ルリユール 書物への偏愛

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第50回(最終回)

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第50回(最終回)

ベルギーのルリユールは今


 ベルギーの学校を卒業してから、早いもので18年になる。この秋、3年ぶりに再訪したベルギーのことを、少しばかりご紹介したい。

 私が通っていた学校の製本科は、今は卒業生であるスイス人の女性がシェフ(科長、主任教授)となっている。その前のシェフはリリアン・ジェラールと言い、私の恩師でもあった。日本にルリユールを紹介、広めた功労者である栃折久美子さんの著書「モロッコ革の本」を読んだことがある方なら、リリアンの名前にご記憶の方もおられるかもしれない。優秀だった彼女は生徒でありながら、当時のシェフだったベルフロワさんのアシスタントもしていたという。リリアンの時代までは、パッセカルトンという伝統的製本形態を中心として教えていたが、今は違う。3年前にベルギーをおとずれた時、「ラカンブル(学校の名前)のルリユールはデザインのアトリエになってしまった」と周囲から言われた。現在のシェフ、アンヌ・ゴワは元々デザイン志向の強い人で、彼女はパッセカルトンで自己表現する人ではない。当然、教えるものもパッセカルトン以外ということになる。そもそも、私が在籍していた時代から、ルリユールのアトリエの存続問題はたびたび浮上していたし、リリアンが退官するにあたり、伝統よりもデザイン志向の強い本作りに移行した、それができる人をシェフに据えた、ということなのだと思う。

 もうひとつ、今回の訪問時のトピックは、ヴィブリオテカ・ウィトキアーナ(Bibliotheca Wittockiana=BW)についてであった。ここは、実業家のミッシェル・ウィトック氏が、自分の蔵書を収蔵、展示する場所として、私財を投入して作った私設美術館。ブリュッセルで重要なルリユールの展覧会は必ずここで開催されるという場所であり、かつてのディレクターは、私達学生にも親しく接してくれ、かつ応援してくれる存在だった。

zu-1ビブリオテカ・ウィトキアーナの正面外観 この真ん中にある石の塊は、実は古判本を模した彫刻である。


 この美術館が先頃、ボードワン財団の傘下に入ったという。ボードワン財団というのは、正式名称をFondation Roi Baudoiun ボードワン王財団と言い、先々代の国王の名前を冠していることから、一般の財団法人とは一線を画す公共性の高い存在である。そのため、この財団の傘下に入ったということは、BWが公共美術館musee publicになったということを意味する。また、現在のディレクターはマーケティング(ルリユールの世界で、こんな言葉を使うとは思わなかった!)を学んだ二十代の女性だそうだ。それが影響しているかどうかはともかく、公共美術館になったことで、ルリユールの展示を続けるにせよ、出版物を含めた本全体に関する展示が多くなっていきそうである。

zu-2同上展示室


 以上の2つの話題、明るい話とは言えないのだが、私が多少とも知っているベルギーという国は、時流に流されない、意外としぶといところがあり、伝統的ルリユールがそれなりに守られていくのではないかと思っている。今回、ウィトキアーナが公共美術館になったとはいえ、一人の愛書家が創ったルリユール専門の美術館が今まで財団法人化されることなく続いてきたことの方が、よくよく考えてみると驚きである。

zu-3稀覯本室 展示室の壁面一部がガラス張りになっており、この部屋とコレクションの一部が見られるようになっている。


 私の友人で、年は若いけれど、学年的には先輩だったフランス人製本家が、卒業後もブリュッセルに残り、アトリエを営んでおり、彼女に会うのも再訪時の楽しみのひとつである。製本で生計を立てていくのは大変と語る一方、彼女の仕事振りや話から、製本家と依頼主の、地に足がついた関係が垣間見られる。少しづつ変化しているが、それでも日本に比べてゆるやかに流れる時間の中で、自分を見つめ直すことができる場所、それが私にとってのベルギーなのである。

******

 私達、フラグムのブログも今回で50回目、かつ最終回となりました。毎回、テーマを決めるだけで悪戦苦闘してきましたが、気がつくと4年余り連載してきたことになります。ルリユールと製本家の周辺について、多少なりともご理解を深めていただけましたら幸いです。長い間、お読みいただきまして、ありがとうございました。
 

(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
病める舞姫12-1


病める舞姫12-2


病める舞姫12-3
「病める舞姫 」
土方巽著

1983年 白水社刊
・パッセカルトン 山羊オアシス革・ヘビ革総革装
・金箔押し装飾
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・221x158x26mm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本

〜〜〜〜
*画廊亭主敬白
frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は今回で最終回です。
執筆者を代表して、羽田野麻吏さんから以下のようなメールをいただきました。

(前略)
frgmエッセイ、長きに渡り大変お世話になりましたが、
先ほど入稿いたしました12月の第50回にて
最終回を迎えさせていただきます。

「まだあまり知られるところではないルリユール」について
多くの方に発信する貴重な場を頂き、
ありがとうございました。
あらためまして、一同よりお礼申し上げます。
(中略)
俊足を誇るメンバーは居りませんが、
今後もあちらこちらでお目に留まることがあるよう、
たゆまず歩を進めてゆきたいと考えておりますので、
どうぞよろしくお願い申し上げます。

Les fragments de M 羽田野麻吏


長い間のご愛読ありがとうございました。

●本日のお勧め作品は、料治幸子です。
ryoji-03料治幸子 Sachiko RYOJI
「花03」
2017年 紙にアクリル
58.5×40.1cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


●本日3日(月)は休廊です。

●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第49回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第49回

虫の生活


 講師をしている池袋のルリユール工房に、虫の研究者の生徒さんがおられる。植物につく線虫が研究対象だったというが、ニッチな研究のようで、実はカバーするのは幅広い分野のようだ。それはさておき、虫関連のみならず様々な絵本も蒐集しておられて、時々「こんな本があるんですよ」とレッスン時に持ってきて見せてくださる。
 今回ご紹介するのは、そんな中のひとつ。タイトルは「なずず このっぺ?」。はっ?何それ?と思った方は正解。「なずず このっぺ?」とは「何、それ?」という意味です。原作者はカナダ人で、オリジナルの本は英語で書かれている、、、のだが、なにしろ日本語版の帯に書かれている通り、「昆虫語のえほん」なのである。つまり、オリジナルは英語の昆虫語、ということになる。この本の楽しさ、面白さは、昆虫語や虫たちの動作・表情の豊かさにあるのだけれど、ディテールに様々な発見があり、何度みても飽きない。
 ストーリーは春に芽吹いた草が成長し、その上に虫たちが自分達の「基地」を作る。途中、クモに乗っ取られそうになるが、クモは鳥に食べられてしまい、基地は戻ってくる。夏になると花が咲き、虫たちは美しさに歓喜。やがて秋になり、冬がおとずれ、草は枯れてしまうが、再び春がきて若芽が顔を出し、「なずず このっぺ?」の季節となる。

zu1-1どのページもご紹介したいほど。

zu1-2

 この絵本は、日本語版以外に、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語に訳されているそうで、実は私の手元にはフランス語版もある。この本を見せていただいた後、休憩時間にすぐに階下の書店に直行。日本語版を買い、夜のレッスンのアシスタントとページ毎にお互いの意見を言い合いながら楽しんだ。あげくの果てに、二人で声に出して読んでみたら、あまりにおかしくて抱腹絶倒。アシスタントのYさんは日本語版だけでなく、フランス語版も買うというので、買ったら見せてね、とお願いしていたら、本当に持って来てくれました。しかも、それは私へのプレゼント。自分の分だけでなく、私のためにもう一冊買ってくれたとのこと。ありがとう、Yさん!

zu2-1日本語版(「なずず このっぺ?」フレーベル館刊)とフランス語版(”Koi Ke bzzz?”Helium 刊)

zu2-2

 日本語訳はアーサー・ビナードさん。日本在住のアメリカ人で、日本語で詩を書いている方。日本語訳では「何」が「なずず」、フランス語訳では「koi(=quoi )」となる(ちなみに英語のオリジナル版は「Du Is Tak?」”whaT IS THAT?”だろうか…)。「段々伸びるから、はしごがダンダンノビなんですね」とは、Yさんの名解釈(珍解釈?)。こんな類推の楽しみも与えてくれる。聞くところによると、小学一年生の感想文課題図書に選定されらしい。私は読書感想文というものに、いささか疑問を持っているが、大人が思いもよらない素敵な感想文がでてくるかもしれない。すっかり昆虫語を修得した少年少女が現れたら楽しい。
 話にまとまりがなくなったが、最後に、この絵本のもうひとつの素晴らしいところは、空間を表す白の部分が美しいこと。この白い部分が、自分と同じスケールに見てしまいがちな虫の世界が実は地面にごく近いところで展開されていることを、思い出させてくれるのである。

zu3-1Yさんと私が特に好きなキャラクター。

zu3-2

(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
病める舞姫12-1


病める舞姫12-2


病める舞姫12-3
「病める舞姫 」
土方巽著

1983年 白水社刊
・パッセカルトン 山羊オアシス革・ヘビ革総革装
・金箔押し装飾
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・221x158x26mm
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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●本日のお勧め作品は、倉俣史朗です。
sakurai--4010「Flower Vase #1303」
アクリル
W26.9xD8.0xH26.0cm
撮影:桜井ただひさ

photo by abe (4)『Flower Vase #1303』 撮影:阿部勤
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ときの忘れもの・拾遺 第9回ギャラリーコンサート
武久源造コンサート」のご案内

日時:2018年11月24日(土)15:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:武久源造
プロデュース:大野幸
今回は午後3時開演。ちょうど近くの六義園の紅葉のライトアップの時期です。
*要予約=料金:1,000円(定員に達し次第締切ります)
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊です。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第48回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第48回

本をめぐる話−絵本


 ルリユールや書籍修復からはずれたテーマが続き、ルリユールを知ってもらうという、このブログの趣旨から大いにはずれていることに忸怩たる思いはありますが、今回と次回は絵本の話です。

*****

 絵本は文字通り、絵と文章から構成されることにより、まだ語彙の少ない子供たちにも内容が分かりやすく、読書に親しむきっかけとなる。という認識の一方で、大人が楽しめる絵本も少なくない。絵本を子供のものと決め付けることが、そもそも間違いで、子供は大人と別のいきものではない。人として喜び、悩み、時に心を痛める。ただ持てる知識や経験が、大人より少ないに過ぎない。ならば、子供が読む絵本は、大人だって楽しめる。 
 ジェイムズ・ジョイスに「猫と悪魔」という絵本がある。ジョイスがパリに住んでいた時に書かれた。孫のスティーブンに宛てた手紙の形を取り、「二三日前、キャンデー入りの小猫を送りました。でも、きみは、ボージャンシーの猫の話は知らないでせう。」という文章で始まる。悪魔が、大きな川沿いの町、ボージャンシーの市長をおとずれ、最初に橋を渡った者が自分の家来になることを条件に、一晩で橋を架けてあげると申し出る。橋が架かっていないことに、町の人々はなにかと不便を感じていたので、市長は悪魔の申し出を受ける。翌朝、橋の向こうで悪魔が待つなか、市長は抱きかかえていた猫を地面に置き、バケツの水をかけるやいなや、猫は一目散に橋を渡り、悪魔の元に走り込んだ。怒りと悔しさを胸に、悪魔は猫と去っていった…。

zu-1ザブリ! バケツの水をすっかり、猫にかけた。


 この絵本は、話は勿論、絵も素晴らしいのだが、様々な仕掛けやエピソードが隠されているところに大人が読む楽しみがある。まず、孫のスティーブンと聞けば、ジョイスの小説の主人公スティーブン・ディーダラスの名前がすぐに思い浮かぶ。小説のスティーブンはジョイスの分身であり、生まれた孫に、スティーブン・ジェイムズ・ジョイスという名前を与えた。駆け落ちという形でヨーロッパに渡って以来、帰ることのなかった母国アイルランドで、父が亡くなって1ヶ月あまり後に、その孫が生まれたことで、ジョイスは父の生まれ変わりと思ったという。それをうたった詩もある。

zu-2ジョイスと愛孫スティーブン 1938年 (「猫と悪魔」解説より)


 話は、「(悪魔が)ひどく腹を立てたときは、とても悪いフランス語を、とても上手にしゃべることができる。聞いたことのある人の話では、きついダブリンなまりがあるさうです。」と結ばれている。解説によると、ヨーロッパには悪魔の橋という民間伝承があるそうで、このジョイス版「悪魔の橋」では、「猫でも王様を見られる(=卑しい者でも、貴人の前でそれなりの権利はある)」、「猫の跳ね工合を見る(=風向きを伺う)」といったイギリスの古い諺や「不思議の国のアリス」のチェシャ猫が下地となったエピソードなどがちりばめられている。
 引用した文章で分かるかと思うが、翻訳は丸谷才一。《歴史的假名づかひの絵本》と銘打たれており、丸谷才一による「何故、歴史的假名づかひなのか」という解説が付けられている。また、絵本に多くみられる分かち書きをしない理由についても説明している。
 この絵本は、私が買った本ではなく、元々、夫が持っていたものなのだが、話はとりたてて複雑ではないものの、ジョイスらしい様々な要素が絡み合い、絵本の範疇を超えて、大好きな一冊になっている。

zu-3ジェイムズ・ジョイス「猫と悪魔」丸谷才一訳 ジェラルド・ローズ画
1976年 小学館刊


(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
病める舞姫12-1


病める舞姫12-2


病める舞姫12-3
「病める舞姫 」
土方巽著

1983年 白水社刊
・パッセカルトン 山羊オアシス革・ヘビ革総革装
・金箔押し装飾
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・221x158x26mm
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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本

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●本日のお勧め作品は、パウル・クレーです。
klee_02_riesenblattlausパウル・クレー Paul KLEE
"Riesenblattlaus"
1920年
リトグラフ
44.3x37.0cm
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
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2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第47回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第47回

書名は「押すもの」


書名・著者名の箔押しには、印刷用の鉛活字を使っています。星の数ほど明朝書体のある本文と違い、こちらは「最も普通なるは明朝書體なり」の『印刷讀本』(前回)の時代に戻ります。もちろんゴシック、清朝、正楷、教楷、等々ありますが、地声が大きいというか、勝手に心情を吐露しているように感じられ、書名に落ち着いてくれないところがあります。やはり、「明朝書体なり」となるのですが、鉛活字の場合その明朝書体がほぼひとつきりというのが現在です。鋳造所によっていくつか違いのあった明朝体活字ですが、20年ほど前から減る一方に拍車がかかり余喘を保っている状態で製本家も気が気ではありません。
とは言え、ひとつきりなので、配置や文字間などに専心することが出来ています。直ぐにぴたりと落ち着くこともあれば、どうしても背幅に対して大きすぎるか小さすぎるかし、仮名だけポイントを変えてみたり、紙一枚挟んだり抜いてみたり、挙句、見すぎてよく判らなくなり日を置くなど最後の苦戦どころですが、書名が押されると初めて、開かれる準備が本にしっかりと整ったという実感が湧きます。ですので、製本家にとって鉛活字が手に入らなくなるのは、大きな危機となります。それを口にすると、大抵は「近々3Dプリンターで作れますよ」と励まされますが、孤島で工夫して暮らしていたところに、好きな星に住んで良いと言われたも同然で、諸条件が整ったとしても、膨大な明朝書体から最適を選び出さねばならぬことを考えると竦みます。ただ大きさと、促音以外に横組用の仮名が無いという悩ましさに自由が利くという点は宇宙の恐怖に勝さって浮かぶところでしょうか。
18世紀以前に彫刻された欧文活字書体は粗面の紙に刷られて美しいように設計されており、近年の滑面の紙に向かないものが多いそうです。読まれるときに美しいことを目指すのは当然ですから、書体と紙や印刷方法は密接な関係にあります。空押しの窪みに箔を乗せるルリユールの箔押しは、オフセットやインクジェット印刷、画面で読まれるための文字よりもやはり、僅かとはいえインクを押し付ける活版印刷用の活字書体と、仕上がり具合の落ち着きの良さに通じるところがあるのではないかと思います。

本文を読むのとは別に、唯々多くの文字を眺め眺めて腑に落ちる感覚を気長に育てていくしかないことで、『どんな「書体」で生きたいか』は皆目見当がつかなくとも、冷めない熱をひっそり持って生きたいものです。
ところで、『タイポグラフィ12 特集:和文の本文書体』グラフィック社(2017年)の「本文書体30の分析図」によると、硬めで懐が狭く粘着度が低い文字が私の好みのようですが、生き方とは関係ありませんように・・・。

(文:羽田野麻吏
羽田野(大)のコピー


●作品紹介〜羽田野麻吏制作
hatano11-1


hatano11-2

『狂王』
渋澤龍彦 野中ユリ挿画
1966年 プレスビブリオマーヌ B版著者本

総牛革二重装 プラ・ラポルテ 足付き平綴じ
牛革・ヴェラム・胃袋革によるデコール
海蛇革と染め紙の見返し
箔押し 中村美奈子
2016年
270×210×14

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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本

〜〜〜〜

●本日のお勧め作品は、吉田克朗です。
yoshida_01_work46吉田克朗 Katsuro YOSHIDA
"Work "46"
1975年
リトグラフ
イメージサイズ:44.8×29.3cm
シートサイズ :65.6×50.4cm
Ed.100
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第46回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第46回

本文は「読むもの」「綴じるもの」


20年ほど前に書かれたある詩人のエッセイの『どんな「書体」で生きたいか』という言葉に虚を突かれ、独りしどろもどろに。
友人と耽った文学談義の一夜について書かれた下りですが、自著の体裁へのこだわりは古今東西を問わず耳にするものの、これは違ったしろものです。聞こえないふりも出来ず、覚悟は全く無いまま、言い訳のつくようにサンダル履きで出掛けてみます。

私にとっては、本文は「読むもの」「綴じるもの」、書名は「押すもの」。
ハテ、ではどんな書体で読んでいるかというと、奥付などでは明かしてくれず、読後の目や手の心地よい余韻の一端は書体がシッカリと支えている筈ですが、呼ばれても「居ません」とキッパリと返事をするように躾られた存在で判らず仕舞い。

zu-01
手始めに書体数の少ない時代で確認をと、『印刷読本』(印刷雑誌社刊1942年)を見てみますと、「明朝体である」と太鼓判を押されスッキリとした気分になります。製版印刷術を簡明に記述しその従事者のみならず、『一般人をして其概要に通ぜしむる刊行物』だけあって、歴史から先端の印刷方式までもれなく並び、更に!綴付け製本についても『古来の最も正しき製本法』として解説されており、嬉しくなります。
『印刷読本』より「こゝに普通に存在する書體十種を表示する」
zu-02
『印刷読本』より 綴じの方法、頂帯(花ぎれ)編みの他、装飾方法として箔押しの道具も掲載されている

スッキリしたり嬉しくなって帰りたいところですが、明朝体の一括りではすまない当然のこと。しかしながら『真性活字中毒者読本』(柏書房刊2001年)は開かずにおき、zu-03
詳細が過ぎて開くとキケンな『真性活字中毒者読本』
備えてあっただけの『タイポグラフィ12 特集:和文の本文書体』グラフィック社(2017年)でごく最近の様子を眺めてみます。代表的な明朝体本文用フォント(12Qベタ/21H)で組まれた18種の中から取り合えず好みのものを2つ選んで書体解説を見ると、築地五号系を踏襲したものと、写植特有のにじみをそのままデジタル化したもの、どちらもオールドスタイルと呼ばれるものでした。むろん多くのデジタルフォントはこれまでの書体を基に作られていますが、自分が慣れ親しんだものが勝るというだけのことかは分からず、『アイデア354/367/368』(誠文堂新光社)に当たってみると、特別な愛着のある数十冊の本も使われた明朝体は実に多種多様で今更ながら驚きます。幸いにも絶対文字感というものを生まれつき持ち合わせておらず、身に付く気配もない者にとっては、たとえば同じテクストを9ポ・モトヤで読むことと、9ポ岩田ベントン小型で読むことの違いは想像することすら叶いません。なんとか理想の書物を生み出そうとした出版人らの、あるいは四六時中文字のことを考えているようなデザイナーの熱情に身を任せ、どんな書体かの覚悟は決めぬまま平穏無事にページをめくる幸せを享受するに限るという分かり切った結果でした。
zu-04
書肆山田 初出版詩集の刊行によせる言葉

zu-05
プレス・ビブリオマーヌの限定版刊行覚書

さて、「押すもの」である書名の書体については、身に差し迫ったものがあり平穏無事な暮らしとはいかないのです・・・・・・。

(文:羽田野麻吏
羽田野(大)のコピー


●作品紹介〜羽田野麻吏制作
hatano11-1


hatano11-2

『狂王』
渋澤龍彦 野中ユリ挿画
1966年 プレスビブリオマーヌ B版著者本

総牛革二重装 プラ・ラポルテ 足付き平綴じ
牛革・ヴェラム・胃袋革によるデコール
海蛇革と染め紙の見返し
箔押し 中村美奈子
2016年
270×210×14

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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本

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ときの忘れもの・拾遺 第8回ギャラリーコンサートのご案内
日時:2018年9月12日(水)18:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:武久源造、山川節子
プロデュース:大野幸
要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

●本日のお勧め作品は、内間俊子です。
04内間俊子 Toshiko UCHIMA
「イタリーよりのパッケージ Package from Italy」
1977年
コラージュ
イメージサイズ:50.5x35.0cm
フレームサイズ:57.5×42.7cm
サインあり
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◆ときの忘れものは内間安瑆・内間俊子展を開催しています。
会期:2018年7月17日[火]―8月10日[金] ※日・月・祝日休廊
内間安瑆の油彩、版画作品と内間俊子のコラージュ、箱オブジェ作品など合わせて約20点をご覧いただきます。
水沢勉版の音律―内間安瑆の世界」(版画掌誌第4号所収)
永津禎三内間安瑆の絵画空間
内間安瑆インタビュー(1982年7月 NYにて)第1回第2回第3回
201807_uchima

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第45回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第45回

ワークショップについて(2) <開催編>


レ・フラグマン・ドゥ・エムを結成してから、これまで年に1、2回のペースで展覧会をしていく中で、色々な方にお越しいただき、お話をする機会にも恵まれ、とてもいい経験になりました。と同時に、改めて西洋の文化であるルリユールの認知度の低さにしょんぼりたのも事実です。私たちの作品もさることながら、原点に戻ってもっと集中的にルリユールの構造や歴史にも興味を持って知っていただきたく思い、新たにワークショップを活動に組み込みました。私自身も色々とワークショップに参加してきたので、その経験も生かしつつ、受講する方々の要望に少しでも多く答えられるようにと心がけてやってきました。

グループでの初めてのワークショップは、ギャラリー册での展覧会のイベントとして企画した、表紙に羊皮紙を使ったのりを使わないオランダ式製本でした。
workshop1


そして、財団法人東洋文庫でのアカデミア講座、練馬区立美術館での講座と続きました。担当の学芸員の方々にはルリユールに興味を持っていただき、本当に嬉しかったです。
いずれもバックグラウンドとして、本の歴史のレクチャーから始め、ルリユール本来の大切な要素である、「綴じる」という工程に重点を置きつつ、実際に参加者の方々が自分でも素材を変えて応用できるものを提供してきました。
workshop2


私個人では、革製しおり作り(東洋文庫アカデミア講座)をはじめ、個人で活動している製本家の方からもお話をいただき、革製の手帳の仕上げとして鉛活字を使って年号を押したり、革の小箱に装飾をつけるなどの箔押しのワークショップを何度か開催してきました。
フラグムのワークショップでは、「綴じる製本」に加えて、よりスムーズに作業を進められるように、オランダ式製本やリンクステッチなどなるべく「のりを使わない」ルリユールという制限を設けて考えてきましたが、箔押しの場合は何よりもまず最初に環境的な制限(エアコンの風があたる、手元に光が足りないなど)があるので、参加者には必然的に苦労をかけてしまうことも多かったです。加えて、電熱器の温度や花型の押し具合など、言葉では言い表せない作業が大半をしめるので、ワークショップが終わるたびに参加者にうまく伝わったかしら、満足してくれたかしら、と不安になることもしばしばありました。
しかし、ほとんどの方が初めての箔押し体験にも関わらず、みなさん手先が器用でいらっしゃって、”路頭に迷う”ことはあまりありませんでした。

今後も、ルリユール・箔押しの”布教活動”を前進あるのみでしていきたいと思っております。

(文:中村美奈子
中村(大)のコピー


●作品紹介〜中村美奈子制作
nakamura8-文鎮中村美奈子「革装文鎮」
山羊革(外側)
鉄塊(内側)
金箔・パラジウム箔
2017年制作
32x32x32(中央・赤)、28x28x28(左こげ茶・右黄土色)
瀧口修造展に向けて製作しました。


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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●本日のお勧め作品は、ル・コルビュジエです。
20180703_corbusier_30ル・コルビュジエ
《雄牛#6》
1964年
リトグラフ
イメージサイズ:60.0×52.0cm
シートサイズ:71.7×54.0cm
Ed.150  サインあり

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*画廊亭主敬白
石原氏のブログ拝読、もうはや達人ですね。
私もあのように読んで楽しい文章を書きたいものです。

(20180702/土渕信彦さんのメールより)>

銀座の「関根伸夫展」(ギャラリーせいほう)に続き、京都の「瀧口修造・宮脇愛子 ca.1960」展(ART OFFICE OZASA)が大団円を迎えました。
瀧口修造宮脇愛子関根伸夫の三人の秀作が東西で展示され、それを味わう幸せを共有できたのは嬉しいことでした。
長生きしてよかった。
蟹座の亭主は昨日2日に73歳を迎えました。
ちょうど近くの駒込富士神社の山開祭(6月30日万燈まつり、7月1日が例祭、昨日2日は納め)があり二人して感謝の気持ちをこめてお参りしてきました(御神籤の結果は後日公開)。
少年時代は標高800mを超える高原地帯に育ち、高校は群馬の商都高崎で過ごしました。マンドリンに明け暮れた3年間でしたが、まさか将来画商の道に進むとは夢にも思いませんでした。
15歳のときにめぐり合った井上房一郎さん、やがて井上さんの導きで久保貞次郎先生を知り、その教え子の社長と結婚し、現代版画センターの波乱の十年に巻き込みました。その始末を終え、社長が青山に「ときの忘れもの」を開いたのが1995年でした(亭主は一従業員であります)。
新天地駒込で、これからも皆さんに喜んでいただける展覧会を(当たるか当たらないかはわかりませんが)企画して行きたいと考えています。
どうぞご贔屓にしてください。

◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
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2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第44回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第44回

ワークショップについて(1) <参加編>


手作業で何かを作った経験のある人なら、完成品からさかのぼって「モノ」がどのようにできているのか、また自分でも作ることが可能なのか挑戦してみたい衝動にかられると思います。
かく言う私も、様々な工芸品の成り立ちや職人の意気込みに興味津々で、様々なワークショップに飛び込むことにしています。今回の前編では今まで参加したワークショップをいくつかご紹介します。

まず「和紙」のワークショップ。
今ではめっきり和紙を漉く職人も減り、後継さえもいない状態のようですが、地域によっては定期的に紙漉き体験などのイベントを開催しています。
紙を漉く前に、楮・三椏・雁皮などの皮(繊維)や粘着材としてのトロロアオイなどの主原料と下ごしらえの説明を受けました。すのこに枠と持ち手のついたような専用器具に液を流し込み、前後左右に動かしながら漉いていきます。1畳ぐらいの大きさに挑戦させてくれるかと鼻息を荒くしていましたが、そうは問屋がおろさず、可愛らしいハガキサイズの和紙を漉きました。職人の方に和紙の出来より漉く動作(?)が上手と褒められたことを覚えています。

次に「羊皮紙」のワークショップ。
画像parchemin


はるか昔から使われてきた羊皮紙がどのように作られるのか全く想像ができなかったので、ワクワク最高潮でワークショップに臨みました。
羊皮紙のバックグラウンドの説明を受けた後、いざ実作業です。袋に入ったふにゃふにゃの物体が配られ、何かと思うとそれが羊皮紙になる「皮」でした。ワイルドな素材を手にして、気分はすっかり中世の職人です。その生の皮を引き伸ばして木枠に張りつけ、刃でこそいで油分を落とし、少し乾かしてヤスリがけをして、文字がかけるようになるまで表面を滑らかにします。さらに昔ながらの調合でインクも作り、羽根ペンを使って文字を書いたのも楽しかったです。

そして、「文字」に関するワークショップを2つ。
トラヤヌス帝の碑文でおなじみの、石板に文字を彫る職人の方のレクチャーに参加した時に(これは正確にはワークショップではありませんでしたが)、少し刻んでみるという珍しい体験をさせていただきました。
実際に石板にアルファベットを彫ってみると、お話していただいたセリフの縦と横の太さと細さの仕組みを身をもって知ることができて、改めて文字の奥深さにうっとりしました。

写植のワークショップでは、また一味違った体験をしました。
画像shashoku


写植とは鉛の活字を組んでテキストを作ることだとばかり思っていたので、それまで抱いていたイメージがゼロに戻され、とても勉強になりました。活字を拾うように、ガラス板にびっしりと印字された文字の中から一つ一つ狙いを定めてタイプライターのように文字を打っていき、専用の用紙に写したものを暗室で現像してテキストを完成させます。写植用フォントは美しいものばかりで種類も多く、普段パソコン上ではお目にかかることができないものもたくさんありました。

ワークショップに参加することによって、知的好奇心が満されるとともに、その背後に見え隠れする作り手の苦労を感じとり、自分も作業を頑張ろう!というエネルギーをもらうのでした。

(文:中村美奈子
中村(大)のコピー


●作品紹介〜中村美奈子制作
名刺入れA中村美奈子
《装飾付革装名刺入れ》(参考作品)

箱・箔押し 中村美奈子
・山羊革
・パラジウム箔
・制作年 2012年
・101mm×65mm×31mm

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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●本日のお勧め作品は、ウィン・バロックです。
ウィン・ベロック「森の少女」
ウィン・バロック Wynn BULLOCK
"Child in forest"
1951 printed later
Gelatin Silver Print
19.2x24.2cm   signed
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◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
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frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第43回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第43回

奇想小説−猫


 文学には奇想小説というものがある。と断言するほどに、そのジャンルや作家、作品を知っているわけではない。絶対ありえそうにない状況設定、登場人物など、好きな方なら、いくらでもその世界を語れることと思う。また、人によって奇想小説とは何かという定義も違ってくるかもしれない。私にとって間違いなく奇想小説といえるのは、猫文学である。それとても、世界中の猫文学作品を渉猟しているわけではないので、たまたま読んだ数冊について語ることしかできないのだが、猫文学とは猫について書かれた本ではなく、猫が書いた、という設定の小説を指している。

zu-1夏目漱石「吾輩は猫である」昭和31年岩波書店刊 
内田百痢峇羣邯稠擇惑である」昭和55年六興出版刊


 まず日本には、漱石の猫がある。そして、漱石に私淑した内田百里蓮⊃譴辰匿縺韻僕遒舛拭崘」のその後を、「贋作吾輩は猫である」に書いた。以前のブログで、E.T.A.ホフマンの「牡猫ムルの人生観」に触れたはずだが、もう一冊、デンマークの作家のスヴェント・レオポルトという人が書いた「ゲーテの猫 もしくは、詩と真実」がある。これらが私が読んだことのある「猫の書いた本」のすべてである。

zu-2E.T.A.ホフマン「牡猫ムルの人生観」岩波文庫 1982年
スヴェント・レオポルト「ゲーテの猫 もしくは、詩と真実」1984年リブロ刊 


 それぞれの状況設定に違いはあるものの、自伝であるという点は共通している。この中で最も奇想といえるのは、やはり「牡猫ムルの人生観」だと思う。なにしろ、ムルの自伝と楽長クライスラーの「断片的伝記(反故紙)」が入れ子になっているのだ。ご丁寧に「編集者の序文」では、ムルが自伝を書く際に、主人の書物(クライスラーの伝記)のページを引き裂いては下敷きやインクの吸い取り紙として使い、それらのページが挟み込まれた状態で印刷されてしまったと説明されている。あくまでも主役はムルの自伝、クライスラーの伝記は反故として扱われている。面白いのは、「ムルは長靴をはいた猫の末裔だ」とクライスラーに言われていることである。「長靴をはいた猫」は、一般にペローの童話集で有名かと思う。私もペローで知っていたが、ドイツにはティークという作家がペローの童話集に取材して書いた「童話劇 長靴をはいた猫」という戯曲があるそうで、これも面白そうな本である。

zu-3パリ・チュイルリー公園にあるペローと長靴をはいた猫の石像


 一方の「ゲーテの猫」だが、こちらの主人公の母親は、ナポレオンの妻だったジョゼフィーヌの愛猫だったから、その宮廷で生まれた主人公猫もナポレオンの活躍を間近に見て育ち、影響を受けた結果、ナポレオン軍の野営猫としてワイマールまで辿り着く。そこでゲーテに出会い、思想的な影響を受けながら様々な試練にあっていく、という筋立てである。ムルとゲーテの猫に共通するのは、ドイツに伝統的なビルドゥングスロマン、教養小説という体裁で書かれていることだ。教養小説というのは、青年が様々な人と出会い、多くの試練を経て成長していく、というもの。ゲーテの「若きウェルテルの悩み」やトーマス・マンの「魔の山」などがそれにあたるかと思う。
 漱石の「猫」、百里痢峇羣 猫」には、そういう教養小説といった趣はないが、日本のこの二冊を含めての共通点は、猫の眼を通して人間の生態を描いているところにある。猫の特長である群れないその独立心、なにを考えているか分からない謎(めいた雰囲気)、外を気ままにふらつき、どこで何をしているのか分からない神秘性がフィルターとなって、さらに自分の教養の豊かさを誇る一種の俗物猫でもある彼等の眼を通して、人の眼から見たのとは別の人間模様の面白さを語っている。ちなみに、漱石の「猫」の巻末に近いところで、カーテル・ムルについて触れているくだりがある。また、「ゲーテの猫」の作家レオポルトは、ドイツ浪漫派であるホフマンの猫ムルに影響を受けて、「ゲーテの猫」を書いたという。
 この原稿を書くにあたり、それぞれの小説を久しぶりに斜め読みした。猫の特長を余すところなく活かし、ペダンチックであるがゆえに、それが皮肉や諷刺につながる構成や内容に、改めて猫文学の魅力を感じた。
(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
病める舞姫12-1


病める舞姫12-2


病める舞姫12-3
「病める舞姫 」
土方巽著

1983年 白水社刊
・パッセカルトン 山羊オアシス革・ヘビ革総革装
・金箔押し装飾
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・221x158x26mm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●ときの忘れものは本日5月3日(木・祝日)〜5月7日(月)まで休廊です。

◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第42回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第42回

「私家版」について思うこと


 前回、回想録製本の話を書き、「私家版」という邦題のフランス映画があったことを思い出した。サーの称号を持つ、上流階級に属するイギリス人の主人公は、かつ有能な編集者。担当するフランス人作家が持ち込んだ自伝的小説により、30年前に自死したチュニジア人の恋人の死の原因が、その作家にあったことを知り復讐を企てる。1996年の映画ということだが、私は生徒の一人から教えてもらい、ずっとあとになって見た。
 主人公エドワードの復讐の方法が、実際に存在しない本を作るということにあったから、ルリユールに携わっている人や本好きな人達には知られていたかもしれない。細かいあらすじは検索をしていただければ、いくらでも出てくるので、ここでは詳細に触れないが、大筋としては、フランス人作家ニコラが持ち込んだ小説には、実は元になった小説が存在し、ニコラがそれを剽窃したというということを、エドワードは周到な準備で周囲に信じ込ませ、裁判に持ち込む。映画はニコラの自殺が伝えられるところで終わる。

zu-1「私家版」創元推理文庫


 この原稿を書くにあたり、映画を再見し原作についても調べてみた。著者はローザンヌ大学歴史学教授のジャン=ジャック・フィシュテル、1993年の発表という。大学教授で作家といえば、ウンベルト・エーコを思い出す。エーコの小説ほどではないが、印刷や製本についてのペダンチックな内容が展開する。原題は”Tiré à part”と言い、直訳すれば「別刷り(されたもの)」ということになるか。「私家版」は苦肉の意訳かもしれない。というのは、西欧の文芸書では、特に稀覯本ではないものの、限定版として出すことも多く、奥付を見ると詳しく明記されている。何番までをどのような紙で、何番から何番までをこの紙で印刷した、ということが書かれている。使った活字についての記述がある場合もある。こういった記録の範囲外で刷られたものが、(le) tiré à part=別刷りされたものであるなら、これは「個人が自分の費用で出版して、狭い範囲に配布する書籍。」とは言えない気がする。

zu-2-1奥付の例


zu-2-2


 それはさておき、この映画の見所は、ひとつひとつ積み上げられていく、エドワードが行う復讐のプロセスにある。最初に見た時はストーリーを知らず、その展開自体がサスペンスとして面白く感じたが、今回の再見では細部の面白さを改めて確認した。
 古い文芸誌の記事から、一作だけ残して亡くなった作家を見つけ出す。遺族から情報を得たり、出版社が1944年のドイツ軍によるロンドン空襲で社主もろとも消滅したことを確認するところから、計画は出発する。その出版社の本を古書店で入手し、本を解体し、紙を特定する。背の匂いを嗅いで、使われているにかわの種類を調べる。紙を光にかざして、透かし(water mark)を調べる…と洋書に親しんだ人には、その意味が分かるという点で馴染み深い場面ばかりだ。後半の裁判の場では、英国出版協会の鑑定人が証言に立ち、使われている紙や活字などから、エドワードの贋作を正真正銘の戦前の出版であると断言する。
 西欧と日本では本の文化が違うとは言え、こういう映画が佳作として世に現れるところに彼我の差を感じるのは私だけか。静謐な映像が続く中で、きっちりと検証された本にまつわるあれこれが展開していく。サスペンスとしても緻密な構成を持つこの作品は、私の好きな映画の一つとなった。
(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
病める舞姫12-1


病める舞姫12-2


病める舞姫12-3
「病める舞姫 」
土方巽著

1983年 白水社刊
・パッセカルトン 山羊オアシス革・ヘビ革総革装
・金箔押し装飾
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・221x158x26mm
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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●本日のお勧め作品は、瑛九です。
qei_violin
瑛九《バイオリン》
フォトデッサン
26.6x21.1cm
都夫人のサインあり(裏面)
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◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

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frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第41回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第41回

私家版


 私家版という言葉がある。辞書を引くと、「個人が自分の費用で出版して、狭い範囲に配布する書籍。自家版。」という説明がある。最近、あまりお目にかからないが、回想録を自費出版したいという人のための出版社の広告が、以前は新聞に時々出ていた。上記の辞書の説明でいけば、自費出版による自分史は私家版ということになるが、「私家版」という言葉には、もう少し奥ゆかしい風情がある。
 現在、講師をしている「ルリユール工房」は、私自身が製本の勉強を始めたところでもある。その頃からルリユール工房には「私家版作り」という講座があり、現在でも「パソコンで本作り」と名称を変え存続している。工房に通い始めた当初、ごく短期間だが、私もこの「私家版作り」に在籍していた。自分で書いた文章、好きな小説の抜粋や詩歌など、気に入ったテキストをパソコンに入力、ページ仕立てに出力して、本に仕上げるという講座である。工房を設立された栃折久美子さんは現在引退されているが、その頃の「私家版作り」では、技術的な指導を栃折さんの弟子である坂井えりさんが、編集についての指導を栃折さんが行っていた(今は、すべて坂井さんが指導している)。
 受講の最初に、栃折さんからこんな風な説明を受けた−
回想録を自費出版する人達がいるけれど、最低でも50部100部といった数を作ることになる。しかし、それだけの数を作っても、配る相手はそういない。ならば、本当に配りたい相手、きちんと読んでくれる親しい人達だけに配るよう、ごく少部数の本を自分で作り上げる方がよっぽど良い。

 かつて、栃折さんのお話に近い製本を引き受けたことがあった。知り合いの編集者から、同僚の編集者が製本を依頼したいと言っているが、どうだろうかと話をもらった。その方の伯父上が親戚に配った回想録は、素人ながら上手い文章で、内容も充実したものだけれど、配られたのはコピー用紙で、いかにも惜しい。姪として、愛する伯父の文章を一冊の本に仕立ててあげたい、との話だった。

zu-1川口恒幸著「回想 南十字星」 太平洋戦争に従軍。終戦後、抑留されたインドネシアで、南の空に見た南十字星が書名となった。


 自伝・回想録の類は、原則引き受けたくない。ルリユールは直接的でないにせよ、内容を装訂という形で表現する工芸分野であり、個人の回想録をどのように表現したらよいのか考えるのは難しい。自分の気持ちを正直に打ち明けつつ、依頼主とメールでやりとりをした。伯父上に対する愛情や尊敬の念が感じられる彼女のメールに、結局その仕事を引き受けることにした。
 用紙の選定、余白を充分に取って本文組をしてもらうことなど、依頼主の編集者としての知識と経験、製本する側の希望を突き合せ、さらに依頼主の知己であるデザイナーさんに本文レイアウトをしてもらうことも決まり、未綴じ本の形で私の手元に印刷物が届いたのが2012年の秋だった。さすがに一部という訳にはいかず、印刷会社には限定二十部として印刷を依頼した。差し上げる相手の伯父様が2013年2月6日に90歳になるので、その時に渡したいという希望だった。いつでも手に取って見ていただけるよう、伝統的な製本形態のパッセカルトンではなく、扱いやすいくるみ製本にした。1月の半ばに完成し、納品日を打ち合わせしている最中、伯父上が床に臥せる状態になり、誕生日を待たず、1月中に渡すことになった。伯父上は、この贈り物を大変喜んでくれて、いつも枕元に置いてくれていたという。そして3月の半ばに永眠され、本は叔母様に引き継がれた。

zu-2イニシャルを星が取り囲んでいる。伯父様の人生そのものが、輝く星のよう、という意味を込めて。


zu-3本文のとびら。書名を囲む四つの丸は浮いてみえるが、実際はへこんでいる。これはデザイナーさんからのリクエスト。南十字星は、このように四つの星が少し傾いているらしい。


 伯父様にお渡しした本は、当然のことながら「限定二十部の内壱番」。その後、ゆっくり時間をかけながら「弐番」を製本し、依頼主である姪御さんに差し上げた。共に係わったデザイナーさんからも、是非とご希望があり、去年12月にやっと「参番」をお送りすることができた。残りはお好きにお使いください、とのことで、生徒の練習用に使わせてもらっている。

zu-4送られてきた折丁の奥付。


 実際の作業中も、当時のことを思い出す時も、暖かい和やかな気持ちになる。伯父上の文章は誠実な人柄、時としてユーモアがにじみ出る素晴らしいものだった。そして姪御さんの愛情がデザイナーさんや私に伝播し、離ればなれでありながら3人が共同作業をしている気持だった。製本の仕事の中の小さな、しかし思い出深いエピソードである。
(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
病める舞姫12-1


病める舞姫12-2


病める舞姫12-3
「病める舞姫 」
土方巽著

1983年 白水社刊
・パッセカルトン 山羊オアシス革・ヘビ革総革装
・金箔押し装飾
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・221x158x26mm
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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本

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*画廊亭主敬白
昨日、半分は冗談だろうと思いながらマケドニアへの作品輸送について書いたのですが、何と顧客からそれでいいから送ってくれとの返信(!)。アメリカあたりなら僅か数万円で済むのに諸経費込みで40万円(昨日は30万円と書きましたが、実際にはそれ以上になりました)の送料です。一昨年のインドネシアの苦い経験(輸送における賄賂の横行)を思いだし、モラル(ルール)なき社会で商売する困難さを思わずにはいられません。ヤマトや佐川を持つ我々は幸せですね。
3月4日(日)朝9時のNHK日曜美術館をぜひご覧になってください(特集:イレーヌ ルノワールの名画がたどった140年)。司会は井浦新さんと高橋美鈴さん。ゲストとして多摩美術大学教授・西岡文彦さん、ピアニスト・西村由紀江さん、カメラマン・渡辺達生さんが出演します。後半のアートシーンにご注目ください

◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されています。
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
現代版画センターと「ときの忘れもの」については1月16日のブログをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログをぜひご購入ください(2,200円)。
埼玉チラシメカス600現代版画センターは会員制による共同版元として1974年〜1985年の11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、約280点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。

【特別イベント】ジョナス・メカス監督作品「ウォールデン」上映会
日時:3月3日(土)、4日(日)各13:00〜16:00
場所:2階講堂
定員:100名 (当日先着順)、無料
【担当学芸員によるギャラリー・トーク】
日時:3月10日 (土) 15:00〜15:30
場所:2階展示室
費用:企画展観覧料が必要です。
【トークイベント】ウォーホルの版画ができるまで―現代版画センターの軌跡
日時:3月18日 (日) 14:00〜16:30
第1部:西岡文彦 氏(伝統版画家 多摩美術大学教授)、聞き手:梅津元(当館学芸員)
第2部:石田了一 氏(刷師 石田了一工房主宰)、聞き手:西岡文彦 氏
場所:2階講堂
定員:100名 (当日先着順)/費用:無料
〜〜〜〜
○<#埼玉県立近代美術館 #版画の景色ー現代版画センターの軌跡展 。磯崎新作品を見た #ときの忘れもの と #建築資料館 と連動したかのような企画。各方面の作家による様々な作品と刊行物やスライド等、膨大な情報量。気付けば閉館時間…。図版違いのリーフレット、全種類頂きました(欲張り)。
(20180226/はこちさんのtwitterより)>

○<これです、もちろん好き嫌いはあると思うけど興味ある人は是非に。ウォールデンは明後日で上映終わります。
(20180302/コジマサキさんのtwitterより)>

○<埼玉近美の「版画の景色・現代版画センターの軌跡」凄く良かった!期待して行ったけど期待以上。
靉嘔のシルクスクリーンとても綺麗でびっくりした。菅井汲もカッコ良すぎたし、関根伸夫の作品も作ることと考えることの楽しさが直に伝わって来た。
特にシルクスクリーンに対する印象が変わった。
磯崎新のシルクも久しぶりに見たけど、本当にカッコいい。
現代版画センターの記録的な展示も興味深く、当時の熱気が伝わってきた。
メカスさんの映像、セルフポートレート見れて嬉しかった。

(20180227/コイズミアヤさんのtwitterより)>

○<企画展『版画の景色』に。
色々素晴らしいです。
安藤忠雄さん 草間彌生さん
アンディーウォーホルさんなど
自分が知っている方々の作品や全く知らない(その道では有名な方々)作品を見れました。
たまに行くと良いものです。
ココロにヨユウを。
機会があれば是非。

(20180227/氷川整体☺︎さいたまさんのtwitterより)>

○<埼玉近美の『版画の景色 現代版画センターの軌跡』展おもしろかったです。春の庭でビールを飲むメカスのセルフポートレイト映像(提供元が本人!)など観れました。今週末には『ウォールデン』の無料上映があるそう🎬コレクション展に小村雪岱もあってお得感ありました
(20180226/idonumaさんのtwitterより)>

西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。草創期の現代版画センターに参加された西岡さんが3月18日14時半〜トークイベント「ウォーホルの版画ができるまでー現代版画センターの軌跡」に講師として登壇されます。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

スタッフたちが見た「版画の景色」(2月4日ブログ)

毎日新聞2月7日夕刊の美術覧で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が紹介されました。執筆は永田晶子さん、見出しに<「志」追った運動体>とあります。

倉垣光孝さんと浪漫堂のポスター(2月8日ブログ)

嶋吉信さんのエッセイ〜「紙にインクがのっている」その先のこと(2月12日ブログ)

大谷省吾さんのエッセイ〜「版画の景色−現代版画センターの軌跡」はなぜ必見の展覧会なのか(2月16日ブログ)

塩野哲也さんの編集思考室シオング発行のWEBマガジン[ Colla:J(コラージ)]2018 2月号が展覧会を取材し、87〜95ページにかけて特集しています。

○月刊誌『建築ジャーナル2018年3月号43ページに特集が組まれ、見出しには<運動体としての版画表現 時代を疾走した「現代版画センター」を検証する>とあります。

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。

現代版画センターエディションNo.148 松永伍一・吉原英雄「詩画集 少年」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
148_松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』全体松永伍一 詩・吉原英雄 画
『詩画集 少年』
1977年
限定85部
本サイズ:31.2×24.8×1.7cm
*1/85〜10/85は吉原英雄の水彩1点と松永伍一の詩篇一葉入り

少年奥付
奥付に、
装丁:池田令子とあります(独身時代の社長です)。

松永伍一「早春譜面」
ちちの愛をはんぶん
ははの愛をはんぶん
体温にもらいうけてぼくが育つ
はさまれているからぼくの蕾がふくらむ
ちちもねむるだけが夜
ははもねむるだけが夜
ぼくはちちに代る<男>を夢みる
ぼくはははの湖をおもう<男>に近づく
はさまれて早春
みそさざいが沼をとぶ朝ぼくの罰は
ははの乳房のうえで
ちちの力失った敵をのぞきこむ
・・・・・・・・・詩画集『少年』より
148-1_吉原英雄《『詩画集 少年』より、閉ざされた時間》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《閉ざされた時間》

148-2_吉原英雄《『詩画集 少年』より、マッチングトルソー》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《マッチング トルソー》

148-3_吉原英雄《『詩画集 少年』より、壁にはられた松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《壁にはられたドローイング−レオナルド・ダ・ヴィンチ》

148-4_吉原英雄《『詩画集 少年』より、挑戦》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《挑戦》

148-5_吉原英雄《『詩画集 少年』より、焦燥》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《焦燥》

148-6_吉原英雄《『詩画集 少年』より、空白のページ》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《空白のページ》

本日3月3日は松永伍一先生の命日です。
現代版画センターの草創期、美術界に縁のなかった私たちは一面識もない松永伍一先生に手紙を出し助力を請いました。以来、お亡くなりになるまで多くの原稿や講演をお願いしてきました。
19780918ギャラリーミキモト 難波田展オープニング 松永健一
1978年9月18日
銀座・ギャラリーミキモトにて
左から綿貫不二夫、松永伍一先生、難波田龍起先生と奥様
難波田先生の銅版画集『街と人』『海辺の詩』発表記念展

私たちが手がけた最初の詩画集が吉原英雄先生との「少年」でした。
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パンフレット_05
出品作家45名:靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄

ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第7回 愛といのち

日時:2018年4月3日(火)18:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:メゾ・ソプラノ/淡野弓子
   スクエアピアノ/武久源造   
プロデュース:大野幸
*要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。

info@tokinowasuremono.com

◆ときの忘れものは「植田正治写真展ー光と陰の世界ーPart 供を開催します。
201803_UEDA
会場1:ときの忘れもの
2018年3月13日[火]―3月31日[土] 11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊(但し3月25日[日]は開廊)

昨年5月に開催した「Part I」に続き、1970年代〜80年代に制作された大判のカラー作品や新発掘のポラロイド写真など約20点をご覧いただきます。

●書籍・カタログのご案内
表紙植田正治写真展―光と陰の世界―Part II』図録
2018年3月8日刊行
ときの忘れもの 発行
24ページ
B5判変形
図版18点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:800円(税込)※送料別途250円

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植田正治写真展―光と陰の世界―Part I』図録
2017年
ときの忘れもの 発行
36ページ
B5判
図版33点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:北澤敏彦(DIX-HOUSE)
価格:800円(税込)※送料別途250円


◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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ギャラリー&編集事務所「ときの忘れもの」は建築家をはじめ近現代の作家の写真、版画、油彩、ドローイング等を扱っています。またオリジナル版画のエディション、美術書・画集・図録等の編集も行なっています。
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