大野幸のエッセイ

武久源造ギャラリーコンサートのご案内〜11月24日(土)

ときの忘れもの・拾遺 第9回ギャラリーコンサートに寄せて 

大野 幸


今回は、武久源造さんにバッハ(1685-1750)より少し年上のクーナウ(1660-1722)とクープラン(1668-1733)をチェンバロで演奏していただきます。楽器と曲の解説は、武久さんご本人に書いていただきました。

ここでは、現代のアートギャラリーでバロック期の音楽を聴くこと、について考えてみました。

バロック期、と縛ったのは、この時代の「音楽」という言葉の持つ意味が今とは若干違うのではないかと感じているからです。音楽は中世から近世にかけて自由七科=セブンリベラルアーツのひとつとして位置づけられていた理系の学問でした。文系3科は、文法・論理学・修辞学、理系の4科が幾何学・算術・天文学そして音楽です。音楽が理系の学問だというところが面白い。これは、ピタゴラスが音程という概念を発見したといわれている時代から受け継いだ伝統だと思いますが、音楽は、幾何学や算術そして天文学のような目に見えない象徴的なものを扱う学問と同じカテゴリーの学問として定義づけられていました。同時代のライプニッツは「音楽は魂が知らず数える算術の実践だ」と言っています。

この時代、音楽は現代一般のように作曲家や演奏者個人の感情を一方的に表現する手段などではなく、数学的理論、組織的語彙に裏付けされた共通認識として存在していました。作曲者・演奏者も、聴衆も、音楽の要素が持つ様々な語彙を互いに共有していて、その上で音楽が伝わる。音楽が伝えようとする内容は、音型、調性など、全て意味ある要素によって構成されていて、無駄な音要素はひとつもない、このことがバロック期の音楽の特徴ではないかと思います。ならば、バロックの曲を聴くには、音要素ひとつひとつの象徴的な意味を理解した上で曲の内容を咀嚼するといった困難な作業や、歴史家や考古学者のように時空を超えた場所に自分を置くことが求められているようでもあり、それでは現代人の我々にとって、あまりにハードルが高いのではないか?と腰が引けるかも知れませんが、そんなことは気にしなくても聴いていたらなんだか気持ちがいい。なぜなら、これらの作品は、天与の数学的比例の原理に基づいて、人智を超えた美しさで設計されているのですから。

さて、バッハの晩年には啓蒙思想の嵐がヨーロッパを襲います。啓蒙「くらいものをひらく」とは実に巧い翻訳だと思います。原義は「光を当てる」(Enlightenment)、見えなかったものを見えるようにするということ。この啓蒙思想時代に、音楽は個人の感情に光をあて、感情を表現するものに変わってきました。目に見えない象徴的なもの、を扱う学問のひとつであった音楽が、身近に目に見えるものを扱う表現手法に変容していったとも言えそうです。ただ、明るくなってしまうと、失われたものもあるのかもしれません。

現代のアートギャラリーは、もちろん全て啓蒙思想後の美術の流れの中にあります。作家の自己表現としてのアートが一般化した今、制作の背景を知っていたり作者との共通体験を持っていたりする場合は作品を見て大いに感動することもありますが、作者自身や作品の背景を知らない場合にはその作品をどう受取れば良いのか窮する場合も多々あります。私的な感覚としては、今は現代美術が袋小路に入り新しい時代に向かって胎動が始まっている時期だと思っています。バロック期の音楽に耳を傾けて、見えないものに目を向けることは、視覚芸術にとってこの時代を突破するひとつの契機になるのではないでしょうか。
(おおの こう・20181019)

ときの忘れもの・拾遺 第9回ギャラリーコンサート
「武久源造コンサート」のご案内

日時:2018年11月24日(土)15:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:武久源造
プロデュース:大野幸
今回は午後3時開演です。
ちょうど近くの六義園の紅葉のライトアップの時期です。
*要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

武久源造さんからのメッセージ

今回お持ちする楽器は、チェンバロです。チェンバロはイタリア語ですが、英語でハープシコード、フランス語ではクラヴサン、ドイツ語ではフリューゲルなどと呼ばれ、要するに金属弦を鳥の羽軸ではじいて発音し、木製の共鳴箱によって響きを増幅する鍵盤楽器です。つまり鉱物、動物、植物の自然界の三大要素が出あって、チェンバロの音は産まれるのです。

チェンバロはペルシャのサントゥールなどを起源とし、古くから、少なくとも15世紀以前からヨーロッパ中で愛奏されていましたが、17世紀に至って、数学的にも、美術的にも完成されたデザインに達したと言われます。この時代には著名な画家がチェンバロの蓋や響板に絵を描いたりすることもしばしばで、ルーベンスの作などが現存しています。

私のチェンバロは、1728年にクリスティアン・ツェルというハンブルクの名工が創った楽器を元に、1993年に、私のアメリカの友人、フロリダ在住の製作家フィリップ・タイアーが製作した物です。従ってもう25年も、私が弾き続けてきたチェンバロということになります。このタイプは、おそらく、バッハも弾いていた可能性が大いにあります。(バッハがいったいどんな楽器を弾いていたのかということは、実は、あまり良く分かっていないのです。)25年間、絶えず弾いていると、さすがに、楽器もこなれてきて、今は、大変素晴らしい響きです。

このチェンバロを使って、今回は、バッハの先輩にあたるフランスとドイツの大作曲家二人を登場させます。バッハはこの二人の作品から直接多くを学びました。これらの作曲家はバロック時代の住人で、この時代には大野さんが指摘しておられるように、音楽は未だ理数系の学問領域に含まれていました。

ところで17世紀の芸術的大事件と言えば、それはなんといっても演劇と文学の爆発でした。無論音楽もこの影響を受け、明確なストーリー性が聴いて分かることが求められたのです。言い換えれば、聴き手の心のスクリーンに、生き生きとしたドラマが映し出されることが、この時代の音楽の真骨頂でした。ただし、ドラマといっても、現代のように個人の感情がメインになるような物ではなく、あくまでも代表的な人間による象徴的な行動がテーマとして選ばれました。つまり、簡単に言えば、万人の心に訴えるようなテーマが好まれたということです。

さて本日のプログラムの最初は、フランソワ・クープランです。クープランは音の細密画と言えるような描写的作品を数多く残しました。その中から本日は、秋に因んだ「恋ヤツレ」、「田園詩」、「収穫祭の踊り」の3曲。そして、少し大きな作品である「フランスのフォリア、または、ドミノ」を聴いてください。ドミノというのは、仮面舞踏会でかぶるための変装用の帽子のことです。ここでは12種類の様々なドミノが登場し、洒脱なドラマを展開します。

このクープランは実に優雅で繊細な音楽を作曲しましたが、彼本人はというと、太り気味の、ちょっと熊を連想させるようなたたずまいを持った人であったようです。そのクープラン氏その人を描いた曲を、同時代のフォルクレという作曲家が書いていますので、次にそれを演奏します。その題名はずばり、「クープラン」。

本日の後半では、バッハのライプツィヒにおける前任者で会ったヨーハン・クーナウの聖書ソナタを聴いてください。クーナウはオールラウンドの作曲家である上に、法学、ギリシャ語、ラテン語、ヘブライ語をも収め、文筆家としても辣腕をふるった大変な教養人でした。その点、職人気質のバッハとはある意味対照的な人物でした。このクーナウの最も有名な作品が6曲の聖書ソナタです。これは、旧約聖書の有名なエピソードを六つ取り上げ、それを鍵盤楽器一つでもって、劇的に表現しようとする意欲作です。本日はその第1番、「ダヴィデとゴリアトの戦い」を聴いてください。このお話は、第1サムエル記の17章に書かれている物で、後にイスラエルの歴史の中でも最も有名な王となるダヴィデが、初めて登場してくる所です。これは、ペリシテ人の巨大な戦士ゴリアトを少年ダヴィデが打ち負かす、実に、胸のすくような場面なのですが、これをクーナウは音型や音の身ぶりなどを使って、実に巧みに描写しています。クーナウは楽譜の中に状況説明の言葉を書き込んでおりますので、私も演奏しながら、適宜説明を加えたいと思います。

さて、ヨーロッパの音楽は、この後18世紀に入って、激動の変化の時代を迎えます。それについては、また次回をお楽しみに。
(たけひさ げんぞう)

■武久 源造 Genzoh Takehisa
武久源造
1957年生まれ。1984年東京芸術大学大学院音楽研究科修了。以後、国内外で活発に演奏活動を行う。チェンバロ、ピアノ、オルガンを中心に各種鍵盤楽器を駆使して中世から現代まで幅広いジャンルにわたり様々なレパートリーを持つ。また、作曲、編曲作品を発表し好評を得ている。
91年よりプロデュースも含め30数作品のCDをALM RECORDSよりリリース。中でも「鍵盤音楽の領域」(Vol.1〜9)、チェンバロによる「ゴールトベルク変奏曲」、「J.S.バッハオルガン作品集 Vol.1」、オルガン作品集「最愛のイエスよ」、ほか多数の作品が、「レコード芸術」誌の特選盤となる快挙を成し遂げている。著書「新しい人は新しい音楽をする」(アルク出版企画・2002年)。1998〜2010年3月フェリス女学院大学音楽学部及び同大学院講師。


■大野 幸 Ko OONO
20160130_oono
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。


●本日のお勧め作品は小野隆生です。
ono_vermeer小野隆生 Takao ONO
《剽窃断片図 (フェルメール)》
1976年
油彩
イメージサイズ: 33.0x24.3cm
フレームサイズ:49.5x40.4cm
サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●本日28日(日)と明日29日(月)は休廊です。

◆ときの忘れものは「Art Taipei 2018」に出展しています。
taipei18ロゴ会期=2018年10月26日[金]〜10月29日[月]
会場:Taipei World Trade Center Hall One
ときの忘れものブース:S11
公式サイト:http://2018.art-taipei.com/
出品作家:葉栗剛野口琢郎木原千春作元朋子倉俣史朗安藤忠雄磯崎新光嶋裕介ル・コルビュジエ


●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊です。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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第8回ギャラリーコンサート「武久源造コンサート」9月12日(水)

ときの忘れもの・拾遺 第8回ギャラリーコンサートに寄せて 

大野 幸


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エジプトの砂漠(写真:大野幸)

今回から3回の予定で、鍵盤奏者/作曲家の武久源造さんが登場します。武久さんには「映像喚起的な曲」というテーマをお伝えし選曲していただきました。アートギャラリーで行われるコンサートに相応しく、視覚と聴覚を横断するようなプログラムが構成されています。

武久さんは、バッハやブクステフーデなどバロック時代の鍵盤曲の名手として知られていますが、今回は、使用するスクエアピアノの製作年代にあわせ、彼のレパートリーとしては新しく感じる19世紀前半、ロマン派の曲が並んでいます。

17世紀末に発明されたピアノは、時代を経るに従って工夫を重ね、大きな変化を遂げてきました。この変化は、19世紀も後半になって、専用ホールを会場とした興行としてのコンサートという制度ができてからは、大編成のオーケストラにも拮抗しうる独奏楽器として、大音量の出るマッチョなピアノを設計する方向に向かいます。現代のコンサートホールに備えられているグランドピアノはその到達点です。しかし、コンサートホールがまだ一般的でなかった時代のスクエアピアノは、大コンサートホールで演奏されることを想定していません。住宅規模の空間にあって、普段は蓋を閉めて四角いテーブルや作業台、つまり家具のひとつとして用いられ、弾く時だけ蓋を開けて楽器になる、といった使われ方をしていました。日常生活に溶け込んだピアノだったようです。このスクエアピアノの設計にとって、大音量は必ずしも優先事項ではありませんでした。

今回武久さんが演奏するスクエアピアノは、もともと音楽大学の博物館が所蔵していたとのことですが、長年メンテナンスもされぬまま使われていませんでした。武久さんの手元に来てから、彼が自分で弦を張替え、時間をかけて調整した挙句、ようやく息を吹き返して音が鳴るようになったとのことです。その硬質で透明度の高い音を何かに喩えると「水晶を叩いたような音」といえるでしょうか。音量も音質も現代のピアノとはまるで違う、もはや別の楽器のような印象ですが、シューマンやシューベルトがピアノ曲の創作にあたり前提としていたのは、この水晶のような音だったと思われます。

「ときの忘れもの」の、まさに住宅規模の空間で演奏されるスクエアピアノの音は、2世紀前の音楽家が描いていたイメージを現代に引き寄せて、まだ誰も知らない新しい景色を見せてくれるでしょう。
(おおのこう・20180721)

ときの忘れもの・拾遺 第8回ギャラリーコンサートのご案内
日時:2018年9月12日(水)18:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:武久源造、山川節子
プロデュース:大野幸
*要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com


武久源造さんからのメッセージ

今回使用する楽器は、1830年代にウィーンでSeuffert & Seidler社によって作られたスクェア・ピアノです。それで今回は、ほぼその時代にウィーン周辺で作られた曲をメインにしました。

R.シューマン アラベスク 作品18
これは、シューマンが1839年に創った曲。その前年の1838年からシューマンは、恋人のクララとウィーンに逃避行をしておりました。シューマンは病気のために、指が動かなかったり、いろいろと体の不調がありました。後には、とうとう精神を病んでしまうわけです。そのことをうすうす知っていたクララの父親は、絶対に彼らの結婚を認めようとはしませんでした。しかし、シューマンは、なんとしてもクララと結婚する意志を捨てず、それがこの時期の作品の原動力になったようです。折も折、トルコから伝わったアラベスクは、ちょうどこのころからヨーロッパ中で流行し始めます。これをシューマンは史上初めて、音楽に取り入れたわけです。1839年といえば、ちょうど私のスクェア・ピアノが作られた時期で、まさに、ピンポイント的に、このピアノのカラフルな響きの中で、シューマンが作曲した曲だと言えます。

F.シューベルト 即興曲 作品90より2〜4番
この有名な曲集は、シューベルトが1827年に作曲したものですが、その翌年に彼は世を去っています。これもまた、時代的に、今回用いるピアノが作られたのと同じ時期の作品です。このピアノの時にハープのような、また、ツィンバロンのような音色によって、これらの曲の絵画的要素を存分に引き出すことができます。特に第4番は、波打つ水に映る光の織りなす風景を巧みに描写していると言われています。

F.シューベルト 四手連弾のためのファンタジー へ短調 作品103 
共演:山川節子
この曲は、シューベルトがまさに世を去る1828年に書かれた大作です。この中にはバロック的なスタイルも顔を出し、シューベルトが最も得意とした、歌唱的でロマンティックな旋律が全体の基調を成しますが、バッハ風のフーガが最後を締めくくるという壮大な設計です。このピアノの骨太の低音、チェンバロのように倍音の多い高音は、この曲の魅力を大いに引き出してくれます。

なお、本コンサートではこの他に、シューマンがやはり同時期に書いたトロイメライや、メンデルスゾーンの無言歌の中から紬歌など有名な曲も、時間の許す限り弾こうと思っています。

(たけひさげんぞう・20180716)

武久源造
■武久 源造 Genzoh Takehisa [スクエア・ピアノ]
1957年生まれ。1984年東京芸術大学大学院音楽研究科修了。以後、国内外で活発に演奏活動を行う。チェンバロ、ピアノ、オルガンを中心に各種鍵盤楽器を駆使して中世から現代まで幅広いジャンルにわたり様々なレパートリーを持つ。また、作曲、編曲作品を発表し好評を得ている。
91年よりプロデュースも含め30数作品のCDをALM RECORDSよりリリース。中でも「鍵盤音楽の領域」(Vol.1〜9)、チェンバロによる「ゴールトベルク変奏曲」、「J.S.バッハオルガン作品集 Vol.1」、オルガン作品集「最愛のイエスよ」、ほか多数の作品が、「レコード芸術」誌の特選盤となる快挙を成し遂げている。著書「新しい人は新しい音楽をする」(アルク出版企画・2002年)。1998〜2010年3月フェリス女学院大学音楽学部及び同大学院講師。

20160130_oono
■大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。
現在は灼熱のエジプトに滞在中、冒頭の写真は大野さんの仕事場です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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第6回ギャラリーコンサートのご案内〜10月3日(火)

ときの忘れもの・拾遺 第6回ギャラリーコンサートに寄せて

大野 幸

一昨年末、『ときの忘れもの・拾遺』のコンサートシリーズを始めるにあたり、次のように書きました。

「ときの忘れもの」でコンサートをするならば、こぼれた佳作を拾い上げるように、忘れかけていた音楽に関わる力を、もう一度取り戻させてくれるかもしれないという期待を込めた企画にしたいと思いました。少人数、至近距離、は画廊のサイズが与えてくれる好条件!ですが、さらに、知られていない楽曲や作曲家を紹介すること、あまり馴染の無い古いスタイルの楽器を使うこと、画廊所蔵作品とのコラボなど、できることはたくさんありそうです。(20151115)

この度、青山から駒込に移転された「ときの忘れもの」を淡野弓子さんとともに初めて訪ねた時に、「できることはたくさんある」を新しい空間で改めて実感する事が出来ました。コンサートホールのような、隅々まで視線や音が均質に届くために計画された空間ではありません。住宅ならではの、立体的に引き延ばされ、折れ曲がり、音源と聴衆が互いに不可視の位置関係になることも有り得る空間。引越が決まる以前から今回の企画は決まっていましたが、新しい空間はこの企画にうってつけの場所でした。コンクリート打放しの硬質な内壁も、屈曲する複雑な内部空間に音を充たすための必要なしつらえとさえ思えます。

今回の『ときの忘れもの・拾遺』は、坂本長利さんの朗読による『からすたろう』を中心に据え、淡野弓子さんの歌う『日本の童謡と歌曲』を聴く企画です。空間の特性上、演者が見えない場所で音を聴くこともあるでしょうし、無音に耳を澄ますことを強いられるかもしれません。コンサートと呼ぶには少々風変わりではありますが、参集した方々が「ときの忘れもの」のお気に入りの場所に座し、音に集中する時間。そのひとときを共に過ごしたいと願っています。

絵本『からすたろう』の作者八島太郎(1908-1994)は、特高に何度も逮捕投獄され拷問を受けた挙句、1939年3月に日本から脱出しアメリカで生きる決断をします。日本が東京オリンピックの開催権を返上した直後、日独伊三国同盟を結ぶ直前の事です。八島は、軍国主義的な時流に乗る事なく、アメリカでも徹底して反戦を貫き、アメリカの戦時情報局に加わり対日宣伝活動に参加、沖縄では爆撃機から早期の投降を呼びかけるビラを撒きました。八島太郎の生き方に学ぶなどという大それたことはできないまでも、この機会に彼の人生を取り巻いていた歴史に触れることはできるのではないか。

あたらしく与えられたギャラリーで空間的/音響的可能性を求めると同時に、八島太郎と彼の残した作品を困難な時代の警鐘として受けとめる。30年代に状況が酷似している今だからこそ、この場所でできることはたくさんありそうです。
おおのこう 20170830

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●ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第6回 秋<カラス>

日時:2017年10月3日(火)18:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:朗読/坂本長利 やしまたろう『からす たろう』
   メゾ・ソプラノ/淡野弓子  日本の童謡と歌曲
プロデュース:大野幸
*要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

 やしま たろうの文絵になる『からす たろう』という絵本があります。絵も文も内容も人のこころに、静かに、しかしそれは強く、また深く入り込んで来る、なかなかに珍しい作品です。私はこの作品を題材にした、人形と人間が同時に演ずる、それはユニークな舞台をアメリカのミネアポリスで観たのでした。そして自分でもこの絵本を元に小さな舞台を創ってみたくなり、俳優の坂本長利さんに『からす たろう』を朗読していただけないか、とお願いしたのです。嬉しいことに坂本さんも『からす たろう』を大変気に入ってくださり、今回の計画が動き出しました。
 『からす たろう』主人公は「ちび」と呼ばれ、だれからも相手にされず、クラスのしっぽにくっついていた少年です。私は坂本さんの朗読によって伝わる場面の様子や気配に融け込むような日本の歌を歌いたいと思っています。
 1933年2月21日、築地署で惨殺された小林多喜二のデスマスクを鉛筆で描いた 八島太郎、1939年3月、アメリカに向かう貨物船に身を潜め日本に別れを告げた八島太郎について、ここに詳しく書くことは出来ませんが、このような思想的背景も、この『からす たろう』の上演に欠けてはならぬと考えています。(淡野弓子)

■淡野 弓子 Yumiko Tanno [メゾ・ソプラノ]
淡野弓子
東京藝術大学声楽科卒業。旧西ドイツ・ヴェストファーレン州立ヘルフォルト教会音楽大学に留学し、特に声楽、合唱指揮を集中的に学ぶ。1968年東京に「ハインリヒ・シュッツ合唱団・東京」を設立、以来2008年まで40年に亘り指揮者としてシュッツ音楽を始めとするルネサンス、バロックから現代に至る数多くの合唱作品の演奏に携わる。1989年に『シュッツ全作品連続演奏』を開始し2001年に全496曲の演奏を終了。歌い手としては、シュッツ、バッハより現代に至る宗教曲、ドイツ・リート、シェーンベルク《月に憑かれたピエロ》を始めとする現代作品の演奏、新作初演など。
 1991年〜2004年、アグネス・ギーベルの薫陶を受けつつ内外のコンサートで共演。2010年より米国にてエリザベス・マニヨンに師事。メゾ・ソプラノ淡野弓子、ピアノ小林道夫による「歌曲の夕べ」を2013年2月および2015年10月(共演:杉山光太郎・ヴィオラ)を開催。2015年5月には井桁裕子制作の操り人形「ユトロ」との共演により『狂童女の戀』(人形操演:黒谷都/朗読:坂本長利/ピアノ:武久源造)を制作・演奏。著書:『バッハの秘密』平凡社新書。CD:<ハインリヒ・シュッツの音楽> I〜IV [SDG/MP]、メンデルスゾーン<パウロ>[ALCD]ほか。


■大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
20160130_oono
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。

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●本日のお勧めは、クリストです。
Christo_05 (1)クリスト
《荷車のうえのパッケージ》
1963-2004
ドローイング、コラージュ
Image size: 20.3x20.3cm
Frame size: 35.5x35.5cm
Signed

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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大野幸〜第5回ギャラリーコンサートのご案内 2017年5月23日

『ときの忘れもの・拾遺』〜ギャラリーコンサート2017〜 に寄せて

大野 幸

2017年の『ときの忘れもの・拾遺』は、3回にわたり声楽家の淡野弓子(たんの・ゆみこ)さんに登場していただきます。

淡野さんを声楽家と呼ぶのは少し抵抗があります。というのは、声楽家としてのご活躍と同等、あるいはそれ以上に指揮者、合唱指導者、研究者として八面六臂のご活躍をされているからです。しかもその活動領域を年々拡張し、新しいことに次々と挑戦されている。学生時代は前衛芸術運動・フルクサスに参加していたとのこと。

演奏する研究者として『バッハの秘密』(平凡社新書)の近著がある淡野さんは、バッハのみならず、その100年前の大作曲家、ハインリヒ・シュッツ(1585〜1672)演奏/研究の第一人者です。ハインリヒ・シュッツは宗教改革者マルティン・ルターのドイツ語訳聖書を全て音楽にすることをライフワークとしました。シュッツの作品群がその後のドイツ音楽の礎となります。淡野さん率いるハインリヒ・シュッツ合唱団・東京は、シュッツの全曲演奏を成し遂げ、言葉と音楽が分ち難く結びつていること、また言葉が音楽の源泉であることを証ししてくれました。

現在、世界は言葉の力を蔑ろにする動きに満ちています。今年の『ときの忘れもの・拾遺』では、言葉本来の力を再確認したいと願い、畏れつつ淡野さんに白羽の矢を立てました。3回のコンサートは、全て淡野さんの構想によるプログラムです。私の思惑をはるかに超える内容を構んでくださった淡野さんに感謝し、皆様と共に、コンサート当日その場に居合わせたいと切に願うものであります。

「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。 この言は、初めに神と共にあった。万物は言によって成った。成ったもので、言によらずに成ったものは何一つなかった。言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。」(ヨハネ1:1-4)

おおの・こう 20170407)

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●ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第5回 春<夜鶯>

日時:2017年5月23日(火)18:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:メゾ・ソプラノ/淡野弓子 夜鶯の歌〜中世からロマン派へ
   スクエア・ピアノ/武久源造
   リコーダー/淡野太郎
*要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

淡野弓子
■淡野 弓子 Yumiko Tanno [メゾ・ソプラノ]
東京藝術大学声楽科卒業。旧西ドイツ・ヴェストファーレン州立ヘルフォルト教会音楽大学に留学し、特に声楽、合唱指揮を集中的に学ぶ。1968年東京に「ハインリヒ・シュッツ合唱団・東京」を設立、以来2008年まで40年に亘り指揮者としてシュッツ音楽を始めとするルネサンス、バロックから現代に至る数多くの合唱作品の演奏に携わる。1989年に『シュッツ全作品連続演奏』を開始し2001年に全496曲の演奏を終了。歌い手としては、シュッツ、バッハより現代に至る宗教曲、ドイツ・リート、シェーンベルク《月に憑かれたピエロ》を始めとする現代作品の演奏、新作初演など。
 1991年〜2004年、アグネス・ギーベルの薫陶を受けつつ内外のコンサートで共演。2010年より米国にてエリザベス・マニヨンに師事。メゾ・ソプラノ淡野弓子、ピアノ小林道夫による「歌曲の夕べ」を2013年2月および2015年10月(共演:杉山光太郎・ヴィオラ)を開催。2015年5月には井桁裕子制作の操り人形「ユトロ」との共演により『狂童女の戀』(人形操演:黒谷都/朗読:坂本長利/ピアノ:武久源造)を制作・演奏。著書:『バッハの秘密』平凡社新書。CD:<ハインリヒ・シュッツの音楽> I〜IV [SDG/MP]、メンデルスゾーン<パウロ>[ALCD]ほか。

武久源造
■武久 源造 Genzoh Takehisa [スクエア・ピアノ]
1957年生まれ。1984年東京芸術大学大学院音楽研究科修了。以後、国内外で活発に演奏活動を行う。チェンバロ、ピアノ、オルガンを中心に各種鍵盤楽器を駆使して中世から現代まで幅広いジャンルにわたり様々なレパートリーを持つ。また、作曲、編曲作品を発表し好評を得ている。
91年よりプロデュースも含め30数作品のCDをALM RECORDSよりリリース。中でも「鍵盤音楽の領域」(Vol.1〜9)、チェンバロによる「ゴールトベルク変奏曲」、「J.S.バッハオルガン作品集 Vol.1」、オルガン作品集「最愛のイエスよ」、ほか多数の作品が、「レコード芸術」誌の特選盤となる快挙を成し遂げている。著書「新しい人は新しい音楽をする」(アルク出版企画・2002年)。1998〜2010年3月フェリス女学院大学音楽学部及び同大学院講師。

淡野太郎
■淡野 太郎 Taro Tanno [リコーダー]
東京都立芸術高校を経て東京藝術大学卒業。この間、声楽を岡實俊、佐々木正利、嶺貞子、リコーダーを守安功、濱田芳通、ファゴットを山上貴司の諸氏に師事。藝大在学中にはバッハ・カンタータクラブに在籍、小林道夫氏の薫陶を受ける。1997年以降度々渡欧し、声楽及び歌曲解釈等をA.ギーベル、C.モラーヌ、Z.ファンダステーネ、H.Ch.ポルスターの諸氏に師事。2003〜04年ヘアフォルトのヴェストファーレン教会音楽大学に学び、声楽をS.シャマイト、リコーダーをE.シュヴァンダ、合唱指揮をH.ハーケの諸氏に師事。2004〜06年ライプツィヒ・ゲヴァントハウス室内合唱団メンバー。2007年の帰国前後から指揮活動を本格化させ、宗教曲を中心に数多の作品を指揮、好評を博す。現在、ハインリヒ・シュッツ合唱団・東京 常任指揮者。ユビキタス・バッハ、メンデルスゾーン・コーア、各指揮者。指揮の他にもソロやアンサンブルの歌い手として、またリコーダーやドゥルツィアン奏者としても活動。

20160130_oono
■大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。

●今日のお勧め作品は、ウィン・バロック Wynn BULLOCKです。
ウィン・ベロック「森の少女」
ウィン・バロック Wynn BULLOCK
"Child in the forest"
1951 printed later
Gelatin Silver Print
19.2x24.2cm   signed

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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

第4回ギャラリーコンサートは12月22日です

ときの忘れもの・拾遺  
第4回ギャラリーコンサートに寄せて
  

大野 幸

 
4回シリーズ最終回のコンサートで演奏する曲目が決まり、チェリストの富田牧子さんから曲名一覧を送っていただきました。それらをじっと眺めていると、作曲家がどんな思いで曲名を付けているのか気になりはじめます。

バッハ
無伴奏チェロ組曲第2番二短調(BWV1008)

クルターク
メッセージ −クリスチャン・ズッターへの慰め
ピリンスキー・ヤーノシュ「ジェラール・ド・ネルヴァル」
民謡風に
ヴィルハイム・フェレンツを悼んで
バラトンボグラールの思い出〜シェルター・ユディットの誕生日に
ブルム・タマーシュの思い出に
アンチェル・ジェルジュの思い出に
ソクラテスの別れ

バッハの場合、本人がこの曲をどう名付け、どう呼んでいたか寡聞にして知りませんが、1950年になってバッハ作品目録(Bach-Werke-Verzeichnis)という整理番号が付けられて「BWV1008〜 あぁ、チェロのあれね」などとバッハオタクの方々は、訳知り顔で言えるようになっています。歴史に残る作曲家の曲だからこそですが、作曲から200年経ち、単なる記号と数字が曲そのものを喚起させるスイッチとして機能しているのです。

対照的に、我らと同時代のクルターク翁が付ける曲名の、なんと文学的なことでしょうか。曲の核心が名前に込められているように感じ、未知の曲に対する興味をそそられます。大バッハとクルターク翁の曲名に見られる違いは、整理番号を許容する歴史性に対し、生まれたばかりでまだ評価の定まっていない現代曲との違いかもしれません。クルタークはその辺りのことを感じて、新しく生まれる曲の命名に心砕いたのかと思うと、これらの曲がいとおしく感じられます。

ふと町名のことを連想してしまいました。整理番号的住居表示、例えば六本木6丁目。ヒルズと称するあの地域が、かつて材木町や日ケ窪町といった様々な連想を引き起こす響きの町名だったこと、また今は大久保だけに残っている百人町と云う名は、青山や市ヶ谷にも存在したこと。土地の特性や歴史を地名に盛り込んだ先人の思いは、クルターク翁が曲に名前を付けた時の思いと相通じるものがあるように感じます。

『ときの忘れもの』が関わっていらっしゃる現代美術の世界も、作品名には様々なタイプがあります。整理番号的に無機質なものもあれば、説明的なものもある。また、作品名が無いと作品そのものが無意味になるようなもの、あるいは作品内容を補完しているような気合いの入ったタイトルも珍しくありません。現代美術の場合「無題」などという一見素っ気ないものも含め、作者が付けた作品名に何らかの意図を深読みするのも、鑑賞の楽しみの一つです。

未知の曲を聴く演奏会では、曲名から受ける気分をあらかじめ空想し、実際に聴いた印象との合致、あるいはズレを感じるという楽しみ方もあるでしょう。そして喜ばしいことに、私を含むほとんどの方々にとって、今回選ばれたクルタークの曲は未知の曲です。

おおのこう 20161109)

****** 
ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第4回「ガット弦で弾く、J.S.バッハとG.クルタークのチェロの無伴奏作品」

日時:2016年12月22日(木)18時〜19時
会場:ときの忘れもの
出演:富田牧子(チェロ)
プロデュース:大野幸

*要予約=料金:1,000円
予約:メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

20160130_tomita富田牧子(チェロ奏者) Makiko TOMITA, Cellist
東京芸術大学在学中にリサイタルを行い、室内楽奏者として活動を始める。ソロだけでなく室内楽(特に弦楽四重奏)でヨーロッパ各地の音楽祭や講習会に参加。大学院修士課程修了後、ハンガリー・ブダペストに2年間留学、バルトーク弦楽四重奏団チェロ奏者ラースロー・メズー氏に師事。NHK-FM「名曲リサイタル」、ORF(オーストリア放送)の公開録音に出演。2003年以降、ソロリサイタルのほか、弦楽四重奏団メンバーとしての活動を経て、様々な楽器との組み合わせによる「充実した内容の音楽を間近で味わうコンサート」の企画・制作・演奏を続けている。バロックと現代両方の楽器にガット(羊腸)弦を用い、時代に合った奏法を学び直し、より深い音楽と楽器の理解を探求中。自然体の音楽と室内楽の楽しさを広める活動をライフワークとし、国内外で共感の輪が広がりつつある。

20160130_oono大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。


*画廊亭主敬白
毎月25日は小林美香さんのエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」の掲載日なのですが、今回は小林さんが多忙で間に合わず、休載とさせていただきます。
少人数でゆったり音楽を楽しみたいと、建築家の大野幸さんのプロデュースにお願いして始めた「ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート」ですが、おかげさまで第四回を迎えることができます。
第1回3月19日「独奏チェロによるJ.S.バッハと現代の音楽〜ガット(羊腸)弦の音色で〜」(チェロ:富田牧子、歌:木田いずみ)
第2回5月27日「J.S.バッハへ〜チェロとギターによるソロとデュオ」(チェロ:富田牧子、ギター:塩谷牧子)   
第3回9月17日「独奏チェロによるJ.S.バッハと20世紀の音楽」(チェロ:富田牧子)
第4回12月22日「ガット弦で弾く、J.S.バッハとG.クルタークのチェロの無伴奏作品」

プログラムを送ってきた富田さんのメールには、
クリスマスに「別れ」ばかりで楽しくないですが、 「死」「別れ」を味わったうえで誕生があるというのは、バッハらしいかもしれません(笑) バッハの2番は前々回、モダン楽器でプレリュードだけ弾きましたが、今回はバロックで、全曲弾きます。>とありました。
師走の慌しい時期ですが、いろいろあった(ありすぎた)2016年を暖かな気持ちで送る夕べにできたらと思っています。どうぞお早めにご予約ください。

●今日のお勧め作品は、セルジュ・ポリアコフです。
20160605_poliakoff_01_ao-compositionセルジュ・ポリアコフ
「青のコンポジション」
1958年
銅版
25.0×35.0cm
Ed.100  サインあり

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本日の瑛九情報!
瑛九 1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす>展が東京国立近代美術館で始まりました(11月22日〜2017年2月12日)。ときの忘れものでは会期終了まで瑛九情報を毎日発信します。ナショナルミュージアムが瑛九の回顧展を開く、快挙です。担当者の意気込みは近美のtwitterからも伝わってきます。
〜〜〜【美術館】企画者のつぶやき 1
こんにちは!来週11/22(火)から始まる『瑛九1935-1937闇の中で「レアル」をさがす』展の企画者です。これから毎日、瑛九のこと、展覧会のみどころをつぶやきます。よろしくお願いします!(東京国立近代美術館広報のtwitterより)
〜〜〜
う〜む、敵もさるもの、毎日つぶやくらしい(笑)。瑛九ファンの皆さん、そして瑛九を知らなかった皆さん、ときの忘れもののブログとともに、近美のtwitterも毎日チェックしてください。

第3回ギャラリーコンサートは9月17日16時より開催です。

ときの忘れもの・拾遺 第3回ギャラリーコンサートに寄せて

おおのこう・20160810


今もあるのかどうか分かりませんが、小学校や中学校の音楽室には、作曲家達の額装された肖像画が何枚も飾られていました。音楽室に行くと光る目に睨まれて怖い思いをしたものです。クラシック音楽が嫌いになってしまった人は、あの肖像画が原因の一つかもしれません。そのこととは逆に、子供の頃の刷り込みが効果絶大なのでしょう、日本のクラシックコンサートではあの肖像画の作曲家ばかりが演奏される傾向にあるのではないでしょうか。いわゆるバブル期に作られた立派なコンサートホールで興行を成功させようと思えば、誰もが知っている作曲家の曲を選ぶのが当然です。ベートーベン、ブラームス、チャイコフスキー、時々マーラーやブルックナー。編成の大きなオーケストラ曲をプログラムに加えないと、オケの団員が暇になってしまうという事情もあるでしょう。

うろ覚えながら断言出来るのは、クルターク、ヒンデミット、ルトスワフスキ、彼らの肖像画は音楽室には無かったことです。彼ら3人の名前を聞いて、どんな容貌の方々なのか、それぞれどんな曲を作曲したのか直ちに思い起こせる人は、日本では明らかに少数派です。その知られざる作曲家達が、肖像画の代表選手、顔だけは誰でも知っている大バッハの曲に挟まれて、どんな表情を見せてくれるか、乞うご期待。

(ちなみに、ヒンデミットとルトスワフスキは、ズラを取ったバッハに似ていると思いますがどうでしょう。)

****** 
ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第3回「独奏チェロによるJ.S.バッハと20世紀の音楽」

日時:2016年9月17日(土)16時〜17時
会場:ときの忘れもの
出演:富田牧子(チェロ)
プロデュース:大野幸
曲目:
J.S.バッハ (1685-1750) : 無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調 BWV1010 (c.1720)
G.クルターク (1926- ) : 記号(サイン)I, II, III (1987)
P.ヒンデミット (1895-1963) : 無伴奏ソナタ 作品25 (1923)
W.ルトスワフスキ (1913-94) : ザッハー変奏曲 (1975)
(曲目は変更する場合がございます。ご了承ください。)

*要予約=料金:1,000円
予約:メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

20160130_tomita
富田牧子(チェロ奏者) Makiko TOMITA, Cellist
東京芸術大学在学中にリサイタルを行い、室内楽奏者として活動を始める。ソロだけでなく室内楽(特に弦楽四重奏)でヨーロッパ各地の音楽祭や講習会に参加。大学院修士課程修了後、ハンガリー・ブダペストに2年間留学、バルトーク弦楽四重奏団チェロ奏者ラースロー・メズー氏に師事。NHK-FM「名曲リサイタル」、ORF(オーストリア放送)の公開録音に出演。2003年以降、ソロリサイタルのほか、弦楽四重奏団メンバーとしての活動を経て、様々な楽器との組み合わせによる「充実した内容の音楽を間近で味わうコンサート」の企画・制作・演奏を続けている。バロックと現代両方の楽器にガット(羊腸)弦を用い、時代に合った奏法を学び直し、より深い音楽と楽器の理解を探求中。自然体の音楽と室内楽の楽しさを広める活動をライフワークとし、国内外で共感の輪が広がりつつある。

〜〜

20160130_oono
大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。

●今日のお勧めは植田実です。
20160722_ueda_74_hashima_04植田実
「端島複合体」(4)
1974年撮影(2014年プリント)
ゼラチンシルバープリント
26.9×40.4cm
Ed.5 Signed


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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜〜土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。

大野幸「ときの忘れもの・拾遺 第2回ギャラリーコンサート」レポート

「ときの忘れもの・拾遺 
第2回ギャラリーコンサート」レポート

大野幸


極少人数対象の贅沢なコンサート『ときの忘れもの・拾遺』第2回目は、富田牧子+塩谷牧子、二人の牧子による「J.S.バッハへ〜チェロとギターによるソロとデュオ」20世紀以降の優れた曲の数々を、18世紀ドイツ・バッハの曲で挟むサンドイッチのような構成のプログラムでした。バッハの味は現代曲を挟み込んでも揺るぎないものです。実に美味しいサンドイッチを味わうことが出来ました。

バッハの曲が300年後の現代まで色褪せず力を持続し続けているのは、バッハが人間の小さな想像力に頼らずに、徹底して天与の法則に基づいた作曲をしていたからでしょう。天与の法則とは、ピタゴラスの発見以来研究されてきた科学としての音の特性、つまり「2つの音がオクターブの関係にある時、その波長比は1:2」とか「5度の関係の場合、2つの音の波長比は2:3」とかいうアレです。物理学そのものです。時代や環境によってフラフラ変化する人の営みと絶縁し「法則」そのものを基礎に据えているからこそ、バッハの曲はどんな時代や環境にあっても強度を保持している、と云えるのではないでしょうか。

チェロとギターはどちらも人体に近いサイズの楽器で、マン・レイのコラージュを引き合いに出すまでもなく、女性の体をなぞったような形をしています。それを二人の牧子がヒシと抱きしめながら魔術のような指使いで演奏する様は、聴覚だけでなく視覚をも楽しませてくれる、アートギャラリーに相応しい美しさでありました。
おおのこう 20160527

RIMG1069プロデューサーである大野幸さんのご挨拶
本業は建築家です。

20160527プログラム_表紙当日のプログラム

20160527プログラム_中画面をクリックしてください。(当日のプログラムです)

RIMG1075富田牧子さんのチェロソロ


RIMG1091ギタリスト塩谷牧子さんとのデュオ


RIMG1092

*次回第3回コンサートは9月17日(土曜)の予定です。ぜひ早めにカレンダーに予定を入れてご参加ください。

●今日のお勧め作品は瑛九です。
qei_koe瑛九
《声》
1937年頃 フォトコラージュ
23.3×27.7cm

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ときの忘れものの通常業務は平日の火曜〜土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。

大野幸「ときの忘れもの・拾遺 −ギャラリーコンサートに寄せて−」

ときの忘れもの・拾遺
−ギャラリーコンサートに寄せて−

大野 幸


 綿貫令子、不二夫御夫妻の「ときの忘れもの」は、ちいさな画廊です。少人数で−幸運なときは一人きりで−比較的サイズの小さい作品と親密に対面できる青山の隠れ家です。
行列にまみれて前の人の後頭部ばかりが見える大美術館で開かれる企画展とは対照的、大きな器からこぼれた佳作を拾い集めるような、きめ細かい展示が魅力の一つです。
その綿貫御夫妻が、ちいさな画廊でコンサートをしたいと言い出し、旧知の仲とはいえ、あろうことか私にその企画をせよとの仰せがありました。そこで、畑違いではありますが、日頃感じている次のようなことを手掛かりに、何が出来るか考えてみました。
音楽をとりまく環境は大きな変化にさらされています。電子音の氾濫、ネット経由の音源のみで音楽を聴く習慣、曲の編成に相応しくない巨大なホールでの演奏会、そして日常の雑音・騒音の洪水。今の私達は、音を聴く力、音楽が語るメッセージを受け取る力をどこかに置き忘れたまま、音に無感覚になってきているのではないでしょうか。
「ときの忘れもの」でコンサートをするならば、こぼれた佳作を拾い上げるように、忘れかけていた音楽に関わる力を、もう一度取り戻させてくれるかもしれないという期待を込めた企画にしたいと思いました。少人数、至近距離、は画廊のサイズが与えてくれる好条件!ですが、さらに、知られていない楽曲や作曲家を紹介すること、あまり馴染の無い古いスタイルの楽器を使うこと、画廊所蔵作品とのコラボなど、できることはたくさんありそうです。
コンサートは、不定期・年4回ぐらいのペースで継続することを目指しています。幕開けの一年間は、チェリストの富田牧子さんに登場して頂くことになりました。普段音楽や美術に慣れ親しんでいる方々も、その機会が少ない方々も、音楽と美術の側面に当てられた光に浮かぶ新しい輪郭を共に見つけ、共に楽しんでくださいますことを願っています。
(2016 年1 月 おおのこう)

ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第1回「独奏チェロによるJ.S.バッハと現代の音楽〜ガット(羊腸)弦の音色で〜」

日時:2016年3月19日(土)18時〜19時
会場:ときの忘れもの
出演:富田牧子(チェロ)、木田いずみ(歌)
プロデュース:大野幸
曲目:
J.S.バッハ(1685-1750 ): 無伴奏チェロ組曲第1番
クルターク・ジェルジュ (1926- ) : 「ジョン・ケージへのオマージュ〜ためらいがちな言葉」
ジョン・ケージ (1912-1992): 4’33”
尾高惇忠 (1944- ): 「瞑想」
・・・など
(曲目は変更する場合がございます。ご了承ください。)

*要予約=料金:1,000円
予約:メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com


20160130_tomita
富田牧子(チェロ奏者) Makiko TOMITA, Cellist
東京芸術大学在学中にリサイタルを行い、室内楽奏者として活動を始める。ソロだけでなく室内楽(特に弦楽四重奏)でヨーロッパ各地の音楽祭や講習会に参加。大学院修士課程修了後、ハンガリー・ブダペストに2年間留学、バルトーク弦楽四重奏団チェロ奏者ラースロー・メズー氏に師事。NHK-FM「名曲リサイタル」、ORF(オーストリア放送)の公開録音に出演。2003年以降、ソロリサイタルのほか、弦楽四重奏団メンバーとしての活動を経て、様々な楽器との組み合わせによる「充実した内容の音楽を間近で味わうコンサート」の企画・制作・演奏を続けている。バロックと現代両方の楽器にガット(羊腸)弦を用い、時代に合った奏法を学び直し、より深い音楽と楽器の理解を探求中。自然体の音楽と室内楽の楽しさを広める活動をライフワークとし、国内外で共感の輪が広がりつつある。

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20160130_oono
大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。

●今日のお勧めはジョン・ケージです。
ジョン・ケージ「Fontana Mix」(Light Grey)ジョン・ケージ
John CAGE

《Fontana Mix》
1982
シルクスクリーン、紙フィルム4枚組
刷り:岡部徳三
Image size: 50.0x70.0cm
Sheet size: 56.5x76.5cm
Ed.97 signed

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ときの忘れもの
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ギャラリー&編集事務所「ときの忘れもの」は建築家をはじめ近現代の作家の写真、版画、油彩、ドローイング等を扱っています。またオリジナル版画のエディション、美術書・画集・図録等の編集も行なっています。
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