかりと見え、短い柱を隠すために必要だった逆三角形頂点下部の垂直窓枠のところを特別扱いしていません。

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一方で室内からその柱を見ると外側から引っ込んでいる分よりも少しだけ遠慮がちに出っ張って、この柱は図形として逆三角形を邪魔していないよ。別の要素だよと話しかけるように振る舞っています。

IMG10
窓枠は室内から全体を視認できず、そのためY字のコンクリート構造壁が引き立ちます。
この小さなディテールが重たいコンクリートを三層積んでできている建物全体を外からは軽やかな浮遊感あるものに変え、中からは美しい構造の形を表す役目をしている。これは面白い建築だと僕は思いました。

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プランを見るととても単純です。建物正面から入って階段ホールがあり、四隅にクラスルームが配置されその間にサービススペースがあります。エレベーターや構造壁が他の非構造壁である白いレンガの壁よりもわかりやすく出っ張っているので、逆三角形壁と柱の時のように建築要素の主従関係をきっちり表している。設計者の意図がわかりやすく建築に現れています。

IMG04

各階にはバルコニーが一筆書きに回っていてクラスルームから出て駆け回って遊ぶこともできます。もちろんこれは避難経路として、2つある非常外部階段へつながります。

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建物はコンクリートの床壁天井、ドアや開口部には木材(おそらくカラマツ材)。室内の仕切り壁はレンガに漆喰仕上げです。床のテラッツォ仕上げはコンクリート床スラブの上に薄いコンクリート層をトッピングして作られたのではなく、構造スラブ自体をサンディングしてできています。バルコニー部分は叩き仕上げとしてスリップ防止としています。天井には音響のために木毛セメント板でできたアコースティックパネルがあり、筒型の照明と同じ形の吸排気口がありました。

全体を俯瞰してみるとコンクリート躯体がそのまま床壁天井となって仕上がっている、シンプルで原始的です。ところが案内してもらった校長先生に話を聞くと、竣工して一番初めに入った子供たちの建物に対する印象は“冷たい“だったようです。コンクリート打放しの見えとはいえ、断熱材を挟んだ二重コンクリ壁なので物理的にそう冷たいわけではなく、それは主にグレー色からくる印象です。
確かに規模が似ているヴァレリオ オルジアティの学校(Paspels)のクラスルームは木の仕上げであるし、ラファエル ズーバーの学校(Grono)は暖かみのある色のコンクリートでした。そう言えば、グレーコンクリートに異なる仕上げを施して、床も天井もライニング(Lining)がない学校建築は初めて見たかもしれません。

IMG07

竣工から四年、ようやく建物を使い倒していろんなモノも色も増えてきた。今は使っていてほとんど不自由はなく、あるとすれば何かをピン(画鋲)で刺すことのできる壁が少ないとのことでした。(コンクリートの壁は上手に教材や子供の絵画が貼られていたもののテープ貼りで、確かに取るのも貼るのも少し大変で放っておくと跡が付いてしまいます)

全体としてざっくりとしつつ細部も凝っている建築でとても勉強になりました。シンプルかつ意志の強い構成である分、建築家が戦った軌跡が見て取れます。
彼女の次の建築はどんなモノになるのか、とても気になってきました、楽しみです。


図面(3階平面図)はarchithese 2.2014より
その他写真は筆者より

すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
日本大学高宮研究室、東京藝術大学大学院北川原研究室にて建築を学び、在学中にETH Zurichに留学。大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりアトリエ ピーターズントー アンド パートナーにて研修、2015年から同事務所勤務。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

●今日のお勧め作品は、菅木志雄です。
菅木志雄菅木志雄
「作品2」
1981年
シルクスクリーン
50.5x65.0cm
Ed.100
裏面にサインと限定番号あり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください
■菅木志雄 Kishio SUGA(1944-)
岩手県生まれ。多摩美術大学油画科で学ぶ。在学中に斎藤義重と高松次郎に影響を受け、「もの派」グループの中心メンバーとなる。視角を操作する絵や立体作品の制作と同時に素材を使った《積層空間(1968)》のような作品制作を始める。1967年第11回シェル美術賞展1等賞受賞。1968年椿近代画廊で初個展。1970年第5回ジャパン・アート・フェスティバル大賞を受賞。ギャラリーのみならず、東京都現代美術館など各地の美術館で個展を開催する。海外での発表(1973年パリビエンナーレ、1986年ポンピドゥー美術館、1994年グッゲ ンハイム美術館等)も多い。夫人は詩人・小説家の富岡多恵子。

◆ときの忘れものは「細江英公写真展」を開催しています。
会期=2017年10月31日[火]―11月25日[土]
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細江先生は秋の叙勲で旭日重光章を受章されました。
●会期中、細江英公サイン入り写真集を特別頒布しています。

◆ときの忘れものは「メキシコ地震被災地支援・チャリティー頒布会」を開催します。
201711mexico
会期:2017年11月28日(火)〜12月2日(土)
出品100点のリスト:11月11日ブログに掲載
全作品、一律8,000円で頒布し、売上金全額を被災地メキシコに送金します。


●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円

*『瀧口修造展 I』及び『瀧口修造展 II』図録も好評発売中です。


●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
番頭おだちのオープニング・レポートはコチラを、光嶋裕介さんのエッセイ「安藤忠雄展を見て」と合わせてお読みください。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第10回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第10回 インドの先住民Santal-Kheladangaの人々の家づくりについて-その3



今年の3月にインド・シャンティニケタン郊外のケラダンガ村で開校したIn-Field Studioの動画を最近になってようやく公開した。なぜ半年も出し渋っていたのかと自分自身をいぶかしむが、結果この半年にも様々な思考の展開もあったのではとも思うのでそう悪いものでもないかもしれない。今回はこのあたりをもう一度ぐるぐると振り返ってみたい。


秋に差し掛かったころから、ほとんど毎日北千住のアートセンターBUoYという現場の改修工事を大工の青島雄大さんと一緒にやっており、そこではいくらか木工についての知見というか工夫の知恵を得ることができた。彼とは来月の12月末ころからインド・シャンティニケタンの家の建設も一緒にやってもらうことをお願いしているので、短期間ではあるがある連続した共同創作の径をたどることになる。日本からは鑿や鉋などの手道具だけを持って行き、インドの家の中である軸組の架構を組み立てる予定。先方には使用する材木の手配をすでにお願いしているが、実際にどんな材料がくるかは正直分からない。万が一、ヤシの木などのような恐ろしく硬い材が取り揃えられでもすれば、もちろん想定していた納まりの変更が必要となるだろうし、デザイン自体も変えざるをえない。けれども、現場でデザインを変えられる、洗練させられるということはとても重要なことだとも感じる。その作業は決して即興ではない。現場に身を置いて、四六時中一つのディテールデザインに注力するわけであるから、一般の事務所内設計の作業よりはよほど考えている。そして何よりも、隣の職人さん作業を見て、彼の墨付けや材料取りや刻みの入れ方などが自分の頭に叩き込まれるので、おのずと描いた図面の横にはその作り手の姿が想像され、デザインもごくごく自然に生まれてくる。そして部分の詳細は、昼メシや休憩などの合間にサッと相談して決めていく。
昨今の建築設計と施工とが乖離した状況はなかなかに厄介な問題だなと思う。設計、実施設計、そして監理業務を別の人間が行い、申請の手間などからもあらかじめ作成された図面通りに工事を進めざるをえない状況に変わっていっている。設計と工事との距離が離れてしまえばしまうほどに、互いの作業を想像する力が欠乏し、その無関心さ自体が実物となって表れ出てしまう。
それは明らかに建築の質に関わる問題だ。


インドでは、そんな機械的分業が未徹底な状況がまだ在る。というよりもそれぞれの職分が流動的で、現場でも職人らは皆多能工として基礎工事から仕上げまで一貫して関わり続ける。特殊な専門技術を要さない作り方で建築が作られ、プリミティブの原則が貫徹されているとも言える。行政への申請もA4の用紙数枚程度で、詳細の多くは現場が始まってから決定され、外壁工事が終わった今でも、まだ未決定の部分は多そうなので、来月ようやく現場入りができる我々からすればとてもありがたい。そんな環境があるインドがとても羨ましい。そんな魅力も感じてインドに積極的に入り込もうとしている。

1シャンティニケタンで建設している家の内部、未だ仕上げ工事はしていないが、この荒さをどう残すかが一番の肝かとも思っている。


2庭からの外観。窓廻りの金物の納まりというか、埋め込みの潔さと、使用する材料の少なさは、内部での木造架構でも応用したい。


そんなプリミティブの探求を、3月のIn-Field Studioで試みようとしていた。期間中に行った村内での建設作業は、地元のSantal族の村出身で大工を生業としているケレンという名の青年に、資材の調達や材料取りを教えてもらいながら行った。彼はガタリと現地で呼ばれる曲がった短刀のような刃物とを使ってなんでも切っていたし、持ち手を反対にしてトンカチとしても使いこなしていた。ちなみにガタリはほとんど同じ形のものが床に固定されて、キッチンでの包丁にもなっている。

3


4竹の調達と材料取りを行う大工ケレン。


5ガタリという刃物。


先に紹介した動画の中では、参加者も含めて、材料と道具の単純さから生まれ出る様々な工夫が随所に記録されている。それらをどのように組み立てていくのか(論理的にも、ものづくりにおいても)が今後の課題である。
さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

●今日のお勧め作品は、安藤忠雄です。
20171107_andou_17_TateModern安藤忠雄
「テート・モダン」
2002年
シルクスクリーン
イメージサイズ:33.0x86.0cm
シートサイズ:75.0x106.0cm
Ed.15
サインあり


こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆ときの忘れものは「細江英公写真展」を開催しています。
会期=2017年10月31日[火]―11月25日[土] ※日・月・祝日休廊
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11月16日(木)18時より 植田実・今村創平トーク<ジャパンネスのこと、都市住宅のこと>
現在フランスで開催中の<ポンピドーセンター・メス「ジャパン・ネス 1945年以降の日本における建築と都市」の報告をするとともに、建築展覧会のあり方、建築の表現についてお話をします。また、同展にてフォーカスされた建築雑誌『都市住宅』について、同展での展示の狙いなど、同誌の元編集長植田実さんとお話しします。(今村創平)
*要予約:参加費1,000円

ギャラリートークへの参加希望は、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。twitterやfacebookのメッセージでは受け付けておりません。当方からの「予約受付」の返信を以ってご予約完了となりますので、返信が無い場合は恐れ入りますがご連絡ください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com

●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円



●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

光嶋裕介「安藤忠雄展を見て」

手の痕跡が示す〈挑戦〉の彼方

〜国立新美術館「安藤忠雄展」を見て〜

光嶋裕介(建築家)


 美術館は、「美」を展示する場所であり、当たり前だが、建築は、動くことができない。では、美術館で開催されるすべての「建築展」には、実際の建築に込められた美を、違った形で「抽出」し、展示することが求められる。模型や図面、スケッチがそうだ。三次元である建築物を小さく縮小した模型、建築物をつくるための方法が記された図面、設計者が建築物を発想した痕跡が残るスケッチなど、建築に込められた美を抽出する方法は、さまざまだ。展覧会でもって建築の「美」を表現するには、建築そのものを設計するのとは違った手法と思考が求められる。それは、繰り返しになるが、「建築が動かない」からだ。
 では、建築が空間としてひとつのメディアであるとしたら、実物の建築を体験する以上の「メッセージ」を果たして「建築展」は、発信することが可能であるのだろうか。実際に世界中に建築を設計し、日本を代表する建築家である安藤忠雄という建築家の仕事をすべて体験することは、もちろん難しい。だから、実物の建築を見に行くよりも、こうして建築展を通して、建築家・安藤忠雄がその人生をかけている仕事を網羅的に理解し、その全体像らしきものが開示されることには、実物の建築体験より豊かなものがあるのかもしれない、と思えてくる。《挑戦》と付けられたタイトルからも、この展覧会に掛けた安藤の並々ならぬ想いが伝わってくる。

 とにもかくにも、行ってみた。平日の朝にもかかわらず、長蛇の列ができ、老若男女、外国人観光客の姿も多く、会場はえらく賑わっている。やはり、このナショナル・アーキテクトの立っている場所から見える風景に多くの人たちの関心が集まっていることは、間違いない。有名、無名、果たしてこれほどまでに注目される建築家が他にいるだろうか。もう、これだけで、この展覧会が開催された意義は大きい。
 しかし、私は三時間近くこの展覧会をじっくり隅々まで見させてもらって、その仕事に深い敬意を示すものの、すっかり困惑してしまった、というのが率直な感想である。その膨大たる仕事の質量ともに圧巻の展覧会であることは、誰の目にも疑いなく、素晴らしいものを見せられて、圧倒されてしまったのだが、同時に無力感と脱力感が襲ってきて、困惑した。

 事実、安藤建築の代名詞といえるコンクリートの列柱のレプリカから展覧会がはじまり、彼の創造の原点である大阪にある安藤忠雄建築研究所の吹き抜けの中心にある打ち合わせテーブルが、その周りの本棚とともにそっくりそのまま再現されており、まさに建築家のすべてが露出されている。何より、展覧会の目玉は、安藤の代表作である《光の教会》の原寸大のインスタレーションだろう。まったく前代未聞の試みであると言わざるを得ない。他にも、水の都ヴェネチアでの《プンタ・デラ・ドガーナ》にはじまる一連の仕事に、パリの旧・商品取引所《ブルス・ドゥ・コメルス》、ライフワークでもある直島での多くの仕事が次々と紹介されている。これでもか、これでもか、と続く安藤建築のエネルギーは見る者を完全に虜にする一貫した強度が作品にある。
 ところが、最後に「樹を植える」一連の試みを映像で見て、展覧会場を後にすると、もっとも心に響いたのは、意外にも、最初の方に展示されていた《住吉の長屋》の27枚の原図の展示である。群を抜いて私は、この原図たちに「美」を感じたのである。安藤忠雄という建築家が「手で思考する」ということが、強く表明されていて、すっかり見入ってしまった。もう40年以上も前に描かれたはずの図面たちが、何故美術館に展示するに値するほどの「美」を獲得できたかについて考えを巡らせてみた。

 建築そのものが空間として、非言語的なメッセージを含む情報を発信しているとしたら、こうして建築展には、実際の建築とは別の「何か」が表現されてなければないと、先にも述べた。そして、私は今回の展覧会であらゆる展示物の海の中から序盤の壁にきっちり額装された《住吉の長屋》の原図に一番惹かれたと改めて断言できる。それは、建築家の頭の中にだけあるはずの世界観が、建設するための図面たちに見事表出されていて、あまりにも美しく、息を呑んだからだ。
 幾度となく重ねて上描きされた結果が、ボロボロになった紙からも窺える。今では、一般的に図面はデジタル化され、モニターを見ながらマウスでクリックして製図しているのだが、昔は、トレーシングペーパーに鉛筆(正確にはきっと「ホルダー」というシャープペンシルのようなもので描かれている)で線が引かれ、青焼き機を通して感光されて、図面が完成する。あらゆる紙が不要となり、合理的なデータとなったことで、失われたのは、「身体性」であろう。つまり、デジタル化によって、線の太さがなくなり、建築図面からスケールが失われ、手で思考する身体性が引き剥がされてしまったのだ。
 そして、安藤の処女作といわれる《住吉の長屋》の原図たちには、他ならぬ芸術としての「美」がこの身体性に裏打ちされた状態で深く宿っている。精密かつ正確に描かれているのはもちろんだが、線の種類のみならず、陰影の付け方にまで徹底した哲学があり、圧倒的に美しい。建築を設計すること対する建築家の誠意がにじみ出ているのだ。それは、図面のレイアウトの美しさや寸法線の入れ方にも垣間見ることができる。それだけでは、ない。
 これらの原図たちには、みっちり図面が描かれていて、余白がまったくないのだ。ついには、立面図や断面図の上から、アクソメ図が描き重ねられている有り様だ。新しい紙に描けばいいようにも思うが、ここに、安藤が「描かずにはいられない」ことが圧倒的熱量と共に表明されているのである。ここにこそ、彼独自な表現が結晶化されている。
 加えて、平面図には、隣接するふたつの町屋の内部の様子まで克明に描かれていたのには、驚いた。自分で設計している住宅の両サイドの住宅の平面図をも描いていることは、設計者としての視野の広さに他ならない。

 本来は建設方法を正確に表記するツールに過ぎないはずの図面が、こうして美術館の中で展示されるような作品としての強度を獲得していることは、先に述べたように、デジタル化された現在の建築図面がオリジナルとしての「アウラ」を失ったからだけではないだろう。やはり、展示されている《住吉の長屋》の原図たちから読み取れるのは、若き安藤が徹底的に考え抜いた建築家としての熱量であり、ボクサーでもあった建築家としての身体性が表出しているからである。圧倒的な情報量なのだ。
 私は、あの図面たちから、建築家としての「挑戦」を見た。自然との共生、光の建築としての挑戦、モダニズムの超越、生活の新しい豊かさへの挑戦などである。そんなラディカルで、純粋な思想に共感したクライアントの東氏の存在は、計り知れない。戦う施主という同志を得たことが、奇跡のはじまりなのである。
 建築家は、一人ではなにもできない。良きクライアントたちが今の安藤をつくり上げたのであり、その最初の挑戦が建築史に輝く名作となって実を結んだのが《住吉の長屋》であり、その証拠こそ、あの原図たちであると感じたのだ。その後安藤建築は、世界のロックスターであるボノ(U2)をはじめ、ピューリッツァーやピノーといった世界の名だたる人たちを虜にし、世界中に次々と建築をつくっていく。安藤のクライアントへの敬意は、この展覧会にもところどころに展示されている、彼らにプレゼントしたというポップアートのような手作りパネルにも窺える。

 さて、私の困惑の正体が何かというと、それは《住吉の長屋》の図面以降、安藤の手の痕跡がすっかり見えなくなってしまったことにある。それは、安藤の建築に対する身体性の欠落にもつながるのかもしれない。かろうじて《光の教会》の原寸インスタレーションではなく、その後に展示されていた「シルクスクリーン」が救いであった。というのも、やはり美術館で建築展を開催するということは、実物の建築よりもその先にある建築家の「挑戦」を我々は見たいのであり、もっともそれがダイレクトに表現されていたのが、ミニチュアの模型でもなく、写真や映像でもなく、手の痕跡が残る原図とドローイングによるシルクスクリーン群だったのだ。安藤のシルクスクリーンには、実物の空間に降り注ぐ「光」が抽象化された状態で描かれていた。言葉を必要としない「美」がそこにははっきりと捉えられている。
 私が、同じ建築家として、大きくて遠い安藤さんの背中を追いかけるためにも、その圧倒的な熱量でもって「手で思考」された安藤建築に、これからも挑戦してもらいたい。展覧会は、もう充分だ。今回のもので、ほかの建築展をすべて無効にしてしまうほどのインパクトをつくったのではないか。
 「安藤忠雄」という建築家は、後にも先にも、一人しか存在しない。そして、そんな現代のスタンド・アローンの巨匠は、一切ブレーキを踏むことなく、今なおエンジン全開でアクセルを踏んでいる。
こうしま ゆうすけ

01安藤忠雄
住吉の長屋
1998年 シルクスクリーン
Image size: 43.0×69.5cm
Sheet size: 60.0×90.0cm
Ed.35  サインあり


「安藤忠雄展―挑戦―」
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
会場:国立新美術館
20171004_安藤忠雄展


20171004_安藤忠雄展_裏

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●ギャラリートークのご案内
11月16日(木)18時より 植田実・今村創平トーク<ジャパンネスのこと、都市住宅のこと>
現在フランスで開催中の<ポンピドーセンター・メス「ジャパン・ネス 1945年以降の日本における建築と都市」の報告をするとともに、建築展覧会のあり方、建築の表現についてお話をします。また、同展にてフォーカスされた建築雑誌『都市住宅』について、同展での展示の狙いなど、同誌の元編集長植田実さんとお話しします。(今村創平)
*要予約:参加費1,000円

◆ときの忘れものは「細江英公写真展」を開催しています。
会期=2017年10月31日[火]―11月25日[土]
293

●会期中、細江英公サイン入り写真集を特別頒布しています。

◆ときの忘れものは「メキシコ地震被災地支援・チャリティー頒布会」を開催します。
201711mexico
会期:2017年11月28日(火)〜12月2日(土)
出品100点のリスト:11月11日ブログに掲載
全作品、一律8,000円で頒布し、売上金全額を被災地メキシコに送金します。


●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円


中村美奈子さんが瀧口修造にオマージュした文鎮を制作しました。
中村美奈子 文鎮こげ茶、赤、緑、オレンジの4色あります。
一個:大5,500円 小5,000円(税別)
二個組:10,000円(税別)
三個組:14,000円(税別)
紙ケース付、送料は一律500円(何個でも)。
瀧口ファンならずとも手元に置きたくなるような色彩豊かな佳品です。特別頒布中ですのでどうぞご注文ください。


●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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スタッフSの海外ネットサーフィン No.56「Japanorama. A new vision on art since 1970」

スタッフSの海外ネットサーフィン
No.56「Japanorama. A new vision on art since 1970」


 読者の皆様こんにちわ。多少涼しくなったかと思えば執拗にぶり返してきた熱気もようやくなりを潜め、秋とはなんぞやと言わんばかりに急に冬めいて行く今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。周りがジャケットやコートを着ていても、自分だけは袖捲りのシャツ一枚で相も変わらず季節感がないこと甚だしいスタッフSこと新澤です。

 今回の記事では現在フランスのポンピドゥ・センター・メスで開催されている「Japan-ness. Architecture and urbanism in Japan since 1945(ジャパンネス、日本近現代建築展にみられる建築家によるドローイングの変遷)」をネタにさせていただこうと考えていたのですが、既に二週間前に同展覧会のカタログにも寄稿され、オープニングにも出席された建築家の今村創平さんが事細かに記事を書いてくださっているため、先週末から開催しているもう一つの日本関連の展覧会を、ポンピドゥ・メスと合わせてご紹介させていただきます。

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 ポンピドゥ・センター・メスは2010年にルクセンブルグとドイツにほど近い、ロレーヌ地方のメスにオープンした美術館です。その笠のようなユニークな外見や、雨水を貯めて庭で再利用するなどエコロジーを意識したデザインは、建築家・坂茂とジャン・ド・ガスティーヌの日仏共同設計によるもの。
 名前の通りポンピドゥ・センターの分館であるこの美術館は、パリの本館より優先的に作品を都合してもらえる特権を有しており、併設の劇場やホールではショーや講演会、映画上映、コンサートなども定期的に行われ、現代美術の拠点として地方都市へ文化や経済を分散させるプロジェクトの成功例として評価されています。

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 このポンピドゥ・センター・メスで今月20日(金)から来年の年3月5日(月)まで開催中なのが「Japanorama. A new vision on art since 1970(ジャパノラマ 1970年以降の新しい日本のアート)」。同時開催中の「Japan-ness. Architecture and urbanism in Japan since 1945」と同じく、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)との共催で、東京都現代美術館参事・長谷川祐子氏をキュレーターに、約100人・組の作家による350点あまりの作品を展示する大展覧会です。
 展覧会は1970年の大阪万博以降、戦後の欧米影響から自由となった日本の芸術、視覚美術を概観的に俯瞰することをテーマとしており、1995年の阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件、2011年の東日本大震災等、各時代の出来事に合わせて変遷してきた日本美術の流れを各時代の作品を通してみる事が出来ます。
 ときの忘れものの取り扱い作家である赤瀬川源平草間彌生田中敦子横尾忠則の作品も出品されており、もの派や日本概念派等のムーブメントを個別に見るのではなく、70年代以降の日本美術史におけるそれぞれの立ち位置を俯瞰できる貴重な企画です。

(しんざわ ゆう)

ポンピドゥ・センター・メス展覧会公式サイト(英文)

国際交流基金展覧会紹介ページ

*画廊亭主敬白
駒込に移るときには極力皆さんに移転通知を出し、メールでもお知らせしたのですが、昨日もある女性の方から「青山に久しぶりに行ったのに無くて・・・ おたく移られたのね」と電話をいただきました。お知らせが行き届かなくてすいません。
海外の方もAOYAMA=Toki-no-Wasuremonoというイメージが強いようで、なかなか駒込が浸透しません。華やかなファッションの街から地味な住宅街に移転し、来る人もないのではと案じておりますが、昨日は秋田や金沢からのお客様も(嬉しいです)。二階図書室にある本はすべて売り物ですが、金沢からいらした本好きなUさんは、ベルグランのピカソのカタログや京都の銀紙書房のレア本まで本棚から発掘し、大枚6万円もお買い上げいただきました。感謝!

●図録を刊行しました
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料250円
10月末までにお申し込みいただいた場合は特別価格:2,500円(税、送料サービス)でおわけします。メールにてお申し込みください。請求書を同封して代金後払いで発送します。


中村美奈子さんが瀧口修造にオマージュした文鎮を制作しました。
中村美奈子 文鎮こげ茶、赤、緑、オレンジの4色あります。
一個:大5,500円 小5,000円(税別)
二個組:10,000円(税別)
三個組:14,000円(税別)
紙ケース付、送料は一律500円(何個でも)。
瀧口ファンならずとも手元に置きたくなるような色彩豊かな佳品です。特別頒布中ですのでどうぞご注文ください。


●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。

◆ときの忘れものは「細江英公写真展」を開催します。
会期=2017年10月31日[火]―11月25日[土]
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10月31日(火)16時〜「細江英公写真展」オープニング
細江先生を囲んでのレセプションはどなたでも参加できます。

11月8日(水)18時飯沢耕太郎ギャラリートーク
*要予約:参加費1,000円

11月16日(木)18時より 植田実・今村創平トーク<ジャパンネスのこと、都市住宅のこと>
現在フランスで開催中の<ポンピドーセンター・メス「ジャパン・ネス 1945年以降の日本における建築と都市」の報告をするとともに、建築展覧会のあり方、建築の表現についてお話をします。また、同展にてフォーカスされた建築雑誌『都市住宅』について、同展での展示の狙いなど、同誌の元編集長植田実さんとお話しします。(今村創平)
*要予約:参加費1,000円

ギャラリートークへの参加希望は、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。twitterやfacebookのメッセージでは受け付けておりません。当方からの「予約受付」の返信を以ってご予約完了となりますので、返信が無い場合は恐れ入りますがご連絡ください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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特集展示=瀧口修造とマルセル・デュシャン〜10月24日〜28日

「安藤忠雄展 ドローイングと版画」は昨日10月21日、盛況のうちに終了しました。
1984年の初期版画から、今年描いた新作ドローイングまで15点ほどの展示でしたが、たくさんの方にお出でいただきました。
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《中之島プロジェクト II[アーバンエッグ2]》(右)と《SCENE I /WALL》(左)
02
《水の教会》(左)、《風の教会》(右)

来場者の平均年齢が30歳を切ったのは何年ぶりでしょうか。
最年少が新米パパに抱かれたゼロ歳のご近所の赤ちゃん、最年長は大阪から来られた三島喜美代先生85歳(昭和7年生まれ)。私たちとは40年以上のお付き合いです。
三島喜美代
三島先生を囲んで、右はMEMの石田克哉さん

最終日近くとなるとどこで聞いたのか若い学生さんがぞろぞろ、皆さん珍しそうにあっちこっちうろうろ、長期滞在は亭主の望むところであります。
作品をお買い上げいただいたお客様(今回はイギリス、シンガポール、アイルランドなど海外の方が多かった)には心より御礼申し上げます。
息子さんや、恋人の誕生日祝いに送るという方が二人もいたのには驚きました。
プレゼントに使われるくらい、「アンドー」はよく知られているのでしょう。
おかげさまで光、風、水の教会三部作は完売いたしました。

駒込の展示は終わりましたが、六本木の国立新美術館での「安藤忠雄展―挑戦―」はまだまだ続きます。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
六本木の安藤先生の大個展は日本における「建築展」の歴史をかえる大きなイベントになりつつあります。建築関係ではない一般の人たちがこれほどたくさん入場料を払い、何時間も見て飽きさせない展示にした安藤先生の才能には脱帽します。
振り返ってみれば、安藤先生は「展示の天才」でもあります。
2003年6月21日〜8月31日に東京都現代美術館で開催された「田中一光 回顧展」の展示デザインを担当した安藤先生はあの大会場の壁面を24,000個の透明のペットボトルで埋め尽くした。きらきら光るペットボトルの壁に田中一光さんのポスター群が浮き上がる、誰も思いつかないような画期的な会場構成で、見事な「建築作品」でした。今回の六本木もドローイングを主体とした素晴らしい展示です。
ブームを呼んでいる今回の安藤展、長年「建築家の版画とドローイング」を扱ってきた私たちには追い風です。磯崎新先生の版画をエディションし始めたのが1977年の「現代と声」企画から、継いで安藤先生の版画をエディションしたのが1984年でした。当時の建築界や美術界の反応は「余技」だの「道楽」だの、まともに取り上げてくれなかった。面と向って「どうせゼネコンに売りつけるんでしょ」と言われたことすらあります。
援助を乞うた親しい友人には「他人の家の図面みたいな版画を誰が買うんですか」と諫言されました。
風は最初は海外からでした。
バブル崩壊、リーマンショックで国内の市場は冷え切り、やむなく海外のアートフェアに私達は活路を見出しました。どこでも飛んで行ってくれる若いスタッフたちに恵まれたこともあり、韓国、台湾、スイス、シンガポール、インドネシア、アメリカ、どこに行っても「アンドーとクサマ」を知らない人はいなかった(草間彌生先生のエディションを開始したのは1982年です)。この二人さえ持っていけばブース代を賄うことができました。
倉庫に積んであった在庫のも、最近ではから平原になりつつあります。
画廊の展示は終わりましたが、安藤作品はいつでもご覧になれますので、どうぞ六本木の展覧会で「私も欲しい!」と思ったら迷わず駒込にお運びください。
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さて、今日と明日は休廊ですが、明後日10月24日からは短い会期ですが、「特集展示:瀧口修造とマルセル・デュシャン」を開催します。
会期=2017年10月24日[火]―10月28日[土]
2017年はデュシャン生誕130年の記念すべき年であり、また現代美術史最大の事件となった既製の便器にR・MUTTとサインしただけの〈泉〉を発表してから(ただし実物は現存せず)、ちょうど100年にあたります。ときの忘れものもささやかですが、デュシャン顕彰の試みとして小展示と中尾拓哉さんのギャラリートークを開催します。
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『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』刊行記念
ギャラリートーク<マルセル・デュシャン、語録とチェス>
日時:2017年10月27日(金)18時より
講師:中尾拓哉
*要予約(既に定員に達したので締切りました)

中尾拓哉さんからのメッセージ
 この度、『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』の刊行を記念し、自著『マルセル・デュシャンとチェス』を軸にした、お話をさせていただきます。
デュシャンがマン・レイとチェスをしている映画『幕間』のシーンに始まり、「デュシャンはこの世界を相手にチェスをしてきたのだろうか、あるいはそうかも知れない」と終わっていく、瀧口修造による『マルセル・デュシャン語録』。その中に散りばめられた言葉とともに、デュシャンがチェスにたいして語った言葉を読みながら、彼がいわゆる「制作」をせずに没頭したとされ、「芸術の放棄」の代名詞となった「チェス」の謎を紐解き、多くの人々を魅了したこの人物の営為に迫ります。


中尾拓哉(なかお・たくや)
美術評論家。1981年生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。2014年に論考「造形、その消失において――マルセル・デュシャンのチェスをたよりに」で『美術手帖』通巻1000号記念第15回芸術評論募集佳作入選。単著に『マルセル・デュシャンとチェス』(平凡社、2017年)。
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●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料250円

10月末までにお申し込みいただいた場合は特別価格:2,500円(税、送料サービス)でおわけします。メールにてお申し込みください。請求書を同封して代金後払いで発送します。

目次(抄):
・Personally Speaking 瀧口修造(再録)
・マルセル・デュシャン語録について 瀧口修造(再録)
・檢眼圖 だれの証拠品、だれが目撃者? 瀧口修造(再録)
・私製草子のための口上 瀧口修造(再録)
・「オブジェの店」を開く構想に関するノート 土渕信彦
・マルセル・デュシャンとマルチプル 工藤香澄
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20170930中尾 拓哉 (著)
『マルセル・デュシャンとチェス』

2017年
平凡社 発行
396ページ
21.6x15.8cm
価格:4,800円(税別)*送料250円
*著者サイン入り
ときの忘れもので扱っています。

気鋭の美術評論家がチェスとデュシャンの失われた関係を解き明かし、制作論の精緻な読み解きから造形の根源へと至る、スリリングにしてこの上なく大胆な意欲作。生誕130年、レディメイド登場100年!
「チェスとデュシャンは無関係だという根拠なき風説がこの国を覆っていた。やっと霧が晴れたような思いだ。ボードゲームは脳内の抽象性を拡張する」──いとうせいこう氏推薦(本書帯より転載)
目次(抄):
・序章 二つのモノグラフの間に
・第一章 絵画からチェスへの移行
・第二章 名指されない選択の余地
・第三章 四次元の目には映るもの
・第四章 対立し和解する永久運動
・第五章 遺された一手をめぐって
・第六章 創作行為、白と黒と灰と
〜〜〜
●本日のお勧め作品は、瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』です。
20161217_takiguchi2015_selected_words瀧口修造
『マルセル・デュシャン語録』
1968年
本、版画とマルティプル
外箱サイズ:36.7×29.8×5.0cm
本サイズ:33.1×26.0cm
サインあり
A版(限定部数50部)
発行:東京ローズ・セラヴィ
刊行日:1968年7月28日
販売:南画廊

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

『マルセル・デュシャン語録』については土渕信彦さんのエッセイをお読みください。
11.『マルセル・デュシャン語録』(その1)20150713

12.『マルセル・デュシャン語録』(その2)20150813

13.『マルセル・デュシャン語録』(その3)20150913

●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。

●本日22日(日)と明日23日(月)は休廊です。

◆ときの忘れものは「細江英公写真展」を開催します。
会期=2017年10月31日[火]―11月25日[土]
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10月31日(火)16時〜「細江英公写真展」オープニング
細江先生を囲んでのレセプションはどなたでも参加できます。

11月8日(水)18時飯沢耕太郎ギャラリートーク<細江英公の世界(仮)
*要予約:参加費1,000円

11月16日(木)18時より 植田実・今村創平トーク<ジャパンネスのこと、都市住宅のこと>
現在フランスで開催中の<ポンピドーセンター・メス「ジャパン・ネス 1945年以降の日本における建築と都市」の報告をするとともに、建築展覧会のあり方、建築の表現についてお話をします。また、同展にてフォーカスされた建築雑誌『都市住宅』について、同展での展示の狙いなど、同誌の元編集長植田実さんとお話しします。(今村創平)
*要予約:参加費1,000円

ギャラリートークへの参加希望は、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。twitterやfacebookのメッセージでは受け付けておりません。当方からの「予約受付」の返信を以ってご予約完了となりますので、返信が無い場合は恐れ入りますがご連絡ください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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駒込の安藤忠雄展は今日まで、六本木は絶賛驀進中

六本木の国立新美術館で開催されている「安藤忠雄展―挑戦―」。安藤さんによるトークがあるということで、急きょ聴いてきました。
20171004_安藤忠雄展

トークの前に展覧会を観ました。
綿貫さんから事前に聞いていたものの、展示内容のボリュームにびっくり。
ドローイングをはじめ、版画、建築模型、写真、映像、そして光の教会の1/1の再現。
目が回るようでした。
安藤さんが手がけた建築の紹介VTRはどれもとても短く、集中して観て回るにはそれがよかったです。
個人的には、「頭大仏」が出来上がっていく様子を一年以上かけて定点観測で撮影した映像(早回し)が面白かったです。

それと、今までときの忘れもので扱ってきて観ていた「テートモダン」の模型を見て、これが実現してたらどんなにカッコよかっただろう!と思いました。発電所をガラスの角柱が貫く建物は、見てみたかったと思いました。

展示壁やセクション冒頭のパネルにも安藤さんのドローイングがあり、自由だなあ、と思いました。つーっと伸びた線で描かれる建築のドローイングは、誰にでも描けそうで描けないもののような気がしました。

そうそう、会場入り口で音声ガイダンスを借りました。綿貫さんや尾立さんから「笑えるから絶対借りた方がいいよ!」とのことで、借りたのです。
これがとても面白かったのです。
小気味よい関西弁のリズムと、安藤さんの温かみのある声のトーン。
それと「え、そんなこと言っちゃっていいのかな。」と思わず笑ってしまうような内容でした(いくつか繰り返し聴きました)。

トークが始まる頃には、展示室は人で一杯になりました。
1,000人以上はいたはず。。
若い人、特に男性が多かった印象です。

「ぎょーさん集まってるなあ〜。」
展示室に入ってきた安藤さんが、ポソッと言っていました。

<住吉の長屋>
施主「寒かったらどうするんですか。」
安藤「寒かったら上着を一枚着ればいいんですよ。」
施主「もうすこし寒かったらどうするんですか。」
安藤「もう一枚着ればいいんですよ。」
施主「もっと寒かったら、どうす、」
安藤「そんときは諦めなさい。人間は諦めが肝心よ。」

「自分だったらあんなとこ絶対に住まないけど、それでも施主は40年以上住み続けてくれている。賞をあげるなら安藤にではなく施主に、と言われました。」という安藤さんの言葉が印象的でした。

<光の教会>
会見でも言っているように、安藤さんはガラスをいつか取ってやると今でも思っているそうです。自然の光で作られた十字架は、天気や時間によって異なった表情を見せ、美しかったです。

〜〜

ここ数年、建築の展覧会が多いこと。
正直に言うと、今まで「建築」になぜ人々がそこまで熱狂するのか、イマイチ分かりませんでした。
今回の安藤さんの展示を観て、すこしだけ、分かった気がします。

自然と人間の間に建つのが建築と思っていました。
遮断というか。
そういう自分には、「いかに光、風といった自然を取り入れるかということを考え、そうすることで成立する建築を目指している。」という安藤さんの言葉は特に印象に残りました。

あとは安藤さんの人柄と、建物の潔さ。
カッコよかったです。
最後に頭に残った安藤さんの言葉を。

・内臓は無いけど希望はあります。
・日本はもう終わりや、元気がないもの。
・本を読みなさい、朝ごはんを食べなさい。
・(トークの時、)頭の悪い質問はせんといてな。
・挑戦してきたというより、ただ生きてきたんです。


北海道に行ったときはトマムに宿泊することがあるのですが、そこにある「水の教会」も未だに見たことがありません。。
次回行ったときには是非見てみたいと思います。

ときの忘れものの「安藤忠雄展 ドローイングと版画」は本日最終日ですが、国立新美術館の「安藤忠雄展―挑戦―」は12月18日[月]まで開催しているので、是非行かれてみてください。
あきば めぐみ

*画廊亭主敬白
数日前、安藤先生から電話がありました。
「どうや売れてんのか」「若いのは新聞なんか読まへん、みなユーチューブや」「三万冊サイン入れたけど、それでも足らんちゅうて追加したばかりや」
(どうも関西弁の再現は東男には難しいですね)
亭主は普段は「この展覧会はぜひ行って」なんて言いません。スタッフたちは亭主がいくらもえてても(燃えると書くべきか、萌えるなのか)知らん顔している、寂しいもんです。
しかし安藤忠雄展とあらば「社命で観覧を命ず」というわけで、順番に勤務時間中に六本木に向わせています。
上掲はときの忘れものきってのクール派秋葉の観覧の記。面白かったらしい。
本日は駒込の最終日です。ここでしか見られない安藤ワールド、ぜひお出かけください。

●今日のお勧め作品は安藤忠雄です。
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安藤忠雄《大山崎山荘 I》
1998年
シルクスクリーン
イメージサイズ:50.0×81.0cm
シートサイズ:60.0×90.0cm
Ed.35   サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

■『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』を刊行しました。
瀧口修造展 I』、『瀧口修造展 II』よりページ数も増えました。
2017年10月末までにお申し込みいただいた方には特別価格:2,500円(税、送料サービス)でおわけします。メールにてお申し込みください。請求書を同封して代金後払いで発送します。
E-mail. info@tokinowasuremono.com

TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』
2017年
ときの忘れもの 発行
92ページ  21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
ハードカバー  英文併記
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
通常価格:2,500円(税別)、送料250円

刊行を記念して◎10月27日(金)18時〜中尾拓哉さんによるギャラリートーク<マルセル・デュシャン、語録とチェス>を開催します。
*要予約:参加費1,000円
生誕130年、レディメイド登場100年! 現代美術の父マルセル・デュシャンの制作論における秘密を、チェスを手がかりに精緻に読み解いた力作『マルセル・デュシャンとチェス』の著者中尾拓哉さんを講師に迎えます。

中尾拓哉(なかお・たくや)
美術評論家。1981年生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。2014年に論考「造形、その消失において――マルセル・デュシャンのチェスをたよりに」で『美術手帖』通巻1000号記念第15回芸術評論募集佳作入選。単著に『マルセル・デュシャンとチェス』(平凡社、2017年)。

「安藤忠雄展 ドローイングと版画」は本日が最終日です。
会期:2017年9月26日[火]〜10月21日[土] 11:00〜18:00 ※日・月・祝日休廊
201709_ando

●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。

この秋のイベントのご案内
10月31日(火)16時〜「細江英公写真展」オープニング
細江先生を囲んでのレセプションはどなたでも参加できます。

11月8日(水)18時飯沢耕太郎ギャラリートーク<細江英公の世界(仮)
*要予約:参加費1,000円

11月16日(木)18時より 植田実・今村創平トーク<ジャパンネスのこと、都市住宅のこと>
現在フランスで開催中の<ポンピドーセンター・メス「ジャパン・ネス 1945年以降の日本における建築と都市」の報告をするとともに、建築展覧会のあり方、建築の表現についてお話をします。また、同展にてフォーカスされた建築雑誌『都市住宅』について、同展での展示の狙いなど、同誌の元編集長植田実さんとお話しします。(今村創平)
*要予約:参加費1,000円

ギャラリートークへの参加希望は、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。twitterやfacebookのメッセージでは受け付けておりません。当方からの「予約受付」の返信を以ってご予約完了となりますので、返信が無い場合は恐れ入りますがご連絡ください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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磯崎新+アニッシュ・カプーア「アーク・ノヴァ」が東京ミッドタウンに登場

先日植田実先生と綿貫さんと令子さんと私の4人で、東京ミッドタウン芝生広場に現れた移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」に行き、「ルツェルン・フェスティバル」を鑑賞してきました。

アーク・ノヴァは、磯崎新先生とアニッシュ・カプーアさん制作によるもの。
ドーナツ状に膨らんだ紫色のそれは高さ18m、幅30m、奥行36mの大きさで、滑り台として遊べそうな大きな遊具にも見えます。これがコンサートホールだなんて、想像もつきません。一体この構造はどうなっているのだろう???と興味をそそります。

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「アーク・ノヴァは、塩化ビニールでコーティングされたポリエステル製の膜が1時間ほどの送風でドーム状に膨らみ、折り畳んで トラックで輸送できるように設計されている空気膜構造の建築です。
空気膜構造の外皮は輸送に適した軽量性を持った素材であり、同時に自由な形状をとることができます。ステージや客席などのホールの構成要素は輸送・再設営に配慮した規格で構成され、494名収容できるこのホールでは、2013年から2015年にかけて、松島、仙台、福島の3か所で展示され、コンサートやワークショップなどが行われました。」(TOKYO MIDTOWN HPより引用)

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内部空間はピンク色で、まるで胎内にいるような感覚。照明の数はそんなにありませんが、中は結構明るいです。

空気はどこから入っているのかと一周してみると、会場の裏に送風機がありました。
それにしても風だけでこの大きさのものを膨らまし、約2週間維持するのは簡単なことではないはずです。
風で少しは撓んだりするのかな?と思っていましたが、かなりパンパンに張っているように見えました。

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この日はピアノ、フルート、トランペット、トロンボーンの4名の奏者で行なわれたコンサートでした。音響はどうなのかな?と気になっていましたが、それぞれの音がドーナツ状の内部空間に充満し、心地よく響いていました。

会場内は暑いという噂もありましたが、私たちが訪ねた日は曇り空で少し肌寒い日だったため、快適に1時間ほどを過ごしました。

この不思議な空間を体験でき、記憶に残るひと時を過ごせました。

おだち れいこ

磯崎新+アニッシュ・カプーア「アーク・ノヴァ
「ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 2017 in 東京ミッドタウン」
開催期間:9月19日(火)〜10月4日(水)
場所:ミッドタウン・ガーデン 芝生広場
主催:東京ミッドタウン
特別協力:ルツェルン・フェスティバル
ラテン語で「新しい方舟」を意味する「アーク・ノヴァ」は、スイスの音楽祭「ルツェルン・フェスティバル」が東日本大震災の復興支援のために企画し、 建築家の磯崎新と英国人彫刻家のアニッシュ・カプーアによって制作された移動式のコンサートホール。高さが18m、幅30m、奥行36mと巨大であり、494名を収容することができる。塩化ビニールでコーティングされたポリエステル製の膜は送風によってドーム状に膨らみ、 折り畳んでトラックで輸送できるように設計されている点が特徴だ。
「アーク・ノヴァ」は、2013年から2015年にかけて、松島、仙台、福島の3か所で計3回展示されており、コンサートやワークショップで延べ1万9千人を動員してきた実績がある。

●本日のお勧め作品は磯崎新です。
磯崎新「闇1」小磯崎新 Arata ISOZAKI
「闇 1」
1999年 シルクスクリーン
イメージサイズ:58.3×77.0cm
シートサイズ:70.0×90.0cm
Ed.35  サインあり

礒崎新「闇2」小磯崎新 Arata ISOZAKI
「闇 2」
1999年 シルクスクリーン
イメージサイズ:58.3×77.0cm
シートサイズ:70.0×90.0cm
Ed.35  サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


■『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』を刊行しました。
瀧口修造展 I』、『瀧口修造展 II』よりページ数も増えました。
2017年10月末までにお申し込みいただいた方には特別価格:2,500円(税、送料サービス)でおわけします。メールにてお申し込みください。請求書を同封して代金後払いで発送します。
E-mail. info@tokinowasuremono.com

TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』
2017年
ときの忘れもの 発行
92ページ  21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
ハードカバー  英文併記
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
通常価格:2,500円(税別)、送料250円

目次(抄):
・Personally Speaking 瀧口修造(再録)
・マルセル・デュシャン語録について 瀧口修造(再録)
・檢眼圖 だれの証拠品、だれが目撃者? 瀧口修造(再録)
・私製草子のための口上 瀧口修造(再録)
・「オブジェの店」を開く構想に関するノート 土渕信彦
・マルセル・デュシャンとマルチプル 工藤香澄

刊行を記念して◎10月27日(金)18時〜中尾拓哉さんによるギャラリートーク<マルセル・デュシャン、語録とチェス>を開催します。
*要予約
:参加費1,000円
生誕130年、レディメイド登場100年! 現代美術の父マルセル・デュシャンの制作論における秘密を、チェスを手がかりに精緻に読み解いた力作『マルセル・デュシャンとチェス』の著者中尾拓哉さんを講師に迎えます。

中尾拓哉(なかお・たくや)
美術評論家。1981年生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。2014年に論考「造形、その消失において――マルセル・デュシャンのチェスをたよりに」で『美術手帖』通巻1000号記念第15回芸術評論募集佳作入選。単著に『マルセル・デュシャンとチェス』(平凡社、2017年)。

◆ときの忘れものは「安藤忠雄展 ドローイングと版画」を開催しています。
会期:2017年9月26日[火]〜10月21日[土] 11:00〜18:00 ※日・月・祝日休廊
201709_ando

●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。

この秋のイベントのご案内
10月31日(火)16時〜「細江英公写真展」オープニング
細江先生を囲んでのレセプションはどなたでも参加できます。

11月8日(水)18時飯沢耕太郎ギャラリートーク<細江英公の世界(仮)
*要予約:参加費1,000円

11月16日(木)18時より 植田実・今村創平トーク<ジャパンネスのこと、都市住宅のこと>
現在フランスで開催中の<ポンピドーセンター・メス「ジャパン・ネス 1945年以降の日本における建築と都市」の報告をするとともに、建築展覧会のあり方、建築の表現についてお話をします。また、同展にてフォーカスされた建築雑誌『都市住宅』について、同展での展示の狙いなど、同誌の元編集長植田実さんとお話しします。(今村創平)
*要予約:参加費1,000円

ギャラリートークへの参加希望は、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。twitterやfacebookのメッセージでは受け付けておりません。当方からの「予約受付」の返信を以ってご予約完了となりますので、返信が無い場合は恐れ入りますがご連絡ください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」 第9回

倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」

第9回 孤立するモダン ロンシャン礼拝堂


倉方俊輔(建築史家/大阪市立大学准教授)


画:光嶋裕介(建築家)
原画

 ロンシャン礼拝堂は、1955年に献堂された時から突出していた。一見して、既存のルールから外れていた。キリスト教の礼拝堂には見えなかった上に、それまでのル・コルビュジエの作品にも、一般化できる要素とできない要素とが混じり合っていたが、これほどまでに、来たるべき世界の普通を作品から抽出しようという思いを裏切るものはない。では、これは何であるのか。未来でないとしたら、彼はどの過去に戻ったのか。表現主義? 古典主義? あるいは実はモダニズムを内包しているのだろうか? ロンシャン礼拝堂が、それまでコルビュジエに共感していた同時代の建築家や批評家たちを戸惑いの渦に巻き込んだとはよく言われる形容だが、今見ても、やはりそうだっただろうと思う。
 完成から60年以上経った今でも突出し、孤立した存在であることには変わりない。結局、このような作品が世界の現代建築の潮流となることは ―形態などほんの一部の類似を除いては― なかった。では、逆に過去の建築の潮流に帰属させられたかというと、それも無理だった。
 もちろん、パルテノン神殿から地中海沿岸のヴァナキュラー建築、中世の修道院や船舶まで、さまざまなモチーフが意識と無意識の狭間を横切って流れ込んでいることは、研究者たちの努力によって明らかにされている。アーカイブに保管されている図面の描線1本が、仔細な寸法が、樋やドアノブといった細部が、標本を解剖するかのように検討された結果だ。研究がどんなに生真面目で部分的に見えても、根本には「これは何であるのか」という衝撃が存在しているだろう。この一つの建築は人を突き動かし、豊穣に生産してきた。
 そして、何であるかを一言で言い表すことは、ますます困難になった。多種多様な要素がここで一つに集まっているという特異点としての性格はいっそう強まった。あくまでもピン留めされることを拒否し、コルビュジエの作品の系譜の中でも孤立している。彼自身も賢明なことに、同様のものを繰り返さなかったのだ。
 これがキリスト教の礼拝堂だという事実は、孤立の理由の一つではあるだろう。研究者のウィリアム・J.R. カーティスは、最初に設計の話が来た時、コルビュジエがすでに教会は「死滅した制度」だと主張して辞退したことに触れ、「このばかげた返答は、マグダラのマリアが晩年を過ごしたといわれるエックス・アン・プロヴァンス近郊のサント・ボームに建つ神殿の計画案が拒否されたという不快な経験とおそらく無関係ではないだろう」と推測している(※1)。ロンシャン礼拝堂の以前に考えたキリスト教の建築は、この実現しなかった計画のみだった。死滅したもの、と考えたら、何でも可能だ。コルビュジエは、ここから新たに始めることにした。

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 屋根の形がまず目を引く。これを上手に例えられれば、これが何であるのかを言い当てられそうだが、屋根はあらゆる方向で姿を変える。結局、既存の特定のものに当てはめることを諦めなくてはならない。
 重いようで軽いような屋根だ。その厚みと打ち放しコンクリートの表面は、物体としての存在感を感じさせる。似たものは土木構造物のような実物しか思い付かない。圧倒的でありながら、浮いているから不思議なのだ。壁は、実際には純白を使うことはまれだった1920年代の「白の時代」の壁よりも真っ白く、小石を混ぜた吹き付け塗装を施すことで、何でつくられているかを体感させる。抽象的な平面ではないのだ。
 そんなわけで、ともに構築的な表情でありながら、別々の要素であることが強調された屋根と壁とは、鋭いコントラストをなすでも、合一するわけでもなく、戯れる。屋根と壁の間にスリットが開いているのが、外観からも分かるだろう。庇のように屋根が壁に優まさって重く立ち込めたかと思えば、裏手では屋根は見えなくなる。塔は両者の間にある。ある方向からは壁に連続し、別の方向からは屋根の曲面と共鳴する。重力と無重力の間を、形は行き来しているのだ。
 結びつけられることと離れることとが一つになっている。それは周辺環境との関係も同じだ。ロンシャン礼拝堂は、彫塑的である。先にも触れたように、既存のルールから離れて超然としているというだけでなく、先のようにぐるりと一周して観察できるほどに周囲から見られる建ち方だ。軽やかに、彫塑的に、周囲から浮き上がっているとひとまず言える。
 同時に周囲に、重く結びついている。もちろん「させられている」のではなく、自ら選択「している」のだ。重力や素材との関係と同様に、第二次世界大戦後のコルビュジエは、離れることの一辺倒ではなく、あえて結びつくことへと自由の領域を拡張した。
 張り出した屋根の下は外部礼拝のための場所である。それだけではなく、歩き回れば、それぞれの壁が周囲の地形とともにあることに気づく。建物はいわば外部を囲い込み、領域をつくり出しているのだ。これは彫塑的であることと矛盾しない。光の変化を際立たせる造形は、時間や季節に応じて周囲それぞれが持つ個別の性格を強調している。建設されることによって、この敷地はよりこの敷地らしくなっている。どこにでも移動可能な彫塑ではなく、周囲に緊結された1回限りの建築なのだとわかる。
 内部に進もう。外部とは異なる空間がある。しかし、明確なコントラストで、建物という領域に閉じたドラマを生み出すことはない。屋根も壁も、基本的には外部の正直な反転である。歩き回るにつれて、バラバラな体験が一つに結ばれることも外部での経験を思い起こさせる。厚い壁に穿(うが)たれた窓は、光を増幅する装置である。 窓ガラスに文字が手書きされている。いくつか読んでみよう。「Je vous salue marie」(マリアに敬意を)、「mere Dieu」(母、神)、「Lamer」(海)。言葉は礼拝堂のマリア信仰と共鳴しながら、ある者を信仰へ、ある者を形態のさらなる読み解きへと誘う。連想の効果が導入されている。
 壁の一部には、第二次世界大戦で破壊された以前の礼拝堂の石積みが使われている。コルビュジエはここが古くからの巡礼の地であり、かつて古代の神殿があったことに注意を喚起している。
 ロンシャン礼拝堂は、環境の中の装置としてある。自然を反映して周囲のランドスケープを強調し、これまで築かれてきた文化・言語の連想を利用し、場所の歴史を引き受けている。根本にあるのは造形であって、それが言葉以上に人々を善導することを設計者は信じている。礼拝堂は都市の中にあるのではないが、孤独なモニュメントではない。内部・外部を通じた人の集まりが想定されている。共同体への信仰は、ここでも健在なのだ。

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ロンシャン礼拝堂
竣工年│1955年
所在地│Colline de Bourlemont 70250 Ronchamp, France
(撮影:倉方俊輔)
季節によって公開時間が異なるが、一般に公開されている。
カトリックで聖母マリア生誕の日とされている9月8日と被昇天の8月15日に多くの信徒が集まる

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 ロンシャン礼拝堂は、この場所のさまざまなものと結びついて、個として建っている。モダンなのである。「モダン(modern)」は、ラテン語の「ちょうど今」が由来。まさに今、何をしたら良いかを先入観抜きに考える態度だ。過去からも考えないし、未来のルールをつくるためにあるのでもない。
 コルビュジエは礼拝堂という対象に、空(から)の姿勢で向きあった。この場所にある環境、歴史、用いられる資材。そして、連想できるさまざまなものを結び合わせたのである。現実主義と理想主義は手を携えるものであり、それに反するのはルールに縛られたものである。ここにあるのは設計者の誠実さがもたらした孤立だ。建設以来、多くの要素が読み解かれ、傑作として認識されている。
 しかし、ルールがないのだとしたら、それが良いものであることが、どうやって建設以前に算定できるのだろう。建築家への全権委任状ではないか。コルビュジエは恐ろしいことにモダンがルール化ではなくて、逆だということを示してしまった。傑作によって、世界中の建築家に勇気を与え、一定の者をその方向性に走らせ、そして建築家の「悪」がやがて反省させられることの根源かもしれない。

※1…ウィリアム・J.R. カーティス著、中村研一訳『ル・コルビュジエ̶理念と形態』(鹿島出版会、1992)p.203

くらかた しゅんすけ

■倉方俊輔 Shunsuke KURAKATA
建築史家。大阪市立大学大学院工学研究科准教授。1971年東京都生まれ。著書に『東京レトロ建築さんぽ』『ドコノモン』『吉阪隆正とル・コルビュジエ』、編著に『吉祥寺ハモニカ横丁のつくり方』ほか。
生きた建築ミュージアム大阪実行委員会委員

◆倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」は毎月17日の更新です。

表紙
『建築ジャーナル』
今年の『建築ジャーナル』誌の1月〜12月号の表紙を光嶋裕介さんが担当することになりました。
テーマはル・コルビュジエ。
一年間にわたり、倉方俊輔さんのエッセイ「『悪』のコルビュジエ」と光嶋裕介さんのドローイング「コルビュジエのある幻想都市風景」が同誌に掲載されます。ときの忘れものが企画のお手伝いをしています。
月遅れになりますが、気鋭のお二人のエッセイとドローイングをこのブログにも再録掲載します。毎月17日が掲載日です。どうぞご愛読ください。

●10月6日はル・コルビュジエの誕生日でした(Le Corbusier、1887年10月6日 - 1965年8月27日)。
生誕130年を祝う、今日のお勧め作品はル・コルビュジエです。
20171017_corbusier_31ル・コルビュジエ
《二人の女》
1938年
リトグラフ
イメージサイズ:17.6×26.7cm
シートサイズ:38.5×50.2cm
Ed.100
サインあり

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会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
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この秋、ときの忘れものはイベントが目白押しです。
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細江先生を囲んでのレセプションはどなたでも参加できます。

11月8日(水)18時飯沢耕太郎ギャラリートーク<細江英公の世界(仮)
*要予約:参加費1,000円

11月16日(木)18時より 植田実・今村創平トーク<ジャパンネスのこと、都市住宅のこと>
現在フランスで開催中の<ポンピドーセンター・メス「ジャパン・ネス 1945年以降の日本における建築と都市」の報告をするとともに、建築展覧会のあり方、建築の表現についてお話をします。また、同展にてフォーカスされた建築雑誌『都市住宅』について、同展での展示の狙いなど、同誌の元編集長植田実さんとお話しします。(今村創平)
*要予約:参加費1,000円

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