ルリユール 書物への偏愛

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第44回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第44回

ワークショップについて(1) <参加編>


手作業で何かを作った経験のある人なら、完成品からさかのぼって「モノ」がどのようにできているのか、また自分でも作ることが可能なのか挑戦してみたい衝動にかられると思います。
かく言う私も、様々な工芸品の成り立ちや職人の意気込みに興味津々で、様々なワークショップに飛び込むことにしています。今回の前編では今まで参加したワークショップをいくつかご紹介します。

まず「和紙」のワークショップ。
今ではめっきり和紙を漉く職人も減り、後継さえもいない状態のようですが、地域によっては定期的に紙漉き体験などのイベントを開催しています。
紙を漉く前に、楮・三椏・雁皮などの皮(繊維)や粘着材としてのトロロアオイなどの主原料と下ごしらえの説明を受けました。すのこに枠と持ち手のついたような専用器具に液を流し込み、前後左右に動かしながら漉いていきます。1畳ぐらいの大きさに挑戦させてくれるかと鼻息を荒くしていましたが、そうは問屋がおろさず、可愛らしいハガキサイズの和紙を漉きました。職人の方に和紙の出来より漉く動作(?)が上手と褒められたことを覚えています。

次に「羊皮紙」のワークショップ。
画像parchemin


はるか昔から使われてきた羊皮紙がどのように作られるのか全く想像ができなかったので、ワクワク最高潮でワークショップに臨みました。
羊皮紙のバックグラウンドの説明を受けた後、いざ実作業です。袋に入ったふにゃふにゃの物体が配られ、何かと思うとそれが羊皮紙になる「皮」でした。ワイルドな素材を手にして、気分はすっかり中世の職人です。その生の皮を引き伸ばして木枠に張りつけ、刃でこそいで油分を落とし、少し乾かしてヤスリがけをして、文字がかけるようになるまで表面を滑らかにします。さらに昔ながらの調合でインクも作り、羽根ペンを使って文字を書いたのも楽しかったです。

そして、「文字」に関するワークショップを2つ。
トラヤヌス帝の碑文でおなじみの、石板に文字を彫る職人の方のレクチャーに参加した時に(これは正確にはワークショップではありませんでしたが)、少し刻んでみるという珍しい体験をさせていただきました。
実際に石板にアルファベットを彫ってみると、お話していただいたセリフの縦と横の太さと細さの仕組みを身をもって知ることができて、改めて文字の奥深さにうっとりしました。

写植のワークショップでは、また一味違った体験をしました。
画像shashoku


写植とは鉛の活字を組んでテキストを作ることだとばかり思っていたので、それまで抱いていたイメージがゼロに戻され、とても勉強になりました。活字を拾うように、ガラス板にびっしりと印字された文字の中から一つ一つ狙いを定めてタイプライターのように文字を打っていき、専用の用紙に写したものを暗室で現像してテキストを完成させます。写植用フォントは美しいものばかりで種類も多く、普段パソコン上ではお目にかかることができないものもたくさんありました。

ワークショップに参加することによって、知的好奇心が満されるとともに、その背後に見え隠れする作り手の苦労を感じとり、自分も作業を頑張ろう!というエネルギーをもらうのでした。

(文:中村美奈子
中村(大)のコピー


●作品紹介〜中村美奈子制作
名刺入れA中村美奈子
《装飾付革装名刺入れ》(参考作品)

箱・箔押し 中村美奈子
・山羊革
・パラジウム箔
・制作年 2012年
・101mm×65mm×31mm

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●本日のお勧め作品は、ウィン・バロックです。
ウィン・ベロック「森の少女」
ウィン・バロック Wynn BULLOCK
"Child in forest"
1951 printed later
Gelatin Silver Print
19.2x24.2cm   signed
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆ときの忘れものは6月のコレクション展を開催します。
会場:ときの忘れもの
201806_collection
会期:2018年6月5日(火)〜6月9日(土)
出品作家:安藤忠雄、瑛九、オノサト・トシノブ、駒井哲郎、瀧口修造、長谷川潔、ル・コルビュジエ、シャガール、平井進、他


◆ときの忘れものは移転一周年謝恩企画70-80年代を彩ったポスター繚乱を開催します。
会場:ときの忘れもの
会期:2018年6月12日[火]―6月30日[土] ※日・月・祝日休廊
出品作家:磯崎新、猪熊弦一郎、草間彌生、栗山豊、佐伯俊男、菅井汲、杉浦康平、田名網敬一、花輪和一、林静一、細江英公、宮脇愛子、元永定正、横尾忠則、李禹煥、A.ウォーホル、クリスト、M.グレイヴス、ル・コルビュジエ、白南準、J.ミロ、ボイス、マン・レイ、K.へリング 他、時代の先端を彩ったポスターと版画小品を特別価格にてお届けします。
20180525114831_00001

20180525114831_00002


関根伸夫展
会場:銀座・ギャラリーせいほう
会期:2018年6月18日[月]―6月29日[金] ※日曜休廊
初日18日(月)17時より、ロスアンゼルスから帰国する関根伸夫先生を囲みオープニングを開催します。
関根伸夫展_Gせいほう_案内状


◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
 ・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
 ・frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
 ・小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
 ・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
 ・杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
 ・光嶋裕介のエッセイ「幻想都市風景の正体」は毎月13日の更新です。
 ・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
 ・鈴木素直のエッセイ「瑛九・鈔」(再録)は毎月17日の更新です。
 ・小林紀晴のエッセイ「TOKYO NETURE PHOTOGRAPHY」は毎月19日の更新です。
 ・柳正彦のエッセイ「アートと本、アートの本、アートな本、の話し」は毎月20日の更新です。
 ・土渕信彦のエッセイ「瀧口修造の本」は毎月23日の更新です。
 ・小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。
 ・スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
 ・植田実のエッセイ「本との関係」は毎月29日の更新です。
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 ・「現代版画センターの記録」は随時更新します。
 ・「瀧口修造の世界」は造形作家としての瀧口の軌跡と作品をテキストや資料によって紹介します。
土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
 ・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」英文版とともに随時更新します。
 ・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は終了しました(時々番外編あり)。
 ・植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」は終了しました。
  エッセイのバックナンバーはコチラです。
 ・大野幸のエッセイ<ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート>は随時更新します。
 ・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
 ・中村茉貴のエッセイ「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
 ・西岡文彦のエッセイ「現代版画センターの景色」は全三回、1月24日、2月14日、3月14日に掲載しました。
 ・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」はしばらく休載します。
 ・清家克久のエッセイ「瀧口修造を求めて」は終了しました。
 ・関根伸夫のエッセイ「〈発想〉について[再録]」は終了しました。
 ・倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」は終了しました。
 ・森本悟郎のエッセイ「その後」は終了しました。
 ・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は終了しました。
 ・森下隆のエッセイ「鎌鼬美術館——秋田県羽後町田代に開館」は終了しました。
 ・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は終了しました。
 ・夜野悠のエッセイ「書斎の漂流物」は終了しました。
 ・普後均のエッセイ「写真という海」は終了しました。
 ・八束はじめ・彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は終了しました。
 ・荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は終了しました。
 ・森下泰輔のエッセイ「戦後・現代美術事件簿」は終了しました。
 ・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイや資料を随時紹介します。
 ・「オノサト・トシノブの世界」は円を描き続けた作家の生涯と作品を関係資料や評論によって紹介します。
 ・「関根伸夫ともの派」はロスアンゼルスで制作を続ける関根伸夫と「もの派」について作品や資料によって紹介します。
今までのバックナンバーの一部はホームページに転載しています。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第43回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第43回

奇想小説−猫


 文学には奇想小説というものがある。と断言するほどに、そのジャンルや作家、作品を知っているわけではない。絶対ありえそうにない状況設定、登場人物など、好きな方なら、いくらでもその世界を語れることと思う。また、人によって奇想小説とは何かという定義も違ってくるかもしれない。私にとって間違いなく奇想小説といえるのは、猫文学である。それとても、世界中の猫文学作品を渉猟しているわけではないので、たまたま読んだ数冊について語ることしかできないのだが、猫文学とは猫について書かれた本ではなく、猫が書いた、という設定の小説を指している。

zu-1夏目漱石「吾輩は猫である」昭和31年岩波書店刊 
内田百痢峇羣邯稠擇惑である」昭和55年六興出版刊


 まず日本には、漱石の猫がある。そして、漱石に私淑した内田百里蓮⊃譴辰匿縺韻僕遒舛拭崘」のその後を、「贋作吾輩は猫である」に書いた。以前のブログで、E.T.A.ホフマンの「牡猫ムルの人生観」に触れたはずだが、もう一冊、デンマークの作家のスヴェント・レオポルトという人が書いた「ゲーテの猫 もしくは、詩と真実」がある。これらが私が読んだことのある「猫の書いた本」のすべてである。

zu-2E.T.A.ホフマン「牡猫ムルの人生観」岩波文庫 1982年
スヴェント・レオポルト「ゲーテの猫 もしくは、詩と真実」1984年リブロ刊 


 それぞれの状況設定に違いはあるものの、自伝であるという点は共通している。この中で最も奇想といえるのは、やはり「牡猫ムルの人生観」だと思う。なにしろ、ムルの自伝と楽長クライスラーの「断片的伝記(反故紙)」が入れ子になっているのだ。ご丁寧に「編集者の序文」では、ムルが自伝を書く際に、主人の書物(クライスラーの伝記)のページを引き裂いては下敷きやインクの吸い取り紙として使い、それらのページが挟み込まれた状態で印刷されてしまったと説明されている。あくまでも主役はムルの自伝、クライスラーの伝記は反故として扱われている。面白いのは、「ムルは長靴をはいた猫の末裔だ」とクライスラーに言われていることである。「長靴をはいた猫」は、一般にペローの童話集で有名かと思う。私もペローで知っていたが、ドイツにはティークという作家がペローの童話集に取材して書いた「童話劇 長靴をはいた猫」という戯曲があるそうで、これも面白そうな本である。

zu-3パリ・チュイルリー公園にあるペローと長靴をはいた猫の石像


 一方の「ゲーテの猫」だが、こちらの主人公の母親は、ナポレオンの妻だったジョゼフィーヌの愛猫だったから、その宮廷で生まれた主人公猫もナポレオンの活躍を間近に見て育ち、影響を受けた結果、ナポレオン軍の野営猫としてワイマールまで辿り着く。そこでゲーテに出会い、思想的な影響を受けながら様々な試練にあっていく、という筋立てである。ムルとゲーテの猫に共通するのは、ドイツに伝統的なビルドゥングスロマン、教養小説という体裁で書かれていることだ。教養小説というのは、青年が様々な人と出会い、多くの試練を経て成長していく、というもの。ゲーテの「若きウェルテルの悩み」やトーマス・マンの「魔の山」などがそれにあたるかと思う。
 漱石の「猫」、百里痢峇羣 猫」には、そういう教養小説といった趣はないが、日本のこの二冊を含めての共通点は、猫の眼を通して人間の生態を描いているところにある。猫の特長である群れないその独立心、なにを考えているか分からない謎(めいた雰囲気)、外を気ままにふらつき、どこで何をしているのか分からない神秘性がフィルターとなって、さらに自分の教養の豊かさを誇る一種の俗物猫でもある彼等の眼を通して、人の眼から見たのとは別の人間模様の面白さを語っている。ちなみに、漱石の「猫」の巻末に近いところで、カーテル・ムルについて触れているくだりがある。また、「ゲーテの猫」の作家レオポルトは、ドイツ浪漫派であるホフマンの猫ムルに影響を受けて、「ゲーテの猫」を書いたという。
 この原稿を書くにあたり、それぞれの小説を久しぶりに斜め読みした。猫の特長を余すところなく活かし、ペダンチックであるがゆえに、それが皮肉や諷刺につながる構成や内容に、改めて猫文学の魅力を感じた。
(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
病める舞姫12-1


病める舞姫12-2


病める舞姫12-3
「病める舞姫 」
土方巽著

1983年 白水社刊
・パッセカルトン 山羊オアシス革・ヘビ革総革装
・金箔押し装飾
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・221x158x26mm
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●ときの忘れものは本日5月3日(木・祝日)〜5月7日(月)まで休廊です。

◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

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frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第42回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第42回

「私家版」について思うこと


 前回、回想録製本の話を書き、「私家版」という邦題のフランス映画があったことを思い出した。サーの称号を持つ、上流階級に属するイギリス人の主人公は、かつ有能な編集者。担当するフランス人作家が持ち込んだ自伝的小説により、30年前に自死したチュニジア人の恋人の死の原因が、その作家にあったことを知り復讐を企てる。1996年の映画ということだが、私は生徒の一人から教えてもらい、ずっとあとになって見た。
 主人公エドワードの復讐の方法が、実際に存在しない本を作るということにあったから、ルリユールに携わっている人や本好きな人達には知られていたかもしれない。細かいあらすじは検索をしていただければ、いくらでも出てくるので、ここでは詳細に触れないが、大筋としては、フランス人作家ニコラが持ち込んだ小説には、実は元になった小説が存在し、ニコラがそれを剽窃したというということを、エドワードは周到な準備で周囲に信じ込ませ、裁判に持ち込む。映画はニコラの自殺が伝えられるところで終わる。

zu-1「私家版」創元推理文庫


 この原稿を書くにあたり、映画を再見し原作についても調べてみた。著者はローザンヌ大学歴史学教授のジャン=ジャック・フィシュテル、1993年の発表という。大学教授で作家といえば、ウンベルト・エーコを思い出す。エーコの小説ほどではないが、印刷や製本についてのペダンチックな内容が展開する。原題は”Tiré à part”と言い、直訳すれば「別刷り(されたもの)」ということになるか。「私家版」は苦肉の意訳かもしれない。というのは、西欧の文芸書では、特に稀覯本ではないものの、限定版として出すことも多く、奥付を見ると詳しく明記されている。何番までをどのような紙で、何番から何番までをこの紙で印刷した、ということが書かれている。使った活字についての記述がある場合もある。こういった記録の範囲外で刷られたものが、(le) tiré à part=別刷りされたものであるなら、これは「個人が自分の費用で出版して、狭い範囲に配布する書籍。」とは言えない気がする。

zu-2-1奥付の例


zu-2-2


 それはさておき、この映画の見所は、ひとつひとつ積み上げられていく、エドワードが行う復讐のプロセスにある。最初に見た時はストーリーを知らず、その展開自体がサスペンスとして面白く感じたが、今回の再見では細部の面白さを改めて確認した。
 古い文芸誌の記事から、一作だけ残して亡くなった作家を見つけ出す。遺族から情報を得たり、出版社が1944年のドイツ軍によるロンドン空襲で社主もろとも消滅したことを確認するところから、計画は出発する。その出版社の本を古書店で入手し、本を解体し、紙を特定する。背の匂いを嗅いで、使われているにかわの種類を調べる。紙を光にかざして、透かし(water mark)を調べる…と洋書に親しんだ人には、その意味が分かるという点で馴染み深い場面ばかりだ。後半の裁判の場では、英国出版協会の鑑定人が証言に立ち、使われている紙や活字などから、エドワードの贋作を正真正銘の戦前の出版であると断言する。
 西欧と日本では本の文化が違うとは言え、こういう映画が佳作として世に現れるところに彼我の差を感じるのは私だけか。静謐な映像が続く中で、きっちりと検証された本にまつわるあれこれが展開していく。サスペンスとしても緻密な構成を持つこの作品は、私の好きな映画の一つとなった。
(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
病める舞姫12-1


病める舞姫12-2


病める舞姫12-3
「病める舞姫 」
土方巽著

1983年 白水社刊
・パッセカルトン 山羊オアシス革・ヘビ革総革装
・金箔押し装飾
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・221x158x26mm
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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●本日のお勧め作品は、瑛九です。
qei_violin
瑛九《バイオリン》
フォトデッサン
26.6x21.1cm
都夫人のサインあり(裏面)
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◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

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新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第41回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第41回

私家版


 私家版という言葉がある。辞書を引くと、「個人が自分の費用で出版して、狭い範囲に配布する書籍。自家版。」という説明がある。最近、あまりお目にかからないが、回想録を自費出版したいという人のための出版社の広告が、以前は新聞に時々出ていた。上記の辞書の説明でいけば、自費出版による自分史は私家版ということになるが、「私家版」という言葉には、もう少し奥ゆかしい風情がある。
 現在、講師をしている「ルリユール工房」は、私自身が製本の勉強を始めたところでもある。その頃からルリユール工房には「私家版作り」という講座があり、現在でも「パソコンで本作り」と名称を変え存続している。工房に通い始めた当初、ごく短期間だが、私もこの「私家版作り」に在籍していた。自分で書いた文章、好きな小説の抜粋や詩歌など、気に入ったテキストをパソコンに入力、ページ仕立てに出力して、本に仕上げるという講座である。工房を設立された栃折久美子さんは現在引退されているが、その頃の「私家版作り」では、技術的な指導を栃折さんの弟子である坂井えりさんが、編集についての指導を栃折さんが行っていた(今は、すべて坂井さんが指導している)。
 受講の最初に、栃折さんからこんな風な説明を受けた−
回想録を自費出版する人達がいるけれど、最低でも50部100部といった数を作ることになる。しかし、それだけの数を作っても、配る相手はそういない。ならば、本当に配りたい相手、きちんと読んでくれる親しい人達だけに配るよう、ごく少部数の本を自分で作り上げる方がよっぽど良い。

 かつて、栃折さんのお話に近い製本を引き受けたことがあった。知り合いの編集者から、同僚の編集者が製本を依頼したいと言っているが、どうだろうかと話をもらった。その方の伯父上が親戚に配った回想録は、素人ながら上手い文章で、内容も充実したものだけれど、配られたのはコピー用紙で、いかにも惜しい。姪として、愛する伯父の文章を一冊の本に仕立ててあげたい、との話だった。

zu-1川口恒幸著「回想 南十字星」 太平洋戦争に従軍。終戦後、抑留されたインドネシアで、南の空に見た南十字星が書名となった。


 自伝・回想録の類は、原則引き受けたくない。ルリユールは直接的でないにせよ、内容を装訂という形で表現する工芸分野であり、個人の回想録をどのように表現したらよいのか考えるのは難しい。自分の気持ちを正直に打ち明けつつ、依頼主とメールでやりとりをした。伯父上に対する愛情や尊敬の念が感じられる彼女のメールに、結局その仕事を引き受けることにした。
 用紙の選定、余白を充分に取って本文組をしてもらうことなど、依頼主の編集者としての知識と経験、製本する側の希望を突き合せ、さらに依頼主の知己であるデザイナーさんに本文レイアウトをしてもらうことも決まり、未綴じ本の形で私の手元に印刷物が届いたのが2012年の秋だった。さすがに一部という訳にはいかず、印刷会社には限定二十部として印刷を依頼した。差し上げる相手の伯父様が2013年2月6日に90歳になるので、その時に渡したいという希望だった。いつでも手に取って見ていただけるよう、伝統的な製本形態のパッセカルトンではなく、扱いやすいくるみ製本にした。1月の半ばに完成し、納品日を打ち合わせしている最中、伯父上が床に臥せる状態になり、誕生日を待たず、1月中に渡すことになった。伯父上は、この贈り物を大変喜んでくれて、いつも枕元に置いてくれていたという。そして3月の半ばに永眠され、本は叔母様に引き継がれた。

zu-2イニシャルを星が取り囲んでいる。伯父様の人生そのものが、輝く星のよう、という意味を込めて。


zu-3本文のとびら。書名を囲む四つの丸は浮いてみえるが、実際はへこんでいる。これはデザイナーさんからのリクエスト。南十字星は、このように四つの星が少し傾いているらしい。


 伯父様にお渡しした本は、当然のことながら「限定二十部の内壱番」。その後、ゆっくり時間をかけながら「弐番」を製本し、依頼主である姪御さんに差し上げた。共に係わったデザイナーさんからも、是非とご希望があり、去年12月にやっと「参番」をお送りすることができた。残りはお好きにお使いください、とのことで、生徒の練習用に使わせてもらっている。

zu-4送られてきた折丁の奥付。


 実際の作業中も、当時のことを思い出す時も、暖かい和やかな気持ちになる。伯父上の文章は誠実な人柄、時としてユーモアがにじみ出る素晴らしいものだった。そして姪御さんの愛情がデザイナーさんや私に伝播し、離ればなれでありながら3人が共同作業をしている気持だった。製本の仕事の中の小さな、しかし思い出深いエピソードである。
(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
病める舞姫12-1


病める舞姫12-2


病める舞姫12-3
「病める舞姫 」
土方巽著

1983年 白水社刊
・パッセカルトン 山羊オアシス革・ヘビ革総革装
・金箔押し装飾
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・221x158x26mm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本

〜〜〜〜
*画廊亭主敬白
昨日、半分は冗談だろうと思いながらマケドニアへの作品輸送について書いたのですが、何と顧客からそれでいいから送ってくれとの返信(!)。アメリカあたりなら僅か数万円で済むのに諸経費込みで40万円(昨日は30万円と書きましたが、実際にはそれ以上になりました)の送料です。一昨年のインドネシアの苦い経験(輸送における賄賂の横行)を思いだし、モラル(ルール)なき社会で商売する困難さを思わずにはいられません。ヤマトや佐川を持つ我々は幸せですね。
3月4日(日)朝9時のNHK日曜美術館をぜひご覧になってください(特集:イレーヌ ルノワールの名画がたどった140年)。司会は井浦新さんと高橋美鈴さん。ゲストとして多摩美術大学教授・西岡文彦さん、ピアニスト・西村由紀江さん、カメラマン・渡辺達生さんが出演します。後半のアートシーンにご注目ください

◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されています。
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
現代版画センターと「ときの忘れもの」については1月16日のブログをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログをぜひご購入ください(2,200円)。
埼玉チラシメカス600現代版画センターは会員制による共同版元として1974年〜1985年の11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、約280点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。

【特別イベント】ジョナス・メカス監督作品「ウォールデン」上映会
日時:3月3日(土)、4日(日)各13:00〜16:00
場所:2階講堂
定員:100名 (当日先着順)、無料
【担当学芸員によるギャラリー・トーク】
日時:3月10日 (土) 15:00〜15:30
場所:2階展示室
費用:企画展観覧料が必要です。
【トークイベント】ウォーホルの版画ができるまで―現代版画センターの軌跡
日時:3月18日 (日) 14:00〜16:30
第1部:西岡文彦 氏(伝統版画家 多摩美術大学教授)、聞き手:梅津元(当館学芸員)
第2部:石田了一 氏(刷師 石田了一工房主宰)、聞き手:西岡文彦 氏
場所:2階講堂
定員:100名 (当日先着順)/費用:無料
〜〜〜〜
○<#埼玉県立近代美術館 #版画の景色ー現代版画センターの軌跡展 。磯崎新作品を見た #ときの忘れもの と #建築資料館 と連動したかのような企画。各方面の作家による様々な作品と刊行物やスライド等、膨大な情報量。気付けば閉館時間…。図版違いのリーフレット、全種類頂きました(欲張り)。
(20180226/はこちさんのtwitterより)>

○<これです、もちろん好き嫌いはあると思うけど興味ある人は是非に。ウォールデンは明後日で上映終わります。
(20180302/コジマサキさんのtwitterより)>

○<埼玉近美の「版画の景色・現代版画センターの軌跡」凄く良かった!期待して行ったけど期待以上。
靉嘔のシルクスクリーンとても綺麗でびっくりした。菅井汲もカッコ良すぎたし、関根伸夫の作品も作ることと考えることの楽しさが直に伝わって来た。
特にシルクスクリーンに対する印象が変わった。
磯崎新のシルクも久しぶりに見たけど、本当にカッコいい。
現代版画センターの記録的な展示も興味深く、当時の熱気が伝わってきた。
メカスさんの映像、セルフポートレート見れて嬉しかった。

(20180227/コイズミアヤさんのtwitterより)>

○<企画展『版画の景色』に。
色々素晴らしいです。
安藤忠雄さん 草間彌生さん
アンディーウォーホルさんなど
自分が知っている方々の作品や全く知らない(その道では有名な方々)作品を見れました。
たまに行くと良いものです。
ココロにヨユウを。
機会があれば是非。

(20180227/氷川整体☺︎さいたまさんのtwitterより)>

○<埼玉近美の『版画の景色 現代版画センターの軌跡』展おもしろかったです。春の庭でビールを飲むメカスのセルフポートレイト映像(提供元が本人!)など観れました。今週末には『ウォールデン』の無料上映があるそう🎬コレクション展に小村雪岱もあってお得感ありました
(20180226/idonumaさんのtwitterより)>

西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。草創期の現代版画センターに参加された西岡さんが3月18日14時半〜トークイベント「ウォーホルの版画ができるまでー現代版画センターの軌跡」に講師として登壇されます。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

スタッフたちが見た「版画の景色」(2月4日ブログ)

毎日新聞2月7日夕刊の美術覧で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が紹介されました。執筆は永田晶子さん、見出しに<「志」追った運動体>とあります。

倉垣光孝さんと浪漫堂のポスター(2月8日ブログ)

嶋吉信さんのエッセイ〜「紙にインクがのっている」その先のこと(2月12日ブログ)

大谷省吾さんのエッセイ〜「版画の景色−現代版画センターの軌跡」はなぜ必見の展覧会なのか(2月16日ブログ)

塩野哲也さんの編集思考室シオング発行のWEBマガジン[ Colla:J(コラージ)]2018 2月号が展覧会を取材し、87〜95ページにかけて特集しています。

○月刊誌『建築ジャーナル2018年3月号43ページに特集が組まれ、見出しには<運動体としての版画表現 時代を疾走した「現代版画センター」を検証する>とあります。

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。

現代版画センターエディションNo.148 松永伍一・吉原英雄「詩画集 少年」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
148_松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』全体松永伍一 詩・吉原英雄 画
『詩画集 少年』
1977年
限定85部
本サイズ:31.2×24.8×1.7cm
*1/85〜10/85は吉原英雄の水彩1点と松永伍一の詩篇一葉入り

少年奥付
奥付に、
装丁:池田令子とあります(独身時代の社長です)。

松永伍一「早春譜面」
ちちの愛をはんぶん
ははの愛をはんぶん
体温にもらいうけてぼくが育つ
はさまれているからぼくの蕾がふくらむ
ちちもねむるだけが夜
ははもねむるだけが夜
ぼくはちちに代る<男>を夢みる
ぼくはははの湖をおもう<男>に近づく
はさまれて早春
みそさざいが沼をとぶ朝ぼくの罰は
ははの乳房のうえで
ちちの力失った敵をのぞきこむ
・・・・・・・・・詩画集『少年』より
148-1_吉原英雄《『詩画集 少年』より、閉ざされた時間》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《閉ざされた時間》

148-2_吉原英雄《『詩画集 少年』より、マッチングトルソー》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《マッチング トルソー》

148-3_吉原英雄《『詩画集 少年』より、壁にはられた松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《壁にはられたドローイング−レオナルド・ダ・ヴィンチ》

148-4_吉原英雄《『詩画集 少年』より、挑戦》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《挑戦》

148-5_吉原英雄《『詩画集 少年』より、焦燥》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《焦燥》

148-6_吉原英雄《『詩画集 少年』より、空白のページ》松永伍一・吉原英雄『詩画集 少年』より
吉原英雄
《空白のページ》

本日3月3日は松永伍一先生の命日です。
現代版画センターの草創期、美術界に縁のなかった私たちは一面識もない松永伍一先生に手紙を出し助力を請いました。以来、お亡くなりになるまで多くの原稿や講演をお願いしてきました。
19780918ギャラリーミキモト 難波田展オープニング 松永健一
1978年9月18日
銀座・ギャラリーミキモトにて
左から綿貫不二夫、松永伍一先生、難波田龍起先生と奥様
難波田先生の銅版画集『街と人』『海辺の詩』発表記念展

私たちが手がけた最初の詩画集が吉原英雄先生との「少年」でした。
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

パンフレット_05
出品作家45名:靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄

ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第7回 愛といのち

日時:2018年4月3日(火)18:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:メゾ・ソプラノ/淡野弓子
   スクエアピアノ/武久源造   
プロデュース:大野幸
*要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。

info@tokinowasuremono.com

◆ときの忘れものは「植田正治写真展ー光と陰の世界ーPart 供を開催します。
201803_UEDA
会場1:ときの忘れもの
2018年3月13日[火]―3月31日[土] 11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊(但し3月25日[日]は開廊)

昨年5月に開催した「Part I」に続き、1970年代〜80年代に制作された大判のカラー作品や新発掘のポラロイド写真など約20点をご覧いただきます。

●書籍・カタログのご案内
表紙植田正治写真展―光と陰の世界―Part II』図録
2018年3月8日刊行
ときの忘れもの 発行
24ページ
B5判変形
図版18点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:800円(税込)※送料別途250円

ueda_cover
植田正治写真展―光と陰の世界―Part I』図録
2017年
ときの忘れもの 発行
36ページ
B5判
図版33点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:北澤敏彦(DIX-HOUSE)
価格:800円(税込)※送料別途250円


◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第40回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第40回

良い革を求めて−2


パリンプセストという、なんとも儚げな透明感を持った音で呼ばれる羊皮紙があります。
書かれた文字を削ったり洗ったりなどして改めて本文紙として利用されたもので、昨年は6世紀のものと見られるヒポクラテスの処方せんの手稿が発見されています。これはエジプト北東部、シナイ半島にある聖カタリナ修道院の「シナイ写本」と呼ばれる古写本の聖書の文章の下にあったもので、この修道院だけでも130ものパリンプセストがあるそうです。

その時々に、より重要と見なされたテクストのために消し去られた文字のことを考えると忍びないものの、身を隠すことによって生き延びたとも考えられ、気づかれること無く全く別の記憶を持った本が世界のあちらこちらで秘やかな眠りについている様子は、史実を離れた勝手な妄想の世界へとワープさせます。
何年か前に、印刷される前段階の活字組版のテクストを主題にした個展を行った際に叶わなかったのは、暗い会場の壁にテクストを光りの文字で映すことでした。何しろ「印刷される前」の設定でしたから出力したものを貼るわけにはいかない、という理由もありましたが、会期が終わり文字が消し去られた後の壁に熱を持った残像が留まり、触れることで指先からテクストの記憶が呼び覚まされたならば、という自分だけのロマンチックなオマケの話しのためです。

私の手許にあるのはルリユールで表紙に使うための真っさらな、記憶を隠し持ってはいない羊皮紙で、羊と書きますが、鹿や豚など多種に渡り、その中で私が使うほとんどのものは仔牛と山羊です。なめらかな表面は磁器や大理石というよりも磨かれた骨のようで、しっとりとした冷たさがあり、白みの強い、あるいは黄みの強い乳白色に個体差が加わり、どれも見ていて触れていて時間の経ってしまう素材です。
美しいけれど、いざ作業となるとそこには優雅さの欠片もなく、毎度、時間と力の戦いを強いられていますし、染めた紙を透かし見る形で使うことも気に入っており、その場合は更にヤスリ地獄が加わります。

羊皮紙は他の革と比べて個体差がとても大きく、その個性がぴたりと合う時もあれば、表紙をざわつかせてしまうこともあり、長く出番待ちとなる場合があるのですが、先だってはピタリ。本の傍らで様々に作品を作られている、美術家の足立涼子さんからお預かりした『とりのうた』は、まさにそのぴたりの時でした。
梢では伸びやかに中空に、陽を浴びた時は影となって地面にあった、枝を拾い集めて編んだ「枝文字」のテクストで、和紙の透過性が細やかに調整されて刷られている、軽やかな冊子です。
表紙に使った、表にでも裏にでもなく皮のその中にうっすらと松葉が散ったような跡がある羊皮紙は、枝文字の一端を予感させるようなもので、なんとなく惹かれたというだけで買い揃えてある手持ちの革や皮が、制作の過程でその1冊のために用意されたように馴染んで行く時でした。良い革を使えたと晴れ晴れとする時でもあり、先月触れた『エピクロスの肋骨』に出てくるような、テクストの記憶を備えた山羊がやはり居るような気がしてしまう時です。

※パリンプセスト:ギリシャ語の「再び」および「こすられた」の意の2語からなる複合語に由来する.以前に記された字句を部分的または完全に消去した羊皮紙などの獣皮紙の表面に,新たに字句を記した写本.2回以上再利用した場合もある.獣皮紙は貴重品であったので,ヨーロッパの主として7世紀と8世紀前半に,リュクスイユ,ボッビオ,ザンクトガレンなどの修道院において,元のギリシャ語やラテン語によるテキストがこすり取られ,別の文献が重ね書きされる例が多かった./図書館情報学用語辞典より

※羊皮紙については、frgmのワークショップでもお世話になった八木健治さんの「羊皮紙工房」サイトで詳細が紹介されています
http://www.youhishi.com/

※足立涼子さんのサイト http://www.ada-library.com/

(文:羽田野麻吏
羽田野(大)のコピー


●作品紹介〜羽田野麻吏制作
hatano10a


hatano10b


hatano10c
『流離抄板畫卷』
棟方志功 歌:吉井勇

1954年 龍星閣
限定110部のうち25番 
・総山羊革二重装 綴じ付け製本
・染色板と仔牛革、山羊革によるデコール
・仔牛革/染め和紙の見返し
・天染め
・夫婦函
・2006年
・217×176×16mm
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


◆ときの忘れものは2月7日(水)は都合により、17時で終業します17時以降は閉廊しますので、ご注意ください。
DSC_0686
明日4日(日曜)と明後日5日(月曜)は休廊です。束の間の常設展示は草間彌生の超レアな1983年の大判ポスター、おそらく現存するのは一桁か。

埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されています。現代版画センターと「ときの忘れもの」についてはコチラをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログはお勧めです。ぜひご購入ください(2,200円)。
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
埼玉チラシ菅井600現代版画センターは会員制による共同版元として1974年〜1985年までの11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、約300点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。

○<再評価される版画の魅力「版画の景色 現代版画センターの軌跡」
埼玉県立近代美術館(さいたま市)の版画の景色 現代版画センターの軌跡【2018年1月16日 (火) 〜 3月25日 (日)】を見てきました。
現代版画センターとは1974から1985年まで存在した会社です。その活動の目的は版画の地位向上と普及で、方法としては、
➀アーティストにオリジナルの版画を制作してもらい
△修譴魏餔を募って低価格で販売し
A換颪播戸会を企画し版画の普及に努める
というもの。
最後は倒産したとはいえその昔の置き薬や通信販売とも似た独特の活動は今日振り返っても大変面白いです。
展覧会では同センターの作品700点余のうち1/3程度を展示するとともに、当時の展覧会の写真や会員向けの出版物も展示してその熱気を再現しようというものです。会場の構成もいくつもの展覧会が同時に開催されているかのような雰囲気を持っています。

今回の展覧会カタログはユニークな形状をしています。
ケースの中にテキストブック、ヴィジュアルブックと年表が収められています。年表の左側は展覧会を行った全国各地のスペースを示します。

記念すべきエディション1は虹色の表現で有名な靉嘔「I LOVE YOU」。11,111部製作され、1000円で販売されました。版画が5ケタ刷られることは前代未聞で、「オリジナルの作品を一般市民の手に」という同センターの理念を明確に示す作品です。

島州一「ゲバラ」
布にチェ・ゲバラの旗が刷られています。布の皺と旗の皺が二重のレイヤーを形成しています。島さんはカーテンにカーテンを刷ったり、実験的な作品を多数制作しました。同センターの作家は真面目路線が多いので、島さんの仕事は版画の幅を拡大する貴重なものでした。

関根伸夫「おちるリンゴ」
関根伸夫さんはもの派の巨匠として有名ですが、同センターの活動のため全国の展覧会を講演で回るなど、最も積極的に関わった作家です。
それはそうと、版画作品は寡黙な彫刻作品と違い、ユーモアにあふれるものになっています。

関根伸夫「絵空事ー鳥居
関根伸夫「雲を突く」
関根さんの仕事を考えるうえで、これらの版画作品は大変参考になると思います。

高柳裕「空からの贈り物」
2017年に青梅市立美術館で個展のあった高柳さんの作品。こうやって他の作家さんと並べてみると、かなり饒舌な作品ですね。

磯崎新「空洞としての美術館
同センター最大の大きさを誇る磯崎さんの作品。群馬県立近代美術館のイメージ図である立方体の格子の版画に、実物の格子がめり込んでいます。版画としては反則気味ですが、磯崎さんがある意味建築の設計以上に版画制作にのめり込んでいたことが分かります。まあ実物の群馬県立美術館を見てもこんなイメージは浮かばないのですが・・・

山口勝弘「Cの関係
メディアアートの巨匠、山口勝弘さんの作品。東京都現代美術館が所蔵する大型立体作品を版画化したものです。

山口勝弘「夜の進行
これも元の作品はすりガラスを通して絵を見るみたいなものですが、版画だと十分効果が出てません。これだと単なる高価な写真でしかないと思うのですが・・・

元永定正「しろいせんのあみめから
具体出身で絵本の絵担当でも活躍した元永定正さん。茫洋とした温かみのあるキャラクターが特徴ですが、同時に版画の場合、色の強さとグラデーションが同時に楽しめる作家でもあります。

菅井汲「スクランブルC」
菅井さんは本展覧会で最も多い点数が出品されていました。車好きでそれに関する作品が多数あります。インクの厚みを明確に感じる力強い作品ですが、バックの写真によってさまざまな想像力が膨らみます。

アンディ・ウォーホル「KIKU 1
同センターが末期に渡米しアンディ・ウォーホルにアタックしてオリジナル版画を作ってもらったのは面白い活動です。桜と菊の写真を大量に持っていき、ウォーホルに選んでもらったそうです。
日本のモチーフ、日本の紙、日本の刷師にこだわった作品で、ウォーホルは日本の刷師のレベルの高さに驚いたそうです。
ウォーホルに関してはこれが縁で全国で個展をやったり、栃木県の巨大地下空間である大谷資料館で展覧会をやったりしました。
日本では江戸時代には浮世絵などアート制作工房や複製作品の文化が根付いていたにもかかわらず、明治維新以降の近代化の過程で油絵などの一点ものに過剰に傾いたという過去があります。同センターの活動は江戸期の「アートを市民の手に」という理想復活に向けた運動であり、今日再評価、継承すべき仕事であることが分かりました。
一見玄人向けですが、大物作家も多数出品していますし座って見れるスペースも多いので広く楽しめる展覧会だと思います。ナンコレ度★★★

博司のナンコレ美術体験より)>

西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。草創期の現代版画センターに参加された西岡さんが3月18日14時半〜トークイベント「ウォーホルの版画ができるまでーー現代版画センターの軌跡」に講師として登壇されます。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号では1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。

現代版画センターエディションNo.519 関根伸夫「三角の波のproject」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
20170912_2_sekine_14_nami関根伸夫
《三角の波のproject》
1982年  
銅版(刷り:林グラフィックプレス9
60.0×45.0cm
Ed. 50  サインあり
*現代版画センターエディション

パンフレット_05


◆ときの忘れものは「ハ・ミョンウン展」を開催します。
会期=2018年2月9日[金]―2月24日[土] ※日・月・祝日休廊
201802_HA
ロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホルなど誰もが知っている20世紀を代表するポップアートを、再解釈・再構築して自らの作品に昇華させるハ・ミョンウン。近年ではアジア最大のアートフェア「KIAF」に出品するなど活動の場を広げ、今後の活躍が期待される韓国の若手作家です。
ときの忘れものでは2回目となる個展ですが、新作など15点を展示します。 ハ・ミョンウンは会期中数日間、日本に滞在する予定です。
●オープニングのご案内
2月9日(金)17時から、来日するハ・ミョンウンさんを囲んでオープニングを開催します(予約不要)。皆さまお誘いあわせの上、是非ご参加ください。

●日経アーキテクチュアから『安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言』が刊行されました。
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。日経アーキテクチュア編集長のコラム<建築家・安藤忠雄氏の言葉の力:第3回>で、出江寛先生、石山修武先生の次に紹介されていますので、お読みください。

◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
 ・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
 ・frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
 ・小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
 ・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
 ・杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
 ・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
 ・小林紀晴のエッセイ「TOKYO NETURE PHOTOGRAPHY」は毎月19日の更新です。
 ・清家克久のエッセイ「瀧口修造を求めて」は毎月20日の更新です。
 ・小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。
 ・スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
 ・新連載・西岡文彦のエッセイ「現代版画センターの景色」は全三回、1月24日、2月14日、3月14日に掲載します。
 ・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」はしばらく休載します。
 ・大野幸のエッセイ<ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート>は随時更新します。
 ・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
  同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」と合わせお読みください。
  「本との関係」などのエッセイのバックナンバーはコチラです。
 ・中村茉貴のエッセイ「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
 ・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」英文版とともに随時更新します。
 ・深野一朗のエッセイは随時更新します。
 ・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
 ・関根伸夫のエッセイ「〈発想〉について[再録]」は終了しました。
 ・倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」は終了しました。
 ・森本悟郎のエッセイ「その後」は終了しました。
 ・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は終了しました。
 ・森下隆のエッセイ「鎌鼬美術館——秋田県羽後町田代に開館」は終了しました。
 ・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は終了しました。
 ・夜野悠のエッセイ「書斎の漂流物」は終了しました。
 ・普後均のエッセイ「写真という海」は終了しました。
 ・八束はじめ・彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は終了しました。
 ・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は終了しました(時々番外編あり)。
 ・荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は終了しました。
 ・森下泰輔のエッセイ「戦後・現代美術事件簿」は終了しました。
 ・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイや資料を随時紹介します。
 ・「オノサト・トシノブの世界」は円を描き続けた作家の生涯と作品を関係資料や評論によって紹介します。
 ・「瀧口修造の世界」は造形作家としての瀧口の軌跡と作品をテキストや資料によって紹介します。
土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
 ・「関根伸夫ともの派」はロスアンゼルスで制作を続ける関根伸夫と「もの派」について作品や資料によって紹介します。
 ・「現代版画センターの記録」は随時更新します。
今までのバックナンバーの一部はホームページに転載しています。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第39回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第39回

よい革を求めて


「昔、西欧では、かがり台は大切な嫁入り道具の一つだった」そうで、なるほど本を綴じている様子が描かれた中では、大抵女性がその仕事を分担しています。同じく「昔、西欧では」という枕詞で始まる話しでは、一番上等な革は先ずルリユールに使われたそうです。羨ましい話しですが、今ここに戻りますと、手帳に被せるのではなく本の表紙に貼るというのは革の用途としては、やはり特殊なようで、必要な時に自分の目でより良い革を選び手に入れる機会を得るべく、鷹の目で出掛けている東京レザーフェアでは、いつも苦戦しています。

とは言え、国内外の材料としての革の状況もこの十年ほどで随分と変わって来ており、出展しているタンナーも、エコと少ロットをキーワードに需要を喚起している所が増え、年に数枚、しかも一色につき一枚あれば十分という僅かな量を求める製本家には少しだけ風向きが良くなっている気がします。12月のレザーフェアでも本来の革の質感を最大限に引き出すにとどめたシンプルなタンニン鞣しの革が奮闘していました。また、鞣し方10種と仕上げ10種の組み合わせ100通りの中から、ヌメ革を1枚からオーダー出来るシステムの見本展示などもありました。まさに少ロット!です。ただ残念なのはこのオーダーシステムもしかり、各社の主流はステアと呼ばれる成牛で作られた革で、日頃色々な革を使いはしますが、一番ルリユールに向いている仔牛や山羊は扱いが少ないことです。
ルリユール用の革として心惹かれるかというのはまた別の話しになりますが、表面を特殊加工した不思議な風合いの革や変わりダネの皮も毎年多種多様に展開されています。そんな中で、使う事も多い爬虫類の革とはまた少し違って面白く見えたのは、なんとマグロの革で、タンニン鞣しで綺麗なグラデーションに染められていました。

近頃は、背を固めない構造を選ぶ製本家も増えており、表紙に革を使わない作品も目にします。私もテクストによって、こだわりなくそういった選択をしているつもりですが、やはり仔牛や山羊の上質な革で作られた本には、格別の心地よさがあり、作っている間も手が楽しく気持ちが好いのです。澁澤龍彦の『エピクロスの肋骨』の中に、新聞紙では食が進まず弱った山羊に詩を書いた紙を与える件があって、その後で確か山羊は何処かに売られた筈。詩を食べた山羊の革はさぞルリユールに向いていることだろうと思います。いっそこれから製本するテクストの写しを先ず食べさせて、その本のための山羊として育ててみたら・・・という想像は悪ノリが過ぎますが、山羊革のルリユール本、是非お手許に。

(文:羽田野麻吏
羽田野(大)のコピー


●作品紹介〜羽田野麻吏制作
hatano10a


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『流離抄板畫卷』
棟方志功 歌:吉井勇

1954年 龍星閣
限定110部のうち25番 
・総山羊革二重装 綴じ付け製本
・染色板と仔牛革、山羊革によるデコール
・仔牛革/染め和紙の見返し
・天染め
・夫婦函
・2006年
・217×176×16mm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●本日のお勧め作品は、森下慶三です。
00001森下慶三
MILANO 8-12
1979年
キャンバスにアクリル
91.0×73.0cm(30号)  サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆埼玉県立近代美術館で新春1月16日〜3月25日の会期で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」が開催されます。
会員制による共同版元として現代版画センターは1974〜1985年に約80作家、700点のエディションを世に送り出しました。全国各地で展覧会、頒布会、オークション、上映会、講演会、パネルディスカッション等を頻繁に開きましたが、今回の展覧会では、その中から埼玉近美が選んだジョナス・メカスなど45作家、約300点の作品と、11年間に発信された機関誌など資料が一部展示換えをしながら展観されます。
パンフレット_02


●書籍のご案内
版画掌誌第2号
版画掌誌第2号
オリジナル版画入り美術誌
2000年/ときの忘れもの 発行
特集1/磯崎新
特集2/山名文夫
B4判変形(32.0×26.0cm) シルクスクリーン刷り
A版:限定35部/価格:120,000円(税別 版画6点入り)  
B版:限定100部/価格:35,000円(税別 版画2点入り)


TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別) *送料250円


安藤忠雄の奇跡安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言
2017年11月
日経アーキテクチュア(編)
B5判、352ページ
価格:2,700円(税別)  *送料:250円
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。日経アーキテクチュア編集長のコラム<建築家・安藤忠雄氏の言葉の力:第3回>で、出江寛先生、石山修武先生の次に紹介されていますので、お読みください。
ときの忘れもので扱っています。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。


◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
ときの忘れものの小さな庭に彫刻家の島根紹さんの作品を2018年1月末まで屋外展示しています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第38回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第38回

接着について・ドリュール編


箔押しをする際、ただ金箔を革の上にのせて花型を押し当てただけでは接着できません。ドリュールでは、前回の「接着について・ルリユール編」でご紹介した接着とは別種類の「液状のり」を使います。今現在、ドリュールをするほとんどの人は、1931年にフランスで製造され始めた「fixor」と言う成分企業秘密の接着液を使っていると思います。
それでは、それ以前は何を接着液として使用していたのでしょうか。

文献をいくつか見てみると、プラスアルファで異なるレシピが紹介されていますが、基本的には卵の白身と酢を混ぜた「卵白液」が使われていました。おそらく金箔がドリュール装飾にも用いられるようになった時期からの接着液ですので、長い歴史があり、もちろん現在でも使われています。ツヤを出すものの意味で、英語では「glair」と呼びます。フランス語でも「glaire」と言いますが、みんなはblanc d’oeuf(卵白)と言っていた気がします。

また、あまりシボのない安価な革で装丁された本には、でんぷんのりを水で薄めてた液を使用します。この接着液を使う目的はあくまで手間を省くことですので、箔押しを施す部分だけでなく、その全面にさーっと塗ってしまいます。
英語圏では「paste wash」と呼ばれ、主に革の表面のキメを整える役割として採用されることの方が多いようです。しかし、この方法を色の薄い革に施してしまうと、革の色が変わってしまう恐れがあるので注意が必要です。

接着液に付随した余談ですが、英仏問わず資料の中でたまに見かける「おしっこの使用」も、何というか、ルリユールの長い歴史を感じさせます。卵白液のタマゴは滋養強壮ですが、尿は不要物です。実際本当に当時の職人たちは使っていたのでしょうか・・・。

ある本の著者は、先輩から教わった綺麗な箔押しを施す秘技が「尿」だったと言います。それには、化学的(?)根拠も後ろ盾にあるようです。
まず、採尿後しばらく寝かせて、尿が発酵するのを待ちます。発酵が始まったら、尿の中の尿素がアンモニアの炭酸ガスと変わり、アルカリ性になります(この「天然液」を使って、皮製造業者は皮をリフレッシュさせていたようです)。
先輩曰く、「まず尿を革に塗り、次に低濃度のシュウ酸溶液、でんぷんのりを薄く塗って、卵白液を2度塗るといいぞ。」
尿の反応により新鮮さが蘇がえり、シュウ酸がにより汚れが取り除かれ、でんぷんのりとともにキメが整えられた革は準備万端になります。汚れのない革の上に卵白液が効果的に働いて、金箔がより美しく輝くというカラクリだそうです。

参考文献
「The bookbinding: its background and technique」Edith Diehl著

(文:中村美奈子
中村(大)のコピー


●作品紹介〜中村美奈子制作
名刺入れA中村美奈子
《装飾付革装名刺入れ》(参考作品)

箱・箔押し 中村美奈子
・山羊革
・パラジウム箔
・制作年 2012年
・101mm×65mm×31mm

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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●今日のお勧め作品は風間健介です。
kazama_05風間健介
「夕張物語(12)」
ゼラチンシルバープリント
23.8x29.7cm  サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆ときの忘れものは「ART MIAMI 2017」に出展します。
Art Miami_2017_LOGO_dates_600
会期:2017年12月5日[火]〜10日[日]
ブースナンバー:A428


◆埼玉県立近代美術館の広報紙 ZOCALO の12月-1月号が発行されました。次回の企画展「版画の景色 現代版画センターの軌跡」が特集されています。館内で無料配布しているほか、HPからもご覧いただけます。

◆ときの忘れものは「WARHOL―underground america」を開催します。
会期=2017年12月12日[火]―12月28日[木] ※日・月・祝日休廊
201712_WARHOL

1960年代を風靡したアングラという言葉は、「アンダーグラウンドシネマ」という映画の動向を指す言葉として使われ始めました。ハリウッドの商業映画とはまったく異なる映像美を目指したジョナス・メカスアンディ・ウォーホルの映画をいちはやく日本に紹介したのが映画評論家の金坂健二でした。金坂は自身映像作家でもあり、また多くの写真作品も残しました。没後、忘れられつつある金坂ですが、彼の撮影したウォーホルのポートレートを展示するともに、著書や写真集で金坂の疾走した60〜70年代を回顧します。
会期中毎日15時よりメカス映画「this side of paradise」を上映します
1960年代末から70年代始め、暗殺された大統領の未亡人ジャッキー・ケネディがモントークのウォーホルの別荘を借り、メカスに子供たちの家庭教師に頼む。週末にはウォーホルやピーター・ビアードが加わり、皆で過ごした夏の日々、ある時間、ある断片が作品には切り取られています。60〜70年代のアメリカを象徴する映像作品です。(予約不要、料金500円はメカスさんのNYフィルム・アーカイブスに送金します)。

●書籍のご案内
版画掌誌5号表紙600
版画掌誌第5号
オリジナル版画入り美術誌
特集1/ジョナス・メカス
特集2/日和崎尊夫
B4判変形(32.0×26.0cm) シルクスクリーン刷り
A版ーA : 限定15部 価格:120,000円(税別) 
A版ーB : 限定20部 価格:120,000円(税別)
B版 : 限定35部 価格:70,000円(税別)


TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別) *送料250円
*『瀧口修造展 I』及び『瀧口修造展 II』図録も好評発売中です。


●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第37回

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第37回

接着について・ルリユール編


以前、ルリユールは常に接着の連続ですとご紹介いたしました(と同時にヤスリかけの連続でもありますが・・・)。今回は、接着に使用する「のり」の種類について触れていきたいと思います。

大まかにくくって、日本語では「のり」、フランス語では「colle」ですが、英語の場合は、「glue」と「paste」の2つのカテゴリーに分かれているようです。
1つ目の「glue」は、動物の皮や骨が原料の接着剤です。日本だと膠、フランスだとcolle forteやcolle d’osと言ったところでしょうか。水で煮溶かしたり、湯煎をして使いますが、温めているとケモノ臭が立ちのぼります。速乾性があるので、紙の「伸び縮み運動」による「反り」が少なくて済むようです。しかし、その分手早く作業しなければなりません。
2つ目の「paste」は、穀物が原料の接着剤で、米粉や小麦粉などです。日本だとでんぷんのり(芋類も入りますが)、フランスだとcolle de pâteやcolle d’amidonとなり、こちらも水を加え煮詰めて準備をします。glueと比べてしっとりとしていて乾くのが遅いため、落ち着いて革を貼るのに向いています。
(私は残念ながら、ケモノ系のりのglueは、「嗅いだ」ことはありますが、「使った」ことはありません。)

一番応用範囲のあるものは、革、紙やクロスにも使用できる、ボンドとでんぷんのりを混ぜて作るcolle mélangéeです。
革貼りなどゆっくりと作業したい場合は、でんぷんのりの割合を多めにし、薄い紙やクラフト紙のような、水分を含むと激しく「伸び縮み運動」をする種類の紙を貼る時は、貼り合わせるボード紙の反りが最小限に済むように、ボンドの割合を多めにして手早く作業します。

私は、ルリユールを始めるまでは、紙に「目」があることや、革に「シボ」があるなんて思いもしませんでした。
紙にのりを「入れる」と、紙は通っている「目」に従って「伸び運動」をします。使用する紙が水分を含んだ時にどのぐらい伸びるのか、また乾いた時の「縮み運動」がどのぐらいボード紙を引っ張り、反らせてしまうのかを考慮に入れ、のりの具合を調整し、作業のペースをアップダウンさせ、さらにはそこら中にのりのシミをつけないように常に身ぎれいにしておかなければなりません。

ルリユールは、そんな地道な作業の積み重ねで成り立っております。
(文:中村美奈子
中村(大)のコピー


●作品紹介〜中村美奈子制作
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中村美奈子
《革装文鎮》

・山羊革(外側)
・鉄塊(内側)
・金箔・パラジウム箔
・真鍮ワイヤー
・2016年制作
・47×47×47mm
日常でもデスク周りで使える文鎮にテクスト(ウィリアム・ブレイク)を箔押ししました。

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


中村美奈子さんが瀧口修造にオマージュした文鎮を制作しました。
中村美奈子 文鎮こげ茶、赤、緑、オレンジの4色あります。
一個:大5,500円 小5,000円(税別)
二個組:10,000円(税別)
三個組:14,000円(税別)
紙ケース付、送料は一律500円(何個でも)。
瀧口ファンならずとも手元に置きたくなるような色彩豊かな佳品です。特別頒布中ですのでどうぞご注文ください。

●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円


●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第36回

極「私的な」写真の話

 私達のユニット、フラグムが一貫して掲げるテーマは「書物への偏愛」。それにもかかわらず、連続3回の内容がすべて写真に関することになりましたが、写真集という「本」にまつわる話として、また一製本家が時として、こんなことも考えるというエピソードとして、ご寛恕ください。
***
 今年の5月のことになるが、「Don’t blink ロバート・フランクが写した時代」というドキュメンタリー映画を観た。ロバート・フランクは、現存する世界的写真家の中の偉大な一人であり、その代表作 ”THE AMERICANS” は20世紀のもっとも重要な写真集であると言われている。亡き夫の仕事の関係で、以前よりロバート・フランクの名前も知っていたし、”THE AMERICANS”は今も手元にあるが、今回映画を観て、改めてロバート・フランクの生き方に想いを馳せることになった。
 ロバート・フランクは、スイス・チューリッヒ生まれのユダヤ人。1947年に米国に渡った。”THE AMERICANS”は、1955年から56年の9ヶ月をかけて全米1万マイルを移動して撮影した。撮影したフィルムは767本に及ぶという。現在よりはるかに人種差別の壁が厚かったであろう、この時代の雰囲気が感じ取れるだけでなく、アメリカという国の広大さが人々に与える心性というものに思いが行く。私事であるが、6年間のベルギー滞在を終えた時、アメリカ経由で帰国した。日本に戻ったら、そうそう行く機会もないだろうということで、友人のいるニューヨーク、ロスアンジェルスに立ち寄ったのだった。飛行機上から下を見ていると、ニューヨークを飛び立ち5分の2ほどの距離を行ったあたりで、豊かだった緑がなくなってしまう。7月初旬、すでに乾期だったせいもあると思うが、そこから西は、月のクレーターのような、干上がった川の跡が見える砂漠の風景が続くのだった。東西の移動でこういった変化がある。南北はまた違った風景を見せるのだろう。土地や気候は、人々の精神に影響を与える。ヨーロッパから来たロバート・フランクに、アメリカとアメリカ人はどんな風に見えたのか。勿論その答えは、写真集の中にある。

zu-1“THE AMERICANS” 当初、米国では内容を批判され、出版されなかった。最初の出版は1958年、フランスで。米国での出版は1959年だった。手元にあるのは1969年N.Y.で出たRevised and enlarged edition。


 ロバート・フランクについて、私には写真を見ることとは別に思い入れがある。1996年11月の「パリ写真月間」会期中に、パリにあるスイス文化センターでロバート・フランクの写真展が開催された。故郷であるスイスにプリントを寄贈した時の、記念展覧会だった。亡夫の知人がかつてニューヨークに住んでいた際に、フランクの知遇を得ていた関係で、夫はその知人と共にパリに、フランクに会いに行ったのだった。ロバート・フランクは気むずかしいと一般的に言われているそうだが、友人が一緒だったということもあったのだろうか、私が夫から聞いた印象はまったく違っていた。そして、その時に写真展の案内状に書いてくれたサインが、今も私の手元にある。
      Good luck on the road... Robert Frank
フランクは娘を飛行機事故で亡くし、精神を病んだ息子は自死、という辛い人生を送っている。最初の妻とは離婚し、その後、再婚した美術家のジューン・リーフさんと暮らしている。なにもかも上手くいく人生などない。むしろ、楽しいことより困難や苦しみの方が多いかもしれない。それでも、道を歩き続けなくてはならない−don’t blink(瞬きせずに)。

zu-21996年、パリのスイス文化センターでの写真展案内状。右側の下方にかすれたボールペンの文字で Kazuo - Good luck on the road... Robert Frankと書かれている。


 映画を観に行ったあと、改めてサインを見た。96年に見た時には気に留めなかった “on the road” の文字に、ロバート・フランクという人を見た。そして、自分の人生とも共振する形で、強く心を動かされたのだった。
(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
異国の女に捧げる散文11-1


異国の女に捧げる散文11-2


異国の女に捧げる散文11-3


異国の女に捧げる散文11-4
『異国の女(ひと)に捧げる散文  PROSE POUR L’ETRANGERE 』
ジュリアン・グラック Julien Gracq著
仏日対訳 天沢退二郎訳  挿画 黒田アキ

1998年 思潮社刊

・パッセカルトン 山羊革・カーフ総革装
・手染め紙・カーフ嵌め込み
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・225x150x15mm
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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●今日のお勧め作品は、松本竣介です。
20170904_04松本竣介
《作品》
紙にインク、墨
イメージサイズ:30.5x22.3cm
シートサイズ:32.7x24.0cm


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frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第35回

紙の未来、本の未来

 前回ご紹介した潮田登久子さんの写真集「本の景色」の中で、ひときわ印象に残った写真があった。その一枚とは、本棚の最下段に平積みされ、なかば朽ちかけた雑誌の一群の写真である。実はこの写真は「本の景色」に入っているものの、もう一冊の写真集「先生のアトリエ」に関する作品で、この「先生のアトリエ」は、潮田さんの師である大辻清司氏の仕事場を、氏の没後数年を経て、撮影した記録である
 一見、床に泥が入り込んでいるようにみえるが、それは実はカビによりぼろぼろになった紙なのだった。水害にあってカビのせいで変色している本や虫食いにあった本、酸性紙のため、乾燥して粉々になっていく本、室内環境のせいで革の繊維が破壊され、赤い粉となってこぼれていくレッドロットという状態の革装本など、破損のひどい本はいくつも見てきたが、このような状態の本は初めて見た。

zu-1潮田登久子「本の景色」幻戯書房刊より複写


 巻末の撮影メモによると、アトリエのコンクリート壁からの湿気で、このような状態になったという。「先生のアトリエ」は、大辻さんが亡くなられたあと、数年を経て撮影されたそうで、本を始めとしたあれこれに積年のホコリがつもっているのがわかる。亡くなられた氏のすべてを残しておきたいという、ご家族の気持ちがそのまま残されているように思う。写真機材、冷蔵庫の中にそのまま残されたフィルム、機械工学を得意とされた氏が作られた独自の道具類、趣味とした鉄道模型やミニチュアカー、アトリエで飲まれるはずだった未開栓のビール瓶。それらはホコリをかぶりつつも、そこに在る。また、本棚上段に配置されている多くの本は、経年の傷みはみられるものの、本という構造体の体裁を保っている。その中にあって、本棚の最下段に置かれたことにより、湿気の影響をまともに受けてしまったであろう雑誌群を見る時、実は紙というものがとても脆弱なものなのだ、ということに改めて気づかされた。

zu-2「LIFE」の一冊。「本の景色」では、アルファベットで写真が分けられており、これは【Z】DEAD 死 とタイトルを付けられた作品群の最初の一枚。(「本の景色」より複写)


 日本には和紙という優れた紙があると言われるが、帙に入れ桐の箱に収められた和本は、虫害・水害・火事といった災害から守られるものの、そういう環境になかった和本には激しい虫食いも散見される。西洋の本も同様で、羊皮紙に書写される時代から「紙」に印刷する時代に移って以降も、多くの本が現代に残っているというのは奇跡といってもよいのかもしれない。1966年のフィレンツェの大洪水*をきっかけとして、修復・保存の分野では、どのような考え方で、どのような対応をしていくかという世界的な標準が確立されてきた。今は修復(restoration)や保存(conservation)の考え方は踏襲されつつも、予防的保存対策(preservation)という考え方が積極的に採用されている。
 カビにより構造体の一部を失った雑誌を見ながら、奇跡を念じることなく、人々の「残す」という意志により本という財産を守っていくことが出来る未来を信じたいと思う。
*1966年11月4日の大雨によりアルノ川が氾濫、川岸に位置していたフィレンツェ国立中央図書館が大規模な水害にあった。欧米から駆けつけた修復家が協力支援。その時の成果が現在の修復保存技術の基礎となっている。
(文:平まどか
平(大)のコピー


●作品紹介〜平まどか制作
異国の女に捧げる散文11-1


異国の女に捧げる散文11-2


異国の女に捧げる散文11-3


異国の女に捧げる散文11-4
『異国の女(ひと)に捧げる散文  PROSE POUR L’ETRANGERE 』
ジュリアン・グラック Julien Gracq著
仏日対訳 天沢退二郎訳  挿画 黒田アキ

1998年 思潮社刊

・パッセカルトン 山羊革・カーフ総革装
・手染め紙・カーフ嵌め込み
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・制作年 2016年
・225x150x15mm
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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●今日のお勧め作品は、品川工です。
20170805_shinagawa_06_kage品川工
「影」
1966年
シルクスクリーン
イメージサイズ:50.8×37.7cm
シートサイズ:57.2×43.8cm
Ed.100
サインあり

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●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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