佐藤研吾のエッセイ

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第18回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第18回 ときの忘れものでの展覧会の構想について2

展覧会のテーマを、「囲い込み、お節介」としてみようかと考え始めている。どちらの言葉も少々物々しいものであるが、何かとそんな厄介か否かの境目を渡り歩くような創作に可能性を見たいからである。建築とは、時にはそんなものでもないだろうか、とも考えている。

「囲い込み」とは、近世頃のイギリスにおいてなされた”エンクロージャー“の訳語でもある。それまで開放耕地制であった土地を、領主や地主が牧羊場や農場にするため垣根などで囲い、私有地化した事象を指す。歴史の大局的には、日本でいう前近代における入会地が、近代的土地所有の制度が整備されていく過程(地租改正あたり)で消失していった当時の状況にも近いかもしれない。ただし日本においては、測量と図面作成によって境界が確定されはしたが、その新たな土地所有者が必ずしも垣根や塀などで明確な境界装置を設けた訳ではないし、むしろ入会的な土地の性格を保持するために、その共同体の代表者が名義のみ出して便宜上土地を所有した例もある。何が言いたいのかというと、囲い込んだことで内外の領域がとりあえず設定はされるが、それはある時は難攻不落の牙城となり、ある時は境界を行き来する新たな応答関係を与え、またある時は外から身を守るための隠れミノ、秘匿の箱ともなる。ちなみに、イギリスのエンクロージャー以前も開放耕地と言ってもその土地を扱うことができる人は何がしかの共同体に属し、共同体という一つの境界の中に在ったのであるから、不可視の囲いは存在していた。

イギリスにおいてさらに付言するならば、エンクロージャーという物騒めいたものではなく、庭の文化、英国式庭園における自然の囲い方、その秘匿性からうまれた児童文学(不思議の国のアリス、ピーターラビットなど数知れず)からも学ぶところは多い。庭というのは不思議なものだ。そしてとても難しい。人間が勝手に領域を決め、そこに彼らが好きな植物を配置していく。配置したその植物の性質を読み取り、メカニズムを熟知した上で管理する。それでいて、それら管理された植物たちを眺めながら、日々の生活を共にし、愛で、自然という壮大なダイナミズムの豊かさをその共同生活から感じたりもするのだ。そこでは統御という作為の限界性を楽しんでいるのではないかとも思ったりもする。作為と無為の宥和関係を楽しむ、そんな状況を
「お節介」という言葉で言い表してみる。

12017年、「インド・シャンティニケタンへ同志を募って家を作りに行く」のプロジェクトに際して制作した家具の原型(photo:comuramai)

昨年頃から、何某かを嵌め込み、隠し、包み、囲うハコを制作している。そんなハコは、家具スケールのものであるが、本来雨風をしのぐために生まれた建築、家の原形のようなものでもあるのだ。そして、そんなハコが一人歩きまたは群動するような、家具ないし建築がこちらへ「おーい」と呼びかけてくるような、不可視の応答関係を見てみたいと考えるようになった 。

古来の絵巻に度々登場する、身の回りの日用品からニョッキリ足が生えて動き回る付喪神のように、あるいは里山のイノシシやハクビシンないし、イヌネコといった街場の動物たちのように、人間とともにその場所に佇み、時には人間なんていう存在に構うことなく勝手にやっている「彼ら」「あいつら」というモノを作ってみたい。

そして「彼ら」が何を囲い込むのか。誰にお節介をかけるのか。その相手を彼ら達の間で決めさせてみる。つまりは造形的な連関を持ちつつ、連歌のように形を呼応させていきながら、向き合う、応答し合う彼らの会話のやり取りをでっち上げてみる。ややこしい言い方だが、彼らの眼球の中に写るその像を、別のメディアでまた新たな主体として登場させようというものだ。そのメディアが針穴写真機の仕掛けである。写真機を一つのモノとして制作し、側に立つ別のモノを撮影し、囲い込み、彼らの関係を可視化させてみる。そして現像した写真を縁取り、また新たなモノを出現させてみる。彼らの造形も制作する順序で連関性が生まれるように、彼ら同士の関係も、具体的な応答の順序をここでひとまずは作り出そうというものだ。


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自作したピンホールカメラで写した写真。少々分かりにくいが、家具が写っている。


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二体の家具の原型を向き合わせてみる。
(photo:comuramai)


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ドローイング。ここでは二体の家具原型の関係を、間に別種のオブジェクトを橋のように架け渡して立ち現せようとした。(2017年)


5ときの忘れものでの展覧会の会場構成スケッチ。モノとモノの応答関係、お節介の矢印の方向(双方向の時もある)を考える。


そして、お節介の対象は彼ら、つまり制作される家具の原型たちの他にもいる。自作自演ばかりでは、時にはこちらも白けてしまうからだ。それが今、福島で、時にはインドでも共に活動をしている自分の仲間と呼べる人々が作るモノである。彼らの制作の断片を、断片として切り取り、勝手にこちらでその制作物手足を生やしてみようと思う。詳しくはまた次回。
さとう けんご


■佐藤研吾(さとう けんご)
建築家。1989年神奈川県生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor。同年、東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍、近代初頭の東京の空き地を研究。インドで工作を通して大地と人間生活の関係を探求する「In-Field Studio」を主宰。福島県大玉村で藍の栽培と染めの作業から震災後の里山の風景を描く「歓藍社」所属。2018年より同村地域おこし協力隊着任、村に残る蔵、屋敷の風景の調査と実践に取り組む。
インド、福島、東京を主な拠点とし、それらの場所で得た経験と行動の軌跡を辿り、その展開から次なる建築工作の構想に取り組む。
主なプロジェクトに「インド・シャンティニケタンに同士を募って家を作りに行く」(2018)、「BUoY 北千住アートセンター」(2017)。
今秋11月にときの忘れもので個展を計画中、乞うご期待。
URL: http://korogaro.net/

●本日のお勧め作品は、クリストです。
Christo_19 (2)クリスト
《包まれたタイムズスクエアのビル》
2003
リトグラフ+シルクスクリーン、コラージュ
Image size: 77.5x59.5cm
Frame size: 85.0x67.0cm
H.C.(Ed.20)  Signed
*レゾネNo.187
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆ときの忘れものは特集展示:クリストと関根伸夫を開催します。
魔方陣小のコピー 会期:2018年7月6日[金]―7月13日[金]
※日・月・祝日休廊
柳正彦さんのクリスト新作報告会に合わせ、クリスト関根伸夫の作品をご紹介します。
庭には関根伸夫の石彫作品も展示しています。
一週間と短い会期ですが、ご高覧ください。

クリストとジャンヌ=クロードの最新作「ロンドンのマスタバ」訪問報告会
日時:2018年7月12日(木)18時
講師:柳 正彦
会場:ときの忘れもの(駒込)
地図:https://goo.gl/maps/VezVggChfaR2
参加費:1,000円
要予約:必ず「件名」「お名前」「住所」を明記の上、メールにてご連絡ください。
E-mail. info@tokinowasuremono.com
柳正彦さんがクリストとジャンヌ=クロードの最新作、ロンドンのハイドパーク内の湖に浮かべるマスタバ(ドラム缶の構築物)訪問の報告会を開催します。
kokuchi-003
柳正彦 Masahiko YANAGI
東京都出身。大学卒業後、1981年よりニューヨーク在住。ニュー・スクール・フォー・ソシアル・リサーチ大学院修士課程終了。在学中より、美術・デザイン関係誌への執筆、展覧会企画、コーディネートを行う。1980年代中頃から、クリストとジャンヌ=クロードのスタッフとして「アンブレラ」「包まれたライヒスターク」「ゲート」「オーバー・ザ・リバー」「マスタバ」の準備、実現に深くかかわっている。また二人の日本での展覧会、講演会のコーディネート、メディア対応の窓口も勤めている。2016年秋、水戸芸術館で開催された「クリストとジャンヌ=クロード アンブレラ 日本=アメリカ合衆国 1984-91」も柳さんがスタッフとして尽力されました。


◆ときの忘れものは内間安瑆・内間俊子展を開催します。
会期:2018年7月17日[火]―8月10日[金] ※日・月・祝日休廊
内間安瑆の油彩、版画作品と内間俊子のコラージュ、箱オブジェ作品など合わせて約20点をご覧いただきます。図録も刊行します(800円、送料250円)。
201807_uchima


◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
 ・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
 ・frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
 ・小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
 ・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
 ・杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
 ・光嶋裕介のエッセイ「幻想都市風景の正体」は毎月13日の更新です。
 ・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
 ・鈴木素直のエッセイ「瑛九・鈔」(再録)は毎月17日の更新です。
 ・小林紀晴のエッセイ「TOKYO NETURE PHOTOGRAPHY」は毎月19日の更新です。
 ・柳正彦のエッセイ「アートと本、アートの本、アートな本、の話し」は毎月20日の更新です。
 ・土渕信彦のエッセイ「瀧口修造の本」は毎月23日の更新です。
 ・小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。
 ・スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
 ・植田実のエッセイ「本との関係」は毎月29日の更新です。
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 ・「現代版画センターの記録」は随時更新します。
 ・「瀧口修造の世界」は造形作家としての瀧口の軌跡と作品をテキストや資料によって紹介します。
土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
 ・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」英文版とともに随時更新します。
 ・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は終了しました(時々番外編あり)。
 ・植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」は終了しました。
  エッセイのバックナンバーはコチラです。
 ・大野幸のエッセイ<ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート>は随時更新します。
 ・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
 ・中村茉貴のエッセイ「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
 ・西岡文彦のエッセイ「現代版画センターの景色」は全三回、1月24日、2月14日、3月14日に掲載しました。
 ・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」はしばらく休載します。
 ・清家克久のエッセイ「瀧口修造を求めて」は終了しました。
 ・関根伸夫のエッセイ「〈発想〉について[再録]」は終了しました。
 ・倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」は終了しました。
 ・森本悟郎のエッセイ「その後」は終了しました。
 ・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は終了しました。
 ・森下隆のエッセイ「鎌鼬美術館——秋田県羽後町田代に開館」は終了しました。
 ・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は終了しました。
 ・夜野悠のエッセイ「書斎の漂流物」は終了しました。
 ・普後均のエッセイ「写真という海」は終了しました。
 ・八束はじめ・彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は終了しました。
 ・荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は終了しました。
 ・森下泰輔のエッセイ「戦後・現代美術事件簿」は終了しました。
 ・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイや資料を随時紹介します。
 ・「オノサト・トシノブの世界」は円を描き続けた作家の生涯と作品を関係資料や評論によって紹介します。
 ・「関根伸夫ともの派」はロスアンゼルスで制作を続ける関根伸夫と「もの派」について作品や資料によって紹介します。
今までのバックナンバーの一部はホームページに転載しています。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
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佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第17回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第17回 ときの忘れものでの秋の展覧会の構想について1

最近はもっぱら福島の大玉村に来て、「染め場とカフェ」の計画に取り組んでいる。設計をするのも工事をするのも自分だけではないが、構想をめぐらせてみると、やってみたいことはけっこうあり、他のプロジェクトでは試みる機会すら得られないような面白そうな造作やオブジェクトを各所で実験ができそうである。素材で言えば、コンクリート、木、そして水、布、藍という色といった要素が、既存の民家の古材と取り合いながら互いにせめぎ合う状況を実現させたい。

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「染め場とカフェ」の初期スケッチ。現段階のデザインや作り方はこのスケッチとは大きく異なるものであるが、こんなボヤっとした部材の取り合いの感じはどこかに維持したいとも思っている。「染め場とカフェ」の整備の事情については下記リンクにて。
https://camp-fire.jp/projects/view/68881

そんな素材、部材間の取り合いへの興味が自分にあるのかと改めて思ったのは、ある友人から自分の持つカメラについて指摘を受けてのことであった。自分が普段持っている一眼レンズは35mmの単焦点であるのだが、そんな狭い画角のレンズを持っている建築家はいないだろうと言われた。ほう、確かにこのレンズではとても建物全体や部屋全体を一枚で収めることはできない。いわゆる建築写真の広角のすこしアオリの効いたものであるのは知っていた。けれども、自分はどうもその全体を把握してしまう写真にあまり面白みを感じず、もちろんそんな広角のレンズも時には必要であるので持ってはいるが、普段持ち歩いているのは小さな部分、対象の素材感の細部を見つめることができるようなレンズであった。

そして、そんな持ち歩くカメラのレンズ選定は、どうやら自分の建築のデザインの注力の仕方の反映でもあったことに気づかされた。部材の取り合いや、拮抗の様に注視し、それをある種の建築表現としようという意欲が自分にはあることが多く、一方で”空間”というものはそんな取り合いが組み合わされた幾多の部材によって囲まれることで生まれるのだろう、そんな風に考えていた。それゆえに、インドのシャンティニケタンでの家作りでも家具や木工造作をバラバラと散布し、その遠隔的な造形の連関や、組み合わせをウンウンと考え込んたのを思い出す。いわゆる計画学的な対処療法から始める設計屋との”空間”の作り方は異なるものであり、ときにはそのことを揶揄されたこともあったが、自分では全く卑下することなく開き直ってはいる。

2インド・シャンティニケタンでの家の吹き抜け空間に架構した木工造作の細部。



秋に、ときの忘れもので、展覧会をやらせていただく機会をいただいた。そこではぜひ自分が建築を作る、作ろうとするときに考えていることを直截に表現したいと思っている。ギャラリーの中で、展示するモノ同士が互いに呼び合っているような、群像劇を催したい。群像劇なので、「おーい」と展示のモノたちが叫び合っているようなザワめいた状況を目指したい。
展示するのは、ドローイングと、木工を中心とした家具スケールの立体である。ドローイングは、立体を作るためのある種の見取り図、あるいはヒントでもあれば、ドローイングそれ自体が建ち現れた立体と造形の呼び合いを繰り広げてほしい。家具スケールの立体群においては、上で書いた部品間の取り合いはもちろん、異なる素材部品がそれぞれ異なる制作者によって、異なる履歴をもって作られ、それらのアッセンブル、同居関係を繰り広げてみたい。つまり、共作という平和的な制作プロセスではなく、拮抗状態ともいうべきの、睨めっこのバチバチの現場であろうか。そしてその現場が、確信犯めいた演出で終わらないためにも、立体とその立体に関連するドローイングとの間の齟齬、矛盾の関係が必要であるなと予感している。言葉では、どうやら今はこの程度の言い回ししかできなさそうでもあるので、ともかく実際の制作でそれを表現してみたいと思うのである。

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布と色と木の呼び合いを備えた家具スケールのモノのドローイング。具体的な立体での取り合いと整合させることもあれば、整合を意図せずにその物体間の越境を試みることもある。
さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

*今秋、ときの忘れものでは佐藤研吾さんの個展を開催します。どうぞご期待ください。

●本日のお勧め作品は、平井進です。
平井進
平井進
《作品》
1968年  油彩
73.0×61.0cm
サインあり

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左から)
オノサト・トシノブ《波形の十二分割》
平井進《作品》
瑛九《作品−B(アート作品・青)》
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佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第16回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第16回 コンクリートの表情について考え、そこから岡啓輔さんの蟻鱒鳶ルへ、そして歓藍社「染め場とカフェ」の工事現場へ跳ぶ

シャンティニケタンの家のコンクリート
インド・シャンティニケタンでの家の鉄筋コンクリートの躯体は、その表情を見ればわかるように、型枠の内側にビニールシートが貼られて打設されたものである。型枠が外しやすく、型枠を何度も使える、そして型枠が端材のような規格化されていない小さな部材であっても材間の継ぎ目の処理をあまり気にする必要がない、というのがビニールシートを貼る利点だろうと思う。脱型後のコンクリートの表面には所々ビニールシートが巻き込まれて残ってしまっていたりと雑な部分も残るが、躯体全体のツルっとした表面との掛け合わせがなかなか良かったりもする。少なくともその統御仕切れない表情から新たな工作のアイデアが生まれるものであった。

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シャンティニケタンの家の内部中央にたつ壁柱と梁の取り合い部。ビニールが巻き込まれて取り残されている。

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家の外観。軒下のスラブと梁型は一体で打設された。

東京・三田の蟻鱒鳶ルの表情と窓
こんな表情のコンクリートは実は自分にとってはけっこう馴染み深いものでもあった。それはインドから遠く離れた日本・東京の三田にある、岡啓輔さんが建設を続けている「蟻鱒鳶ル」(ありますとんびる)のコンクリートの表情がそれである。蟻鱒鳶ルではこれまで何度も訪れ岡さんに会い、日々ニョキニョキと成長していく現場を見させてもらっていた。蟻鱒鳶ルでは型枠として杉板を何度も使い、その表面に農業用ビニールを貼って、コンクリートの流動性、重さと圧力を上手く利用した様々な造形の実験が試みられている。日本の通常の建築現場ではベニヤに樹脂を塗ったパネコートとセパレータで型枠を作るが、岡さんは自身の自力建設の段階的施工過程から、そしてベニヤ板の化学物質の健康への影響を考慮して、この独自の型枠のシステムを生み出したそうである。インドの建設現場と、東京の蟻鱒鳶ルの現場は気候も風土も作り手も全く異なる。けれども、それぞれの現場が持つある種の限界性に直面した工夫の結果として、同じ質を帯びた建築表現に至ったことが分かる。そしてどちらも状況を打開し、突き抜けていくような、作ることへの清々しい感覚を持った現場である。

そんな蟻鱒鳶ルの作り方、作るに至った経緯はつい最近出版された岡啓輔さんの著書『バベる! ─自力でビルを建てる男』(筑摩書房)に詳述されている。

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蟻鱒鳶ルと岡啓輔さんを知ったのは、およそ8年前、まだ学部の3年生の頃だったかの夏休みに、高山建築学校に参加したことがきっかけであった。そこで岡啓輔に会った。高山建築学校のことは、石山修武さんがしばしば著書の中や日記を読んで伝説のようなものとして知っていた。インターネット上のある記事を読んで、今も開校していることが分かって驚き、すぐに参加を決めた。先の著書『バベる!』に出てくる言葉であるが、「思考と表現が抜きつ抜かれつ交錯する」(113頁)場を目指す学校であった。そしてまた、参加する人間が学生や学生に毛の生えた若輩者が多いゆえ、どうしても思考が先行し、追い求める表現を実現させるための技術が足りずに辛酸を舐める、失敗が生まれる場でもあった。あるいは失敗を許容する場であり、学校というよりは実験場と呼ぶべき場所だった。
蟻鱒鳶ルでは、そんな高山建築学校がやっている試行錯誤の時間を、夏の10日間から1年に、そして10年へと延ばしに延ばし、独人の問答がコツコツと、けれども気づけば広大な痕跡を残しながら繰り広げてられている。数多の工夫の集積、足し算の建築である。

「僕自身の必然性にもとづいて建築をつくるーー。」(238頁)

本の中で一番印象に残った言葉である。必然性とは果たして何だろうか。なかなか実感が湧かないなと思った。なぜならば実のところいつも私は線を引いたり、作ったりするときにはかなりビクビクとして自信は無いからだ。

しばしば私はインドの人と話すときに、拙い英語でアイデンティティ=Identityあるいはアイデオロジー=Ideologyといったモノを探すこと自体が建築を作ることの根拠であると、しばしば言うことがある。(英語で言おうとすると語彙の少なさゆえに言葉も少しだけだが明快になるから、それは反面教師のように良い瞬間だ。)必然性探し。幸いなことに、結果生まれ出てくる建築は、その探索の軌跡をくまなく残してくれる。

岡さんから先日ある仕事を依頼された。友人でもある大工の青島雄大さんとともに、蟻鱒鳶ルの開口部に窓を作ってくれよというもの。なかなかに手強い仕事である。なぜならば、出来上がるモノの可能性が膨大だからだ。縁あってか、ここずっと取り組んでいる素材は木が多い。しかもコンクリートの堅い躯体がまずあって、そこに木を添え、向かわせることばかりをやっている。異なるモノとモノの接触、あるいはすき間、目地の取り方は、つまるところ他者との対話のあり方、発話の仕方である。蟻鱒鳶ルのように少しだけ人見知りで、けれども話し出すと止まらなそうなコンクリートの相手に、どのような木の窓枠をコンタクトさせるか。こちらの手数も多くなるだろう。勝つか負けるか、はたまた闘いの後にガッチリと肩を組めるのか。蟻鱒鳶ルの開口部は、こちらの造形の可能性を引き出してくれる相手であるのは確かであり、それがとても楽しみである。

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福島・大玉村の「染め場とカフェ」での異種間のコンタクト
建築とはそんな異種間のコンタクトの集積である。そしてそれは材料間の取り合い、増築、改築といった新旧のモノのコンタクトも同じく、その接触の機会があればあるほどに作るモノの姿の可能性は広がっていく。今、福島県の大玉村というところで藍染めを軸にモノづくりを試みるチーム、歓藍社に入りながら、そこで新拠点「染め場とカフェ(仮)」を建設している。歓藍社の活動に参加いただいている地元の方が持っている平屋の民家を改修し、そこを染め工房とカフェに変えようというプロジェクトである。民家の既存材に対して新たな木工造作を加えるにあたって、取り合いの様を果たして、どのように表現するか。また、藍染めという柔らかい作業から生まれるモノと、建築という本来固いモノをどのように同居させ、また溶融させるか。5月6月おそらくは、だいたい毎日その現場に滞在して考え抜くつもりである。

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改修する平屋の民家。ちょうど裏の山と村の田園の狭間に位置した場所にある。材料間の取り合いの具合への興味の傾注と同様、山林と田畑との領域的接触のあり方を考えることもこのプロジェクトでは重要だと思っている。またそれを表現に取り込んでみたい。

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内部のスケッチ。染めた布も内部に用いる予定。その取り合いもまた面白そうな部分である。

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染めた布を組み合わせた木製家具のスケッチ。動かせる程度に重くなってはいけない家具のディテールは力学にある程度忠実でなければならないので材料間の取り合いもマザマザと露出してくる。

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同じく歓藍社で活動する河原信彦のドローイング。この「染め場とカフェ」のプロジェクトの、”交錯する創作“の現場の様子を描き表している。

■この施設整備費を集めるため、クラウドファンディングを行っています。プロジェクトの全体像を詳しくまとめているのでぜひご一読を。
「ほんとの空の色を求めて。福島県大玉村で藍染めの「染め場とカフェ」をつくる!」
https://camp-fire.jp/projects/view/68881

さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

●本日のお勧め作品は、橋本正司です。
20180507_176a橋本正司
《17-6-A》
2017年
ブロンズ
H82.0xW159.0xD70.0cm


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●ときの忘れものは5月3日(木・祝日)〜5月7日(月)まで休廊です。
ブログは年中無休なので、どうぞお楽しみください。

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JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第15回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第15回 インドのプロジェクトについて、石山修武さんとのやりとり

インド・シャンティニケタンの家づくりの仕事をひとまず終えて日本へ帰国した後しばらくして、師である石山修武さんへその報告をした。できあがった写真数枚と掲載された新聞を見せ、若干の説明を言葉で加えただけであるが、石山さんはやはり透かして見ているかのようにその核心を突き止めてくる。その批評を、すぐに自身のウェブサイトに載せていただいている。(2018年4月4日現在、計10の文章)http://setagaya-mura.net/jp/top.html#sato-india-10

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自分がインドで仕事を成したかったのは、何となく今まで生きてきた日本、特に東京という馴染みある環境に、自分自身の思考や手の動き、デザインの幅をはめ込みたくなかったからである。ともすれば、今自分が置かれている環境に順応し、満足してしまう自身の甘さを知っているので、自分を律するためにインドでの仕事を求めた。自分を律するとは、必ずしも自律、インディペンデントな振る舞いではなく、インドという巨大な未知に依っていきながら、むしろ閉塞しがちで固まりがちな自分の思考を解そうとしたのである。

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石山さんが指摘するように、インド・シャンティニケタンで出来上がった家は、現地の鉄筋コンクリートの躯体と日本の木工技術の並存こそが重要である。本来、建築設計は施工全体を監理し、その施工の精度に配慮すべきでもあるが、シャンティニケタンの家では鉄筋コンクリートの躯体工事には私は現地に行かずにメールのやりとりのみの遠隔的な介入にとどまった。もちろん基本的な形状、平面形はあらかじめこちらで設計した図面によって指示を出しているが、特に構造的に必要となる梁と柱の接合部や、壁や床との取り合いなどについては現場の職人あるいは現地のコンストラクターらによる判断によって決められた。現場も小さかったため、いわゆる現場の監理は施主自らがほぼ毎日現場に通って、コンストラクターと協議をしてもいた。つまり、原形は作っていたにせよ、鉄筋コンクリート躯体の部分は私の手からはかなり遠く離れたところで現れ出たのである。なので、その後の日本の木工技術の付加は、鉄筋コンクリートと木造の周到な組み合わせのデザインというよりかは、いわゆるリノベーションのような、鉄筋コンクリートという既に存在する躯体に対して、取り付くように木造を内部に付加した。であるから、現場での判断は欠かすことはできず、木造、内部造作の工事段階では、私は現場に寝泊まりして滞在し、同じく滞在していた日本からのチームメンバーと共にほぼ一からデザインを組み立て直したのであった。

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石山さんからの、「それ故に写真で見る限り、柱、梁が内部に露出して線状の構造が少しばかりうるさい。日本的大工の線状形態の家具や、装置群とハレーションをおこしている。」(「佐藤研吾のインドでの仕事 6」)という指摘は、まさにその通りで、インドの現場が作り上げたあまり洗練されてはいない野暮な鉄筋コンクリートの造形に対して、抽象的で慎ましい表情の木工造作を対置するわけにも行かず、むしろハレーションを起こし、その内部空間においてそれぞれの造形がストラグルしながら応答するようなデザインを選んだ。設計段階においては、大江宏の香川県立文化会館を特に参照し、その鉄筋コンクリートと内部木造の同居からうまれる荘厳さを生み出そうとも試みたが、スケールの違いゆえに、実際の現場ではモノの質感と量感よりかはそれらの外形線、造形のぶつかり合いが強く出すぎてしまった感もあり、それは口惜しい。

4


次に続く、「安藤忠雄のコンクリートは柱、梁の線をすべて壁や床に埋め込んだところが特色である。佐藤研吾はまだそのコンクリートの状態を充分に身体化していない。すでに安藤のボキャブラリーは共有財産であるから、学んだ方が良い。」のアドバイスは粛々と受けて、次の現場で取り組まなければいけないことである。実はちょうど、今回のシャンティニケタンの家を見学に来た別のインドの人から、安藤忠雄のような家を作りたい、と相談を受けていたところであったので、インドの場当たり的な現場をどのように対峙し、洗練と野暮の同居をコントロールしていくか、次の課題である。

やはりインドの仕事をやっているときには、他者をもって自分自身を律しているのがより強く自覚できる。特に建築という具体的なモノを扱いながら、自分の思考を確かめることができるのは何よりも嬉しいことだと改めて実感している。
さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

●本日のお勧め作品は、六角鬼丈です。
20180207_02六角鬼丈
「直景(雑創の森学園)」
2017年 シルクスクリーン
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Sheet size: 56.0x75.0cm
Ed.15 サインあり

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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第14回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第14回 町のはずれの溶接屋さんとの共同について

インド・シャンディニケタンの家の内部をどのように設えるか。デザインを考える上で、まず念頭にあったのが、友人であり、大工を生業にしている青島雄大さんにインドへ来てもらうことだった。「日本の家」を如何にして作るかという課題に対して、「日本からインドへ作りに行く」という現在の出来事自体がその答えを担保し、そこからむしろ日本とインドとの間の距離、隔たりをどのようにデザイン、制作の中に取り組むかの試行錯誤に向かった。
したがって、内部の設えは自ずと木材を使ったものになった。日本から来た大工と、現地で調達する木材とのある種の共同の可能性も、ここでは意図するところである。

最終的にこの家の仕上げはとてもシンプルなものになった。シンプルというのは仕上げ材の種類が少なく、それぞれの取り合いが単純という意味である。モルタル、コンクリート、レンガ、鉄、ガラス、木。ややこしい接続金具はなく、大体はモルタルで埋めつぶすか、木ダボを差し込んだところに打ち込む釘留め程度のものであった。そうした材料を用いて、他にどのような異種の共同があり得るかを考え、また滞在中の限られた工期と予算も鑑みて、鉄を使った制作をしてみようと考えた。インドの多くの住宅はほとんどすべての窓に鉄格子をはめて防犯措置を施している。また門扉や柵も同様の鉄材で作られている。どれも日本のようなプロダクトメーカーがいるわけではなく、大体が町場の小さな溶接屋さんによるほとんどハンドメイドのものだ。

1ラタンパリの溶接屋さん。奥の鉄材の山から適当な材を引っ張り出してくる。だいたい毎日、二三人が働いていて、溶接機は二台あった。


こうした町場の小さなモノづくりによるデザインには大きな可能性を感じている。少なくとも、いきなり現地にやってきた我々と共同してくれるだけの融通さと技術の素朴さ、余白があるからだ。そこで、施主が制作した可動式の囲炉裏机の上に吊り下げる自在鉤と、一つ座机の骨組、そして日本に持ち帰ったある立体を制作してもらった。自在鉤とは囲炉裏の上に鉄鍋を下げて置くための釣り具で、部材間の摩擦を利用して、その高さを上下変えることができる装置である。よく日本の古民家などでは鯉の木彫りがその一部にあてられていたりするが、構造的には要は中心の棒を支える二点の接触部分を作れば良いので、すべて鉄で作ることにした。早速、溶接屋さんにオーダーするために原寸図を画用紙に描く。これはそのまま材を紙にあてて寸法を確認するためだ。また分かりやすいようにアイソメ図も描く。

2現地で描いた原寸図。工場に持って床に置いていたので泥んこである。


現場の家から歩いて10分くらいのところに、ラタンパリ(Ratanpali)という少し栄えた町があり、その裏手に小さな溶接屋さんがいる。そこに原寸図を持って行き、少々話して、使う材を選び、その材に切断する位置を墨付けしていく。墨付けは私がやり、職人さんに鉄オノかグラインダーで切ってもらう。そしてまた私が切った部材を手で持ちながら、部材同士を溶接して留めていく。作るモノの用途はあえて伝えない。基本的には切って付けるだけの作業なので、普段やっている窓の格子とさほど違いも無く、迷いがなければ直ぐ終わった。

3鉄の棒材を切る職人さん。


およそ10日間だろうか、この溶接屋さんへはほとんど毎日向かった。毎日職人さんらの作業を眺めていると、切断時にどんな形状の歪みが出てくるのか、どの部材から組み立てていけば形が決まっていくのか、など感触がつかめてくるものであった。また言葉は通じなくても、アーアー言いながら、切るジェスチャーをしたり、絵を描いたりすればやりとりも全く問題無い。

4自在鉤の部材の一部。ただし、このあといろいろ試行錯誤をしたので3,4回は部材を継ぎ足している。


5とりあえずの完成をみた自在鉤。背後にあるのは床の間。この床の間については次回以降に詳述したい。


さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

誤報でした(お詫び)
埼玉県立近代美術館で開催中の「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が3月4日のNHK日曜美術館のアートシーンで紹介されましたが、再放送はその日の夜にされており、11日(日)にはアートシーンの再放送はありません
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
現代版画センターと「ときの忘れもの」については1月16日のブログをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログをぜひご購入ください(2,200円)。
埼玉チラシメカス600現代版画センターは会員制による共同版元として1974年〜1985年の11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、約280点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。

【担当学芸員によるギャラリー・トーク】
日時:3月10日 (土) 15:00〜15:30
場所:2階展示室
費用:企画展観覧料が必要です。
【トークイベント】ウォーホルの版画ができるまで―現代版画センターの軌跡
日時:3月18日 (日) 14:00〜16:30
第1部:西岡文彦 氏(伝統版画家 多摩美術大学教授)、聞き手:梅津元(当館学芸員)
第2部:石田了一 氏(刷師 石田了一工房主宰)、聞き手:西岡文彦 氏
場所:2階講堂
定員:100名 (当日先着順)/費用:無料
〜〜〜〜
○<『版画の景色 現代版画センターの軌跡』鑑賞。
前回訪れた時は十分な時間を持って見れなかったので、今回はリベンジマッチ。
版画で平面のはずなのに立体的に見えるような作品に心惹かれました。関根伸夫の『おちるリンゴ』、磯崎新の作品とか、あれ、他にもあったけど思い出せない…
関根伸夫さんの『大地の点』って言う鏡面仕上げの板のような作品も面白かった。あれ、端の方に染みのように色がついていて、屋根がないところに置いたら空が写って正に大地の点のようになるんだろうね。
小田襄さんの『銀世界ー夢』は金属の質感が出ていて、でもそこが何かとても美しく見えた。
こういうのも版画なんだねって言うのがこの小田襄さんの作品以外にもたくさんあって、新しいものにいっぱい出会えたのがこの展覧会の収穫です。
磯崎新さんの作品で印象に残ったのが『内部風景』って言うウィトゲンシュタインが共同設計した家、アルトーが収容されてた精神病院、そして磯崎さんの作品なのかな?がプリントしてある3点の連作のようなんですが、3作ともきれいに正方形。
なんでこれなのかわからないけどとても良かった。
そう言えば、一原有徳さんの作品な出会えたのも良かった。前に「日曜美術館」で実験的な版画を作るってことで特集されていて、すごい人がいるなと思っていたけど、実際見た作品は何物にも似てなくてとても不思議な作品でした。
ウォーホルの『KIKU』の連作がとてもウォーホルらしかった←って何言ってるのかわからないように見えるけど、あの写真から少しズレて書かれている線とかが本当にウォーホルなんだよね。
大谷石採掘所跡の地下空間にずらりと並べられたウォーホルの作品は写真で見ても壮観でしたね。
『版画の景色 現代版画センターの軌跡』は埼玉県立近代美術館も相当チカラを入れていたみたいですね。なんせ、チラシを4枚も作っているんですから。
今回は出口前の記録ファイルもじっくり見ることができました。展覧会お知らせの葉書とかあれが来たら本当にワクワクしちゃいますよね
とにかく圧倒的なボリューム、版画の海に溺れてみるのも良いんじゃないでしょうか。期間は3月25日迄とあと3週間あるので、皆さんぜひ行って見てください。

(20180304/タカハシさん のtwitterより) >

○<「版画の景色」展へ。“景色”という通り1枚の版画の中にも線やべたっとのせた色の積層や、かすれなどが見えてくる。版画がこんなに面白いとは。版画素人にはそもそもリトグラフ、シルクスクリーンの用語が分からず基礎知識の説明があるといいなと思ってたらあった、子供用のが(笑)これ先にほしかった
(20180302/雨宮佐藤明日香さんのtwitterより)>

西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。草創期の現代版画センターに参加された西岡さんが3月18日14時半〜トークイベント「ウォーホルの版画ができるまでー現代版画センターの軌跡」に講師として登壇されます。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

スタッフたちが見た「版画の景色」(2月4日ブログ)

毎日新聞2月7日夕刊の美術覧で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が紹介されました。執筆は永田晶子さん、見出しに<「志」追った運動体>とあります。

倉垣光孝さんと浪漫堂のポスター(2月8日ブログ)

嶋吉信さんのエッセイ〜「紙にインクがのっている」その先のこと(2月12日ブログ)

大谷省吾さんのエッセイ〜「版画の景色−現代版画センターの軌跡」はなぜ必見の展覧会なのか(2月16日ブログ)

植田実さんのエッセイ「美術展のおこぼれ 第47回(3月4日ブログ)

塩野哲也さんの編集思考室シオング発行のWEBマガジン[ Colla:J(コラージ)]2018 2月号が展覧会を取材し、87〜95ページにかけて特集しています。

○月刊誌『建築ジャーナル2018年3月号43ページに特集が組まれ、見出しには<運動体としての版画表現 時代を疾走した「現代版画センター」を検証する>とあります。

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。

現代版画センターエディションNo.162 難波田龍起「海の風」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
難波田龍起「海の風」600難波田龍起「海の風」
1977年
銅版(刷り:木村茂)
18.0×27.9cm
Ed.35 サインあり
*現代版画センターエディション
※レゾネNo.53(阿部出版)

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

パンフレット_05
出品作家45名:靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄

ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第7回 愛といのち

日時:2018年4月3日(火)18:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:メゾ・ソプラノ/淡野弓子
   スクエアピアノ/武久源造   
プロデュース:大野幸
*要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。

info@tokinowasuremono.com

◆ときの忘れものは「植田正治写真展ー光と陰の世界ーPart 供を開催します。
201803_UEDA
会場1:ときの忘れもの
2018年3月13日[火]―3月31日[土] 11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊(但し3月25日[日]は開廊)

昨年5月に開催した「Part I」に続き、1970年代〜80年代に制作された大判のカラー作品や新発掘のポラロイド写真など約20点をご覧いただきます。

●書籍・カタログのご案内
表紙植田正治写真展―光と陰の世界―Part II』図録
2018年3月8日刊行
ときの忘れもの 発行
24ページ
B5判変形
図版18点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:800円(税込)※送料別途250円

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植田正治写真展―光と陰の世界―Part I』図録
2017年
ときの忘れもの 発行
36ページ
B5判
図版33点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:北澤敏彦(DIX-HOUSE)
価格:800円(税込)※送料別途250円


◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第13回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第13回 シャンティニケタンから帰ってくる

インド・シャンティニケタンでの家作りから、ようやく日本の東京へ帰ってきた。自分はおよそ2ヶ月あまりの滞在であり、日本からやってきた友人ら(同志)はおよそ1ヶ月の滞在であったが、ゆっくりとした時間の中で毎日なにかしらの大小様々な発見と新しい出会いのある日々であった。もともと、滞在の期間は飛行機の予約で決まっていたので、それまでの間目一杯作業を行った。

日々の記録は当方の些細なウェブサイトでダラリと書き列ねているが、ここでは何回かに渡ってもう少し締まりよく言葉を紡いでいきたい。ちなみに日々の記録、すなわち手記は一応、師である石山修武さんの世田谷村日記を自分なりに咀嚼して続けてみているものであるが、なかなかあの原稿用紙に迷い無くほとんど書き直しなく一気に書き上げるスタイルは自分には難しい。自分はPCの画面の上で、迷いながら、そして断片を継ぎ合わせながら、やっとこさ文章の体を出している。それはPCでの打ち込みが自分の思考の延長にあることも知るからである。もちろん、手描きのスケッチは自分自身の作業の中で欠くことのできないものであるが、文字の並びはどうも手で書くよりも、キーボードで打ち込む方が自分の頭の回転に馴染むらしい。しかしながら、その手記は今現在、1月18日付までで公開は途絶えてしまっていて、それ以降は未完結のメモが残っている。なので、すでに帰国はしてしまっているが、頭だけ再度シャンティニケタンに居残らせて少しずつ書き切っていこうと考えている。手記が未完結である後半の滞在は、予定がほとんど詰まり、またいくらかの気持ちの揺れ動きもあって大変ではあった。けれども特に、その期間に建ち現れた内部の木架構は日本にいては絶対にできない、一回限りの創作であったようにも今は思う。詳しくは次回、あるいは次次回に言葉を見つけることを試みたい。

1滞在終盤に建ち上がった内部の木架構の一部。やはりこれがこの家作りの肝であったようにも思う。


今回の家作りはひとまず一段落したとも思っているが、シャンティニケタンにはまた今年の冬に戻ろうと思っている。今回の滞在で出会い、また時間を共にした大切な人たちが待っているからだ。もちろんこの家作りのプロジェクトには施主がいて、私と日本からの友人(同志)らは建築設計と内部工事を主として関わった。けれども、現場に滞在しての創作、あるいは工作は、施主のための家作りという枠を超えて、私たち自身のための新しい居場所作りでもあったように思う。施主からしてみれば勝手な話である。けれども、施主もそれを望んでいるようだった。

なので、その新たな居場所に帰るために、待っている彼らと再会を果たすために、シャンティニケタンには近々戻りたい。実は、新築の家を作るのは私にとって日本インドを問わず初めての経験であった。けれども、こんなふうに世界に自分の居場所、訪れることのできる場所が増えていくのはとても幸福なことである。建築、家を作ることの本質に触れることができた気がしている。

2深夜、計画について話す施主のNilanjanさんと筆者。様々なギャップはあるが、そのギャップあってこその現場制作であった。


さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

*画廊亭主敬白
今月の原稿、お送りいたします。
送るのがとても遅くなってしまい本当にすみません。
なお、数日前に無事にシャンティニケタンから帰国いたしました。佐藤

というメールが入ったのは5日である(怒)。担当の秋葉の焦るまいことか。写真で見ると(実物はもっと優男)華奢でおとなしそうな青年だが、これが喰わせモンで、いい度胸をしている。昔の亭主だったら即「連載中止!」と叫んだ(と思う)。今はそんな元気はない、「佐藤さんもインドからたいへんだねえ」なんてイイこぶってます(笑)。
数日前から予告していますが、本日7日(水)は都合により、17時で終業します17時以降は閉廊しますので、ご注意ください。
新しく入った作品や、以前からの在庫で未収録の作品などは順次ホームページに掲載しています。担当は最年少スタッフの勝見ですが、時々ミスをする(まあ誰でもしますが)。上智の学生なので勤務は週に二日、従ってミスの訂正は他のスタッフがすることになります。
http://www.tokinowasuremono.com/artist-d95-shimak/shimak03.html
島先生の布に刷った70年代としては画期的な作品でしたが、記載データに誤字が一字あります。さて、なんでしょう。これを勝見がどこかで読めば即訂正するでしょうが、訂正するには惜しい傑作誤字であります。
2月7日21時25分亭主追記〜佐藤さんから遠慮がちに「原稿は5日にお送りしていたつもりでしたが、、ご迷惑をおかけしてしまったようで申し訳ございませんでした」というメールが届きました。ありゃあ、5日に届いていたようで、とんだ濡れ衣でした、佐藤さん勘違いしてごめんなさい。

◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されています。現代版画センターと「ときの忘れもの」についてはコチラをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログはお勧めです。ぜひご購入ください(2,200円)。
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
埼玉チラシウォーホル600現代版画センターは会員制による共同版元として1974年〜1985年までの11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、約300点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。

○<「版画の景色 現代版画センターの軌跡」鑑賞。
圧倒的なボリュームの展示数、夕方に予定入れてたのを少し後悔しましたよ。作品はどれも見応えがありましたが、磯崎新の作品はカッコいいってのをチラホラ聞いて見てみたら、やっぱり良かった。立体を上手く平面に落とし込んだような感じが良いのかな。
今回の企画展、現代版画センターが発行した会報誌なども閲覧可能になっていて、これをじっくり見るとなると本当に時間に余裕が必要になってしまいます。なので来月にもう一度時間に余裕を持って見に行きたいと思います。
しかし版画で美術を広めるなんて熱いムーブメントが昔あったんですね。
追伸:今回の展覧会、たくさんの素敵な作品に出合えて貴重な時間を過ごすことが出来ました。ありがとうございます。
『版画センターニュース』を熟読してしまい、映像資料も見れず後半の鑑賞時間も駆け足気味になったので次回は余裕をもって来館して資料にも目を通したいと思います。

(20180204/タカハシさんのtwitterより)>

○<版画は木版画だけじゃない。リトグラフはまさに印刷。表現のバリエーション、奥深さを知った。これからもっと版画を知ろうと思う。良い企画。図録も凝っている。/「 #版画の景色 現代版画センターの軌跡」展
(20180204/shotaさんのtwitterより)>

○<埼玉近代美術館の『版画の景色』は圧巻でした。
若かりし頃、特に70年代に出会った作品群に、
何とも言えない感慨深いものを感じ、また改めて刺激を受けた次第です。
ありがとうございました。

(20180205/大分県・TTさんからのメールより)

西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。草創期の現代版画センターに参加された西岡さんが3月18日14時半〜トークイベント「ウォーホルの版画ができるまでーー現代版画センターの軌跡」に講師として登壇されます。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

スタッフたちが見た「版画の景色」(2月4日ブログ)

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。

現代版画センターエディションNo.110 菅井汲「シグナルA」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
110_菅井汲《シグナルA》
菅井汲
《シグナルA》
1976年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
Image size: 34.0×14.0cm
Sheet size: 40.5×28.5cm
Ed.150  サインあり

出品作家45名】靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄

パンフレット_05


◆ときの忘れものは「ハ・ミョンウン展」を開催します。
会期=2018年2月9日[金]―2月24日[土] ※日・月・祝日休廊
201802_HA
ロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホルなど誰もが知っている20世紀を代表するポップアートを、再解釈・再構築して自らの作品に昇華させるハ・ミョンウン。近年ではアジア最大のアートフェア「KIAF」に出品するなど活動の場を広げ、今後の活躍が期待される韓国の若手作家です。
ときの忘れものでは2回目となる個展ですが、新作など15点を展示します。 ハ・ミョンウンは会期中数日間、日本に滞在する予定です。
●オープニングのご案内
2月9日(金)17時から、来日するハ・ミョンウンさんを囲んでオープニングを開催します(予約不要)。皆さまお誘いあわせの上、是非ご参加ください。

◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
 ・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
 ・frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
 ・小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
 ・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
 ・杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
 ・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
 ・小林紀晴のエッセイ「TOKYO NETURE PHOTOGRAPHY」は毎月19日の更新です。
 ・清家克久のエッセイ「瀧口修造を求めて」は毎月20日の更新です。
 ・小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。
 ・スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
 ・新連載・西岡文彦のエッセイ「現代版画センターの景色」は全三回、1月24日、2月14日、3月14日に掲載します。
 ・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」はしばらく休載します。
 ・大野幸のエッセイ<ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート>は随時更新します。
 ・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
  同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」と合わせお読みください。
  「本との関係」などのエッセイのバックナンバーはコチラです。
 ・中村茉貴のエッセイ「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
 ・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」英文版とともに随時更新します。
 ・深野一朗のエッセイは随時更新します。
 ・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
 ・関根伸夫のエッセイ「〈発想〉について[再録]」は終了しました。
 ・倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」は終了しました。
 ・森本悟郎のエッセイ「その後」は終了しました。
 ・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は終了しました。
 ・森下隆のエッセイ「鎌鼬美術館——秋田県羽後町田代に開館」は終了しました。
 ・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は終了しました。
 ・夜野悠のエッセイ「書斎の漂流物」は終了しました。
 ・普後均のエッセイ「写真という海」は終了しました。
 ・八束はじめ・彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は終了しました。
 ・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は終了しました(時々番外編あり)。
 ・荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は終了しました。
 ・森下泰輔のエッセイ「戦後・現代美術事件簿」は終了しました。
 ・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイや資料を随時紹介します。
 ・「オノサト・トシノブの世界」は円を描き続けた作家の生涯と作品を関係資料や評論によって紹介します。
 ・「瀧口修造の世界」は造形作家としての瀧口の軌跡と作品をテキストや資料によって紹介します。
土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
 ・「関根伸夫ともの派」はロスアンゼルスで制作を続ける関根伸夫と「もの派」について作品や資料によって紹介します。
 ・「現代版画センターの記録」は随時更新します。
今までのバックナンバーの一部はホームページに転載しています。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第12回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第12回 木工作とレンガ積みについて

昨年の12月は、初旬に日本を発ち、インド東部のシャンティニケタン、ネパール、インド西部のバローダ、そして再びシャンティニケタンへと、いささかの移動が多かった。特に石山修武さんらと共に動いたネパールでは、ほぼずっとオフロードの山道をジープで疾走していたのでけっこう疲れた。ネパールの旅の詳細は石山さんがどこかに今後書かれると思うので、今回はその他のインドでの時間について書こうと思う。

12月9日から11日まで、まず西ベンガル州のシャンティニケタンに行ってきた。現在進行中の家の建設を進めるためである。建設が始まってから、初めての現場であったが、すでにコンクリート+レンガ積みの主要躯体は出来上がっている。さらに施主はオリジナルの家具を置いて部屋の設えを始めている。たった3日であったが、現場を確認し、施主と話し合いを重ねて、今後日本からやってくる面々(このプロジェクトのタイトルでは「同志」と称している)と作るモノを伝え、またいくつかの家具を整理し直した。また、出入りしている大工および他の職人らの作業を実見し、特に現地の木材の扱い方に関して今後の課題も見えてきた。したがって、デザインは目下再検討しているところである。

1現場の内部の様子(2017年12月10日撮影)。まだ未完成である。これから木造架構、造作、および木製家具を制作していく。


2施主渾身の台所。日本から持ち込んだ調理器具含め、とてもうまくまとめられている。


3地元の大工さんが玄関扉を作っているところを見せてもらう。使用している木材はとても硬く、細かな仕口を施している。表面はプレーナーとグラインダーで仕上げていた。


その後、ネパールに移動して一週間ほど滞在。そして22日、再びインドに戻り、今度はグジャラート州のバローダに向かった。自分が所属してもいるVadodara Design Academyで開催されているワークショップ「Buildathon2017」に参加するためである。特に、会期中レクチャーをする機会をもらったので、ここ一年間の活動を彼らに報告するためでもあった。今年の1月から3月までバローダに滞在して以来の彼らとの再会である。

彼らとのワークショップでは、工作ということに関して毎回新たな発見がある。今回は特にレンガの積み方について勉強させてもらった。インドあるいは欧米の建築家は皆おそらく必須であろうレンガ積みの知識について、日本では残念ながらなかなかない。その一端を今回得ることができたのはとても良かった。

4壁の開口部の実験。レンガ自体は規格化されているが、その配置においては「遊び」が多い。一方で開口上部のマグサの造形などはかなり構造的な要請に忠実でもある。


545度の出隅の確認。


6コルゲートシートを支保工としたアーチ制作。


けれども改めて、日本とインド、あるいはそれぞれの国での建築教育の差異を痛感する。自分はインドで設計製図のクラスを持つことがあるが、そこで何を教えるべきか、あるいはどのような学ぶ機会を作るべきかを定めることは難しい。インドの建築については取り巻く社会的背景も含めて自分はほとんど無知に等しい。だが一方で、無知ゆえに、その建築あるいは教育の現場を見た時には物足りなさを感じる部分もある。したがって、つまるところ、自分はある種の無駄にならない「無い物ねだり」を、その土地の現場に接ぎ木してみるしかないのだ。

バローダのワークショップの後、再びシャンティニケタンに戻って、いよいよ現地の木工に対峙することになる。まずは木材市場に行く予定になっているので、その前に一度自分の造形を作っておくつもりである。
さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

●本日のお勧め作品は、石山修武です。
20180107_174石山修武
《巨大な廃墟の山々を背に又歩き出す、そして、今、再び。何ともしぶとい足たちよ》
2016年
銅版
イメージサイズ: 15.0x15.0cm
シートサイズ: 26.0x25.3cm
Ed. 5
サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆ときの忘れものは「Arata ISOZAKI × Shiro KURAMATA: In the ruins」を開催します。
会期=2018年1月9日[火]―1月27日[土] ※日・月・祝日休廊
磯崎新のポスト・モダン(モダニズム)ムーブメント最盛期の代表作「つくばセンタービル」(1983年)に焦点を当て、磯崎の版画作品〈TSUKUBA〉や旧・筑波第一ホテルで使用されていた倉俣史朗デザインの家具をご覧いただきます。他にも倉俣史朗のアクリルオブジェ、磯崎デザインの椅子なども出品します。
磯崎が設計し1983年に竣工した「つくばセンタービル」には、「筑波第一ホテル」が入り、客室の内装を倉俣史朗が担当しました。しかし客室で実際に使用されたオリジナル家具は悲しい運命を辿ります。
1990年代のバブル経済の崩壊により、経営母体であった株式会社第一ホテルが2000年5月会社更生法の適用を申請し倒産。その後、株式会社ホテルオークラグループとして経営が変わったものの、ホテル客室及びカフェなどに大規模な改修が行われ、貴重な倉俣史朗デザインによるインテリアが失われてしまったのです。今回出品する「ライティングデスク」と「鏡」はそのような事情の中で危うく破棄を免れた稀少作品です。

◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されます。
会期:2018年1月16日(火)〜3月25日(日)
会員制による共同版元として1974年に創立した現代版画センターは1985年までの11年間に約80作家、700点のエディションを世に送り出し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、上映会、講演会、パネルディスカッション等を頻繁に開きました。今回の展覧会では45作家、約300点の作品と、機関誌・カタログ等の資料によりその全軌跡を辿ります。同館の広報誌の記事もお読みください。
パンフレット_01


●書籍のご案内
版画掌誌第2号
版画掌誌第2号
オリジナル版画入り美術誌
2000年/ときの忘れもの 発行
特集1/磯崎新
特集2/山名文夫
B4判変形(32.0×26.0cm) シルクスクリーン刷り
A版:限定35部/価格:120,000円(税別 版画6点入り)  
B版:限定100部/価格:35,000円(税別 版画2点入り)


TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別) *送料250円


安藤忠雄の奇跡安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言
2017年11月
日経アーキテクチュア(編)
B5判、352ページ
価格:2,700円(税別)  *送料:250円
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。日経アーキテクチュア編集長のコラム<建築家・安藤忠雄氏の言葉の力:第3回>で、出江寛先生、石山修武先生の次に紹介されていますので、お読みください。
ときの忘れもので扱っています。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。


◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18〜24頁にときの忘れものが特集されています。
02駒込外観ときの忘れものの小さな庭に彫刻家の島根紹さんの作品を2018年1月末まで屋外展示しています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第11回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第11回 タゴールと宮沢賢治から建築を考えたい

今月12月8日からインド・コルカタへ向かうことになった。以前より度々、ことあるごとに紹介しているシャンティニケタンでの家作りのプロジェクトのためである。正確には、9日にコルカタに到着し、電車でシャンティニケタンへ向かい、日本からそれなりの道具と土産と他荷物を先方に渡して、家建設の進行状況を確認し、12日に再びコルカタに戻り、そこからネパールのカトマンズへ飛ぶ。カトマンズでは、石山修武さんとボダナート(Bouddhanath)寺院の基壇の上で待ち合わせており、20日頃までネパールに滞在する予定。石山さんは金属造形作家の木本一之さんとすでに先月頃からインドからネパール入りしているそう(詳しくは世田谷村日記を精密に参照いただきたい)。その後、カトマンズから再びインド・コルカタへ戻り、シャンティニケタンへ戻っていよいよ家作りの仕上げにとりかかり、来年1月末まで滞在するつもりである。いま想定している限りでの肝は、内部の吹き抜け部の木造架構の材をいかにして調達するか、あるいは調達が困難な場合には当然複数の材を継ぐことになるがそれをどのような納まりにするか、ということだ。(下の模型写真参照、またはこちらのURL http://korogaro.net/archives/733参照)

1


また、先日このプロジェクトの施主であるNilanjan Bandyopadhyay氏が日本にやってきた。彼はどうやら、九段下にある在日インド大使館で開催された故・我妻和男氏の著作集出版記念会に出席するためであったらしい。Visva-Bharati大学の出版本部長なる肩書きを持っていた。我妻氏は第三文明社から出ているタゴール著作集の訳者の一人でもあり、Visva-Bharati大学の日本語学科で教鞭をとっていた人物である。私もおよそ2年前頃かに、とりあえずシャンティニケタンに行く前にこの全12巻(11巻+別巻)からなるタゴール著作集を買い揃え、いくつかをつまみ読みしていた。いまだ到底読破するには至っていないが、つまみ読みする度にそのタゴールの情熱に満ちたそして清々しい新たな言葉に出会う。詩を普段ほとんど読まない自分にとっては、インドの風景と動物とそれにまみれた人間の生活が、詩の中の言葉から絶え間なく湧き上がってくる、一つの映像として読むことができる。

2Nilanjan Bandyopadhyay氏 @BUoY北千住アートセンター


インドについて知る前(前といっても4-5年前ほどだが)は、なんとなく宮沢賢治の童話をつまみ読みしていたことがあった。東北に行き始めたことだったこともあり、そしてまたあんな童話の世界のような建築を一体どうやったら作ることができるか、なんてことを考えていた。(もちろんいまも考えている)タゴールが訪日した時、宮沢賢治は20歳であった。宮沢賢治はタゴールの詩集を愛読していたとも言われており、やはりタゴールの戯曲や特に彼の絵(第2回目佐藤投稿)と宮沢賢治の物語との間には何か共通する、汎生物的なそして汎宗教的な世界のあり方が感じられるのである。
そしてタゴールが取り組んだシャンティニケタン・シュリニケタンでの学校創設と農村復興の活動と、宮沢賢治の岩手の地元・花巻で生まれた農民芸術論、あるいは羅須地人協会の試みは、まるで両者息を合わせたかのように同じ理想と実践を掲げていたように思える。日本の岡倉天心とタゴールのような直接的な交友は、宮沢賢治とタゴールの間にはなかったが、彼らの理想に向かおうとするそれぞれの創造的実践は現代の私たちはより複合的に捉えてみる必要があるだろう。彼らの実践からおよそ1世紀が経ったいまでも、大地の上には人間が生き、植物が、そして動物が生活を営んでいることは何も変わりはないからである。また一方で、インド・シャンティニケタンと、日本の東北の間で何が違うのか、つまりそれぞれでいかにして同じ志、動機を持って異なるものを作ることができるか、取り組んでみたいと思っている。
さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

●今日のお勧め作品は、マイケル・グレイブスです。
20171207_graves_sakuhin7_84_1マイケル・グレイブス
「作品 7・84/1」
1984年
木版
30.3×24.0cm
Ed.150 サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆マイアミ速報
少し前にホテルに戻りました。午前1時過ぎです。22時にフェアが終わった後みんなで食事に行き、タクシーを呼んでもらったんですが待てど暮らせど来ない!何度も電話してもらって、後5分後5分と、、、結局50分くらい待ち、こんな時刻になりました。タクシー問題どうにかせねばです。
ともあれ、初日にこんなに気持ち良く売れて、気分がいいです!
追伸
クレジットカード端末で色々と問題があり、クレジットカード処理ができる方法を提案してもらっていて、新澤さんが四苦八苦しています。新澤さんもヘトヘトなので、この件に関しては私が帰国したらきちんと報告しますので、少しお待ちください。その他、新澤さんがやらなければならないことが色々とあるのですが、それも少しお待ちください。

(12月6日15:28着マイアミより 番頭オダチのメール)>
Art Miami_2017_LOGO_dates_600
会期:2017年12月5日[火]〜10日[日]
ブースナンバー:A428
ART MIAMI 2017が始まり吉報がはいりました。若いスタッフたちが初挑戦でがんばっているようです。


◆埼玉県立近代美術館の広報紙 ZOCALO の12月-1月号が発行され、次回の企画展「版画の景色 現代版画センターの軌跡」が特集されています。館内で無料配布しているほか、HPからもご覧いただけます。

◆ときの忘れものは「WARHOL―underground america」を開催します。
会期=2017年12月12日[火]―12月28日[木] ※日・月・祝日休廊
201712_WARHOL

1960年代を風靡したアングラという言葉は、「アンダーグラウンドシネマ」という映画の動向を指す言葉として使われ始めました。ハリウッドの商業映画とはまったく異なる映像美を目指したジョナス・メカスアンディ・ウォーホルの映画をいちはやく日本に紹介したのが映画評論家の金坂健二でした。金坂は自身映像作家でもあり、また多くの写真作品も残しました。没後、忘れられつつある金坂ですが、彼の撮影したウォーホルのポートレートを展示するともに、著書や写真集で金坂の疾走した60〜70年代を回顧します。
会期中毎日15時よりメカス映画「this side of paradise」を上映します
1960年代末から70年代始め、暗殺された大統領の未亡人ジャッキー・ケネディがモントークのウォーホルの別荘を借り、メカスに子供たちの家庭教師に頼む。週末にはウォーホルやピーター・ビアードが加わり、皆で過ごした夏の日々、ある時間、ある断片が作品には切り取られています。60〜70年代のアメリカを象徴する映像作品です。(予約不要、料金500円はメカスさんのNYフィルム・アーカイブスに送金します)。

●書籍のご案内
版画掌誌5号表紙600
版画掌誌第5号
オリジナル版画入り美術誌
ときの忘れもの 発行
特集1/ジョナス・メカス
特集2/日和崎尊夫
B4判変形(32.0×26.0cm) シルクスクリーン刷り
A版ーA : 限定15部 価格:120,000円(税別) 
A版ーB : 限定20部 価格:120,000円(税別)
B版 : 限定35部 価格:70,000円(税別)


TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別) *送料250円
*『瀧口修造展 I』及び『瀧口修造展 II』図録も好評発売中です。


安藤忠雄の奇跡安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言
2017年11月
日経アーキテクチュア(編)
B5判、352ページ
価格:2,700円(税別) *送料:250円
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。
ときの忘れもので扱っています。

国立新美術館で開催中の「安藤忠雄展―挑戦―」は20万人を突破、会期も残り僅かです(12月18日[月]まで)。
展覧会については「植田実のエッセイ」と「光嶋裕介のエッセイ」を、「番頭おだちのオープニング・レポート」と合わせ読みください。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。


●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
 ・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
 ・frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
 ・小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
 ・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
 ・杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
 ・関根伸夫のエッセイ「〈発想〉について[再録]」は毎月12日の更新です。
 ・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
 ・倉方俊輔のエッセイ「『悪』のコルビュジエ」は毎月17日の更新です。
 ・小林紀晴のエッセイ「山の記憶」は毎月19日の更新です。
 ・清家克久のエッセイ「瀧口修造を求めて」は毎月20日の更新です。
 ・小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。
 ・スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
 ・森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
 ・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」はしばらく休載します。
 ・大野幸のエッセイ<ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート>は随時更新します。
 ・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
  同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」と合わせお読みください。
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 ・中村茉貴のエッセイ「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
 ・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」英文版とともに随時更新します。
 ・深野一朗のエッセイは随時更新します。
 ・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
 ・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は終了しました。
 ・森下隆のエッセイ「鎌鼬美術館——秋田県羽後町田代に開館」は終了しました。
 ・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は終了しました。
 ・夜野悠のエッセイ「書斎の漂流物」は終了しました。
 ・普後均のエッセイ「写真という海」は終了しました。
 ・八束はじめ・彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は終了しました。
 ・光嶋裕介のエッセイ「和紙に挑む」は終了しました。
 ・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は終了しました(時々番外編あり)。
 ・荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は終了しました。
 ・森下泰輔のエッセイ「戦後・現代美術事件簿」は終了しました。
 ・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイや資料を随時紹介します。
 ・「オノサト・トシノブの世界」は円を描き続けた作家の生涯と作品を関係資料や評論によって紹介します。
 ・「瀧口修造の世界」は造形作家としての瀧口の軌跡と作品をテキストや資料によって紹介します。
土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
 ・「関根伸夫ともの派」はロスアンゼルスで制作を続ける関根伸夫と「もの派」について作品や資料によって紹介します。
 ・「現代版画センターの記録」は随時更新します。
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佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第10回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第10回 インドの先住民Santal-Kheladangaの人々の家づくりについて-その3



今年の3月にインド・シャンティニケタン郊外のケラダンガ村で開校したIn-Field Studioの動画を最近になってようやく公開した。なぜ半年も出し渋っていたのかと自分自身をいぶかしむが、結果この半年にも様々な思考の展開もあったのではとも思うのでそう悪いものでもないかもしれない。今回はこのあたりをもう一度ぐるぐると振り返ってみたい。


秋に差し掛かったころから、ほとんど毎日北千住のアートセンターBUoYという現場の改修工事を大工の青島雄大さんと一緒にやっており、そこではいくらか木工についての知見というか工夫の知恵を得ることができた。彼とは来月の12月末ころからインド・シャンティニケタンの家の建設も一緒にやってもらうことをお願いしているので、短期間ではあるがある連続した共同創作の径をたどることになる。日本からは鑿や鉋などの手道具だけを持って行き、インドの家の中である軸組の架構を組み立てる予定。先方には使用する材木の手配をすでにお願いしているが、実際にどんな材料がくるかは正直分からない。万が一、ヤシの木などのような恐ろしく硬い材が取り揃えられでもすれば、もちろん想定していた納まりの変更が必要となるだろうし、デザイン自体も変えざるをえない。けれども、現場でデザインを変えられる、洗練させられるということはとても重要なことだとも感じる。その作業は決して即興ではない。現場に身を置いて、四六時中一つのディテールデザインに注力するわけであるから、一般の事務所内設計の作業よりはよほど考えている。そして何よりも、隣の職人さん作業を見て、彼の墨付けや材料取りや刻みの入れ方などが自分の頭に叩き込まれるので、おのずと描いた図面の横にはその作り手の姿が想像され、デザインもごくごく自然に生まれてくる。そして部分の詳細は、昼メシや休憩などの合間にサッと相談して決めていく。
昨今の建築設計と施工とが乖離した状況はなかなかに厄介な問題だなと思う。設計、実施設計、そして監理業務を別の人間が行い、申請の手間などからもあらかじめ作成された図面通りに工事を進めざるをえない状況に変わっていっている。設計と工事との距離が離れてしまえばしまうほどに、互いの作業を想像する力が欠乏し、その無関心さ自体が実物となって表れ出てしまう。
それは明らかに建築の質に関わる問題だ。


インドでは、そんな機械的分業が未徹底な状況がまだ在る。というよりもそれぞれの職分が流動的で、現場でも職人らは皆多能工として基礎工事から仕上げまで一貫して関わり続ける。特殊な専門技術を要さない作り方で建築が作られ、プリミティブの原則が貫徹されているとも言える。行政への申請もA4の用紙数枚程度で、詳細の多くは現場が始まってから決定され、外壁工事が終わった今でも、まだ未決定の部分は多そうなので、来月ようやく現場入りができる我々からすればとてもありがたい。そんな環境があるインドがとても羨ましい。そんな魅力も感じてインドに積極的に入り込もうとしている。

1シャンティニケタンで建設している家の内部、未だ仕上げ工事はしていないが、この荒さをどう残すかが一番の肝かとも思っている。


2庭からの外観。窓廻りの金物の納まりというか、埋め込みの潔さと、使用する材料の少なさは、内部での木造架構でも応用したい。


そんなプリミティブの探求を、3月のIn-Field Studioで試みようとしていた。期間中に行った村内での建設作業は、地元のSantal族の村出身で大工を生業としているケレンという名の青年に、資材の調達や材料取りを教えてもらいながら行った。彼はガタリと現地で呼ばれる曲がった短刀のような刃物とを使ってなんでも切っていたし、持ち手を反対にしてトンカチとしても使いこなしていた。ちなみにガタリはほとんど同じ形のものが床に固定されて、キッチンでの包丁にもなっている。

3


4竹の調達と材料取りを行う大工ケレン。


5ガタリという刃物。


先に紹介した動画の中では、参加者も含めて、材料と道具の単純さから生まれ出る様々な工夫が随所に記録されている。それらをどのように組み立てていくのか(論理的にも、ものづくりにおいても)が今後の課題である。
さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

●今日のお勧め作品は、安藤忠雄です。
20171107_andou_17_TateModern安藤忠雄
「テート・モダン」
2002年
シルクスクリーン
イメージサイズ:33.0x86.0cm
シートサイズ:75.0x106.0cm
Ed.15
サインあり


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●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第9回

佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」

第9回 インドの先住民Santal-Kheladangaの人々の家づくりについて-脱線2の2

シャンティニケタンの家作りのプロジェクトについて、続きを書きたい。前回、インドと日本の間を巡る自分自身の旅を、一つの物語として建築の中に架構する、などという回りくどい宣言をしてその稿を括ってしまった。現代の、様々なモノが容易にそして手早く出力・生産できてしまう世界において、建築は明らかに作られる速度が遅い。工場生産、部材の規格化が著しい日本でも、小さな住宅が建てられるのに半年程度はかかる。インドだと、雨季に工事が滞ったり、予期せぬ停滞やレンガを積み上げていくような人力仕事が主なので、1年弱あるいはそれ以上はかかる。ウェブコンテンツやアプリ開発に比べれば牛歩の如くである。さらには設計自体は建設工事が始まる前からやっているので、正味2年くらいはその住宅の何かしらを考え続けているのだ。

自分自身の移動の径を一つの物語として建築の中に架構するとは、つまるところ、そんな長らく続く建設過程における幾つかの要所となる段階で、自分がインドにいるべきか、日本にいるべきかを定めながら、プロジェクトを進めていこうということである。さらには、日本から自分に限らず、友人の大工・青島雄大、そして幾人かの作り手と共にシャンティニケタンの現場へ向かい、工事を協働する。建築はあくまでも実体のものであるから、”日本の家”なるものをインドで作って見ようとする時点で、何らかの折衷、あるいは並存の状況が現れることは間違いない。ならば変に取り繕うのではなく、両者が並存する舞台をいくらかの時間的尺度を備えて設えてみようとしている。

舞台と言っても、強引な乱闘、異種格闘技戦を現場で催す訳ではない。建築の主構造は、当初は木造を目指したが、現地の職方の技術の素朴さと気候の湿潤さゆえの虫の被害を考慮して、鉄筋コンクリート+レンガ積造とし、現地の職工が担当する。今年の4月から工事はスタートしたが、根切り、基礎工事、コンクリート打設、レンガ壁積、など絶え間なく現場から私のところに写真が送られてきている。現場ではコンストラクション・マネジャーが一人いるようだが、細かな指示や日本にいる私との調整はなんと施主自身がやっている。2017年10月現在、すでに二階の壁までは現場でできており、若干の工事の遅れはあるが年末までには躯体は完成しそうな見込みである。

171004-1現場写真。コンクリートの構造とレンガ壁はほぼ同時に施工される。レンガ壁に穴を空けておき、そこに竹を差し込んで内部足場とする。分業化されていない多能工が融通の利く材料を使って取り組む場当たり的な現場であるからこのようなアクロバットができるのだろう。空いた壁の穴はいくつかそのまま残す予定である。背後に施主がコツコツと手入れする鬱蒼とした庭が見える。


171004-2現場写真。梁の型枠を支える支保工は竹とレンガブロック。


171004-3現場写真。2階はね出し部分の床の型枠。


171004-4現場写真。1階内部空間。現場では仕上げられるところから適宜工事を進めている。


日本からやってくる我々は、コンクリート+レンガの躯体が出来上がったあとの内部空間で木造と木工家具を主とした工事を行う。日本からいくらかの木材と部材を持って大工と共にインド現地に入り、階段の手すりを含む吹き抜け空間での立体架構を基点として内部全体に造作を布置する。野物と化粧という関係を少し広く捕まえるとすれば、インドの職工が作るコンクリート+レンガが野物となり、日本の大工を始めとする我々の内部造作が化粧となる。野物というものは本来化粧に隠され、また化粧は下地としての野物に従う(化粧に合わせて野物が設えられるとも言えるが)ものであるが、ここでは化粧である内部造作それ自体がシステムを持って自律し、必ずしも野物を隠さない。内外の序列と工事の順序を持ちながら両者の並存、力関係をどう調停するかが肝だろうと考えている。

先月、東京・北千住のある建設現場の中の一画を占拠して、このシャンティニケタンの家作りの準備をしていた。北千住の現場も、比較的規模の大きいコンクリート躯体に対して新たに木工造作を挿入する形であり、その現場での作業から様々なアイデアが飛び火してくる。主に家具についてのアイデアを思いついたので、早速、大工・青島にそのプロトタイプを制作してもらった。それぞれの家具が備えている赤い小さなキューブは、日本から道具、あるいはお土産まがいのエレメントを詰めてインドに持っていくための梱包箱である。そしていくつかの脚部材も日本から持ち込み、ノックダウン方式で、その箱と共に現地で家具として組み立てようとしている。現地ではさらにインドの溶接工に依頼して鉄部材を用意してもらい、木工家具とドッキングさせる。異なる作業段階の時間的な偏差と、長距離移動の手間が、このプロジェクト自体の根拠となっており、また創作表現の基軸を担う。私自身がインドにこだわって滞在と移動を続けているのは、そんな表現の可能性を確かめたいからである。

171004-5木工家具のスケッチ。箱のアイデアは実は以前からあった。持ち運びができまた収納ともなる、長持のようなスケールと、江戸時代の裁縫台の構成が組み合わさったような形をイメージしていた。それが日本-インド間を移動するという前提を備えて工作プロセスを含めて変容した。


171004-6木工家具の制作。制作は青島雄大。


171004-7プロトタイプとして制作した木工家具。足元の十字部分に鉄のフレームを現地で差し込み座面を付加する。背後にあるのは住宅の内部模型。


さとう けんご

■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
URL: http://korogaro.net/

◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

●今日のお勧め作品は、石山修武です。
20171007_01710石山修武
《やがて廃墟を歩く足も出現した》
2016年  銅版
イメージサイズ: 15.0x15.0cm
シートサイズ: 26.0x25.3cm
Ed. 5  サインあり
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◆ときの忘れものは「安藤忠雄展 ドローイングと版画」を開催しています。
会期:2017年9月26日[火]〜10月21日[土] 11:00〜18:00 ※日・月・祝日休廊
201709_ando

●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]〜12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。カタログと展示はまったく違う構成になっており、建築展として必見の展覧会です。

イベントのご案内
10月31日(火)16時〜「細江英公写真展」オープニング
細江先生を囲んでのレセプションはどなたでも参加できます。

11月8日(水)18時飯沢耕太郎ギャラリートーク<細江英公の世界(仮)
*要予約:参加費1,000円

11月16日(木)18時より 植田実・今村創平ギャラリートーク<ポンピドーセンター・メス「ジャパン・ネス 1945年以降の日本における建築と都市」展をめぐって(仮)>
*要予約:参加費1,000円
ギャラリートークへの参加希望は、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。twitterやfacebookのメッセージでは受け付けておりません。当方からの「予約受付」の返信を以ってご予約完了となりますので、返信が無い場合は恐れ入りますがご連絡ください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com
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ギャラリー&編集事務所「ときの忘れもの」は建築家をはじめ近現代の作家の写真、版画、油彩、ドローイング等を扱っています。またオリジナル版画のエディション、美術書・画集・図録等の編集も行なっています。
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