「残るのは文化である」

野田哲也


 コレクションというのは趣味で何かを収集をすること。これはコレクターの楽しみである。他人が不要なものでも、それを必要な人もいる。蚤の市などが存在するのもその良い例と言えるが、実際、世の中には石ころを集めて「これは良い形をしているな〜」と言って鑑賞し楽しんでいる人もいる。庭石も、まあそのようなものだろうが、趣味が心を豊かにすることは間違いのないことだろう。
 「アートフル勝山の会」は勝山の美術愛好家、つまり趣味人、荒井由泰さんの発案で発足している。ご自分の経験からアートは心を豊かにするとの確信は、本物のアートを自分で所有することによって直接アートに接し、一体となり、アートに入り込むとそれが良く分かる、というわけだ。これは単なる自分の趣味だけで終わらせるのは惜しい、自分の地域の人々にもぜひこのことを知ってもらい、ひいてはこの地域に質のいい文化が根付いたら・・、「アートがいっぱいの勝山をつりたい」という大きな希望を持ってその活動を始められたのだという。
 その会に賛同され、その良き理解者として活動を長く支えて来られたのが医師の中上光雄夫妻であった。ご夫妻が版画を中心に多くのコレクションをされたことは言うまでもないが、現代の世界的建築家、磯崎新氏に設計を依頼されてご自宅を新築、そこを「アートフル勝山」の活動に解放して何度もそこで展覧会を開催されていたことは良く知られている。
 ぼくの作品を展示していただいたのは、最初は1984年、そして2001年ではなかったかと思う。84年には娘りかの立像作品を中心に展示していただいたので、娘も一緒に勝山にご招待いただいた。まだ自然豊かな場所に磯崎氏設計のコンクリートの打ちっぱなしの建物は、全体がちょっと蛙の頭部のようにも見えるので娘は喜んだ。しかし、やはりその奇抜な建物は何か現代を象徴するにふさわしい要塞のようにぼくには見えた。その内部の壁面に掛けられたぼくの作品は、自分の日常の身辺雑多なものばかりなので、初めやや古くさくも見えたが、よく見ると以外とその壁にマッチしていてより現代的に見えたのは不思議なことだった。なるほど、コンクートと木や紙という異質の材質がお互いに反発し、その相乗効果でそう見えるのだろう。ぼくはそう思いながら自分の作品を眺めていたら、中上先生はぼくがそう思っているのをお察しになってかニコニコと納得しながらぼくを見ておられたのを思い出す。そこではぼくの展示の前にも後にもいろいろの展覧会を開催されている。
 作品はいいものはいい。しかし、そのほんとうの良さはすぐに分かるものではないが、この活動の中で実際、中上ご夫妻が集められた作品を初め、この地域には日本の版画史、美術の歴史に残るような質の高い作品が数多くコレクションされたのだった。今再びその実績をご覧なっていただくと良く分かるのではないかと思う。
 将来、残るのは文化である。

(のだてつや)

*『福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み―中上光雄・陽子コレクションによる―』図録より転載
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中上邸イソザキホール
1983年竣工 
撮影:古舘克明

1984_野田哲也展_3_600
1984年6月30日
野田哲也展レセプションにて
左から荒井由泰、中上陽子、中上光雄
前列右から3人目・野田哲也

IMG_2899野田哲也
Diary : April 7th '96 in Boston
シルクスクリーン、木版
52.5x87.0cm
Ed.20
1996年 サインあり
*『野田哲也 全作品 III 1998-2000』レゾネNo.384

野田哲也野田哲也
「Diary Nov. 18th '76(a)」
1976年
木版、シルクスクリーン
47.2x36.8cm
Ed.100 サインあり

NC_cover_600『福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み
―中上光雄・陽子コレクションによる―』図録

2015年 96ページ 25.7x18.3cm
発行:中上邸イソザキホール運営委員会(荒井由泰、中上光雄、中上哲雄、森下啓子)
出品作家:北川民次、難波田龍起、瑛九、岡本太郎、オノサト・トシノブ、泉茂、元永定正、 木村利三郎、丹阿弥丹波子、吉原英雄、靉嘔、磯崎新、池田満寿夫、野田哲也、関根伸夫、小野隆生、舟越桂、北川健次、土屋公雄(19作家150点)
執筆:西村直樹(福井県立美術館学芸員)、荒井由泰(アートフル勝山の会代表)、野田哲也(画家)、丹阿弥丹波子(画家)、北川健次(美術家・美術評論)、綿貫不二夫(ときの忘れもの)
編集:ときの忘れもの

価格:1,200円のところ、会期中のみ1,000円で頒布
※送料別途250円
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20150103中上コレクション展 表「福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み
―中上光雄・陽子コレクションによる―」
会期:2015年1月3日[土]〜2月8日[日]
主催:福井県立美術館

20150103中上コレクション展 裏
出品作家:北川民次、難波田龍起、瑛九、岡本太郎、オノサト・トシノブ、泉茂、元永定正、 木村利三郎、丹阿弥丹波子、吉原英雄、靉嘔、磯崎新、池田満寿夫、野田哲也、関根伸夫、小野隆生、舟越桂、北川健次、土屋公雄

*展覧会開催を記念して中上邸イソザキホール運営委員会から提供されたオノサト・トシノブ、吉原英雄、靉嘔の版画作品を特別頒布しています。