杉山幸一郎のエッセイ

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第22回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第22回 家具製作所


新年明けましておめでとうございます。
昨年はこのエッセイのおかげもあって、多くの人に声をかけていただく機会を得ることができました。二年前に書き始めた当時には、毎月たった一つのエッセイを綴ることがこんなにも労力がかかり、そして反響をいただけることだとは思ってもいませんでした。

トピックとして注目されるであろうことよりも、人に伝えるに値する事柄は何だろうと日々考えながら生活していることで、少しだけ身の回りの些細なことに気づくことができるようになってきたように思います。(そういう気がしているだけかもしれませんが。。笑)
ギャラリー“ときの忘れもの“の皆さんへ、良い機会を与えてくれて本当にありがとうございます。

毎月楽しみに、もしくはまぁ一応目を通すだけ、ないし偶然見つけて読んでくれている人たちに少しでもスイスでの生活や建築事情を紹介できればと思っています。仰々しい文章ではなく、肩肘張らない感じで自分が面白いと思ったことを発信していこうと思っています。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。




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今回は家具アトリエ訪問です。

シリーズ化しているわけではありませんが(笑)、第9回ではスイスの木工所を、第17回ではドイツの家具工場を紹介してきました。今回はクールにある家具アトリエを紹介しようと思います。
このアトリエを運営する家具職人に出会ったのは、とあるショップにあった展示棚を見たことに始まります。(そのショップについては後日紹介することにします)
オーナーが展示されているプロダクトそっちのけで展示棚を紹介してくれた時に、それがかなり大きいにもかかわらず十分な精度をもって、ビスや接着剤なしで組み立てられていることに驚きました。聞けばその家具職人は日本の木造建築における仕口を勉強しているらしい。今回に限らず、実はスイスで生活していると本当に多くの人が日本の木造建築とりわけ宮大工の仕事に興味を持って、個人的に書籍を取り寄せて勉強していることが多いことに驚きます。
そんな経緯があって、オーナーに家具職人を紹介してもらい彼のアトリエを訪問することになりました。

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そのアトリエはクール(Chur)駅の西隣、Chur Westという場所そのままを表した駅のすぐ側にありました。この一帯は高層タワーとその足元に商業施設がある近年開発された地区であり、また以前から工場や倉庫、鉄工所といった大スパン空間の建物が多い場所と隣り合わせにあります。そういった地域には当然ながら幾つかの大規模なホームセンターがあり、作り手にとってはとても利便性の良いところです。

以前少しだけ紹介したように、スイスの職人教育は師弟制かつアカデミックです。自分で選んだ製作所に研修生として通い身体で仕事を覚える。と同時に職業訓練学校に通い頭で体系的に知識を得ます。 訪れた家具アトリエにも、遠くオランダから来た研修生が学んでいました。
アトリエでは職人自身とその研修生の二人で働いています。とはいえ自分でデザイン制作する単体家具に留まらず建築の内装(木仕上げ)も行うなど幅広く活動し、空間とも関係した提案をしているようです。


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規模は小さいとはいえ必要な機材は一通り揃っていていい。と一緒に訪れた家具職人の同僚が感心していたように、空間の中に機械が適度な間隔をもって並べられ、切り出され運ばれた木材がどのように、そしてどういった順番で加工されて家具のパーツになっていくのか。それが説明なしで手を取るようにわかります。仕事ぶりを見る前に仕事ぶりがなんとなくわかってしまう。そしてまた、こういった設備のあるアトリエをいつも羨ましく見てしまう自分がいます。

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先日ショップで見た家具(展示棚)の一部試作品です。日本の“尻ばさみ継“に近いカタチで楔を使って繋いでいます。使用しているのはクルミ材。楔はそのまま残って組み立て解体を容易にし、意匠的にもアクセントになっています。

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これは木材をカンナがけのように薄く削る機械、見ると日本のメーカーです。削り取られたものは、薄いテキスタイルのように見えました。

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この大きなテーブルはオーク材から、従来のテーブルのように天板に脚がついた構成ではなく、脚のフレームにテーブルの天板がはめ込まれているように作られています。二枚目の部材写真を見るとそれがよくわかります。そのため天板と脚フレームは数ミリの余白を残してルーズに嵌め込まれ、ビスや接着剤で固定されていません。完成品を外から見ると3ミリ程度に見える天板が脚のフレームから14mmオフセットしていて、その精度がテーブル全体に良い緊張感を生み出しています。
実はこれを初めて見た時には、この上にガラスか何かの天板がくるのだと思っていました笑。脚のフレームだけでできているようなテーブル。天板の存在感がないぶん、そこから生まれる浮遊感、軽やかさやエレガントな印象はあまり感じません。一方で見た目はスリムな割にがっしりとした堅強さを感じるのは僕だけでしょうか。4本脚の上部がカーブしてフレームと一体化していることで、がっしりとした重さを更に強調しています。


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僕が一番いいなと思ったのは、実はこの工具のための棚です。職人本人は時間をかけずに即興的に作った。と言っているけれど、そのさらっとしたデザインがいい。下から上にかけて少しだけ傾きをもってフレームが組み立てられ、そこに横架材もしくは天板が載って全体を固定しています。上部の棚は傾きによって奥行きが出てきているので、そこに小さな木材の破片などを縦置きし、横架材から吊るされた部材にダボがついて、そこに小さな工具が引っ掛けられている。
全体のフレームは接着剤なしのダボで固定され、簡単に組み立て解体ができる。こんなシンプルな構成で実用的、かつ見た目に精錬されているのに驚きました。

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見慣れたダボの大きさと縦筋の入った円柱のカタチが、可愛らしい子供用木製おもちゃのような印象を与え、そのことによって、全体がとても“簡単にできている“ことを強調されているかのようです。(子供のおもちゃというのは、実際にいつも“簡単にできて“います)。
それが一方でチープな(どこか安っぽい)印象に収拾されずに在るのは、数段の天板が置かれている間隔と、垂直材が上部で少しだけ削り取られ細くなることで生まれている華やかさがあるからではないかと僕は考えています。

少しずつ、いろんな作り手のところへ訪れて様子を伺っていく。こうした製作所、アトリエ訪問はデザインの幅を広げていくので、できる限り紹介する機会を増やしていこうと思っています。
すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
日本大学高宮研究室、東京藝術大学大学院北川原研究室にて建築を学び、在学中にETH Zurichに留学。大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりアトリエ ピーターズントー アンド パートナーにて研修、2015年から同事務所勤務。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

●本日のお勧め作品は、ベン・ニコルソンです。
20180110_nicholson_04ベン・ニコルソン
《作品》
1968年  エッチング、鉛筆、ガッシュ、紙
イメージサイズ:30.0x28.0cm
シートサイズ:43.5x37.5cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆ときの忘れものは「Arata ISOZAKI × Shiro KURAMATA: In the ruins」を開催しています。
会期=2018年1月9日[火]―1月27日[土] ※日・月・祝日休廊
磯崎新のポスト・モダン(モダニズム)ムーブメント最盛期の代表作「つくばセンタービル」(1983年)に焦点を当て、磯崎の版画作品〈TSUKUBA〉や旧・筑波第一ホテルで使用されていた倉俣史朗デザインの家具をご覧いただきます。他にも倉俣史朗のアクリルオブジェ、磯崎デザインの椅子なども出品します。

◆国立近現代建築資料館で2月4日[日]まで「紙の上の建築 日本の建築ドローイング1970s-1990s」展が開催中。磯崎新、安藤忠雄らの作品が出品されています。
磯崎新「還元TOWN HALL 」磯崎新
「LECTURE HALL-I」
1982年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:55.0x55.0cm
シートサイズ:90.0x63.0cm
Ed.75  サインあり

ギャラリートーク「建築版画の世界」のご案内
植田実(住まいの図書館出版局編集長)× 石田了一(石田版画工房)× 綿貫不二夫(ときの忘れものディレクター)
司会:日埜直彦
日時:1月27日(土曜日)14時から
場所:文化庁国立近現代建築資料館
住所:〒113-8553 東京都文京区湯島4-6-15
入場方法:旧岩崎邸庭園からの入館となりますので、入園料400円(一般)が必要となります。

◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されます。
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
埼玉チラシAY-O600会員制による共同版元として1974年に創立した現代版画センターは1985年までの11年間に約80作家、700点のエディションを世に送り出し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、上映会、講演会、パネルディスカッション等を頻繁に開きました。今回の展覧会では45作家、約300点の作品と、機関誌・カタログ等の資料によりその全軌跡を辿ります。同館の広報誌の記事もお読みください。


●書籍のご案内
版画掌誌第2号
版画掌誌第2号
オリジナル版画入り美術誌
2000年/ときの忘れもの 発行
特集1/磯崎新
特集2/山名文夫
B4判変形(32.0×26.0cm) シルクスクリーン刷り
A版:限定35部/価格:120,000円(税別 版画6点入り)  
B版:限定100部/価格:35,000円(税別 版画2点入り)


TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別) *送料250円


安藤忠雄の奇跡安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言
2017年11月
日経アーキテクチュア(編)
B5判、352ページ
価格:2,700円(税別)  *送料:250円
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。日経アーキテクチュア編集長のコラム<建築家・安藤忠雄氏の言葉の力:第3回>で、出江寛先生、石山修武先生の次に紹介されていますので、お読みください。
ときの忘れもので扱っています。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。


◆杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
21駒込内観ときの忘れものの小さな庭に彫刻家の島根紹さんの作品を2018年1月末まで屋外展示しています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
 

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第21回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第21回 ライン川に架かる橋


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今回は11月4日に開通したJürg Conzett(ユルク コンツェット)によるクールとハルデンシュタインをつなぐ橋を紹介しようと思います。

自宅のあるクール(Chur)から仕事場のあるハルデンシュタイン(Haldenstein)まで、自転車で通って行くには大きく分けて2つのルートがありました。1つは線路の東側を走るバス通り(Masanserstrasse)を通っていく道。もう1つは線路の西側のトウモロコシ畑を横切って行く道。前者はもちろん車が行き交う忙しい大通りで、後者は犬の散歩やジョギングをする人をよく見かける畦道のようなところです。
そこに最近、第三のルートができました。

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橋の開通を体験したのは、実は僕の人生で初めてのことだったように思います。僕の覚えている限り身の周りに必要な橋は既に十分なほど架けられていたし、河川がある場所よりも歩道橋が架かるとか、地下道を通すとかの方がリアリティを感じるところに住んでいたからかもしれません。ともあれ昔話によくあるような“川の向こう岸に渡りたいからどうにかして橋を架けて渡ろう”という最もシンプルな問いかけのある場所に出会いました。

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橋が架かったのはクールの駅からライン川に垂直な線を引いた辺りにある場所(地図上で小さな方の赤い丸で囲った辺り)です。クールから向かってライン川の反対側にはカランダ(Calanda)という地元ビールの名前にもなっている大きな山があり、その辺りはほとんど開発されていません。このライン川がクールの街が広がってゆく末の境界になっていた。一方で川沿いはハルデンシュタインからクール(約2.5km)を通り越してとなり村のフェルスベルグ(Felsberg)へ向かう(さらに約5km)散歩道になっています。
この橋の工事は今年4月に始まりました。クール市のウェブサイトによると橋工事の目的と概要は次のようになっています。

“〜この橋ができることよってクール、ハルデンシュタインとカランダ地域を安全かつ魅力的に、そして緩やかにつなぐことができます。また、この全長91m歩行幅3mの吊り橋は支柱がないためにライン川の流れを侵害することがありません”


構造家のユルク コンツェットはズントー事務所の元所員で、サンべネディクト(St.Benedict)教会の計画を担当していた人でもありました。(もともと構造デザイン担当として勤務していたのか、建築設計士として働いていたのかどうか、もとよりそういった職種の違いは当時の小規模事務所で重要ではなかったのかもしれません)
事務所を卒業してからはクールで構造事務所を開き、建築プロジェクトの構造を担当する傍ら多くの橋を手がけています。例えばクールから少し西へ向かった先にヴィアマーラ(Viamala)という渓谷があり、そこでは大自然の中に大小いくつかの橋をデザインしています。彼の事務所を訪れると大きなドラフターで描かれたとても精緻で美しい手描き図面があり、その線と文字を見ると繊細かつ大胆なデザイン感覚が目の前に想像できてしまいました。

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この吊り橋は鉄筋コンクリート造の主塔が地面の上のみに建ち、その間に張られたケーブルにて橋の桁と床が吊られています。そのため支柱が川面に存在せずスッキリとした印象がある一方で、ケーブルが地上へ降りてくる先(アンカーレッジ)付近は少し混雑してきます。それでも主塔は川沿いの歩道を邪魔することないくらいに十分な高さがあります。

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橋自体の鋼構造で床はアスファルト、手すりは木になっています。あまりにも大胆かつ太い手すり部分でデザインが大味すぎると感じましたが、この橋のダイナミックさに比べたらこれくらいでなければとも思い返しました。正直に言えば、まだ自分の中でこの橋を理解する上で必要なこのプロジェクトの”強さ”みたいなものがうまく捉えきれていません。

この辺りはノルディック、ジョギングにもってこいのとても気持ちの良い場所。この橋の開通によってこのライン川沿いにさらに人が集まって、その結果カフェなどが必要とされて現れるかもしれない。橋自体の構造的、意匠的な意味はもちろん、この橋が僕たちの暮らしに何を運んでくれるのかは、橋の開通を初めて目の当たりにした僕にとって今、とても興味のある話題になってきました。
すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
日本大学高宮研究室、東京藝術大学大学院北川原研究室にて建築を学び、在学中にETH Zurichに留学。大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりアトリエ ピーターズントー アンド パートナーにて研修、2015年から同事務所勤務。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

●今日のお勧め作品は、ソニア・ドローネです。
20171210_sakuhin2ソニア・ドローネ
「作品」
リトグラフ
65.0x53.0cm
Ed. 75
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆マイアミ速報
<ART MIAMIは4日目が終了、始め2日間で葉栗剛さんの木彫や秋葉シスイさんの作品が2点完売したのもあり、3日目から展示替えし、予備だった赤い方の作品を出し、正面壁面を僕の作品2点並べて頂きました、なんとも有り難くて嬉しい光景です。
体もこっちのリズムに慣れてきたようで、京都個展在廊最終的に急に喉が痛くなって心配しましたが、その後元気になりました。
昨晩は夜にホテルからすぐのビーチに行ってみたら月が出ていて、1時間以上ボーっとして、なんかここまでの制作疲れや色々なものがスーッと抜けたようで、仕事とはいえマイアミに来られて良かったと思いました。
フェアは残り2日間、刺激を受けつつがんばります。
あと、ホテルの廊下に製氷機を発見して、完全なハイボールを飲めるようになりました 笑
ではおやすみなさい☆(野口琢郎さんのfacebookより)>
Art Miami_2017_LOGO_dates_600
ときの忘れものは「ART MIAMI 2017」に出展しています。
会期:2017年12月5日[火]〜10日[日]
ブースナンバー:A428


◆埼玉県立近代美術館の広報紙 ZOCALO の12月-1月号が発行され、次回の企画展「版画の景色 現代版画センターの軌跡」が特集されています。館内で無料配布しているほか、HPからもご覧いただけます。

◆ときの忘れものは「WARHOL―underground america」を開催します。
会期=2017年12月12日[火]―12月28日[木] ※日・月・祝日休廊
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1960年代を風靡したアングラという言葉は、「アンダーグラウンドシネマ」という映画の動向を指す言葉として使われ始めました。ハリウッドの商業映画とはまったく異なる映像美を目指したジョナス・メカスアンディ・ウォーホルの映画をいちはやく日本に紹介したのが映画評論家の金坂健二でした。金坂は自身映像作家でもあり、また多くの写真作品も残しました。没後、忘れられつつある金坂ですが、彼の撮影したウォーホルのポートレートを展示するともに、著書や写真集で金坂の疾走した60〜70年代を回顧します。
会期中毎日15時よりメカス映画「this side of paradise」を上映します
1960年代末から70年代始め、暗殺された大統領の未亡人ジャッキー・ケネディがモントークのウォーホルの別荘を借り、メカスに子供たちの家庭教師に頼む。週末にはウォーホルやピーター・ビアードが加わり、皆で過ごした夏の日々、ある時間、ある断片が作品には切り取られています。60〜70年代のアメリカを象徴する映像作品です。(予約不要、料金500円はメカスさんのNYフィルム・アーカイブスに送金します)。

●書籍のご案内
版画掌誌5号表紙600
版画掌誌第5号
オリジナル版画入り美術誌
ときの忘れもの 発行
特集1/ジョナス・メカス
特集2/日和崎尊夫
B4判変形(32.0×26.0cm) シルクスクリーン刷り
A版ーA : 限定15部 価格:120,000円(税別) 
A版ーB : 限定20部 価格:120,000円(税別)
B版 : 限定35部 価格:70,000円(税別)


TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別) *送料250円
*『瀧口修造展 I』及び『瀧口修造展 II』図録も好評発売中です。


安藤忠雄の奇跡安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言
2017年11月
日経アーキテクチュア(編)
B5判、352ページ
価格:2,700円(税別) *送料:250円
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。
ときの忘れもので扱っています。

国立新美術館で開催中の「安藤忠雄展―挑戦―」は20万人を突破、会期も残り僅かです(12月18日[月]まで)。
展覧会については「植田実のエッセイ」と「光嶋裕介のエッセイ」を、「番頭おだちのオープニング・レポート」と合わせ読みください。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。


●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
 ・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
 ・frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
 ・小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
 ・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
 ・杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
 ・関根伸夫のエッセイ「〈発想〉について[再録]」は毎月12日の更新です。
 ・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
 ・倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」は毎月17日の更新です。
 ・小林紀晴のエッセイ「山の記憶」は毎月19日の更新です。
 ・清家克久のエッセイ「瀧口修造を求めて」は毎月20日の更新です。
 ・九曜明のエッセイ「植田実と本」[再録]は毎月23日の更新です。
 ・小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。
 ・スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
 ・森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
 ・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」はしばらく休載します。
 ・大野幸のエッセイ<ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート>は随時更新します。
 ・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
  同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」と合わせお読みください。
  「本との関係」などのエッセイのバックナンバーはコチラです。
 ・中村茉貴のエッセイ「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
 ・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」英文版とともに随時更新します。
 ・深野一朗のエッセイは随時更新します。
 ・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
 ・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は終了しました。
 ・森下隆のエッセイ「鎌鼬美術館——秋田県羽後町田代に開館」は終了しました。
 ・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は終了しました。
 ・夜野悠のエッセイ「書斎の漂流物」は終了しました。
 ・普後均のエッセイ「写真という海」は終了しました。
 ・八束はじめ・彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は終了しました。
 ・光嶋裕介のエッセイ「和紙に挑む」は終了しました。
 ・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は終了しました(時々番外編あり)。
 ・荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は終了しました。
 ・森下泰輔のエッセイ「戦後・現代美術事件簿」は終了しました。
 ・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイや資料を随時紹介します。
 ・「オノサト・トシノブの世界」は円を描き続けた作家の生涯と作品を関係資料や評論によって紹介します。
 ・「瀧口修造の世界」は造形作家としての瀧口の軌跡と作品をテキストや資料によって紹介します。
土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
 ・「関根伸夫ともの派」はロスアンゼルスで制作を続ける関根伸夫と「もの派」について作品や資料によって紹介します。
 ・「現代版画センターの記録」は随時更新します。
今までのバックナンバーの一部はホームページに転載しています。

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第20回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第20回 軽やかなコンクリート


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今回はクールを拠点に活躍する女性建築家Angela Deuber(アンジェラ ドイバー)による学校建築を紹介しようと思います。

この学校建築は2013年に竣工。できて間もない頃に僕は一度訪れたことがあったのですが、夏休みの時期であったため中を見学することができませんでした。
実はこの間、Beton Suiss主催のコンクリート建築を対象にしたコンクール“Beton17”があり、1977年から四年ごとに開催されているその名誉あるコンクールで受賞したこともあって、再び気になってきてしまいました笑。ということで、今回は内部も見学できるようにきっちりとアポイントを取ってからの再訪です。


建築空間での体験は、その日の天気(とりわけ外光の状態)によって、季節や時間帯によって、また自身の体調や気分、時には一緒に訪れてまわる人が誰かによっても感じ方が大きく変わります。
雑誌やインターネットで見る建築写真やイメージは(図面でさえも)一見ニュートラルに建築を紹介しているようで、その投稿者である設計者、記者の意図によって上手く切り取られて固められた表現です。そうしてデザインの意図を正確に第三者に伝えることは作り手としてとても大切である一方で、良くも悪くも強い印象や先入観を与えてしまうこともあります。
それと比べて建築を見に行って出会うのは、“建築とそれにまつわる事柄が安定していない状態” です。そしてそこでの体験とは、建築とその周りの環境に次々と起こる、時に人間も含めた振る舞いのやり取りを見るようなものです。建築が開口部を通してどうやって移りゆく太陽の光を上手く取り入れ、室内に美しい光と影を現してくれるのか?同じ時間帯の同じ方向からの光でも異なる開口部を介することでドラマチックな強い光になったり、柔らかい優しい光になったりと建築は光を自在に変化させます。また建築は外の騒音をシャットアウトして室内に静寂をもたらしながらも、例えば書斎にあるグラモフォンから聞こえる演奏を心地良く響かせることができます。雨や雪の日に暖かい部屋で木材やコンクリートの少し湿った匂いを嗅いだ時、建築は確かに外の環境から自分を護ってくれているんだと感じることができます。

建築を生き生きと健康的に生き永らえさせるには建築と人と環境との間に良いコミュニケーションができているかどうかがとても大切なことだと僕は思います。実際に建築を訪れて、時には驚きがっかりしながらもその交流を見届け、また新たな発見をしていくことが多くの時間をかけてデザインし、大変なお金とまた労力をもって作られた建築に対する敬意と責任ではないでしょうか。



話を戻して学校を見ていきます。

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クール(Chur)から電車でオーストリア方面へ。国境手前の駅で一度乗り換えてザンクトガレン(St.Gallen)へ向かう途中の駅シュタート(Staad)で降ります。ここはボーデン湖に面していてお隣はオーストリア、反対側はドイツです。駅から緩い坂を登って少し降りてちょっとした谷間まで、10分くらいで目的の場所に着きました。

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外観の印象は三角形がなんだかいたるところにある。。です。その男らしい思い切りの良いデザインから女性建築家が設計したと初めに聞いた時は正直驚きました。構成はコンクリートでできた逆三角形のトラス壁が各階のスラブ(床)を支えて。。と思いきや(笑)その逆三角形の頂点が地面に着地していない!遠くから見ると逆さにした王冠が浮いているかのように見えます。

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実はこれがこの建築のミソです。逆三角形の頂点を支えている、上階から壁を通して頂点へ流れてくる力を下階スラブに流している“短い柱“は壁と比べて少しだけ室内側に引っ込んでいて、またガラスの反射も相まって外からはよく認識できません。木の窓枠全体は外からはしっかりと見え、短い柱を隠すために必要だった逆三角形頂点下部の垂直窓枠のところを特別扱いしていません。

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一方で室内からその柱を見ると外側から引っ込んでいる分よりも少しだけ遠慮がちに出っ張って、この柱は図形として逆三角形を邪魔していないよ。別の要素だよと話しかけるように振る舞っています。

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窓枠は室内から全体を視認できず、そのためY字のコンクリート構造壁が引き立ちます。
この小さなディテールが重たいコンクリートを三層積んでできている建物全体を外からは軽やかな浮遊感あるものに変え、中からは美しい構造の形を表す役目をしている。これは面白い建築だと僕は思いました。

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プランを見るととても単純です。建物正面から入って階段ホールがあり、四隅にクラスルームが配置されその間にサービススペースがあります。エレベーターや構造壁が他の非構造壁である白いレンガの壁よりもわかりやすく出っ張っているので、逆三角形壁と柱の時のように建築要素の主従関係をきっちり表している。設計者の意図がわかりやすく建築に現れています。

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各階にはバルコニーが一筆書きに回っていてクラスルームから出て駆け回って遊ぶこともできます。もちろんこれは避難経路として、2つある非常外部階段へつながります。

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建物はコンクリートの床壁天井、ドアや開口部には木材(おそらくカラマツ材)。室内の仕切り壁はレンガに漆喰仕上げです。床のテラッツォ仕上げはコンクリート床スラブの上に薄いコンクリート層をトッピングして作られたのではなく、構造スラブ自体をサンディングしてできています。バルコニー部分は叩き仕上げとしてスリップ防止としています。天井には音響のために木毛セメント板でできたアコースティックパネルがあり、筒型の照明と同じ形の吸排気口がありました。

全体を俯瞰してみるとコンクリート躯体がそのまま床壁天井となって仕上がっている、シンプルで原始的です。ところが案内してもらった校長先生に話を聞くと、竣工して一番初めに入った子供たちの建物に対する印象は“冷たい“だったようです。コンクリート打放しの見えとはいえ、断熱材を挟んだ二重コンクリ壁なので物理的にそう冷たいわけではなく、それは主にグレー色からくる印象です。
確かに規模が似ているヴァレリオ オルジアティの学校(Paspels)のクラスルームは木の仕上げであるし、ラファエル ズーバーの学校(Grono)は暖かみのある色のコンクリートでした。そう言えば、グレーコンクリートに異なる仕上げを施して、床も天井もライニング(Lining)がない学校建築は初めて見たかもしれません。

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竣工から四年、ようやく建物を使い倒していろんなモノも色も増えてきた。今は使っていてほとんど不自由はなく、あるとすれば何かをピン(画鋲)で刺すことのできる壁が少ないとのことでした。(コンクリートの壁は上手に教材や子供の絵画が貼られていたもののテープ貼りで、確かに取るのも貼るのも少し大変で放っておくと跡が付いてしまいます)

全体としてざっくりとしつつ細部も凝っている建築でとても勉強になりました。シンプルかつ意志の強い構成である分、建築家が戦った軌跡が見て取れます。
彼女の次の建築はどんなモノになるのか、とても気になってきました、楽しみです。


図面(3階平面図)はarchithese 2.2014より
その他写真は筆者より

すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
日本大学高宮研究室、東京藝術大学大学院北川原研究室にて建築を学び、在学中にETH Zurichに留学。大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりアトリエ ピーターズントー アンド パートナーにて研修、2015年から同事務所勤務。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

●今日のお勧め作品は、菅木志雄です。
菅木志雄菅木志雄
「作品2」
1981年
シルクスクリーン
50.5x65.0cm
Ed.100
裏面にサインと限定番号あり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください
■菅木志雄 Kishio SUGA(1944-)
岩手県生まれ。多摩美術大学油画科で学ぶ。在学中に斎藤義重と高松次郎に影響を受け、「もの派」グループの中心メンバーとなる。視角を操作する絵や立体作品の制作と同時に素材を使った《積層空間(1968)》のような作品制作を始める。1967年第11回シェル美術賞展1等賞受賞。1968年椿近代画廊で初個展。1970年第5回ジャパン・アート・フェスティバル大賞を受賞。ギャラリーのみならず、東京都現代美術館など各地の美術館で個展を開催する。海外での発表(1973年パリビエンナーレ、1986年ポンピドゥー美術館、1994年グッゲ ンハイム美術館等)も多い。夫人は詩人・小説家の富岡多恵子。

◆ときの忘れものは「細江英公写真展」を開催しています。
会期=2017年10月31日[火]―11月25日[土]
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細江先生は秋の叙勲で旭日重光章を受章されました。
●会期中、細江英公サイン入り写真集を特別頒布しています。

◆ときの忘れものは「メキシコ地震被災地支援・チャリティー頒布会」を開催します。
201711mexico
会期:2017年11月28日(火)〜12月2日(土)
出品100点のリスト:11月11日ブログに掲載
全作品、一律8,000円で頒布し、売上金全額を被災地メキシコに送金します。


●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円

*『瀧口修造展 I』及び『瀧口修造展 II』図録も好評発売中です。


●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
番頭おだちのオープニング・レポートはコチラを、光嶋裕介さんのエッセイ「安藤忠雄展を見て」と合わせてお読みください。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第19回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第19回 祝祭の時間


今回は先月15日からブレゲンツ美術館(Peter Zumthor設計)で開催されている展覧会について紹介しようと思います。(概要はKunsthaus Bregenzも参考にしてください)

ブレゲンツ美術館は、スイスとドイツ、オーストリアが接するボーデン湖沿いのオーストリア側にある街ブレゲンツにある市立美術館で、ピーターズントーの代表作の一つとして知られています。(詳しくは過去の記事にて)
1997年に竣工し2017年の今年はオープン20周年の節目にあたるため、美術館はズントー事務所に展覧会を打診しました。実は10周年であった2007年にもピーターズントー展が行われ、その際は主に建築プロジェクトを説明する大きな模型とドローイング、インタビューで展示が構成されました。それもあってか今回はズントー建築を説明し紹介するいわゆる“建築の展覧会“ではなく、ズントー自身がキュレーターとなって展覧会をオーガナイズするという趣旨で始めから一貫して進められていきました。

具体的な企画とデザインがスタートしたのは今年に入ってからでしょうか。まずは美術館の縮尺1/50の簡単な空間模型をコンクリートで作り、(日本で言うところの)1階から4階までの各階にどういった展示企画を入れていこうかと話し始めます。この段階から後に1階はコンサートホール、2階は写真展、3階は図書室、4階はガーデンとほぼ案は固まり、では誰が何をどうするかというトピックに移りました。

タイトルはDear to me。込められた意味としては、ピーターが気に入って大切にしているモノや事柄を共有できる場所にしたいということです。ピーターの息子はドラムをメインの楽器として身の回りのモノを扱って音を創り出すミュージシャン。その彼が演奏家をオーガナイズして主に1階で行われる演奏会のプログラムを詰めていきます。全体のマネージメントはピーターの義理の娘が舵取りをし、建築制作的な部分は僕の担当に決まりました。

ズントーはパンフレットの冒頭の言葉で次のように語っています。
Denken ist eine Linie, Emotionen sind Raum.
Ich liebe das Denken in Bildern.
Räume schaffen können, die berühren,
wie gewisse Passagen in der Musik von Mahler oder Wagner,
komponiert mit den Mitteln von Schönberg oder Webern,
mit der Energie und Transparenz von Strawinski — das wäre schön.
Aber jetzt ein Fest!

思考は直線的で、感覚は空間的だ。
(図面に描かれた思考の線は、建築空間となって感動を呼ぶ)
私は情景を思い浮かべながら考えることが好きだ。
グスタフ・マーラーやリヒャルト・ワグナーの音楽にある音符群のように、
アルノルト・シェーンベルクやアントン・ヴェーベルンが編曲で行なったように、
イーゴリ・ストラヴィンスキーの曲がエネルギッシュで透明感があるように、
建築空間も創られ、そして人の心を動かすことができる。そうあって欲しいと思う。
さぁ祝祭の時間だ!(筆者訳)



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1階はグランドピアノのあるステージが中心にあります。ステージ上部には音響のために天井板が吊られ、建物の主構造であるコンクリート壁にも抽象的な幾何学の音響パネルがいくつか取り付けられています。ステージの周りにはレッドカーペットが敷かれ、どこかの授賞式のようにこれが“フェスティバル“であることが敢えて強調され、その上に今回の展示のために特別にデザインされた四種類の色と素材(深いオレンジ、青緑色、濃紫のベルベットと気紛れな生地のレザー)のアームチェアとスツール、そして二種類の素材(楓と洋梨の木)と大きさの異なる円形テーブルがあります。

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これらの家具は以前紹介した家具メーカーが中心となって制作されました。

美術館にまず入るとバーカウンターがあり、そこでチケットを購入しフリードリンクを受け取ります。演奏やディスカッションがないときでも、休日の朝にゆっくりとカフェを愉しみに来てもいい、なんて少し気取って行ってみたくなる(笑)ようなで場所であり、また同時にカジュアルな親しみやすさもあります。それはひとえに天井が高いということにとても関係しているのではないでしょうか。
6メートル20センチある天井高さと400平米強の広い空間は通常の建物ではなかなかあり得ないワンルームの大きさで、カフェとして使うにはとても贅沢。ぽかーんとした心地良い静けさとガラスを通して入ってくる朝の柔らかな光が “こういう大きな気積のあるカフェをいつも設計したかったんだ。やっぱり良いね“ と思わず口に出したい気持ちにさせます。少し奥まったところには映像作家がまとめたピーターのインタビュー(計30分)があり、ヴァルスの温泉施設を設計した若い頃の貴重なインタビューなども視聴することができます。



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2階はクラシックな展示空間で作品数はあまりないため、ブレゲンツ美術館の光と空間のコンセプトがよく見て感じられます。壁にはヘレン・ビネット(Hélène Binet)によって撮影された、ギリシャのランドスケープアーキテクト(Dimitris Pikionis)がデザインしたアテネにある舗装路の写真、ピーターのお気に入りです。作品の由来はともかくとしても、光と陰がモノクロによっては強調され、ヌメッとした舗装石の表情がぐっと感覚を惹きつける非常に力のある写真です。
写真レイアウトは当初計画したものから写真家自身が会場で変更し、一瞬アレっと思うほどの余白があります。配置を移動したい衝動に少しだけ駆られながらも、確かにこの写真は間隔を狭めて並列して展示するには強すぎるな。という気持ちにもさせてくれる。僕がとても感心してしまったのは、自分からはこうしない(勇気がなくてできない)だろうという微妙な、同時に絶妙な余白だからです。

中心にはオルガ・ノイヴィルス(Olga Neuwirth )による30分ほどの新曲がオルゴールとなっています。オルゴールなんて見たのも久しぶりだなぁ。とニヤッとさせてくれる遊び心があり(笑)、その穴の空いた約16mの紙は空中に滑らかな曲線を描いて天井から3点で支持されています。この綺麗な曲線は狙ったものではなく、はじめ単純に3点で吊ってチューリップのイラストみたいにしてみたらオルゴールが上手く回せず、試行錯誤のうちにたまたまできた形なのです。僕たちは恣意的に形をデザインすることを極力避けているのですが、こうした“出来てしまった形“が“作った形“よりも美しく見える瞬間がとても心地よいです。(とはいえ1階の壁にあるアコースティックパネルは若干、形が前にでてきていますが。。。)



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3階は僕たちの事務所があるハルデンシュタインの隣り街(Chur)にある古書店のオーナーから借りた約40,000冊の本からなる図書室です。本棚は黒MDFで簡単に作られ会場でビス打ちして組み立てられ、高さ3メートル弱、三種類の幅があります。その本棚をまるで多角形で円を描くようにしてアレンジして中心に読書スペースを作り、時にはそこで小さな演奏会や作家による読み聞かせなどのイベントを行います。
この約40,000の本は傍からみるとほとんどバラバラに収納されており、AtoZの並びにすらなっていません。(もちろん美術館側からはあるシステムで管理されています) 来館者はただ自分の気の向くままに歩き本に出会う。建築デザイン図書や好きな作家の小説コーナーはここにはなく、それが逆にデータベース化された公立図書館や書店とは違って無造作に収納された自分家の本棚のようで、妙にプライベートな感じがします。一方で、フロア全体の照明を少し暗してクラシックな図書室のような雰囲気にしなかったことで、本棚と本たちが展示室の中に置かれた作品のように見えてくる瞬間があります。

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またここにはライブラリーテーブルとスイスの老舗家具メーカー(Horgenglarus)の椅子があり、スタンドランプはこの展示のためにデザインされイタリアの照明メーカー(Viabizzuno)から販売されます。

ここまで会場を登ってくると少し疲れてきますが、最上階には最も美しい展示があります。



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スイス出身のアーティスト、シュタイナー・レンツリンガー(Steiner & Lenzlinger)によるガーデンのインスタレーションです。タイトルはルンゲンクラウト(Lungenkraut)。自然の枝木や木の実の殻など、そしてどこかの景品でもらったようなプラスチックのおもちゃなどを組み合わせて創られた美しいオブジェが天井からモビールのように吊られ、微かな風でゆっくりくるくると回って重力を感じさせないように浮遊しています。ルンゲンとはドイツ語で肺を意味し、展示物も肺で呼吸したように膨らんだ表現のものが多いため強い生命感も感じさせてくれます。
打ち上げの食事会で本人たちと出会い、今までいろんな場所で展示をしてきたけれど初めて展示作品を吊っているワイヤーが見えない状態の展示空間に出会うことができた。と話していたのが印象的でした。つまり会場が柔らかい光に満ちていて、どの方向からも強い光がないため影ができにくいのです。



オープニングには988人が訪れて会場は人混みとなりました。エントランスから2階へ向かう階段への動線は混み合って進めず、そのため来館者は一旦地下へ降りてそこからエレベーターで2階へ登るという不思議な動線を頼りにせざるを得ない事態になりました。(後々聞いたことには1997年にオープンして以来の来場者数だったそうです)
会場で出会った知人やプレス関係者に話を聞くと、建築家ピーターズントーの展示を目当てに来たものの、具体的に何の展示をしているのかは事前にチェックしていなかった、もっと言えばチェックせずとも、もちろん建築の展覧会だろうとタカをくくっていた人がほとんどで、十中八九に戸惑いと驚きの混じった印象を持っていました。それはこれがズントーがオーガナイズした展示であって、ズントー建築プロジェクトを紹介しているわけではなかったからです。

とはいえ、戸惑いの後に来るのは “なるほどなぁ“ という驚嘆。建築家による建築プロジェクト展は見たいけれど、4階フロアの会場では間延びしてしまうかもしれない。そこでこうしたズントー自身の作品を紹介するのではなく言わば “ズントーに影響を与えたモノや人たちを紹介してそこからズントーを導き出せ“ というメッセージは、とりわけクリエイティブな仕事をしている人たちにとってはなかなか刺激的な問いであったようです。

IMG 08

会期中の毎週末にはズントーと作家、音楽家もしくは美術家との対談があり、展示に参加しているヘレン・ビネットやオルガ・ノイヴィルス、さらには造園家ジル・クレマンや映画監督ヴィム・ベンダースなどの各方面のエキスパートも来ます。またアーティストによる演奏会や作家による読み聞かせなども行われます。一度来て見て終わりではなく、足繁く通って理解していく展覧会。“ズントーパス“というディズニーもビックリな会期中無制限に入場できるパスもあるので、機会がある人は是非足を運んでみてください。



掲載している写真のうち、1,3,4番目のものはブレゲンツ美術館のウェブサイトより
その他は筆者によります。
すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
日本大学高宮研究室、東京藝術大学大学院北川原研究室にて建築を学び、在学中にETH Zurichに留学。大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりアトリエ ピーターズントー アンド パートナーにて研修、2015年から同事務所勤務。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

◆杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

●本日のお勧め作品は、エド・ベイナードです。
20171010_baynard_01_hanaエド・ベイナード
「花」
1980年
木版
作品サイズ:70.0×100.0cm
A.P.11/16
サインあり


こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆ときの忘れものは「安藤忠雄展 ドローイングと版画」を開催しています。
会期:2017年9月26日[火]〜10月21日[土] 11:00〜18:00 ※日・月・祝日休廊
201709_ando

●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。

◆イベントのご案内
10月31日(火)16時〜「細江英公写真展」オープニング
細江先生を囲んでのレセプションはどなたでも参加できます。

11月8日(水)18時飯沢耕太郎ギャラリートーク<細江英公の世界(仮)
*要予約:参加費1,000円

11月16日(木)18時より 植田実・今村創平トーク<ジャパンネスのこと、都市住宅のこと>
現在フランスで開催中の<ポンピドーセンター・メス「ジャパン・ネス 1945年以降の日本における建築と都市」の報告をするとともに、建築展覧会のあり方、建築の表現についてお話をします。また、同展にてフォーカスされた建築雑誌『都市住宅』について、同展での展示の狙いなど、同誌の元編集長植田実さんとお話しします。(今村創平)
*要予約:参加費1,000円

ギャラリートークへの参加希望は、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。twitterやfacebookのメッセージでは受け付けておりません。当方からの「予約受付」の返信を以ってご予約完了となりますので、返信が無い場合は恐れ入りますがご連絡ください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第18回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第18回 州立美術館


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今回はクールにある美術館を紹介しようと思います。

今、僕の住んでいるスイスのグラウビュンデン州の州立美術館は1875年にJohannes Ludwigという建築家によって建てられ、施主であるJacques Ambrosius von Plantaという(覚えるのが難しい)名前の方に因んで”Die Villa Planta”と名付けられました。その後、所有者が変わりながらも自然博物館として使用され1981年に新しい博物館にその機能が移転し、現在のように企画展ができる美術館として使用され始めました。
そしてズントー(Peter Zumthor)とPeter Calonder、Hans-Jörg Ruchが協働で改修をし、三年余りの工事を経て1990年には州立美術館として再オープンしています。

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外からでもよく見える主な改修部分は、現在ミュージアムカフェのあるサンルーム部分と、本館と隣の別館(現在は解体され2016年にスペインの建築家Estudio Barozzi veigaにより新築されている)を繋いでいたブリッジ部分でした。

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現在は(噂によれば構造家のPatrik Gartmannが引き取って)クールとハルデンシュタインの間にあるトウモロコシ畑の傍に置かれています。(今後どうするつもりなのでしょう。。)

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ブリッジを写真で見るとスチール構造のように見えるのですが実は木造で銀色に塗られています。なぜステインではなく、木のテクスチャを消すように厚く色を塗られていたのか?石造の本館と別館を繋ぐモノとして、“木造である“と見せることは素材として(の印象も含め)柔らかすぎたんだと僕は考えます。かといってスチールでは繊細ながらも重く堅すぎる。木造の軽やかさとスチールの堅強さという、矛盾しそうな2つの事柄の両義的な表現が必要だったのではないでしょうか?(実際は予算の関係で比較的安価な木造になったとかいうオチもありそうですが。。。)

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サンルーム部分に関しては何度か足も運んでいたのですが、担当しているプロジェクトの参考にしようと気にかけながらチェックしていきます。建築に限ったことではないのですが、身の回りに溢れているもの、当たり前に見て使っているものほとんどすべては、何かしらの理に適って作られ購入され使われているのだと僕は思い込んでいるところがあります。
そして今回のように「さてミュージアムカフェってどんなところであるべきだったろう」と考え出すと途端に、そこにあって見ていたはずだったけれど、きちんと認識していなかった色々なモノがどんどん露呈してきて、初めてメガネを買ってかけた時みたいに良さも粗も見えてくる。はたしてどこか理に適って作られ、どこがまだ改善の余地があるままに放ったらかしにされてしまっているのか。そんな「皆は気づいていないかもしれないけれど、僕は見つけたぞ」という発見をすることは常に僕の好奇心を搔き立てて、物事を考え直し改善することの面白さを再認識させてくれます。

建築することは建築家個人が作家として持っている“何か“を、空間を提供することによって表現することかもしれないけれど、建築が建っている地域の中で(もっと言えば世界で)通用する建築空間を世界中の建築家たちによって日々改善し、時代によって変わりゆく社会に合わせながらも、生活環境を新しくより良くしていこうとする行為でもあると思っています。


建築には、建築雑誌を見て“これは凄いな“と思いながら舐めるように見てしまう建築があり、中でも毎日同じページをめくっても飽き足らずに忘れられないものはいつか訪れたいと強く思い、またその中で、偶然にも時期が巡ってきて遠く離れていても実際に訪れて体験することができる。
そういった話で言えば僕にとってこの州立美術館の改修は、別の建築を見に行ったついでに駅の近くにあったから行ってみよう、くらいの関心の持ちようであったと思います。

さて、久しぶりに訪れてみると本当に落ち着く。今日は天気も良く風が気持ちよかったので窓が一部開いていて、窓が開いていたのを見たのは初めてで、開けることができたんだと思わず驚いたくらいです。(もちろん把手があったので物理的には可能だったに違いなかったのですが、なぜか開けられないような、開けてはならないような気配がありました)

その爽やかな空間で寸法を測り始めると、少し不審に思ったのか、一人で勉強していた人が声をかけてきました。よくこのカフェへ勉強しに来ているようで、僕が「よくよく考えてみたらものすごい良い空間だったことに気づいた」と話すと「私もそう思うからかなり頻繁に来るんだよ、ここは明るくて比較的静かで心地よいから」と返事がきました。
建築は、特に新しく建ったばかりの建築、有名な建築家が設計した建築はいつも僕を魅了するけれど、自分が作り手として何かを探し求めている時には、意外と身の回りのなんでもない空間が最も心地よく時には斬新ですらあり、一番の参考になる。そんなことを発見した1日でした。
もちろん、今回は(たまたま)ズントーらの協働設計だったのですが。。笑
すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
日本大学高宮研究室、東京藝術大学大学院北川原研究室にて建築を学び、在学中にETH Zurichに留学。大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりアトリエ ピーターズントー アンド パートナーにて研修、2015年から同事務所勤務。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

●本日のお勧め作品は、クリストです。
Christo_19 (2)クリスト
《包まれたタイムズスクエアのビル》
2003
リトグラフ+シルクスクリーン、コラージュ
Image size: 77.5x59.5cm
Frame size: 85.0x67.0cm
H.C.(Ed.20)  Signed
*レゾネNo.187
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
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本日10日(日曜)と明日11日(月曜)は休廊です

◆ときの忘れものは12日から「今週の特集展示:駒井哲郎展」を開催します。
201709komai
会期=2017年9月12日[火]〜9月22日[金]
※日・月・祝日休廊
駒井哲郎の版画作品、詩画集など約10点を特集展示する他、恩地孝四郎南桂子国吉康雄フォーゲラー等の版画作品をご覧いただきます。


◆ときの忘れもののブログは建築関連のエッセイを多数連載しています。
佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」は毎月17日の更新です。

大野幸のエッセイ<ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート>は随時更新します。

植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は随時更新します。

光嶋裕介のエッセイは随時更新します。

藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は終了しました。

八束はじめ彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は終了しました。

芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は終了しました。

建築を訪ねて

建築家の版画とドローイング

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電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第17回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第17回 ドイツの家具工場


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今回はドイツのシュタインハイム・アン・デア・ムル(Steinheim an der Murr)にある家具工場について紹介しようと思います。

この家具製作工場ルーカス シュナイト(Lucas Schnaidt)は1890年の創業から創業者家族での経営が3代続いた後、つい最近になってスイス老舗の家具メーカーであるホルゲングラルス(Horgenglarus)を保有していた元オーナーが買い取って経営を再スタートさせました。先代のオーナーは定年退職していく熟練職人を補充するように新入社員を採ってこなかったために従業員数は年々減っていき、かつてこの地域では“家具作りを学んだらルーカス シュナイトへ行く“とまで言われた老舗工場でありながら、現在従業員はそれぞれの部門を合わせても数名程度。僕たちが訪れた時は夏の休暇中だったこともあり、遠い昔に何かを置き忘れてしまった時のように、敷地内は閑散としていました。


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軽いミーティングと食事をした後、現オーナーに製作工場を案内してもらいました。僕は家具デザインのようなことをした経験はあっても、大きな家具製作工場へ赴いて、どんな機材を使ってどうやって家具(例えば椅子)のパーツを切り出していくのか、具体的な製作方法と工程については詳しく知りません。椅子の脚部や、曲げ合板でできた座部が高く積み上げられた光景、ただ数え切れない量のクランプ(締め金具)が整然と並ぶ様子は見応えがあり、それだけでアーティストが設えたインスタレーションのようにも見えて素直に感動してしまう自分がいました。

よく知られているようにズントーは木工職人として父親の仕事場で数年間働き学んでいた経験があるため、工場内部の光景を見ると、“自分が学び働いていた頃と機材が大して変わっていない。経営再建にはまずこれらの機材を刷新し、加えて高性能CNCマシンなど大型機械の導入だな“と意見します。ベーシックな家具の製作に関して言えば、今まで通り旧式の単純動作をする機械で用は足りる。それでもこうして最新の技術をどんどん取り入れようとする姿勢は“職人的建築家ピーターズントー“という文脈でレッテルを貼って彼を理解しようとすると、少し違和感が覚えるかもしれません。もしかしたら多くの人にとって意外なことかもしれませんが、彼は実用的なことに対してはいつもとても柔軟に振る舞うのです。


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敷地内には切り出した余りの木材を保管し、時期によっては暖房器具の燃料とするために大きなサイロ(写真の赤色建物)があります。工場はそれら一部を除いて基本的には平屋建てです。この建物がある周辺敷地一体は工場地帯で、周りには80年代に建てられたと思われる複層階の工場があります。この建物だけが白い外観を持ち低層であり、巧みな敷地内の配置計画であるために周りから際立っていました。


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工場の外観はいわゆるモダニズム建築と言ったところでしょうか。中に入って工具やら何やらがある一定の距離を持って整列・乱雑しているのを見ると、多くの職人たちが働いていた当時の面影を感じさせ、またいかにもドイツ製と見える重厚な仕様の機材が並ぶ光景と、工場自体の印象からノスタルジーを呼び起こすような雰囲気がありました。ありきたりな言葉で形容するなら、建物に入った瞬間、過去にタイムスリップしたような感覚が起こった、外でしとしと降る小雨のジメッとした臭いと周りの静寂とが、またその懐かしさを助長するのでした。

現オーナー曰く、この工場を獲得するにあたって最も考慮したことは、この地域の天気が良いことと、静かなことであったと言います。
(僕たちが訪れた当日は雨でしたし、静かであることは製造ラインがうまく働いていないことを意味するようにも思いましたが、そこは話の腰を折るところではないと判断して、もちろん黙っていました笑)

ともあれ、この工場に関わる様々なコンテクスト(工場敷地の環境、製作工場の状態、会社の歴史など)は新しく物事を始めるにあたって非常に魅力的で、僕自身も“こんな工場で自分のキャリアをスタートさせたいな“と心底思うほど心を踊らせるものでした。


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この工場のように空間に水平的な広さがあって天井がそれほど高くないと相対的に見て、上から圧迫されたような少し窮屈な印象になってしまいがちです。しかし、屋根天井に緩い勾配がついて少し高くなっているために、空間が膨らんだような緩やかな広がりをもたらしています。まず工場全体を走るメインの通路が二本あって、その窓側に作業スペースがある。こうした流動と停滞が隣り合わせになったような作業空間が何十メートルも続き生産ラインを形成しています。僕がとてもいいなと思ったのは、非常に合理的でありながら、合理的に計画したという意図を感じないところ。それはこの家具製作工場が、家具を量産するためにできた生産効率を第一の目的としたものではなく、“家具職人のアトリエ“の延長線上にあるからかもしれません。

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サンディングをして滑らかな手触りを完成させるところ。ここで最終的な肌触りが決定されます。

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ポルスター製作部門。型をもとにして切り出し、縫い付けがされていきます。

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ステイン各種。秤なしで経験から色を混ぜていくのでしょうか。


新しいオーナーは僕たちとの協働を皮切りにして、これからどのように会社を再建していくかに闘志を燃やしていました。次々と新しい事にチャレンジしていく面白い発想の人を間近に見ると、自然と自分にも力がみなぎってくる。それは一体なぜだろうと、いつもとても不思議に思ってしまいます。

実は今回ここに訪れた理由は、9月16日にブレゲンツ美術館でオープンする展覧会企画Dear to me- Peter Zumthor’s Weltのためにテーブルやソファといった家具をデザインしているからなのです。
その展覧会はブレゲンツ美術館20周年の節目に因んで依頼されたものですが、いわゆる建築家ピーターズントーをモノグラフィ的に振り返る“ドローイングと模型で構成された展覧会“ではありません。
地上階はバーを備え中央にステージがあり、そこではミュージシャンの演奏を聴きながらソファに座り、ゆっくりと時間を過ごすクラブ(日本でいう社交サロンのようなところ)。
一階は建築写真家として世界的に有名なヘレン ビネット(Hélène Binet)がギリシャ建築家Dimitris Pikionisによるランドスケープを撮影した写真と、作曲家オルガ ノイヴィルト(Olga Neuwirth)による約16mの帯からなるオルゴール。
二階はクールにある古書店のオーナーが所蔵する約4万冊の本を用いた図書館と読み聞かせの場所。小さな演奏会や講演会も行われます。そのための読書テーブルやスタンドランプも新調しています。
そして三階には日本でもよく知られているシュタイナー レンツリンガー(Steiner Lenzlinger )による展示。

この展覧会は、訪れる人がアートに出会い何かを感じ持ち帰るというよりは、そこで長い時間を過ごすことができ、毎日でも訪れたくなるような場所。日常の延長にあるような気軽さと、いや、いつもより少しだけおしゃれして出かけようと思わせるセミフォーマルさを合わせ持った、湖沿いの都市にある美術館イベントスペース。そんな場所になってほしいという思いが担当している僕にはあります。

近々、この展覧会のレポートもしていくつもりです。
すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
1984年生まれ。日本大学高宮研究室で建築を学び、2008年東京藝術大学大学院北川原研究室に入学。
在学中にETH Zurichに留学し大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりスイスにて研修。 2015年からアトリエ ピーターズントー アンド パートナー。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。
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●本日のお勧め作品は、北郷悟です。
20170810_北郷悟
《野菊》
2008年
リフトグランドエッチング・ドライポイント・雁皮刷り
19.9×15.0cm
Ed.15
サインあり


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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆ときの忘れもののブログは建築関連のエッセイを多数連載しています。
佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

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八束はじめ彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は終了しました。

光嶋裕介のエッセイは随時更新します。

建築を訪ねて

建築家の版画とドローイング

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第16回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第16回 建築する手立て


5月4日に計画概要がプレス発表されたバイエラー美術館増築計画は、先立ってちょうど一年前の7月中旬に国際設計競技(コンペ)が行われました。今回はそのことについて“作り手の視点“から解説していこうと思います。

この国際コンペには世界各国から11組の建築設計事務所が招待され、僕たちズントー事務所の他にもスイスからはメルクリ(Peter Märkli)ら計4組、そして日本からも4組とほぼ二カ国で参加者の大半が占められていました。当時、事務所内でも“さすが日本の建築家たちは凄いな“と称賛混じりの驚きがあり、心の中で密かに同じ日本人として誇りに感じたことを思い出します。(僕自身が凄いわけではないのですが。。笑)

ピーターズントーはバーゼル近郊出身ということもあり、“故郷に錦を飾る“はないにしろ、ずっとバーゼルに、とりわけ彼の真骨頂である美術館を建てたいという気持ちがあり、そのことは事務所内で彼の話す言葉から度々伝わってきました。実は事務所ではもう何年もコンペに参加しておらず、最後に参加したルツェルンの駅前開発コンペ以来、“もうコンペはしない“と事務所内には了解ができていました。

僕たちの事務所では入ってくる新しいプロジェクトはまずマネージャーが取捨選択し、その一次振り落としに残ったものをピーターに提示して進めていくかどうかを考える、というのが一般的なプロセスです。 けれども今回のように、あるマネージャーが別のマネージャーによって振り落とされたこのコンペをたまたま見つけて再び議論のテーブルに持ち出すことがなかったら、こうした例外的なコンペの参加も、良い結果も起こらなかった。今回のケースは何だか人生論を語っている時に“機運も大事なんだ“と言っている良い事例のような出来事でした。


当選案自体についてはバイエラー美術館のホームページを見てもらいたいと思います。
既存の本館(レンゾピアノ設計)の東側にある同敷地の一角に小さな道を挟んで3つの建物が向かい合うようにして配置され、既存のランドスケープと一体となった広場を創り出しています。三又の形をした“Haus für Kunst“アートの家(展示室)、既存の壁に寄りかかるようにして建つ“Pavilion“パビリオン(バー、イベントスペース、ショップ)、そして搬出入やオフィス機能が詰まった“Servicegebäude“オフィス棟。ここで注目したいのは、それら3つの建物が同じ建築言語でできたもの(同じ考え方、組立て方でできた異なるバリエーションのこと)ではなく、全くと言っていいほどそれぞれが異なっていることです。アートの家は比較的荒い仕上げでできた三層の展示室。パビリオンは地上一層で地下に階段状に下がっていく、前面ガラスの建物。サービス棟は北側の既存の建物にくっついて、あたかも既存の建物に増築されたかのような振る舞いをしています。しかし3棟の独立した建築が、それぞれの美術館としての機能を補完し合うという意味で、また1つの広場を形成するという意味で一体になっているため違和感を感じないのです。


このコンペには3ヶ月くらい前から少人数のチームで案を練り始め、提出前には10人強が作業に取りかかりました。

一般に、スイスの設計コンペでは石膏でできた敷地模型が主催者側から配布され、そこに同じく白くペイントもしくは白い材料で作られた計画案模型を設置して提出します。それは色もテクスチュアも抽象化されたヴォリュームで、計画案の規模や都市計画(とまでの規模ではないにしろ、周辺建物との関係を示す計画)を理解し他案と比較するのに役立つと言われています。
その敷地模型は提出義務だったものの、事務所からは加えてプレゼンのために3つの異なるサイズの異なる素材からできた模型と、リノリウム版画で制作されたドローイングを提出したため、かなりのマンパワーが必要とされました。

僕は当時、事務所にあるワークショップ(製作工房)でチーフをしていました。ピーターにリノリウム版画で図面を制作したいと言われた時に、“全く経験がない、どうしようかな。“と困惑したのをよく覚えています。それでもリノプリントでの制作経験のある芸術家にアドヴァイスをもらい、同僚が鉄を溶接して、レオナルドダ・ヴィンチが遺した機械のスケッチのような装置を作り(笑)、大きなテーブルに固定して試し刷りをスタートさせていきました。


10年以上前のことですが、フランクゲーリーに密着したドキュメンタリー映画を見た時に、ゲーリー事務所がそれはもうかなり大きな模型を作り、その模型を何やら特殊な機械で部分毎にスキャンし、自社開発したソフトウェアで図面に起こしていたのが衝撃的でした。僕にはソフトウェアを開発することが建築家の仕事ではないように感じてしまっていたから。しかし今思えば、自分たちの作りたい形、モノがあって、それを作るためのベストな手立て(道具)がない場合、その手立てを考え作ることから始める。作るための道具を作る、実はとても単純明快な話でした。そうしたプロセスこそが、本当にクリエイティブであると今の自分には思えます。

提出図面はドイツで購入した厚い和紙(のような紙)に、プロッター(大判印刷機)で一部建築図面と版画のためのガイドラインを印刷し、そこへリノリウムを彫ってできた型にインクを塗り、1つ1つ版押ししていきました。とりわけ既存樹木は優秀なインターンが樹種やサイズ毎に異なる版を削ったため、CADで拡大縮小しながら反復して用いる樹木とは全く異なる印象になりました。そうしてできる約A0サイズの提出図面を一枚完成させるのに、3人がかりで約4時間かかります。その間に少しでも押し間違えるとcontrol+Z(やり直し)できないために、もちろんゼロからのやり直しです。作業中は良い緊張感がありました。

提出した模型の1つである1/250スケールの周辺模型(先のリンク先の動画を参照)は、バーゼル近郊で採れる石に因んで紫色に着彩した、ガスベトンと呼ばれる材料から彫刻して作られたものです。全体はいくつかの区分けされたパーツでできているものの、上物(建物)が敷地と一体化していないと、つまり敷地の土台プレートの上に建物が載っているのでは仮に同じマテリアルでできていたとしても一枚岩ではないため全体の印象としては建物が付属的で途端に弱く見えてしまう。それを避けるために大きな塊から建物を彫刻しなければなりませんでした。


計画案それ自体とは一見直接関係のないこの版画や模型たちによって、設計デザインに対して新しい角度の解釈が加わり説得力が増す。建築をやっていて本当に面白いなと思うのは、建築は出来上がるまで空間を実体験できない分、色々な手立てを使ってそれを表現し説明することができ、時に実体験とは全く違った、しかしそれよりも強烈な印象を与えることができる。という事実があるからだと僕はいつも感じています。
すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
1984年生まれ。日本大学高宮研究室で建築を学び、2008年東京藝術大学大学院北川原研究室に入学。
在学中にETH Zurichに留学し大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりスイスにて研修。 2015年からアトリエ ピーターズントー アンド パートナー。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

●本日のお勧め作品は、ベン・ニコルソンです。
20170710_nicholson_04ベン・ニコルソン
《作品》
1968年
エッチング、鉛筆、ガッシュ、紙
イメージサイズ:30.0x28.0cm
シートサイズ:43.5x37.5cm
サインあり


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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

移転記念コレクション展
会期:2017年7月8日(土)〜7月29日(土) 11:00〜18:00 ※日・月・祝日休廊
※靴を脱いでお上がりいただきますので、予めご了承ください。
※駐車場はありませんので、近くのコインパーキングをご利用ください。
201707_komagome
出品作家:関根伸夫、北郷悟、舟越直木、小林泰彦、常松大純、柳原義達、葉栗剛、湯村光、瑛九、松本竣介、瀧口修造、オノサト・トシノブ、植田正治、秋葉シスイ、光嶋裕介、野口琢郎、アンディ・ウォーホル、草間彌生、宮脇愛子、難波田龍起、尾形一郎・優、他

ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

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JR及び南北線の駒込駅南口から約10分、名勝六義園の正門からほど近く、東洋文庫から直ぐの場所です。

◆杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第15回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第15回 グラウビュンデンの大自然


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今回はスイスの、グラウビュンデン州の自然について少しだけ綴ります。


少しずつ暖かくなってきたこともあり、気晴らしにハイキングに出かけてきました。
ハイキングと聞くと車で1時間くらいかけて山へ行って。。と考えてしまいがちだったのですが、僕の住んでいるクールは山々に囲まれた谷あいの街で、バスに乗って10分登るともう山の麓に着きます。今回はクール(Chur)からトリミス(Trimmis)に向かうことにしました。

東京に住んでいた時は自然(樹々など)と暮らすのはいいなという感覚はあっても、それを実体験として強く持っていなかった、もしくは必要不可欠なものとして意識していなかったように思います。
大学のあった上野公園でベンチに座っておにぎりを食べる。そんな絵に描いたような典型的なランチを度々していたし、新宿御苑や井の頭公園へ出かけてのんびりとした休日を過ごしたりしていました。自然の中でひっそりと、しかし楽しく暮らすという"となりのトトロ的イメージ"には憧れさえ抱いていたのですが、理想として自分が思い描いていたイメージと、現実に自分の身の周りで考えるイメージには、かなりのギャップがありました。それはおそらく、みんなが"自然と暮らすっていうのはやっぱ良いよね"と言っていることに影響されて、"そりゃあ、もちろん僕も良いと思ってるよ"と当たり前の受け答えのように無条件に発言していた節があるからです。
簡単に言えば、僕は大自然と触れ合い暮らすことに、(既にそこにそういった環境があったとしても)100パーセント集中していなかったということです。今ようやく気が付きました笑。


よくよく考えてみると、そういった勘違いのような事柄は身の回りで頻繁に起こっています。。。起こっているのではないでしょうか? あまりに当たり前の言動や事柄で、それをなぜと考え直す時間が勿体無いとし、そうこうしているうちに日常となり慣習化し、気付けばどうしてこうしているのか忘れてしまって(もしくは初めから)わからないが、でもそうなっているからには最も自然な(ナチュラルという意味で)なことであるに違いないと自分に言い聞かせ、どうやら皆もそう思っているみたいだからそういうことにしておこう。。。その点にブレイクスルーをすることが、建築もとよりデザインの根底にあるはずです。

少し見苦しい自己弁護のようになってしまいました、話を戻します。

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駅からバスで森の入り口すぐの停留所までダイレクトに辿り着くことができるので、休日には多くの地元の人達を老若男女問わず見かけます。バス停から1分で山に入り少し歩けば、少し冷んやりする日陰の場所と、上方から射し込む太陽の光で暖かく心地良い場所とが混ざり合った、均衡の取れた森の状態に出会うことができます。日本ほど湿度が高くないため、真夏でも日陰にいると冷んやりと気持ちよく、風は少しだけ冷たく感じます。森林浴にはもってこいです。


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森の中には丸太を積んで乾燥させている箇所もいくつか見かけます。


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最近知人が、"建築家というのは世界のどこへ行ってもストレスと戦わなくてはいけない。それはきっと建築を建てるという行為自体が、実は人間の能力を超えている行為だからではないか"と話していました。この山の風景の中に立ち、そして10メートルは優に超える高さの木々を見上げると、なるほどそうかもしれない。自然の生命力は圧倒的であり、これと同じくらい、もしくは何倍もの高さの建築を数年で建ち上げてしまう。そしてややもすれば100年は持たせようとする。それはおそろしいくらいにものすごいことだ。とそれだけで改めて感動します。


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途中にある渓流で少し水浴びをして、足元にあった少し変わった石を拾い、そのうち1つはオニギリ石と名付けました笑。

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途中、子供連れや老夫婦を何度も見かけました。こういうところで幼少期を過ごすというのは一体どんなことなんだろう。自分もこういう所で育ったらどんな人間になっていただろう。と思わず考えざるを得ませんでした。
すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
1984年生まれ。日本大学高宮研究室で建築を学び、2008年東京藝術大学大学院北川原研究室に入学。
在学中にETH Zurichに留学し大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりスイスにて研修。 2015年からアトリエ ピーターズントー アンド パートナー。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

●本日のお勧め作品は、山口勝弘です。
20170305_yamaguchi_05_yoru-shinkou山口勝弘
「夜の進行」
1981年
シルクスクリーン
イメージサイズ:47.0×40.0cm
シートサイズ:63.0×49.0cm
Ed.50  鉛筆サインあり

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◆杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第14回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第14回 上品な納屋


新しい自社ビルに引っ越してから一年余りが経ちました。

以前にこのブログでその様子を少し書きましたが、先月にスイス国内の建築家なら誰もが知っているHoch Parterreという建築雑誌で特集記事があったため、今回はその内容を紹介しようと思います。

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昨年2月に引っ越したばかりの当時には、僕が知っている限り竣工写真のようなものは撮っていなかったと思います。半年以上過ぎた昨年末辺りからフリーカメラマンが何人かやって来ては写真を撮り、年初めには先述の雑誌のためにカメラマンが数日かけて撮影に来ました。その際には特に大掃除をして家具を移動させて写真用に設えをするわけでもなく、普段の仕事をしているままに写真が撮られていきました。
出版された写真を見ると彩度が若干落としてあり全体の印象としてややモノクロに近い、色のコンポジションよりも光と影を含めた空間の構成が見えやすくなっています。(むしろ初めからカラフルな建築や家具ではないのですが。。。)

竣工したばかり建築空間に家具などをほとんど入れていない状態で撮られた、空間構成をわかり易く見せる写真や、逆に家具などが不自然なほどにも綺麗にセッティングされた建築写真は雑誌でよく見かけます。そしてレンダリング(CG)技術が発達した昨今では、もはやプロジェクト段階のレンダリングなのか、それとも現実に撮られた竣工写真なのか区別が付かないような非常に高精度なイメージ画像は一般雑誌やインターネットサイトで目にする機会が増えました。

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今回雑誌に掲載されたような雑多で現実世界に起こっている不可避なノイズ(例えば特にポーズを決めていない人物や特別に整理されていない日用品など)を含めながら、しかし建築空間の良い部分がわかる写真は珍しい。ここで僕が言いたいのは、この事務所建築は空間構成としては単純極まりなく(凡庸ですらあり)、ここで働く人や雑多な模型、机の上の散らかったものたち。。。が建築を逆に豊かに生き生きとしたものとして見せている。それはズントーがしきりに言う“Gebrauch(用)“としての建築を目指しているからだと考えます。


以前の記事で紹介した時に僕はこの建築をその空間構成の単純さ、そして肩肘張りすぎない態度から敢えて凡庸に"自社ビル"と形容しました。一方でズントーは記事の中でこう語っています。


Ich nehme nur das Essenzielle auf, das ich im Dorf sehe: Stein, Holz, Wellbrech, arm und elegant zugleich, mit dem allereinfachste Schöpfe und Unterstände vor dem Regen geschützt werden.

(筆者意訳)
私はこの村で見かける本質的なもの(石、木材、波板鋼板、つまり貧相であると同時に華やかさのあるもの)たちを拾い取り、最も単純な雨風を凌ぐ納屋(シェルター)を作った。


確かになるほどと思うのは、この建築は一言でいえばガラス建築なのだけれど、その建ち方や使われている素材から、上品な納屋のような様相を呈しているところです。

具体的には、
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1.建物の裏側に家畜農家が建っていた当時の石積みの壁があり、その面影を残している。

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2.安価な波板鋼板を切妻屋根やキャノピーに用いることで小屋のような仮設性を有している。

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3.妻側の間口が狭く華奢な印象を与えている。平面図を見るとわかるように、この建築は1986年に建てられた木造アトリエとほぼ同じ広さで、高さが4階建になっています。

これらの要素の印象はもちろん全世界共通ではありません。しかしズントーが言っているように、このハルデンシュタインという村を歩いて観察してみれば、明らかにそう捉え認識されることができる、有効性があるのです。


Das erste Atelier wollte Holz sein. Da war ich noch Denkmalpfleger: Nur die Wohnhäuser sind aus Stein! Und ein Atelier ist nicht aus Stein, das hört man ja, das ist etwas Leichtes. Damals bräuchte es eine neue Einstellung, um mit Holz zu bauen. Das Atelier ist dann ein bisschen wie ein Möbel geraten.

(筆者意訳)
初めのアトリエは木造で在りたかった。私は当時まだ保存修復家(の名残が)であったので、住宅だけが石造であるべきだ、アトリエは石造ではなく、(アトリエという言葉の音から聞き感じるように)何か軽いものであるべきだと考えていた。当時木造を作るには新しい考え方が必要で、出来たものはやや家具に近いものになった。


以前ソーリオの建築家ルイネッリさんを訪れた時、彼も住宅は石造でアトリエは家畜小屋もしくは穀物倉庫のように木造であるべきだと、ソーリオの村のタイポロジーを分析したうえで発言していました。同じ時期に比較的同じ規模のアトリエを建てた二人の建築家が"これはこうでなければいけない"というある種の縛り、もしくは共通認識のようなものがあったのかと考えると興味深いところがあります。


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その仮定を基に考えると、この新しいアトリエの最上階は現在事務所スペースとして使われているものの、キッチンやバスタブ、シャワーといった機能も備え付けられている。であるから、この新しいアトリエは石造(コンクリート造)であって良かったのでしょうか。。?

ズントーは自身がモダニズムの建築家と世間に認識されていることに関して、こう語っていました。
"私は伝統的なものの形を参照するのではなく、伝統的なものの中にある感情や雰囲気といったものを参照していきたい。そして出来たものはモダンに見えるかもしれないが、その国(地域)の人々が、これこそがこの国(地域)の建築だと思えるものにしたい。"

この新しいアトリエが出来た当時、僕はこれこそがこの村(ハルデンシュタイン)の建築とは正直あまり感じませんでした。一年以上経った今、違和感を感じなくなっているのは僕がただこの建築に慣れてきたのか、それともこの村をより深く理解できてきたのか、第三者に尋ねてみたいものです。

(全ての写真はHoch paaterre 4/17より)

すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
1984年生まれ。日本大学高宮研究室で建築を学び、2008年東京藝術大学大学院北川原研究室に入学。
在学中にETH Zurichに留学し大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりスイスにて研修。 2015年からアトリエ ピーターズントー アンド パートナー。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

●本日のお勧め作品は、堀尾貞治です。
大_01堀尾貞治
《20 Oct 2016》 1
2016年
ドローイング
108.5×77.0cm
サインあり


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杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第13回

杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」

第13回 ハルデンシュタイン


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一年前このエッセイを始めた時に、勤務先のあるハルデンシュタインでの生活を紹介しました。今回は再びこの村での生活について見ていきたいと思います。


人口千人ほどのこの村に英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ロマンシュ語、ルーマニア語、ノルウェー語、アラビア語、日本語。。が聞こえるインターナショナルな事務所があるのは知られていますが、村を訪れる多くの人たちは残念ながらその事務所建築だけを見て帰ってしまいます。お世辞にも"華がある村"ではないですが笑、それでも毎日通っても飽きない風景があり、ふとした日常の中にも小さな発見があります。

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村を訪れると先ず目に入るのはお城です。シンデレラ城のような象徴的な高い塔はないものの、規模はなかなかのもので良い状態で残っています。綺麗なガーデンもあり、ここには村の役所機能はもとより、オフィスや作業所、個人の住居と幅広く利用されています。

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ハルデンシュタインには1つしかお店(日本で言うスーパーまでいかない商店)がなく、しかも営業時間が07:30-12:15と夕方に時おり二、三時間という、日本の状況と比べるとかなり不便な設定です。昼休みに食材を買いに行く時間には皆注意しています。その上階にはこれも村唯一のレストランがあり、僕は滅多に行かないですが、美味しいスープをお昼に出してくれます。
村の建物の大部分はCalanda(カランダ)と呼ばれるこの地域を代表する山を背にして建ち並び、東側へ向かって開口を持っています。そのため冬でも綺麗な朝日が建物内に差し込んできてなんとも言えない美しさがあり、眠気なまこな僕をいつもやる気にさせてくれます。

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事務所へ向かう途中、家の前に持ち込み、持ち出し自由の小さなライブラリーがあります。

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人と知り合ってよく聞かれるのは、小さな村で働くとはどんなものであるのか、ということです。僕自身、こんな小さな村に世界中から人が集まって働いていることに対して、少し滑稽にすら思えてしまうことがあります。何もニューヨークやパリ、ベルリン、サンパウロなど大都市からわざわざここに来なくても(笑)。その妙な集まり感と言ったらいいのか、それでも働き始めると良い意味で考え方にギャップは有るものの、チームワークを妨げるような支障は驚くほどありません。それは僕らの目指し作ろうとしている建築、すなわち"使い易くて住みやすい、なおかつ新しい生活、ライフスタイルの提案(創造力)を掻き立てるものであって欲しい"ということが共通しているからでしょうか。

三月末現在、事務所には約30名のスタッフがいます。秘書マネージャー人事関係の人が5名。インターンと職業訓練学校生が9人。建築家は15名程です。日本のアトリエ設計事務所と大きく違うだろうは、働く女性の割合でしょうか。スタッフの半数以上は女性で実はプロジェクトリーダーも女性の方が多い。以前インターンの面接を担当していた時に、ピーターから半数は女性にすること。と言われたのを覚えています。建築をつくることは完全にチームプレー(事務所内に留まらず、現場も含めて多くの人が関わって建築を作ります)なので、チームの輪を乱すほどに強い個性があるよりは、社交力に長けた人が好まれるからでしょうか。僕が思うに、女性の方が落ち着いて物事を決断することに長けているような気がします。

さて話を村の様子に戻して、事務所からさらに奥へ歩いて行ってみます。さてここで質問です。今から紹介する建築のうち、ズントーが新築改修したものはどれでしょう?

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真ん中奥の家

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左手前の家

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正解は全てです。事務所建築のみならず、ハルデンシュタインには何軒ものズントー作の住居(個人事務所を開く前にクールの歴史的建造物の修復の仕事をしていた頃のものも含む)があり、さらに何軒もの無名ながら素晴らしい建築があります。こうしたものを傍目に時系列で見ながら、自分なりのハルデンシュタインを散策されてみることをお勧めします。
すぎやま こういちろう

■杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
1984年生まれ。日本大学高宮研究室で建築を学び、2008年東京藝術大学大学院北川原研究室に入学。
在学中にETH Zurichに留学し大学院修了後、建築家として活動する。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりスイスにて研修。 2015年からアトリエ ピーターズントー アンド パートナー。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

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●本日のお勧め作品は、蛯名優子です。
20170305_ebina_01_e-12蛯名優子
「01. e-12」
2001年
水彩、紙
61.0×79.0cm
サインあり


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