未来遺産をつくる

■アートアーカイブ「FootprintWall」について

竹本清香(芸力)


 4月にアートアーカイブのサイト「FootprintWall」を立ち上げました。そのとき、意外にも実はいちばん反響が大きかったのは、60代のコレクターさんと作家さんで、「こういうものをずっと待ってたんだよ!すぐに使いたい。」と真っ先に電話をくれたのでした。「遺す(のこす)」ということを大きなテーマに立ち上げたFootprintWallですが、「遺す」ことを自分自身の緊急で切実な問題として考えて悩んでいたのが、まさにこの年代の人たちだったのです。アートの情報を「遺す」ということについて、アーカイブの重要性を共感してもらえたことはとても嬉しくて、私にとってこの事業を続けていくための、とても大きな励みとなっています。
 今でこそ「アーカイブ」という言葉で話が通じますが、私が「芸力」の活動を始めた2005年当時は通じるどころか、「インターネットでアート情報を発信したくて・・・」と話をすると、「あーうちはインターネットは結構!」と門前払いをされることばかりでした。そんな中で、ときの忘れものの綿貫さんは、私がやろうとしているアート情報のアーカイブについてすぐに理解してくれて、「応援するよ」と言って下さった数少ない画廊主さんの一人でした。
 私が、ときの忘れものを初めて訪ねた日のことを、当時新人スタッフだった尾立麗子さんが書いてくれています。こうして、私の、芸力の、活動の足跡が、私ではない誰かの記録によってしっかり刻まれて残っていることが大変嬉しくて、これがまさに「アーカイブ」だと思うのです。365日毎日欠かさずに続けているこのブログは、綿貫さん、ときの忘れもの、そしてそこに関係する人たちの貴重な活動記録の「アーカイブ」であり、大きな財産であると思います。

アートの情報を、日本の財産として、後世に遺し伝えていける仕組みを作れないか。 そう考えて作ったのが、FootprintWallです。

100年後の未来に、あなたの「表現」を届けること。 これが、FootprintWallの使命です。

◆「遺す(のこす)」ということ
 この10年で私たちを取り巻く情報環境は劇的に変わりました。ネットに接続する全ての人が情報の発信者になり、個人のメディアを持つことができるようになりました。ネットの中の情報は、川の流れのように目の前を過ぎていき、たくさんの支流を持つその川の実体は掴みたくても掴みきれない、過去にさかのぼって情報を探そうと思っても流れが速すぎて探せない、そんな状態です。私は、その流れに抗いたいと思いました。
 FootprintWallは、その名のとおり、”足跡”の”壁”です。今を生きる作家の日々の活動を、アートに関わる人たちの活動を、その出来事の発生と同時進行で遺していくこと。”足跡”を”壁”に刻み遺していくこと。今日の足跡(記録)が積み重なって道となり歴史になります。
 情報の付け足しが得意なWebの特徴を活かして、情報をひたすらに「遺し」ていき、100年後の未来に届けること。時間や技術の変化に耐え、情報を100年後まで「遺し」ていける環境をFootprintWallは提供していきます。
 今評価され価値あるとされているものが、100年後も同じとは限りません。未来における価値は未来の人が決めます。だから、今私たちがすべきことは、現在の価値の有無に関係なく情報に向き合い、それを「遺し」、未来に届けること、なのです。

◆「アーカイブ」と「出版」が起こす情報編集革命
 FootprintWallは蓄積された膨大な量のアート情報を管理するアーカイブデータベースと、そのデータを多様で高度な表現で出力する電子出版の仕組みを合わせた統合システムです。
 2005年から積み上げてきたアート情報は、作家20191名、画廊/美術館1844件、展覧会情報36873件(2013年9月25日現在)になりました。FootprintWallではこの日々増えていくアート情報を誰もが自由に編集、利用して頂けます。
 アートアーカイブの地層をいろんな角度できった断面は、データベースの検索結果であり、そのインターフェースをそのまま出版に利用できます。そして、地層から吸い上げたデータを編集して様々な出力形式で出版することも出来ます。
 例えば、作家さんは展示歴を利用して、会場の様子、評論家の展覧会のレビュー、展示作品、それらの情報をまとめた展覧会カタログを作成して電子出版し、展覧会を見にきてくれた人だけに御礼を兼ねてそのカタログをメールで送ることができます。
 コレクターさんはお気に入りの作家を探して、バーチャルコレクションをすることもできますし、web上で企画展を開催することもできます。また、展覧会のレビューや美術鑑賞のコメントをまとめた本を電子出版したり、自分のコレクションリストをまとめて情報管理することも簡単に出来ます。
 FootprintWallは、従来のアーカイブシステムのように活動記録をただ保管するだけではなく、常に進化し続けるアーカイブデータベースを利用して、「表現」を出版することを可能にしたシステムです。

◆「生きている」アーカイブデータベース
「アーカイブ」を活動の事後の記録として考えてはいないでしょうか。FootprintWallでは、活動の事前プロモーションとして、情報の発生と同時に世界に向けて発信し、広報ツールとして利用することができます。展覧会情報は会期が終了したら過去の情報として、地層深くに埋まって固定してしまうわけではありません。誰かが展覧会について、そこで展示されていた作品について、作家について、コメントをする度に再び地層の上に呼び起こされるものであり、「アーカイブ」は生きているのです。アーカイブデータを今も、100年後でも、いつでも光を当てて生き生きと輝かせることができる仕組みが、FootprintWallです。

FootprintWallはアートに関わる全ての人の活動の場になることを目指します。 あなたの”足跡”を”壁”に刻み、未来遺産を一緒に築いていきましょう。 FootprintWallのアーカイブ技術も未来への遺産として進化し続けます。

 ギャラリー・キュレーターコース、コレクター・ライターコースは近日オープンいたします。 どうぞよろしくお願いいたします。
たけもとさやか

*画廊亭主敬白
アートアーカイブの構築に奔走する芸力の竹本さんに寄稿していただきました。

高村光太郎研究の北川太一先生がつねづねおっしゃっています。
「優れたものはほっておいても必ず評価される、なんてのは嘘です。誰かが、これは美しい、大切なものなのだと言い続けなければ、あっという間に忘れ去られ、<なかった>ことになってしまいます。」

記憶し、記録し、遺す。
竹本さんの志に深く共鳴する所以です。

さて、いよいよ韓国ソウルのアートフェアKIAFに出発します。
先日もソウルに単身赴任中のMさんの紹介で、釜山のアートフェアのスタッフ(美しい女性二人)が来春の釜山アートフェアへの出展の勧誘にいらっしゃった。
ブース代もソウルより格段に安く、その上、宿泊ホテルもサービスしてくれるらしい。あちらは海外からのお客を招くために行政も種々の援助をしているとか、日本とは大違いですね。何とか韓国に来て欲しいというその熱意には打たれます。

今回のソウルには強力助っ人浜田さんを含めスタッフ5人と、京都から作家の野口琢郎さんも渡韓します。
そんなわけで、ときの忘れものは10月8日(火)まで画廊は休廊です。
ノートパソコンを持っていくので、お問合せ等は遠慮なくメールをお送りください。