浜田宏司のエッセイ

浜田宏司のエッセイ“ART&BOOK”ナナメ読み 第1回

新連載と企画展のお知らせ
「アートブックラウンジ Vol.01“版画挿入本の世界”」


《綿貫さん
いつもお世話になっております。
原稿依頼のメール拝見しました。
長文ブログを書くのが苦手な私に、ときの忘れものブログの連載メンバーに加われとの事。
身に余る光栄ではありますが、わたしの拙筆な文章を「エッセイ」なる読み物として、ときの忘れもの豪華執筆陣と肩を並べてリリースするのは気が引けるので、ご依頼の件遠慮させていただこうかと……。
ただ、せっかくの機会ですので、ディレクターとして担当させていただいた展示構成や今後の展示の参考になりそうな情報を定期的にレポートさせていただきますので、こちらは新人スタッフの研修資料として情報共有していただくと共に、ブログに掲載していただいても構いません、どうぞご活用ください。(2012年02月16日 浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.1「ジョナス・メカス写真展」から抜粋)》

上記の文章は、ときの忘れもの“ギャラリーブログ”の豪華執筆陣に紛れて2012年にスタートした「浜田宏司の展覧会ナナメ読み」という不定期連載の初回の書き出しから引用した文章です。偶然にも連載が始まったのが四年前の二月の中旬と、この新しい連載の掲載時期と重なるので、ブログを管理するギャラリーとしては、筆の進まない筆者に向けて、心機一転/新装開店と新たな場所を提供したという趣向でしょうか。
不定期ブログのスタートから、もう四年。まだ四年。感覚的には後者の方ですが、改めて取り上げた題材を読み返すと、「えっ、この展覧会2011年の東日本大震災の前じゃなかったっけ?」とだいぶ前に関わったと思い込んでいた企画展が、実はわずか4年前に開催されていたという現実と記憶との距離に違和感を感じたりしています。
この四年間で個人的に変わったことといえば、自身で運営するギャラリースペース“Gallery CAUTION”が神宮前から日本橋/大伝馬町に移動した事くらいで、日々の展示や海外でのプロジェクトのペースは多くもなく少なくもなく、特段変化はないように思います。そんな、変化のない日々を送っていた昨年末、日本橋のギャラリーにときの忘れもの亭主がふらりと来廊され、「来年から、うちの画廊で定期的に古書店企画を開催する。ついては、新たにアートブックに特化したブログを連載しなさい。」との指令が下りました。いや、誤解のないようフォローしておきますが、執筆を依頼頂いた時の口調や話の切り出しは、「指令」的なものではなく、もちろんもっとソフトなものでした。ただ、長年のお付き合いさせていただいた経験の中から、本能的に『「お受けしたらタイヘンナコトニナルかもしれない」とはいえ「お断りすると別の意味でタイヘンナコトニナルと思う」』と、危険信号を察知したのですが、どちらを選んでも「タイヘンナコトニナル」のであれば、ポジティブに大変になる結果を選んだ方が正解かと思い連載をお受けした次第です(「タイヘンナコト」に関してはご想像にお任せします)。 当初は月一で、個人的にコレクションしているアーティストブックや美術書を紹介する連載の予定でしたが、約二週間後には、予想どおり思わぬ方向に話が膨らんで、12本のブログ連載の他にブログの内容と連動した企画展を年4回”お手伝い”させていただく事が決定しました。このブログはその第一回目の企画展を紹介する内容となっています。

さて、ブログ/企画展のタイトル「アートブックラウンジ」ですが、私が韓国のアートフェアの特別展として実施された企画タイトルです。
ご存知の通り大規模なアートフェアは、世界各国から画商が集結し、出展ギャラリーが推薦する美術作品を展示販売する見本市です。ただ、韓国や台湾、そして先日訪問したシンガポールなど、アジアのアートフェアを実際に足を運んで視察した限り、開催国から出展している画廊の展示作品の多くは、ローカル色が強く自分が理解している現代美術の文脈からは乖離しているように感じることが多々ありました(※ここでの感慨は、私個人が抱いた印象であり、全く別の価値観があることを前提としています)。 現地のギャラリースタッフに「なぜこの作品を出品しているのか?」と、作品の見どころや作品コンセプトを尋ねても、「インパクトがあるから」、「可愛いモチーフの作品で、自国では人気(よく売れている)の作家だから」など、ほとんどの場合抽象的な回答が返ってくるだけで、作品のコンセプトやアートヒストリーにおけるポジショニングなどロジカルな回答が帰ってくることは大手の画廊を除いてごく稀です。
「なぜ、アジアの新興国における現代美術市場には、作品を語る上でロジカルな言葉が存在しないのか?」
そもそも、東アジア圏において美術作品なるものに国際的な視点から市場価値が生まれアートマーケットなるものが誕生したのがここ十数年間の出来事です(アカデミックな視点を除く)。もちろん、それ以前からも韓国の李禹煥やナムジュンパイク、中国のアイウエイウエイ、蔡國強など、今では国際的なアートマーケットで評価されている作家もいますが、その多くは自国ではなく海外で活動し評価されてきた作家たちです。
「アートブックラウンジ」は、そんなローカル色の強いカオスティックなマーケットを読み解くためのツールとして企画された展覧会です。百年近い現代美術の歴史のタイムラインを引き、重要な作家や展覧会、作品を紹介する本の表紙のパネルをカテゴリーごとに展示し、実際にその書籍を手にとってアートに対する理解を深めるための入り口となることを目標としました。2010年に開催されたDAEGU ARTFAIRの特別展として開催され、その後釜山のギャラリーと、ART BUSAN2015の特別展として実施され高い評価を得ました。

1DAEGU ARTFAIR 2010の特別展


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AART BUSAN 2015にて


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そして、最初の話に戻って、綿貫さんからの「“本”をテーマにした展覧会を企画しなさい」という特命のもと、今年3月からときの忘れものを会場にして、新たな企画として実施する運びとなりました。
さて、企画を組み立てるにあたって、欧米の現代美術がリアルタイムで紹介されてきた日本のアートマーケットに対して以前実施したタイムラインの展示は釈迦に説法、必要ないかと思い、違う方向性とコンセプトの展覧会を提案させていただきました。今までのコアなアートファン以外に、まだアートをコレクションしたことのないコレクタービギナーやそれこそアートに関心のなかった領域にまで足を運んでいただくようなテーマ設定を心がけます。企画に関しては、従来通りのときの忘れものならではのカテゴリー(建築家の作品など)に加えて、今までにときの忘れものが扱っていないアート以外のジャンルをテーマにした選書と作品をご覧いただく予定です。単に美術作品を鑑賞するだけではなく、関連書籍を通じて作品に対する理解を深めることが可能な場を提供したいと考えています。

第一回目の企画は「アートブックラウンジ Vol.01“版画挿入本の世界”」と題した展覧会を開催します。
アンディ・ウォーホルジャスパー・ジョーンズ李禹煥文承根靉嘔大沢昌助ジョナス・メカス磯崎新サム・フランシス、フランチェスコ・クレメンテ、パウル・クレー、大竹伸朗、ほか合計20名以上の作家の版画作品が挿入された書籍をご展示販売いたします。
版画挿入本に関しては、ときの忘れものの前身でもある版元現代版画センターが日本においてはパイオニアでありこの画廊が誇るべきアイデンティティーでもあると考えています。展覧会を通じて画廊の歴史を俯瞰しつつ、初心者でも比較的手が届きやすい価格帯のエディション作品をコレクションする機会を提供します。どうぞ、ご期待ください。
浜田宏司(「アートブックラウンジ展キュレイター/Gallery CAUTIONディレクター)

「アートブックラウンジ Vol.01“版画挿入本の世界”」
会期:2016年3月9日[水]〜3月17日[木] ※日・月・祝日は休廊

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今回より日・月・祝日は休廊しますので、実質7日間の会期です。

●今日のお勧め作品は、磯崎新です。
20160220_isozaki_drawing2磯崎新
「ザ・パラディアム(NY)」
1995年
ペン、紙
Image size: 42.0x56.0cm
Sheet size: 46.0x72.1cm
サインあり


こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ときの忘れものは2016年3月より日曜、月曜、祝日は休廊します。
従来企画展開催中は無休で営業していましたが、今後は企画展を開催中でも、日曜、月曜、祝日は休廊します。

浜田宏司のシンガポール視察記から(続)

浜田宏司のシンガポール視察記から(続)

【シンガポール出張−3】


  「プルデンシャル・アイ・アワード」は、世界的に有名な金融サービスグループ プルデンシャル・ファイナンシャルとパラレルコンテンポラリーアート、サーチギャラリーの3社によって設立されたアジアのアーティストにフォーカスしたアワードです。「デジタル/アート」、「ドローイング」、「インスタレーション」、「ペインティング」、「写真」、「彫刻」六つのカテゴリーがあり、昨年は日本から選出されたChim↑Pomが大賞を受賞して話題を集めました。
今年の受賞者の作品を集めた展覧会がマリーナベイ・サンズのお膝元 アート・サイエンス・ミュージアムで開催されていました。日本からは絵画部門の最終候補に小西紀行がノミネートされ、彼の作品はアートステージシンガポールでもアラタニウラノから展示販売されていてプルデンシャル・アイ・アワードの相乗効果かセールも好調のようでした。
プルデンシャル・アイ・アワードの主催者として参画するサーチギャラリーの、アジアのアートシーンにフォーカスしたアプローチに大変興味を持ちました。サーチギャラリーは、2009年のロンドンオリンピック開催時に、韓国の現代美術作家を集めた展覧会「Korean Eye/2009」を開催しています。それを機に「Indonesia Eye/2011」「Hong Kong Eye/2013」「Prudential Malaysia Eye/2014」と隔年で開催し アジアの現代美術における21世紀の文脈を構築しつつあります。さて、この流れがはたして Damien HirstやTracey Eminを輩出した90年代 “YBA’s” を新たに。となるか見守りたいです。

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【シンガポール出張−4】

「ラーメン二郎」という屋号のラーメン店があるのですが、ご存知ですか? 都内のコアなラーメンファンなら一度は入ったことのある有名店です。ここの特徴として一般的なラーメンの三倍の量はある麺のボリュームもそうですが(しかもサイズは「小」)、謎の「マシマシ」「カラカラ」などの暗号により増量可能な具材によるテーブル上の高層ビルとも言える芸術的な山盛りの盛付けが特に有名です。試しに「ラーメン二郎 マシマシ」で画像検索してください。見ているだけで胃もたれしそうな画像を目にすることができるでしょう。

さて、今回はラーメンの話ではありません。
もちろん絵画の話です。最近韓国のアートフェアで展示されている作品に絵の具をてんこ盛りにした作品をよく目にすることがあります。数年前はそんなに多く感じませんでしたが、抽象トレンドの拡大とともにこの表現の作風が本当に増えてきたと最近実感しています。この絵具厚盛りの作品を見るたびに、ラーメン二郎の「マシマシ」を思い出します。
シンガポールでもやはりこのテイストの作品を見かけたのですが、はたしてどこまでキャンバスから盛り上がっていくのでしょうか、アートフェアを回る時、個人的に楽しんでいる視点の一つでもあります。

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【シンガポール出張ー5】

シンガポール滞在最終日に、今回の渡航をサポートしていただいたときの忘れものの綿貫夫妻のお供で、マリーナベイエリアの別の展示会場で開催されているサテライトアートフェア「Singapore Contemporary Art Show 2016」を訪問しました。
アートステージ効果か、プレビューの日は華やかな雰囲気に包まれ盛況でした。
とはいうものの、サテライトの宿命で、本家と比較するとほのかに漂う悲哀感は否めませんでした。そんな中、日本から離れ現地シンガポールで開業された画廊が展示していたオノサトトシノブ、山田正亮、高橋大輔等のセレクションが異彩を放っていました。

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◆臨時ニュース
遠藤現建築創作所の遠藤 現さんから、フランク・ロイド・ライト設計の「自由学園明日館」のテレビ放映のご案内をいただきました。
〜〜〜
寒さの中、少しずつ春の足音も聞こえてくる今日この頃ですが、
皆様いかがお過ごしでしょうか。

来る2月7日(日)と14日(日)の2回にわたり、BS朝日の「百年名家」という、
八嶋智人さんと牧瀬里穂さんが日本各地の名建築を訪ねる番組で、自由学園明日館が特集されます。
http://www.bs-asahi.co.jp/100nen/

昨年末にロケが行われた後も、ディレクターご自身が何度も足を運んで追加の撮影を重ね、
つい先日完成したとのご報告がありました。

放送はお昼の12時から、1回目は90分スペシャルになるとのことです。
ぜひご覧ください。よろしくお願いいたします。〜〜〜
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●今日のお勧めは、オノサト・トシノブです。
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オノサト・トシノブ「F-9
1985年 シルクスクリーン
22.0x27.2cm
Ed.100 Signed
※レゾネNo.205

86
オノサト・トシノブ「F-10
1985年
シルクスクリーン
22.0x27.2cm
Ed.100  Signed
※レゾネNo.206

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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

浜田宏司のシンガポール視察記から

シンガポール出張−1
浜田宏司
浜田samファサード
シンガポール・アート・ミュージアム(SAM)のファサードです。
実は、当初は昨年新しく開館したアートギャラリーに行くつもりが、タクシーの運転手が勘違いして訪問した施設ですが、棚から牡丹餅で、素晴らしい人達と出会う事が出来ました。

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昔の小学校をリノベーションした瀟洒な佇まい

浜田SAM展覧会入り口201601
「TIME OF OTHERS」展開催中

昔の小学校をリノベーションした瀟洒な佇まいの美術館シンガポール・アート・ミュージアム(通称:SAM)は、シンガポールに於いて現代美術の普及に努めてきた美術館です。昨年話題となった国立のアートギャラリーの開館により、観客動員が落ち込んでいるようですが、シンガポールを訪問する際はぜひとも訪ねていただきたい美術館です。
今回偶然にも日本語でのガイドツアーに参加させていただき、日本からシンガポールに長期滞在されているボランティアガイドのチームの方々から貴重なシンガポールのアート事情をお伺いできたことが今回の出張の最大の収穫でした。
現在日本、シンガポール、オーストラリアのキュレイターが企画した展覧会「TIME OF OTHERS」が開催中で、東京での展覧会の後こちらに巡回してきたそうです。東京で見損なった展覧会を海外で見るとは。MOTでも見ておけば、展示空間が変わることによって、作品の見え方がどう変わるかを検証できたのにと、後悔しきりです。
浜田SAM展示201601浜田SAM展示201601


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浜田SAM展示201601

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浜田SAM展示201601


シンガポール出張−2
今回の出張を決断した目的の一つが、マリーナ地区に昨年末登場した国立美術館 National Gallery Singapore(ナショナル・ギャラリー・シンガポール)の視察。
浜田ナショナルG外観
外観

最近グローバル経済とアートマーケットの共振性が様々な場面で論じられていますが、アジア圏においてはこのナショナル・ギャラリー・シンガポールと香港の “M+”(2019年開館予定)の計画が、今までにアジア圏に存在したの美術館のコンセプトやスケールを超えた枠組みでプログラムが組まれていることもあり話題を集めています。
場所は、Merlionから徒歩15分ぐらいの場所にある旧市庁舎と最高裁判所が入っていた歴史的建造物。これの二つの建築を巨大なガラスのアトリウムでつなぎ、美術館の機能をインストールし四年の歳月を経てリノベーションしたそうです。ですから、常設展示の部屋や吹き抜け空間に昔ながらの面影を残した内装がアジア諸国の巨匠の作品とされる近代絵画にマッチしていて、アジア版ルーブル美術館といった趣でしょうか?
浜田ナショナルG内観タテ浜田ナショナルG内観

浜田ナショナルG階段ヨコ

さて、展示内容はといえば、まだ開館したばかりで展示内容が充実していないこともあり、肩すかし感があったことは否めません。まあ、何の先入観もなく、単純に東南アジアの近代絵画を鑑賞したいと思って鑑賞する分には、満足できる内容ではないでしょうか?
一刻も早く現代美術領域におけるコレクションを充実させていただきたいものです。
浜田ナショナルG展示浜田ナショナルG展示


浜田ナショナルG展示浜田ナショナルG展示


浜田ナショナルG展示浜田ナショナルG展示

浜田ナショナルG展示浜田ナショナルG展示


浜田ナショナルG展示

ナショナル・ギャラリーを訪れて、一つ得るものがありました。
それは40年代から60年代にかけての作品に、庶民の日常生活や家族をモチーフにした作品が非常に多く描いことに気づいたことです。このモチーフは韓国の美術館やアートフェアでも多く見かけます。推測するに、植民地時代及び戦禍の中で生き延びたアジアの人たちが、美術作品に対して「美しさ」とか「コンセプト」ではなく、本質的な部分で求めた平和に対する憧れを表しているのではないでしょうか?
いわゆる現代美術的な視点ではなく、こうした歴史的背景を踏まえた上で作品作品と対峙できたことは貴重な経験でした。
(はまだこうじ
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*画廊亭主敬白
おはようございます。
申し訳ありませんが、今月のスタッフSの海外ネットサーフィンは、1月26日の締め切りに記事を間に合わせる事ができそうにありません。1日掲載日をズラしてください。

シンガポール・新澤>

亭主と社長はスタッフより一足先に帰国して、旅の疲れを癒し、今日はのんびりするかと思っていたところに、シンガポールのスタッフSから緊急SOS!
本日のブログで Art stage singapore のレポートを掲載する手はずだったのですが、どうも原稿どころじゃないらしい。

「終わりよければ全て良し」とはよく言ったもので、内実はどってんばったんの連続で、詳しくはスタッフSのレポートに譲りますが、ときの忘れもの海外遠征史上、最も波乱にとんだフェアでした。
出発時の大雪から始まり、作品輸送中の事故、作品破損、通訳のキャンセル、展示換え、その他、その他、ここでは書けない話も・・・
シンガポールの町のホームセンターで棚板や金具を買い求め、画材店で絵の具やボンドを探し、スタッフたちは東奔西走。幸い現地でギャラリーをやっているK氏の手厚い援助により何とか危機を乗り越えられました。
これで売上げがなかったら南極のスコット隊さながらの悲劇でした。
最後の一日は観光予定だったのですが、搬出、納品、集金等の後始末に追われてまだたいへんらしい。

ということで苦しいときの助っ人頼み
強力助っ人浜田さんに泣きついて、浜田さんのfacebookから転載させていただきました。
最初から最後まで浜田さんにお世話になります、ありがとう。

●今日のお勧め作品はジョナス・メカスです。
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ジョナス・メカス
Nick Ray, Spring Street, New York. 1978
1978 (Printed in 2013)
Archival inkjet prints
Image size: 34.0×22.8cm
Sheet size: 39.8×29.1cm
Ed.7  Signed

■ニコラス・レイ Nicholas(Nick) Ray(1911〜1979)
アメリカ人映画監督。1950年代アメリカ映画の隠れた巨匠であり、ヌーヴェルヴァーグの作家たちから尊敬を受けた監督として知られる。代表作はジェームス・ディーン主演の「理由なき反抗」。

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

打ちのめされた一日

打ちのめされた一日

浜田宏司


 「自分って、ほんとうに小さい尺度の物差しでしかARTの世界を見ていなかったんだなぁ」と、打ちのめされるニュース/情報に出会うときが多々あります。
数年前に、中国人のアーティストが村上隆の作品を抜いて、アジアにおける現代美術のオークションレコードを更新したというニュースを目にしたときもその一つ。なんせ、その中国人のアーティスト「曾梵志」の名前を知らなかったのですから・・・・。
いや、名前どころかその作品さえ、見た事もなかったのですから(見ていたとしても、記憶に残っていない)。

 昨日、あるブログを読んでいて、またまたどっぷりと打ちのめされた気分に浸ってしまいました。
そのブログとは、「ときの忘れもの」さんが運営しているギャラリーブログで、その中で現代美術のコレクターとして有名な笹沼俊樹さんが定期的に連載されている「現代美術コレクターの独り言」というタイトルのエッセイです。
「アメリカの若きコレクター達から学んだこと」と題した20回目の連載の中に登場する「ジョーン・ミッチェル/ JOAN MITCHELL」という名の現代美術作家が登場するくだりが大変興味深く、またスリリングでもあるのですが・・・ご想像通り私、この作家全く“知らなかったのです”。

ふ〜ん、どんな作家なんだろう?

と画像検索をかけたところ、これまた「全く見た事のない」抽象表現主義のイメージが “どどーん”とモニター上に溢れてきて、二度びっくり。中期から後期にかけての Cy Twombly の作風を連想させるような作品もあるのですが、その多くは(というか、全部)初めて目にする作品ばかりです。
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 驚いた事はこれだけではないのです。笹沼さんのエッセイの中でこの作家が紹介されるエピソードに、’85年頃にニューヨークの画廊でとあるコレクターが、当時誰も目につけていないジョーン・ミッチェルの初期の作品を購入するというくだりが出てきます。その中に、『このコレクターの特徴は、いつも、他のコレクターが注目してない“力のある作家”に眼をつける点です・・・(中略)・・・・とにかく、眼筋がすごく良い。しかも、そのような作品は安値に放置されてますしね』との画廊のオーナー(?)のコメントがさらに好奇心を加速させます。

ふ〜ん、当時(30年前)安値なら、いま、いくらぐらいになっているんだろう? と、過去のオークションレコードを調べたところ。

$ 5,122,500 USD
※Christie's, New York (May 13, 2015)
Post-War & Contemporary Evening Sale (Sale 3740)
Estimate: $ 5,000,000 - 7,000,000 USD

えっ!!!!!!!!!!?
自分が全く知らないアーティストの作品が六億円以上の金額で取引されている・・・。

 そりゃあ、アートの価値がオークションプライスに比例するものではない事は重々承知していますが、客観的な評価基準の一つとして考えると重要な要素です。
抽象表現主義を代表する女流作家と言えば、ヘレン・フランケンサーラー/Helen Frankenthaler ですが、ベンチマークとして、ヘレン・フランケンサーラーのオークションレコードを調べたところ、最高額が$ 2,830,000 USD・・・・・・。

 あ〜、自分はなんと小さな世界で生きているのだろう・・・・。
と、打ちのめされた一日でした。
(浜田宏司さんのfacebookより)

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*画廊亭主敬白
先週終了した入札の後始末(入金の確認、梱包、発送 etc.,)で画廊は戦場の如き有様。
ご注文、お問い合わせ等への返信が遅れ気味で皆様にはご迷惑をおかけしますが、どうぞお許しください。

上掲の浜田さんの文章に関連して。
夏に「締め切りが名作を生む」という駄文を書いたとき念頭にあったのが浜田さんと深野一朗さんのことでした。
お二人とも現代美術を「からだ」で楽しみ、「ことば」で表現できる稀有な才能を持っている。
論理的思考の苦手な亭主なんざ「あたま」で理解しようと四苦八苦し、説明しようとしても語彙不足で文章にならない。画商としては二流、三流ですね。
何とかお二人に寄稿していただきたいのですが、のらりくらりと逃げられてばかり。というわけで、今回は浜田さんのfacebookから勝手に再録しちゃいました(嘘です、ちゃんとお許しをいただいています)。
ついでに浜田さんの画廊に押しかけ、今度こそ定期連載の約束をとりつけてまいりました。乞うご期待。
残るは深野さん!何とか口説きたいものです。

浜田宏司「現代美術と磯崎建築〜北陸の冬を楽しむツアー」

現代美術と磯崎建築〜北陸の冬を楽しむツアー」に参加して〜その2

浜田宏司のエッセイ・番外編

「蛙の涙 〜磯崎新設計中上邸を訪ねて〜」

日本橋でちいさなギャラリーを構えている私ですが、キャリアのスタートは建築設計でした。1980年代後半に建築を学んだ文化学院在籍中、当時のデザイン界を席巻していたポストモダン・ムーブメントの流れの中で、建築/プロダクトデザイン/アート/イベントと、ジャンルを超え横断的な活動でさまざまなメディアの顔となっていた磯崎新は、ヒーロー的な存在でした。思い返すと、建築家の卵の視点で、建築家が設計した空間体験も、授業の一環として訪ねた「お茶の水スクエア(1987竣工)」の施工現場だったこともあり、以降、日本各地に点在する磯崎建築を訪ねるのが旅の密かな楽しみとなりました。
ときが過ぎ、生業を建築設計から舞台/イベント関連の制作にシフトしてからというもの、磯崎建築の空間体験は別の次元で更に加速します。磯崎建築は、美術館や劇場などの公共建築や企業の自社ビルが多いため、建築を訪ねたとしても空間体験は、外部か施設内の一般に公開されているエリアに限られます。ところが、舞台スタッフの立場として磯崎建築に対峙することで、一般人が立ち入ることが出来ないディープなエリアまで磯崎新設計の劇場建築(つくばセンタービル/ノバホール、東京グローブ座、カザルスホール、京都コンサートホール、なら100年会館、グランシップ/静岡芸術劇場、など)を堪能出来たことは、生涯の宝となっています 。

しかし、磯崎ファンとして唯一訪ねたことの無い建築カテゴリーが「住宅建築」です。そもそも作品数が少ないことに加え、プライベート空間に招かれる機会などあるはずも無く、あきらめるというよりも、この空間を体験することは不可能だと思っていました。ところが、昨年末ときの忘れもののメールマガジンから「現代美術と磯崎建築〜北陸の冬を楽しむツアー」のお誘いがあり、訪問先には中上邸が含まれているではありませんか! 「この機を逃すまい」と、同ツアーに参加させていただいた次第です。旅の道中や他の訪問先は、綿貫さんや石原さんのブログに詳しいと思うので、中上邸イソザキホールにフォーカスした空間体験を綴ってみたいと思います。ご存知の通り磯崎さんは、作品が発表されるたびに、ご自身のエッセイで作品のコンセプトや引用先を解題されていますが、今回はあえてそういった文献には眼を通さず、肌で感じ取った体験談を誤訳を恐れずにそのまま書き起こしてみたいと思います。
※磯崎新設計の住宅建築に関する考えを詳しく知りたい方は、「手法が/鹿島出版会刊 (1997/04)」に収録されているエッセイ「ヴィッラの系譜」や、竣工当時の中上邸が紹介されている「GA HOUSE 14 /エーディーエー・エディタ・トーキョー刊 (1983/07)」を一読することをお勧めします。

1月24日、ツアー一行は福井駅に集合し、マイクロバスで最初の訪問先、福井県立美術館で開催中の「福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み―中上光雄・陽子コレクションによる―」を拝見しました。そして、勝山の主力観光スポットでもある黒川記章設計による「福井県立恐竜博物館」に向かいます。が、ツアーの工程表には、その途中で中上邸の“外観見学”とルートが組まれています。最初は「後で内部も含めてゆっくり見学するのに、なぜ、途中下車してまで外観を見学するのか?」と、不思議に思っていましたが、恐竜博物館見学後中上邸で開かれる中上家の方々と地元コレクターの皆様との懇親会のために訪れた時は既に日没で、結果として昼間と夜では違う表情を見せるファサードを見学することが出来ました。その時は、ツアー主催者の判断とファインプレーに、心の中で拍手を送りました。

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さて、待望の磯崎建築の個人住宅の名作中上邸を目の前に、雑誌や著書を通して想像していた建築が周辺の環境や素材感を伴って立ち現れた感慨として、「ああ、やはり"住宅" ではなく、"VILLA" なんだなぁ。」という言葉が最初に脳裏に浮かんできました。
磯崎ファンはご存知のことと思いますが、磯崎新設計の個人住宅作品は、基本的に"VILLAシリーズ"と呼ばれています。"VILLA=ヴィッラ"(ヴィラとも表記するそうですが、ときの忘れものエディションに習い、ここでは"ヴィッラ"で統一します)とは、古代ローマ時代に上流階級の人々が郊外に建てた「家屋」を語源とします。その後この言葉は、一時別の意味に置き換えられるものの、中世のイタリアで再びカントリー・ハウスを意味する言葉に返り咲き、以降、郊外にぽつんと立っている一軒家の呼称として定着していきます。
中上邸をモチーフにした版画作品「ヴィッラ Vol.3 NAKAGAMI HOUSE」を参考にして、この建築のどの部分にヴィッラとしての魅力を感じたのかを検証してみましょう。

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結論から言うと、大胆な建物の配置と計算された外構計画に、その理由が集約されていると考えられます。
前面道路側に建築物とほとんど同じ面積の前庭を置いた大胆な配置は、通り沿いの住宅や電柱などのインフラから距離をとり、建物のスケールも相まって前面道路に立った鑑賞者が建築と対峙した時に、ファサードがかなり遠くに感じる視覚効果を生みます(大げさではなく)。さらにこの効果を高めているのが、外構の意匠です。一般的な住宅地において、前面道路側に庭を設けて、室内の採光の確保や屋外のプライベートスペースとして利用することは別に珍しいことではありません。しかしその場合、外壁や植栽を敷地境界に設けて外部からの視線を遮断する対策が講じられます。結果、植栽などで視線を遮られた建築は通行人の眼に触れることはありません。しかし、中上邸では、前面道路に面したコンクリートの外構を低く抑え、母屋に向かって延びる側面の外構を高くすることによりパース効果を生み、建築に奥行きを与えます。

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また、この視覚効果は、前面道路を渡って反対側の歩道から建築を見た時に一層強調されます。腰の部分まで雪に埋もれたその姿は、草原の中に小さいながらも凛とした姿で来訪者を迎え入れるヴィッラの雰囲気を十分想起させてくれます。

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外観や敷地計画に負けじと、内部空間も、磯崎新の建築言語満載の濃密な空間が展開され来訪者を迎え入れてくれます。

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玄関ドアには、マルセル・デュシャンのレディメイド作品「フレッシュ・ウイドウ」のデザイン要素が引用され、ギャラリーとして使われているメインホールの天井には、ツインヴォールトがダイナミックに空間を支配し、二階の短い渡り廊下は、歩く時に浮遊感を体感できます。
この濃厚な磯崎ワールド全開の空間の中で、オーナーのご子息や地元コレクターの方々とアートや建築に関して語り合えたことは、ほんとうに貴重な体験となりました。機会を改め、時間をかけてこの建築を再訪したいと心から願いつつ、中上邸を後にしました。

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そういえば、2日間のツアーは終始天候に恵まれていたのですが、中上邸での懇親会の夜に限って、雨が降りました。周辺にはまだ残雪が高くつもっているにもかかわらず、寒さや冷たさを感じさせない不思議な雨でした。懇親会の冒頭、ご子息が、体調を崩して入院中の主に代わって挨拶をされたのですが、その中で「このように、たくさん人が集まる賑やかな会が好きな人ですから、この場に居合わせられないことが残念だと思います」とコメントされていたことが、強く印象に残るスピーチでした。

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そして、帰郷後数日してからときの忘れものより、中上邸の主の訃報が届きました。一度も面識の無い主に想いを馳せつつ、あの夜の雨は、地元市民が中上邸に付けた愛称「カエルのお家」のその蛙が主人の生前葬を偲んで流した涙ではなかったのかと思ったりしています。
この場を借りて、ご冥福をお祈り申し上げます。

(浜田宏司/Gallery CAUTIONディレクター)

*中上邸イソザキホール誕生の経緯についてはコチラをお読みください。

福井県立美術館では2月8日まで『福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み―中上光雄・陽子コレクションによる―』が開催されています。ときの忘れものが編集を担当したカタログと、同展記念の特別頒布作品(オノサト・トシノブ、吉原英雄、靉嘔)のご案内はコチラをご覧ください。

浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.5「韓国アートツアー2013 <夏>」

浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.5
「韓国アートツアー2013 <夏>」


記録的な猛暑日が続いたのこの夏、どのように過ごされましたか?
アートファンにとっても今年の夏は、「瀬戸内芸術祭」「あいちトリエンナーレ2013」、「堂島ビエンナーレ」、ミュージック×アートの併催フェスティバル「SNIF OUT」など、例年になく大型イベントが重なり、日本列島を文字通りアートウエーブが席巻した熱い夏だったのではないでしょうか?
我がときの忘れものも、7月のアート大阪に始まり8月に開催されたアート名古屋など、獅子奮迅・・・・? いや、孤軍奮闘でアートウエーブを乗り切った夏になったと亭主から聞き及んでおります。
さて、日本のアートウエーブは日本だけではなく、おとなり韓国にもその影響を及ぼしているようです。8月の初めに韓国出張したときの状況をレポートしましょう。
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現在、六本木ヒルズでユニークなインスタレーションが展開されている草間彌生は、「韓国で最も人気のあるアーティストです」と、言い切っても過言ではないでしょう。その草間彌生の大規模な企画展が、大邱市美術館で開催されていました。渡航前の朝日新聞の記事で「過去最大規模の企画展」と紹介されているように、広々とした空間を利用した展示は圧巻でした。正直言って、個人的には大味な展示ではないかと感じるところもあるのですが、アジア圏の来場者を想定した場合、希少性や資料性の高い作品展示よりもインパクトの強い展示構成に内容が偏ってしまうのは否めないのかなと推測しています。また、当初は予定に入れていたにも関わらず、移動時間の都合で今回は観る事が出来なかったのですが、サムスン美術館プラトー(ソウル)で開催されている村上隆の回顧展は、アート系雑誌の表紙を飾るなどその他メディアでの露出も多く、期待の展覧会として話題を集めているようです。次回韓国出張の楽しみとしましょう。
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今回の韓国出張の主な目的は、今年で16回の開催を数えるイチョン市で開催されている国際彫刻シンポジウムのオープニングセレモニーに出席する事でした。この歴史ある彫刻シンポジウムに、本年度の岡本太郎賞を受賞した"鉄の芸術家"加藤智大がGallery CAUTIONの推薦で参加する運びとなり、3週間の滞在制作ののち、コンセプチュアル且つスケールの大きな作品を制作しました。この作品は市の買い上げ作品となり市内の彫刻公園にパブリックアートとして設置される予定です。
また、9月には、元数寄屋大工というキャリアを持つ美術家佐野文彦が、釜山ビエンナーレの関連企画展として開催される野外彫刻展でスチール製の茶室を制作します。そう、釜山といえば、ときの忘れものの大阪ー名古屋と続いたアートフェアツアーで大好評だった韓国の若手作家ハ・ミョンウンさんの新作を見る機会を得ました。場所は韓国の大手ギャラリーガナアートのブランチ「GANA ART BUSAN」です。今年6月の個展で発表された作品ですが、壁一面を使った大胆なインスタレーションが作家の成長を感じさせてくれました。

5ハ・ミョンウンさんの新作展示

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個人的には、巨匠から若手作家まで日本のアートウエーブを隣国で体験する夏の旅となりましたが、9月に入り韓国も秋の観光シーズンを迎えます。草間彌生の展覧会は11月まで、村上隆の展覧会も12月まで開催されています。ちなみに、ときの忘れものがブースを出すKIAF2013は10月3日から7日の会期となっております。みなさまの旅の予定に入れてみてはいかがでしょうか?
浜田宏司(Gallery CAUTION)

浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.4「ソウルアートツアー2013 <春>」

浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.4「ソウルアートツアー2013 <春>」

私事ですが、ここ数年アートフェアや企画展の打ち合わせで訪韓する機会が多くなっています。短い滞在の中で時間を見つけてはギャラリーや美術館を散策してソウルの現代美術の最新モードをリサーチしているのですが、最近では、日本に巡回しても話題を集めるであろうと思われる興味深い企画展に遭遇する確率が高くなってきています。しかも、アートに限らず、デザインやファッションなどカルチャー全般にわたってプログラムが展開している事に韓国経済を牽引するスピード感を感じます。この四月にソウルを訪れた際に観て、気になった展覧会をいくつか紹介しましょう。
Steidl1『How to Make a Book with Steidl』
Daelim Museum
2013.04.11.〜2013.10.06.
http://www.daelimmuseum.org/eng/index.do

『STEIDL』は、1967年の創業のドイツの出版社です。企画−編集ー印刷ー製本ー出版と、本が誕生するまでの制作過程をすべて自社で手がける事により、クオリティーの高い書籍をリリースすることで知られ、世界中の写真家やハイブランドからの支持を集めています。
個人的にはEDWARD RUSCHAやJenny Holzerなど、アート関連のタイトルがお勧めではあるのですが、ファッション系のタイトルにも洋書店での立ち読みですますには惜しくついついアマゾンでポチッと購入してしまうほど、センスの良い造本とブックデザインが定評のパブリッシャーです。
その、STEIDL社の本の制作過程をテーマにした展覧会をまさか韓国で観る事になるとは、夢にも思いませんでした。場所はソウル市内の観光スポット景福宮からほどちかいロケーション。実際の製本過程で使われた素材や映像を多用した展示でSTEIDLの高い造本技術の魅力に迫ります。STEIDLファンではなくとも、「本」を愛する幅広い世代が楽しめる納得の展覧会でした。
Steidl2

Steidl3

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michael lau1『{ARTOY} "since michael lau"』
SEJONG CENTER EXHIBITION HALL
※会期終了

マイケル・ラウ(MICHAEL LAU)は、香港在住のアクションフィギュア・アーティストです。十数年前に雑誌リラックス(休刊)で紹介され、日本国内で流行していたフィギュアブームの波に乗って人気に火がつき、話題を集めたアーティストです(渋谷のPARCOでも大規模な展覧会が開催されました)。しかし、過剰に熱しやすく冷めやすいのが日本人の性格なのか、日本国内では当時の人気はいずこへ・・・と思っていたら、アジアいや、世界的レベルで独自のポジションを確立した作家として人気を集めているようです。たとえば、NIKEの広告クリエイティヴやタイアップ限定モデルので制作。ティム・バートン監督による映画「アリス・イン・ワンダーランド」とのコラボフィギュアの発売。そして、今回の大回顧展。会場では、現在までに制作された数百体を数える作品の他に平面作品やデザイン画、3mにも及ぶ巨大モデルも展示されていました。実はこの展覧会、ソウル在住の友人がプロデュースしていて、展覧会実施に至った裏事情を聞く事が出来ました。本人曰く、ソウルのアートマーケットは欧米や日本と比較してまだまだ成長段階にあり、一般的な市民が、ギャラリーに足を運んだり作品を購入するにはもう少し時間を必要とする状況があるとの事。しかし、カルチャー寄りではあるものの、アート的な作品体験を通じて若い世代にアートに興味を抱く切っ掛けを作る事が展覧会を企画した最大の目的で、敷居の低いコンテンツを提供する事が韓国のアートマーケットの成長に繋がるプロセスだと力説していました。
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michael lau3

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TIM0『Tim Burton Exhibition』
Seoul Museum of Art
※会期終了
http://sema.seoul.go.kr/global/exhibitions/exhibitionsView.jsp?seq=278&sType=DD&sStartDate=20010101&sEndDate=20130429&sSrchValu=


アメリカの映画監督ティム・バートン(Tim Burton)の回顧展がソウル市立美術館(SEMA)で開催されていました。
もう、衝撃の展覧会でした。 いろんな意味で。ティム・バートンといえば、「シザーハンズ」「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」「マーズアタック」「チャーリーとチョコレート工場」など、カルト的人気を誇る映画を次々にリリースしている映画監督です。
前期の代表作「シザーハンズ(1990)」公開以降、約四半世紀に渡って日本での人気を保ち続けています。また、その独特の映像美の原点となる絵コンテやドローイングの評価が高く、多くの画集を出版しています。
展覧会最終日前日という事もあり会場は激混み!チケットを購入してからなんと、2時間待ちでの入場となりました。今回の展覧会は2010年に開催され、話題を集めたMOMAの巡回展という事もあり、ドローイング、映画で使われた衣装やプロップ、オブジェ、写真作品、短編映画などの映像作品も多く展示され、膨大な物量とクラッシック的な雰囲気が漂う会場との相乗効果でまるでティム・バートンの映画の中に迷い込んでしまったような印象を受けました、見終わったあとしばらく呆然としてしまうほどの興奮を得た展覧会でした。

そして脳裏に浮かぶ疑問・・・。
「なぜ、この展覧会が日本で開催されなかったのか???」

実はこの展覧会情報をfacebookにエントリしたところ、元美術手帳編集長に速攻でリンクをシェアしていただき、また、友人知人からも多くの「イイネ!」の声があった事から、展覧会に対する注目の高さがわかります。集客的には絶対に成功する展覧会だとは思うのですが、美術館でなくとも新聞社とかなぜ呼ばなかったのでしょう(呼べなかったのか)。
最近は、海外の美術館で開催される展覧会の巡回展を引っ張ってくるような元気のいい主催者が少なくなっているようにも感じます。これも日本経済の低迷や東日本大震災の影響でしょうか、残念です。
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アジア圏に於いて、最も長く豊かな現代美術の歴史を誇りこの地域のアートシーンをリードしてきた東京も、うかうかしていると、「面白い展覧会を見るためにはソウルやシンガポールに行こう!」なんて、近隣諸国にその座を明け渡す日も近づいてくるのではないかなどと、日本のアートシーンの未来に憂いを抱くソウルの一日でした。

浜田宏司(Gallery CAUTION)

*画廊亭主敬白
久々の強力助っ人・浜田さんの登場です。
このところ韓国行きを頻繁に繰り返している浜田さん、ならあちらの様子もレポートしてよと頼んだ次第。ときの忘れものも10月にはソウルのアートフェアKIAFに出展しますのでいろいろ参考になります。
さて本日3日から6日まで四連休で画廊はお休みさせていただきます。スタッフたちもゆっくり休養をとってまた7日から元気に働いてくれるでしょう。
亭主と社長ものんびりさせていただきます。
ブログは執筆者の皆さんやスタッフのおかげで毎日更新です、明日は福井県勝山の街歩きイベントをご紹介します。どうぞお楽しみに。

『磯崎新建築論集』刊行!

『磯崎新建築論集』刊行!

浜田宏司


磯崎新ファン待望の著作論集の刊行が始りました。実際にまだ本書を手にしていないのですが、公表されている情報を元に、その魅力に迫ります。

【『磯崎新建築論集(全8巻/岩波書店)』第1巻 
散種されたモダニズム ― 「日本」という問題構制 ― 横手 義洋 編】


出版社のサイトには、建築家磯崎新が長年にわたって発表してきた活字の仕事を体系ごとに整理し、十数編の意欲的書下ろし論考と著者自身による各巻解題を収録した”集大成的著作論集”と本著作集の方向性が示されています。これは、今までに刊行された著作の編集スタイルを踏襲した構成でもあるのですが、大きく異なるのは、過去に発表された文章を各刊に設定されたテーマにシャッフルされ「建築論」の名の基に、あらたに紐付けされた点。加えて、各書には次世代を担う建築家・建築史家を編集協力者に起用し、”今の時代の視点”を新しいエッセンスとして含ませています。若い世代の客観的な評価が、古くは半世紀以上前のテキストに対して新鮮な空気を送り込み、”古い読者”の印象を大きく変えるでしょう。

本建築論集の「特色」を読む限り、〈全8巻を通して体系的に建築論を構築する〉といった展開ではなく、過去に発表された文章をベースにして、ハードな「建築論」とソフト的な「応用編」2本立ての構成のようです。前半(1〜6巻)が、著者の建築に対する問題意識の展開を大きなテーマにまとめた、ある意味今回の著作集の骨格となる「建築論」。そして残りの2巻(7、8巻)で、前半の刊行分で展開した「建築論」を解題として、さまざまなプロジェクトの生成プロセスや思考の変遷がひも解かれていく展開のようです。

刊行にあたっての著者メッセージとして『・・・私が記した文章は,調査研究というよりはプロジェクトであり,「日付けのついたエッセイ」としての論考である.・・・(岩波書店HPより抜粋)』と本人が語っているように、自身の文章の立ち位置を常に「エッセイ」と表現していた磯崎新が発表する初の「建築論集」。個人的には、80年代に一大ムーブメントを巻き起こした「ポストモダン」に関する現時点での評価や論考に期待しているのですが、目次を読む限り、第1巻「散種されたモダニズム」にそのあたりの考察が仕込まれているのではないかと推測されます。初回刊行分から期待大です!
浜田宏司/Gallery CAUTION
磯崎新建築論集 表紙磯崎新建築論集 中

磯崎新建築論集 裏1磯崎新建築論集 裏2

『磯崎新建築論集』 全巻構成

第1巻 散種されたモダニズム ――「日本」という問題構制
[解説]横手義洋(東京電機大学)
 ■体裁=四六判・上製・カバー・292頁
 ■定価 3,780円(本体 3,600円 + 税5%)
 ■2013年2月26日
 ■ISBN978-4-00-028601-5 C0352

(第2回/3月26日発売)
第2巻 記号の海に浮かぶ〈しま〉――見えない都市
[解説]松田達(松田達建築設計事務所)

第3巻 手法論の射程――形式の自動生成
[解説]日埜直彦(日埜建築設計事務所)

第4巻 〈建築〉という基体――デミウルゴモルフィスム
[解説]五十嵐太郎(東北大学)

第5巻 「わ」の所在――列島に交錯する他者の視線
[解説]中谷礼仁(早稲田大学)

第6巻 ユートピアはどこへ――社会的制度としての建築家
[解説]藤村龍至(藤村龍至建築設計事務所)

第7巻 建築のキュレーションへ――網目状権力と決定
[解説]南後由和(明治大学)

第8巻 制作の現場――プロジェクトの位相
[解説]豊川斎赫(国立小山工業高等専門学校)
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著者からのメッセージ
 半世紀ほどむかし、海外の建築家、批評家、芸術家たちと知り合いになった。彼等と対等にやり合うには、フリーランスでプロジェクトを制作することしかないと知った。
 私は公職や教職につかずに、アーティスト=アーキテクト=アーバニストとして、国際的な建築・都市の設計や芸術展に参入することにした。その際の提案手段は、スケッチや、ドローイングや、それに若干の言葉であった。いくつかは実現したが、大部分は未完(アンビルト)のままである。
 その間に私が記した文章は、調査研究というよりはプロジェクトであり、「日付けのついたエッセイ」としての論考である。時と場に応じて、特定の相手へむけている。ときに、〈芸術〉〈建築〉〈都市〉などメタレベルを論じ、脱領域しているのは、変化生成する都市的文化にかかわっているからである。しかしいずれの場合にもそこに通底するのは、私が思考の拠りどころにしている「建築」である。
 このたび〈建築論集〉として整理編集するにあたり、主題ごとに、ひと世代以上若い方々にご協力していただいた。私は〈いま〉を補完する新稿を加えた。さらに半世紀後の世代に読みつがれてほしいと考えたためである。
磯崎新
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*画廊亭主敬白
磯崎ファンの浜田さんに今回の建築論集紹介をお願いしたのですが、原稿をいただいたときにはまだ配本されていませんでした。
先日岩波書店から献本が届き、早速読みふけっています。
『磯崎新建築論集 1』 表紙

各巻の表紙には、磯崎新連刊画文集『百二十の見えない都市』(ときの忘れものエディション)のために制作されている銅版画が使われます。この銅版画が挿入される第二期エディションは途中で制作がストップしていて未完のため、まだ頒布されていません。一足先に本の表紙でお目見えという次第です。
また各巻の月報にも、磯崎新先生の銅版画が使われます。
こちらの方はやはりときの忘れものエディションから磯崎新銅版画集『栖 十二』の銅版画(手彩色)が各号数点づつ使われる予定です。
第一巻月報の執筆は、石山修武先生と岡崎乾二郎先生です。
『磯崎新建築論集 1』 冊子1『磯崎新建築論集 1』 冊子2

第7信より挿画23_A磯崎新〈栖 十二〉第七信より《挿画23
コンスタンティン・メルニコフ[メルニコフ自邸] 1927年 モスクワ

*磯崎新〈栖 十二〉第七信についての詳細はコチラをお読みください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

◆ときの忘れものは2013年3月15日[金]―3月30日[土]「具体 Gコレクションより」展を開催します(※会期中無休)。
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企画・監修=石山修武
出品:白髪一雄、吉原治良、松谷武判、上前智祐、堀尾貞治、高崎元尚、鷲見康夫

※3月16日(土)17時より、石山修武さんと河晃一さんによるギャラリートークを開催します。
河晃一
造型作家、美術館学芸員。
1952年兵庫県芦屋市生まれ。甲南大学経済学部卒業。卒業後、染色家中野光雄氏に師事、80年から毎年植物染料で染めた布によるオブジェを発表。87年第4回吉原治良賞美術コンクール展優秀賞、第18回現代日本美術展大原美術館賞受賞。
『画・論長谷川三郎』の編集、甲南学園長谷川三郎ギャラリーや芦屋市立美術博物館の開設に携わり「小出楢重と芦屋展」「吉原治良展」「具体展」「阪神間モダニズム展」「震災と表現展」などを企画した。93年にはベネチアビエンナーレ「東洋への道」の具体の野外展再現、99年パリジュドポムの「具体展」など海外での具体の紹介に協力。06年よりは兵庫県立美術館に勤務されました。
(要予約/参加費1,000円)
メールにてお申し込みください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com

『松本竣介展』図録
価格:800円(税込、送料無料)

執筆:植田実、16頁、図版30点、略歴
※お申し込みはコチラから。

浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.3「究極のポータブルミュージアム」

浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.3「究極のポータブルミュージアム」

【展覧会ナナメ読み No.03】
展覧会タイトル:究極のポータブル・ミュージアム―60年代のN.Y.を駆けた30人のアーティスト“The New York Collection for Stockholm”
会場:ときの忘れもの
会期:2012年3月2日[金]―3月10日[土]
ストックフォルムC

昨年末のある日・・・・。

画廊亭主:「『The New York Collection for Stockholm』の展覧会タイトルどうしよう?」

H:「『ポータブル・ミュージアム』ってコンセプトはアリだと思いますが・・・」

画廊亭主:「いいね! それ。・・・で、どんなミュージアムなの?」

H:「究極の・・・・(汗;)」

画廊亭主:「ハイ! 決定。それで行こう!」

わずか、1分足らずで展覧会のタイトルが決定するとは・・・。
でも、企画タイトルの決定プロセスはそんなものです。展示作品と展覧会のコンセプトが明確であれば、10時間考えても行き着く答えは同じです。タイトルを見た人が一瞬で理解出来るコンセプトが含まれていればいいんです。
本展の主役となるポートフォリオ『The New York Collection for Stockholm』が制作された背景は、本展の紹介文に詳しいのでこちらに譲るとして、今回は展覧会タイトルともなっている『ポータブル・ミュージアム』について少し書きます。

『ポータブル・ミュージアム』と聞いて、どんな作品/作家をイメージしますか?
最近では、岡本太郎生誕100年を記念して各地で開催された展覧会会場で販売されたガシャポン、「岡本太郎アートピースコレクション」が話題を集めました。本ミニチュアモデルを制作した海洋堂は、アート界の人気食玩シリーズ「村上隆のSUPERFLATMUSEUM」を手掛けたモデルメーカーでもあり、美術館のミュージアムショップにアート・ガシャポンを普及させた火付け役でもあります。
人気作家のアートピースをフィギュアでもいいから全種集めてポータブル・ミュージアムを作りたい。
コレクターのコンプリート癖をくすぐるデフレ時代を象徴するエディションですね。

では、「現代美術に於けるポータブル・ミュージアムの元祖といえばだれ?」
と、問われればもちろんこの人を置いて他にいません。そう、マルセル・デュシャンです。
1941年以降、自身の手でこつこつと作り続けられた作品『トランクの中の箱』は、まさにポータブル・ミュージアムを代表するアートワークです。

デュシャン以降も、多くのアーティストやパブリッシャーがポータブル・ミュージアム的なエディションを作成しています。
1964年に制作された「1CENTLIFE(ONE CENT LIFE PORTFOLIO)」や、ウイリアム・コプリーが発行したメールアート「S.M.S(Shit Must Stop)」(1968年)などは、現在もアートマーケットを中心に高い値段で取引されています。
本展で展示される『The New York Collection for Stockholm』は、限定300部と少部数しか作成されていないために、ポータブル・ミュージアム系エディション作品の中でも最も入手困難且つ最も重要なコレクションともいえる幻のポートフォリオです。

このポートフォリオの重要性を美術館にたとえて検証してみましょう。
まずは、その豪華なキュレーションチームから紹介させていただきます。
チーフキュレーターにストックホルム近代美術館長やポンピドゥー・センター国立近代美術館初代館長などを歴任したポントゥス・フルテンを迎え、R・ラウシェンバーグ、J・ケージらが創設した芸術運動組織「Experiments in Art and Technology(E.A.T.)」のメンバーが学芸員としてコレクションの制作を担当しています。いわゆる、ドリームチームですね、構成メンバーは完璧です。

所蔵作家のラインナップも、作品購入もままならない昨今の美術館学芸員がうらやむ豪華なアーティストを揃えています。
アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンシュタイン、クラエス・オルデンバーグ、ダン・フレヴィン、ジェームス・ローゼンクイスト、ルイーズ・ニーベルソン、ケネス・ノーランド・・・・。現代美術史を語る際に外せない作家がずらりと並んでいます。
コアなアートファンに人気の渋い作家も外していません。リー・ボンテクー、ラリー・リヴァース、ダン・フレヴィン・・・。中でも、1993年にナムジュン・パイクと共にヴェネツィア・ビエンナーレのドイツ館代表として金獅子賞を獲得したハンス・ハーケの作品なんて、購入するどころか国内の企画展でも滅多にお目にかかる機会がありません。

セレクトされたカテゴリーも完璧です。
ポップアート、ミニマリズム、プライマリー・ストラクチュアズ、コンセプチュアルアート、カラーフィールドペインティング、ランドアート、メディアアート・・・
抽象表現主義以降のポップアートから始まって、ダイナミックに進化を続けた20世紀のアートシーンを網羅したセレクションに驚くばかりです。

なによりもこのコレクションの重要性を象徴しているのが、アーティストの選定に力量を発揮したフルテンのキュレーション力です。
同時代の重要な作家を選定するだけなら、美術年鑑を引っ張り出してきてめぼしい作家をピックアップすれば済む事ですが、30人の中には、現在もオークションで高値を更新し続ける作家やコマーシャルギャラリーで作品が発表されているアーティストが多く含まれています。
世界的な不況下にも関わらず、昨年開催されたオークションでウォーホルが自身のオークションレコードを更新したのは記憶に新しいニュースですが、ジョン・チェンバレン、リチャード・セラ、サイ・トゥオンブリー、ロバート・ラウシェンバーグは、世界中のアートマーケットの中でも最も影響力を誇るガゴシアンギャラリーの所属作家として継続的に展覧会が組まれています。また、最近ではジム・ダインの作品が韓国のアートマーケットでブレイク中です。半世紀の時を経ても生き続けている、作品のコンセプトやアーティストの評価を見据えていたフルテンの先見性と時代感覚には、最大級の賛辞を贈るべきでしょう。

いかがでしょう?
幻のポートフォリオ『The New York Collection for Stockholm』の重要性をご理解いただけたでしょうか?
このコレクションの制作された背景やアートムーブメント、そして収録されているアーティストに関する事実を書き連ねるだけで、貴重な美術史に関する文献を上梓する事が出来るのではないかと個人的に思っております。

美術館となる“箱”に関しても心配することはありません。
A4サイズ大のポートフォリオに作品が収蔵されているので、膨大な保管スペースは必要ありません。展示空間やコンセプトに合わせて作品を展示するだけで、企画展の完成です。コンパクトなサイズに作品を管理・保管出来るのは、ポータブル・ミュージアム最大のメリットですね。

さてさて、あと足りないものは・・・・
そう、本ポータブル・ミュージアムの館長ですね。

                《急告》
【60-70年代のN.Y.アートシーンを代表する作家を集めたポータブル・ミュージアムの館長募集!】


『The New York Collection for Stockholm』は、ニューヨーク近代美術館/MoMAのコレクションにも引けを取らないアーティストの作品が揃っているポートフォリオです。このコレクションを購入すれば、究極のポータブル・ミュージアムの館長になれることも夢ではありません。
3月10日までのわずかな期間ですがときの忘れものにて、館長募集の内覧会(笑)を開催しています。
どうぞ、お出かけください。
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浜田宏司
BookGallery CAUTION
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◆ときの忘れものは2012年3月2日[金]ー3月10日[土] 究極のポータブル・ミュージアム―60年代のN.Y.を駆けた30人のアーティスト“The New York Collection for Stockholm”を開催しています(会期中無休)。
ストックフォルムCポントゥス・フルテンが選んだウォーホル、J・ダイン、D・ジャッド、E・ケリー、リキテンシュタイン、ナ ム・ジュン・パイク、R・セラ、L・ニーベルソン、K・ノーランドなど、60年代のニューヨーク・アーティスト30人による究極のポータブル・ミュージアム。
The New York Collection for Stockholm収録作家=LEE BONTECOU, ROBERT BREER, JOHN CHAMBERLAIN, WALTER DE MARIA, JIM DINE, MARK DI SUVERO, OYVIND FAHLSTROM, DAN FLAVIN, RED GROOMS, HANS HAACKE, ALEX HAY, DONALD JUDD, ELLSWORTH KELLY, SOL LEWITT, ROY LICHITENSTEIN, ROBERT MORRIS, LOUISE NEVELSON, KENNETH NOLAND, CLAES OLDENBURG, NAM JUN PAIK, ROBERT RAUSCHENBURG, LARRY RIVERS, JAMES ROSENQUIST, GEORGE SEGAL, RICHARD SERRA, KEITH SONNIR, RICHARD STANKIEWICZ, CY TWOMBLY, ANDY WARHOL, ROBERT WHITMAN
リー・ボンテクー、ロバート・ブリア、ジョン・チェンバレン、ウォルター・デ・マリア、ジム・ダイン、マーク・ディ・スヴェロ、オイヴィンド・ファールシュトレーム、ダン・フレヴィン、レッド・グルームス、ハンス・ハーケ、アレックス・ヘイ、ドナルド・ジャッド、エルズワース・ケリー、ソル・ルイット、ロイ・リキテンシュタイン、ロバート・モリス、ルイーズ・ニーベルソン、ケネス・ノーランド、クラエス・オルデンバーグ、ナム・ジュン・パイク、ロバート・ラウシェンバーグ、ラリー・リヴァース、ジェームス・ローゼンクイスト、ジョージ・シーガル、リチャード・セラ、キース・ソニア、リチャード・スタンキィビッチ、サイ・トゥオンブリー、アンディ・ウォーホル、ロバート・ホイットマン

浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.2「第4回恵比寿映像祭」

浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.2「第4回恵比寿映像祭」

【展覧会ナナメ読み No.02】
展覧会タイトル:第4回恵比寿映像祭――映像のフィジカル
会場:東京都写真美術館
会期:2月10日(金)〜 2月26日(日)

恵比寿映像祭は、東京都写真美術館を主会場にして周辺のギャラリーや文化施設内で展開される東京都が主催する文化発進プロジェクトです。予定されているプログラムは映像作品以外にも、写真、メディアアート、イベント、トークセッション、と多岐に渡ります。今回はジョナス・メカスさんの最新作「スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語」のアジアプレミアが実施されることもあり、プレビューに、ときの忘れものスタッフとして同行させていただきました。

ちなみに、開催から4年目となる本映像祭のため恵比寿を訪れるのは今回で2回目。
初回の恵比寿映像祭の記憶と今回の展示を比較することで、美術展における映像作品について考えてみました。
4年前の映像祭は・・・と記憶を辿ったのですが、残念ながら印象に残っている作品がほとんどありませんでした。自分自身の脳内メモリーの少なさにビックリ!。まあ、昨今の大規模なコンテンポラリーアートの展覧会では、出展作品のうち、1/3近くを映像作品が占めることもあり、似たり寄ったり(おっと、失礼)の作品を見重ねるうちに、過去の映像作品の記憶も曖昧になってしまうのでしょうか?
しかし、アンディ・ウォホールと宇川直宏の作品だけは別でした。ウォホールの展示作品は、イーディーや岸田今日子(!)など当時の各界のセレブ達が、不安げな視線で自らを撮影しているカメラのレンズを凝視する「スクリーン・テスト」のシリーズから数点。そして後者は、昭和天皇崩御を題材にしたコンセプチュアルな作品「DAYLY PSYCHIC TV/ EMPEROR’S DEAD」が出品されていました。両者の作品は、他の展示を圧倒するインパクトを放っていたといまでも鮮明に記憶しています。
ワンフレームで作品の印象が決定する絵画や写真と違い、映像作品は「時間」というファクターが入るので、よっぽど強烈なイメージや明確なコンセプトが作品の中に成立していない限り、印象に残り難いと言えることができます。アンディ・ウォホールと宇川直宏の展示には、その『強烈なイメージと明快なコンセプト』が作品内に両立していました。

前置きが長くなりました。今回の映像祭のテーマは、「映像のフィジカル」です。
展覧会のチラシには、『映像を成り立たせている物質性(フィジカリティ)に光をあて、あえて映像の即物的な面を入り口に、具体的な作品を通じて、映像の豊かさと可能性にあらためて迫ります。』と、展覧会のテーマを補足するテキストが掲載されていました。先ほど、多くの映像作品の中でも記憶に残る作品には『強烈なイメージと明快なコンセプト』が成立してる。と書きましたが、今回の映像祭のコンセプトでもあるその『物質性』が二つの課題を解決していたように感じました。

個人的に、最も印象に残っている作品を紹介しましょう。
カロリン・ツニッス&ブラム・スナイダ―ス Sitdの作品「《RE:》」です。
この作品は、プロジェクターから投影される映像が複数の鏡の反射を利用して、プロジェクター自身に様々な映像を投影するプロジェクションマッピングの技術を使ったメディアアートです。既存の映像プログラミング技術をアート作品のコンセプトに転用した斬新な発想のアートワークです。例えるなら、プロジェクターが自身の手(この場合は「光」ですね)で、自らの体にボディーペインティングを描く。とでも表現すれば良いのでしょうか?
本展覧会のテーマ「映像のフィジカル」を象徴する作品ではないでしょうか?

「物質性」を直球に感じられる作品が2階の同じフロアーにあります。
伊藤隆介の作品「《Film Studies オデッサの階段》」と「Songs(#版23)」です。
《Film Studies オデッサの階段》は、映画史上に残る『戦艦ポチョムキン(エイゼンシュテイン監督)』の有名なシーン「オデッサの階段」を再現した模型とその動きをリアルタイムに投影する映像システムによるミクストメディア・インスタレーションです。ループする模型と壁面に投影される映像に時間を忘れて引き込まれる作品です。そして、「Songs(#版23)」は、動的な前者とは対照的な作品です。数十枚の16mmフィルム片が束ねられ、ライトボックスに固定されまるで鉱石のような光を放つ静的な作品です。同一作家の作品とは思えない『強烈なイメージと明快なコンセプト』が成立してるアートワークです。

他にも多くの印象に残る作品がありましたが、映像祭の展示を見ながら、ときの忘れもので開催中の「ジョナスメカス写真展」の事を思い出していました。
メカスさんの作品のコンセプト「フローズン・フィルム・フレームズ−静止する映画」も、映像を写真メディアに焼き付けることで「物質性」を成立させている作品です。ときの忘れものの展示も、第4回恵比寿映像祭映像のフィジカルと合わせて鑑賞される事をお勧めします。

そういえば、映像祭のオープニングパーティーの会場でメカスさんのアンソロジー・フィルム・アーカイヴスのスタッフのジェドさんとコンタクト出来たのは収穫でしたね。その後、メカスさんの展覧会はご覧いただけたのでしょうか?
展示に関する率直な意見を頂戴したい所です。(はまだこうじ)

20120214_1第4回恵比寿映像祭

20120214_2オープニングで挨拶する福原義春さん(東京都写真美術館館長)

20120214_4NYのアンソロジー・フィルム・アーカイヴスのジェド・ラップフォーゲルさん

20120214_5右から、ジェドさん、飯村隆彦さん、亭主

20120214_6担当学芸員の岡村恵子さんに話を聞く亭主

20120214_7

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第4回恵比寿映像祭
20120208_physical_600px
会期:2012年2月10日(金)〜 2月26日(日)
*うち、2月13日、2月20日の月曜は休館
会場:東京都写真美術館全フロア及び恵比寿ガーデンプレイス センター広場、ザ・ガーデンルーム、恵比寿周辺文化施設及びギャラリーほか

ジョナス・メカスさんの新作映画《スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語》が東京都写真美術館他で上映されます。
《スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語》
Jonas MEKAS in the 21st Century: Sleepless Nights Stories 
/2011/112分/英語※日本語字幕付(Dialogues in English)
2012.02.26 sun 11:30-13:30
この映画は、千夜一夜物語をもとにしている。が、アラビアの話とはちがって、すべて私の人生そのものだ。時に日々の現実から離れて、あまりにも別のところへ迷い込んでしまったりするけれど。(ジョナス・メカス)


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◆ときの忘れものは、2012年2月10日[金]―2月25日[土]「ジョナス・メカス写真展」を開催しています(※会期中無休)。
メカス展
それは友と共に、生きて今ここにあることの幸せと歓びを、いくたびもくりかえし感ずることのできた夏の日々。楽園の小さなかけらにも譬えられる日々だった
「this side of paradise」シリーズより日本未発表の大判作品13点を展示します。
1960年代末から70年代始め、暗殺された大統領の未亡人ジャッキー・ケネディがモントークのアンディ・ウォーホルの別荘を借り、メカスに子供たちの家庭教師に頼む。週末にはウォーホルやピーター・ビアードが加わり、皆で過ごした夏の日々、ある時間、ある断片が作品には切り取られています。60〜70年代のアメリカを象徴する映像作品(静止した映画フィルム)です。
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ギャラリー&編集事務所「ときの忘れもの」は建築家をはじめ近現代の作家の写真、版画、油彩、ドローイング等を扱っています。またオリジナル版画のエディション、美術書・画集・図録等の編集も行なっています。
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