小国貴司のエッセイ

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第18回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第18回

先日、山本夏彦が創刊した伝説の雑誌『室内』のバックナンバーを大量に仕入れてきました。
年代は80年代〜90年代が中心の「少し古いかな?」というあたりです。

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創刊間もない『木工界』(のちに『室内』に改題)は古書としての価値がありますが、80年代くらいのバックナンバーは、まさにいま読むためのもの。
「建築家が工夫した小さい家」「トイレ変身」「ディスコ」(!)「名作椅子のある室内」・・・なんていう特集タイトルだけ眺めてもおもしろいですが、中身も最高です。

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「図面が読めるわけではないし・・・」「専門的過ぎて・・・」なんて思うあなた!
編集しているのは、当代きってのコラムニストでもあったあの山本夏彦。読み物部分がおもしろくないわけがありません。
吉村昭、武田百合子などの作家から建築関係者、歴史家など様々な職業の方々が、コラムを寄せる「百家争鳴」のコーナーは、これだけで一冊の本にしてもいいくらいの面白さ。書き手の気合と、いい具合に肩の力が抜けた感じが、矛盾せず程よいバランスで、いつ読んでも面白い。

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また個人的には、話題のショップ関連や流通小売の方々のインタビューが載っている号が多いのも〇。こういうのは一冊の本にまとまらないので、雑誌で読むしかないんですよね。
食い入るように読んだのは、「西友『無印良品』物語」や「増田通二 パルコが始めるインテリアビル」など。今では当たり前のようなショップや企画が、同時代的にどういう記事になって、どのように捉えられていたのか、その臨場感を味わうのが少し古めの雑誌を読む醍醐味でもあります。

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しかし、今回たくさんのバックナンバーにざっと目を通して、あらためて『室内』の完成度の高さに目を見張りました。硬軟あわせもつ素晴らしい雑誌だったんだなぁ。

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そんな雑誌が、なんと100円!十年後に手に入れようと思ったら、この何倍もしてしまうかもしれません。買うなら今です!
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●今日のお勧めは笹島喜平です。
NC554笹島喜平不動明王No68笹島喜平
《不動明王No68》
1976年
木版・拓刷り(作家自摺り)
61.0x46.0cm
Ed.30(9/30)  Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


ただいま冬季休廊中
ときの忘れものは1月7日(月)までは冬季休廊中、新年の営業は1月8日(火)からです。
ブログは年中無休、毎日更新していますのでお楽しみください。

ときの忘れものは「第27回瑛九展 」を開催します。
会期:2019年1月8日[火]―1月26日[土] 11:00-19:00※日・月・祝日休廊
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ときの忘れものは3月末開催のアートバーゼル香港2019に「瑛九展」で初出展することになりました。
香港に作品を持って行く前に、ギャラリーで出品作品を公開いたします。
瑛九がさまざまな技法で試みた「光の絵画」への志向が最後に行き着いたのが点描で画面全体を埋め尽くす独自の抽象絵画でした。本展では輝くばかりの100号の油彩大作《海の原型》(1958年)など代表作ほか、カメラを使わず印画紙に直接光を当ててデッサンする「フォトデッサン(フォトグラム)」など1930年代最初期から最晩年までの作品をご覧いただきます。

●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18〜24頁>に特集されています。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第17回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第17回

11月22日(木)に開催された「一日だけの須賀敦子展」
おかげさまでたくさんの方々にご来場いただきました。「一日だけではもったいない。」が当日の合言葉のように会場で交わされ、私も何度もそう思いました。が、この「一日だけ」という言葉にかかる熱量の高さは、須賀敦子の文章が没後20年経っても愛され続けるその熱量とリンクしているようで、案外に相応しかったのかもしれない、とも、終わった今は思います。
今回はご来場いただけなかった方に、少しでも当日の雰囲気を感じていただこうと、レポート(のようなもの)を書かせていただきます。

まず、この展示のきっかけは大竹昭子さんからの一通のメールでした。
今年は多くの須賀敦子さんの著作や関連書の刊行が相次ぎ、その中の一冊に大竹さんの『須賀敦子の旅路』(文春文庫)があります。
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もともとの単行本はミラノ・ヴェネツィア・ローマと3冊だった本書、それが1冊にまとまり、さらに須賀敦子がイタリアから帰国して後、最初の著作が刊行されるまでの空白を埋めるような「東京編」も書下ろされています。当店でも発売からずっと販売を続けていますが、この本がご縁で大竹さんから「ときの忘れものさんで、須賀敦子のトークを植田実さんと開催できれば」とお声掛けいただきました。それが9月のこと。そしてここからアイデアはどんどん広がっていきます。瞬く間に、『須賀敦子の旅路』文庫化の際に収録できなかった写真を展示する写真展、イベント関連書籍の販売、そして、須賀敦子がイタリアでセレクトし翻訳・出版した『Narratori giapponesi moderni』(現代日本文学選、1965)をはじめ、須賀のはじめて活字になり、コルシア書店から出版された作品『こうちゃん』の展示など、日に日に充実のイベントになっていきました。これはすべて大竹さんの企画力と実行力の賜物。

そしていよいよ迎えた展示当日、11時と同時にお客様にご来場いただきスタートとなりました!

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展示されている大竹昭子さんの写真作品。「私の作品がコンクリートにこんなに映えるなんて。」と驚かれていた大竹さん。後のトークイベントの中でも「須賀が描くヴェネツィアは夏ではなく、冬。」と仰っていましたが、本当にどの作品も、写した風景を見ながらも、実は自分や人間の内側を深く見つめていくような作品で、長い時間鑑賞していても見飽きない作品でした。

本の販売は、こんな感じ。

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お店で売っていただけでは売れないような、たくさんの須賀敦子作品が買われていきました。個人的には大好きな須賀敦子訳タブッキが売れたのもうれしい。
今回の展示の目玉のひとつ、イタリアで須賀が編纂・翻訳出版した『現代日本文学選』には、漱石鷗外鏡花などの文豪の作品のほか、現在の日本でも人気の高い庄野潤三も含まれ、そして同じく須賀が翻訳したイタリア語版『夕べの雲』は、なんと原著刊行の翌年。須賀敦子の庄野潤三への強い思い入れと愛情が伝わってきます。
「庄野は、郊外に住む人々の単調な生活を事細かに描く。おそらく世界のどこにでもある、記録にも残らない暮らしである。」(『文藝別冊 須賀敦子の本棚』より)
この須賀の解説はそのまま、須賀敦子が生涯をかけてその「記録にも残らない暮らし」を記録し、そして未だに私たちの心を掴んでいる文学性を解説しているようにも思えます。

そして、夜の植田実さんとのトークイベント。

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須賀敦子を、気になっていても読むタイミングがつかめない作家だった、と言う植田さん。須賀のミラノ大聖堂の描写などの建築の描写は、それだけでは建造物としての構造は想像できないけれど、その建築の本質を一挙に鷲づかみするような作家だと語る植田さんと大竹さんとのトークは、須賀敦子ファンにとっては新しい視点を、まだこれからの読者には、最良の案内になるようなものでした。
大竹さんの『須賀敦子の旅路』文庫化に際し、いかに細かく手を入れられているかという植田さんの指摘から、文庫化の裏話が飛び出したり、須賀敦子と編集者の付き合い、大竹さんの須賀敦子の思い出話など、あっという間の90分。立ち見がでるほどの満席のイベントで、「一日だけの須賀敦子展」は締めくくられました。

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イベント終了後送られてきた大竹さんからのメールに
<短期間に準備したにしてはとても盛り上がり、本についてできることはまだまだあるなと感じ入りました。
本好きはいるけれど、本に関連する環境が衰弱しているのですね。
どこに行ったら好きな本に出会えるのか、本の歓びをどのように分かちあったらいいのか分からないのです。
今回は、ふたつの場所が結びつくことで魅力が倍加し、駒込でなにか起きているという熱が人々に伝わったような気がします。
これからもアタマをやわらかくしていろいろと知恵を絞りましょう!>
とありました。まさにその通り。もちろん営業しているお店の日常があってこそ、ではありますが、ふたつの場所がつながることで、これまで見えていなかったお客様の期待や情熱が見えてくる。この経験は素晴らしいものでした。本はまだまだ売れると感じたイベント。
また大竹さんや植田さん、須賀敦子のような素晴らしい書き手の本がまだたくさんある、ということに改めて気付かされたイベントでもありました。
「一日だけの須賀敦子展」は終わったのですが、「一日だけの」本を売るお祭りは、まだまだ続きそうです。
大竹昭子さん、植田実さん、ときの忘れものスタッフの皆さん、そしてご来場いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

*画廊亭主敬白
主催:BOOKS青いカバ(小国貴司)、会場提供:ときの忘れもの、講師:大竹昭子・植田実、主役はもちろん須賀敦子さん。
私たち画廊の役割(というようなものがあるとすれば)は多くの人たちが触れ合う場(空間)を提供することだと思っています。
一年前には面識もなかった小国さんと大竹先生、植田先生の三人がときの忘れものの縁で結びつき、今回の素敵な「一日」をつくってくれました。
参加してくださったお客様にも心より御礼申し上げます。
twitterでのつぶやきをご紹介します。
ネリさん 20181123
物理的にも精神的にもさまざまな制約のもとに編み直され磨かれた『須賀敦子の旅路』。「自分がいいと思ったものを感覚的にがっとつかんで肉体化するまで突き詰める」須賀さんのテキストの強さと深さ。大竹さんと植田さんの対話に引き込まれた1時間でした。

古書ほうろうさん 20181122
おはようございます。開店してます。ギャラリーときの忘れものでの「一日だけの須賀敦子展」を観てから出勤。大竹昭子さんが撮影したイタリアの写真が、ギャラリーのモダンな建築によく映え、須賀敦子の義父が働いていた信号所やナタリア・ギンズブルグ邸など、とくに引き込まれました。本日19時まで!

ミランフ洋書店 / Kazumi UNOさん 20181123
トークは出遅れて参加できませんでしたが、夕方〈ときの忘れもの〉に行ってきました。ずっとそこにあったかのように写真が空間になじんでいてとてもよかった。日記の入った文庫の全集の巻と、大竹さんの『須賀敦子の旅路』(文春文庫)を購入。楽しみに少しずつ読もう。
昨日、ときの忘れもので大竹昭子さんに「須賀敦子さんとはどうやって出会いましたか」と聞かれ、あの頃は本屋さんに定期的に立ち寄っては新刊や話題の本の棚を見ていたなと思いだしました。見ることで、思いがけない本につながっていった。そんな発見がある本屋さんには、今も足を運びたくなります。

萬福亭さん 20181122
駒込の「ギャラリーときの忘れもの」へ寄り道してから出勤しました。
大竹昭子さんの写真がすばらしいです。 あぁここだ って。須賀敦子の文章の中で見た景色が懐かしく、胸が熱くなる。 今日だけ、夜7時まで。

須山実さん 20181123
BOOKS青いカバ主催のトークイベント「没後20年 須賀敦子の文学を読み直す」(大竹昭子×植田実)を聴く。ピラネージやピエロ・デラ・フランチェスカからの語りが鮮やかで惹きこまれる。会場の「ときの忘れもの」のコンクリート打ちっぱなしの壁に大竹さんの写真が映えていた。講演録が出ないかな。

sunny sideさん  20181122
ときの忘れもの、すごく素敵なギャラリーでした。
大竹昭子さんの視点、須賀敦子さんが生きた場所。住んでいたムジェッロ街のアパートのドアの向こうに須賀さんを探したくなる時間旅行。
〜〜〜〜

●今日のお勧め作品は、オノサト・トシノブです。
onosato_198オノサト・トシノブ Toshinobu ONOSATO
《Silk-16》
1968年
シルクスクリーン
Image size: 20.0×20.0cm
Sheet size: 34.0×32.0cm
Ed.150  Signed
*Raisonne No.37
(『ONOSATO オノサトトシノブ版画目録 1958-1989』ART SPACE出版、1989年 )
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆「今週の特集展示:岡本信治郎とオノサト・トシノブ
魔方陣
会期:2018年11月27日(火)〜12月8日(土)
*日曜・月曜・祝日は休廊
日本のポップ・アートの先駆的作家としてユーモラスな形態のなかにニヒルさを込めたシリーズを制作し続けてきた岡本信治郎と、ときの忘れもののメイン作家の一人であるオノサト・トシノブを特集展示しています。


ときの忘れものは「第306回企画◆佐藤研吾展―囲いこみとお節介 」を開催します。
会期:2018年12月13日[木]―12月22日[土] 11:00-19:00 ※会期中無休
306
インド、東京、福島という複数の拠点を往還しながら創作活動に取り組んでいる建築家・佐藤研吾の初個展を開催します。
本展では、自身でデザインし制作した家具としてのハコや、ピンホールカメラ(ハコ)とそれを使って撮影したハコの写真、またハコのドローイングなど、独自の世界観をご覧いただきます。
会期中、作家は毎日在廊予定です。
以下の日程で以下のゲストをお迎えし、ギャラリートークを開催します。
※要予約、参加費1,000円、複数回参加の方は二回目からは500円
12/13(木)13時〜 ゲスト:中島晴矢さん(現代美術家)
12/14(金)18時〜 ゲスト:岸井大輔さん(劇作家)
12/15(土)18時〜 佐藤研吾レクチャー
12/21(金)18時〜 ゲスト:小国貴司さん(Books青いカバ店主)
12/22(土)18時〜 佐藤研吾レクチャー
全5回のギャラリートーク、予約受付を開始しました。メールにてお申し込みください。 info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は通常は休廊ですが、次回企画「佐藤研吾展―囲いこみとお節介」(12月13日[木]―12月22日[土])開催中は無休で開廊しています。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第16回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第16回


10月は新刊・古書ともに魅力的な入荷が相次ぎました。
このブログでご紹介したい本もいくつもあるのですが、あまり多すぎるのも日々のツイッター状態になってしまいますので、今月は新刊書一点に絞ってご紹介!
こちらです。
寺尾紗穂『彗星の孤独』(スタンド・ブックス)

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寺尾紗穂さんは、『原発労働者』(講談社現代新書)や『南洋と私』(リトルモア)などの作品がある優れたノンフィクションの書き手です。大きなうねりの中に翻弄される個人の声を、丁寧に丁寧に拾い上げ、それを寺尾さんの持つ静かで、しかし力強い文章で書き上げる。文章を、ものすごい時間をかけて鍛え上げているように感じるこの「強さ」はどこから来るのだろうか?前々から感じていたこの疑問の、答えのようなエッセイ集が、今回の『彗星の孤独』です。
特に心に残るのは、ゴダールなどのフランス映画の字幕翻訳で知られる父、寺尾次郎さんが亡くなった際に書かれた追悼文「二つの彗星」。
寺尾さんが幼いころから仕事場で暮らす父は、年に数回しか会わない存在でした。彼女にとって「父の不在」は当たり前のもので、「うちはみんなバラバラ」と思って大きくなります。そんな父親が癌と分かり、「いずれパパのことを書かなきゃいけないと思っているから」とインタビューを申し込みます。インタビューの過程と、ホスピスに入る父親の「看取り」の中で、二つの彗星は、段々とその距離を縮めていきます。
またそれと合わせて印象的なのは、冒頭のエッセイ「残照」のこんなシーン。
「私にとって父親は思い入れを持つには遠い人になり過ぎていた。時折CDやビデオテープなんかを送ってきてくれたが、それはちょうど親切な親戚のおじさんから送られてくるような感じだった。寝起きを共にしない、家を出るというのは、つまりそいういうことだ。
しかし最近になって母から聞いた言葉は、大きな衝撃だった。
『パパが仕事場を持ち始めたころ、K(弟)は小さくてよくわからないで、パパが帰る時もニコニコ手を振ってたけど、あんたはいつも目に涙をためてたんだよ』」
この幼い寺尾紗穂さんの心中を思う時、彼女の「あの」どこまでも静かに対象を見つめ書き、しかし、ちっとも冷たくはない力強い文章の秘密に、少し触れられた気がするのです。
ちなみに寺尾次郎さんは字幕翻訳の仕事をする前は、あの伝説のバンド「シュガー・ベイブ」のベーシストでした。そして、寺尾紗穂さんは、音楽の分野でもその才能を輝かせる音楽家でもあります。
当店では、この新刊にあわせて、寺尾さんと伊賀航、あだち麗三郎によるトリオバンド「冬にわかれて」のファーストアルバム「なんにもいらない」も販売中。

     写真2

そして、そして、寺尾さんの選書フェアも都内唯一(今のところ)開催いたします!ぜひご来店の程を。
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●今日のお勧め作品は、ハ・ミョンウンです。
ha_49_mini-14ハ・ミョンウン 河明殷 Ha Myoung-eun
"MINI 3022 series (14)"
2015年
ミクストメディア
30x22x3cm
サインあり

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ときの忘れもの・拾遺 第9回ギャラリーコンサート
武久源造コンサート」のご案内

日時:2018年11月24日(土)15:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:武久源造
プロデュース:大野幸
今回は午後3時開演。ちょうど近くの六義園の紅葉のライトアップの時期です。
*要予約=料金:1,000円(定員に達し次第締切ります)
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊です。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第15回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第15回


理想の話から始めたいと思います。

自分が面白い!と思った本を、自分がつけた価格で売りたい。
面白いと思った価値を価格に反映して、その価格を見たお客様が「たしかにこのくらいの価値だな」と思って買って行ってくださる。
これが、現時点での、自分のお店の理想です。

理想をたまには語らないと、語ることによって「商売=お金を得ること」に傾いた頭をトントンッとして、瓶に詰まった砂が固まるように固めないと、昨今の出版ニュースを賑わせているような不健全なことが起こる気がします。
もちろん事業である以上、お金を稼がないといけません。出版でいうと、部数を伸ばさないといけない。でも、数字というのは恐いもので、追いかけ始めるともうそれしか見えなくなる。いくつもの別の頭で考えないといけない要素が、数字に直結して、数字に置き換えられるもの以外が、目に入らなくなってしまいます。

というわけで、今月は理想を語ろう月間です。

どうしてこんなことを言うのかというと、つまり、とある本が売れないからです。
この本は、きっと自分がつけた価格の裏付けたる価値が伝わっていないからだと思います。
そこで、今回はこの本の価値を、がんばって伝えたいと思います。

こんな本です。

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今から50年弱前に出ていたシリーズ「目で見る 世界の旅」です。
どうでしょうか?
この本、素敵じゃないですか?
どこが素敵かというと、まずは写真と内容。
50年前という絶妙な古さが、もう今では不可能になってしまった旅行へと私たちを誘います。たぶん、この本を読んで実際に「ここに行こう!」と思っても、その風景はないものが多いはず。つまり、本を読むことでしか旅ができないのです。まさしく「目で見る 世界の旅」。
このシリーズ名は、50年経って本当になりました。
次に、時々織り込まれるカットも見逃せない。

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本としての愉しみは、こういう些細なところのイメージで手を抜くかどうかで大きく変わります。いい!

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そして、扉に書かれたイラストマップ。文字の感じも素敵です。
今、奥付を見て気づいたのですが、この本、挿絵・カット・イラストだけで、5人の作家を使っています。ああ、なんて豪華な・・・。
この多様な手の入り方が、本当に豪華な作りの本なのだと思います。

さて、この本、おいくらでしょうか?

気になる方は、ぜひ当店のネットショップをご覧ください・・・。(商売!)
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。


●今日のお勧め作品は、加藤清之です。
kato_02加藤清之 Kiyoyuki KATO
「白磁」
1983年
白磁
14.6x14.6x13.5cm
箱サイズ: 17.3x17.3x17.5cm
サインあり
共箱
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2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第14回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第14回

遊園地はお好きですか?テーマパークではありません!遊・園・地!です!
都電で行くことが出来る遊園地「あらかわ遊園」がリニューアルのため、今年の12月1日から休園するそう。コーヒーカップがあって、観覧車があって、ジェット、とはいってもあまりジェット感がないコースターがあって・・・。リニューアルで遊園地の雰囲気がガラッと変わったりしないか、少し心配しております。
そんな遊園地の花形のひとつは、何と言ってもメリーゴーランドでしょう。

メリーゴーランド好きにはたまらない一冊が入荷しました。

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『FAIRGROUND ART』洋書ですが、メリーゴーランドの美術的側面を歴史とともに解説した本書、建物自体のデザインから、装飾看板、そしてもちろん乗物としての木馬のデザインまで、図版がこれでもかと詰め込まれた一冊です。

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木馬をフランス・ベルギーやフィラデルフィア、コニーアイランドなど分類して解説していたり、「FANTASTIC CREATURES」という分類では、木馬らしからぬ乗物の写真もたくさん。
あいにく書かれている英語の本文が読めず、ぼんやりとしか書かれている内容はわからないのですが、図版を見ているだけでも、「馬」という特権的な乗物を大衆が遊んでいる様子が、戦後はアメコミ風の絵柄やマリリン・モンローのような有名人をキャラクターにしてお客を集めるという形に変わっていき、その時代時代の「欲望」を象徴しているようで面白いです。

今月ご紹介したいもう一冊はデヴィッド・フォスター・ウォレス、阿部重夫訳『これは水です』。

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ウォレスは『システムの箒』(邦題は『ウィトゲンシュタインの箒』)『無限の道化』などを書いたポストモダン小説の旗手でした。しかし、2008年に縊死してしまいます。本書はその悲しい死から三年前、ケニオン・カレッジの卒業式で行われたスピーチを書籍化したもの。卒業式のスピーチは、スティーヴ・ジョブズが日本でも有名ですが、このウォレスのスピーチは、ジョブズを凌いで全米一位に選ばれたものです。
ここで話されているのは、リベラル・アーツ(人を自由にする学問)の大切さです。人間が如何に「初期設定」のままの思考に囚われているか、権力や美や知を追いかけ、退屈、決まりきった日常をそのまま生きているか、そのデフォルトからどう逃れるか、ということです。

「だれだってなにかを崇拝しています。
僕らに唯一できる選択は
なにを崇拝すべきか、だけです。」

ウォレスのその死を思う時、われわれは彼の遺したメッセージをどう受け止めるべきなのでしょうか。
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。


●今日のお勧め作品は、吉田克朗です。
london-11
吉田克朗 Katsuro YOSHIDA 『LONDON II』より「North End Way」
1975年 フォトエッチング アクリルケース入り12点組
シートサイズ:31.0x43.3cm
Ed.20部  各作品に限定番号と作者自筆サイン入り
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
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*画廊亭主敬白
昨夕は社員に早退させました。
ネットで報じられる台風の被害映像に驚いています。
亡くなられた方のご家族、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。ここ数ヶ月、風の強さ、集中的な豪雨、かつてなかった激しい気候の変化。今までの常識は通じないと覚悟して立ち向かわなければならないのでしょう。恐ろしい時代です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第13回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第13回

何度も何度も「暑い」と言った七月が終わり、恐らく何度も何度も「暑い」と言うであろう八月がはじまりました。先日、街路樹もなく、日影もない道路を10分ほど歩くという苦行を行ったのですが、さすがに危険だと思いました。水を持ち歩くのが必須の夏に、とうとうなったのだなぁ、としみじみしました。
そんな暑い夏に読みたい本と言えば、やはり幽霊譚でしょうか?

いい本が入荷しております。

ジョージ・ソーンダーズ、上岡伸雄訳『リンカーンとさまよえる霊魂たち』

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英語圏最大の文学賞のひとつ、ブッカー賞を2017年に受賞した本作、そのニュースと共にあらすじが日本でも伝えられた時、「いますぐ読みたい!」と思ったことを記憶しています。予想以上に早く邦訳が出版され、外国文学ファンにとっては、うれしい夏となりそうです。

ソーンダーズが、南北戦争中のリンカーン大統領が、愛息を亡くし、息子の遺体が安置された墓地を夜な夜な訪れていた、という史実に興味を持ち書き上げた虚実ないまぜのこの小説は、その墓地に集う様々な霊魂(その中には、リンカーンの息子も含まれます)と、その霊魂たちのエピソード、交流、そしてリンカーンとの不思議な「交流」を描く、ポリフォニックな小説です。
幼な妻との初夜を迎えるまさにその日に、天井の梁が落ちてきて亡くなったヴォルマン、同性愛の恋人に裏切られて自殺し、あらゆる感覚器を増幅させたベヴィンズなど、とても魅力的な霊魂たちと共に、現代では誰しもが認める英雄、リンカーン大統領が、南北戦争当時には、誰もが認める優れたリーダーではなかったこと、そんな歴史の事実も描き出され物語を駆動します。そこに描かれるのは、強い大統領ではなく、一人の悩める人間。そして、その悩みは、まさに亡霊たちそれぞれにも、存在するのです。
不思議なのは、この小説のスタイルです。
リンカーン大統領のエピソードを証言した数々の史料を引用する同じ書き方で、霊魂たちのエピソードや、会話が繰り広げられます。

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まるで墓碑銘を読んでいるかのようなこの小説の語られ方は、他の小説では味わえない不思議な読後感を引き起こします。そして、何より、事実と虚構が同じレベルで語られるので、より一層、生者と死者の区分けがあいまいになり、物語に不思議な強度を与えます。それが物語の大団円に近づく時に、どのような効果を引き起こすのか。
思わず涙が出てしまいそうになるこの小説、ぜひ皆様も堪能してみてください。
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。


●今日のお勧め作品は、ジョン・ケージです。
cage_03_Fontana-Mixジョン・ケージ John CAGE
"Fontana Mix(Orange/Tan)"
1982年
シルクスクリーン、紙、フィルム3枚組
56.7x76.5cm
Ed.97 サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

ときの忘れもの・拾遺 第8回ギャラリーコンサートのご案内
日時:2018年9月12日(水)18:00〜
会場:ときの忘れもの
出演:武久源造、山川節子
プロデュース:大野幸
要予約=料金:1,000円
予約:必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れのは8月11日(土)〜20日(月)まで夏季休廊します。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第12回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第12回

ハーラン・エリスンが亡くなりました。
このブログ、いつもは新入荷商品をご紹介しているのですが、今回はエリスンのことを書きたいと思います。
ハーラン・エリスンと言えば(今さら説明するのも何ですが)『世界の中心で愛を叫んだけもの』の作家。邦訳の作品集は、長い間、なぜかこの一冊だけでした。それなのに、SFを少しでもかじった人なら「ああ、エリスンね。」と誰でも知っている作家でした。アイザック・アシモフとの「ケンカ」のようなやり取りも楽しく、SF大会には欠かせない、まさに伝説の作家でした。
「ロボット三原則」で知られるアイザック・アシモフが、初めてエリスンと会った時のやり取りは、有名ですが、「これぞ、エリスン!」という感じがするので、ご紹介します。
(記憶で書いているので、もし細部が違っていたら、ご容赦の程を・・・)
SF大会で、すでに人気者だったアシモフ。彼の元には、もちろん、たくさんのSFファン・SF作家志望者が押し寄せます。ある時のSF大会で、背の低い如何にも利発そうな少年がやってきます。「あなたが、アイザック・アシモフ?」と訊ねる少年に、アシモフは「そうだよ」と答えます。「ほんとうに?ほんとうに、あのアシモフ?」と繰り返し尋ねる少年。きっと私に会えてうれしいのだろう、と思い、「そうだよ、私がアイザック・アシモフだよ。」と愛情たっぷりに答えるアシモフ。しかし、次に少年の放った一言に、アシモフは愕然とします。
少年は、アシモフを下から上まで眺めて一言。「なっちゃねえなぁ!」
これ以来、アシモフとエリスンの長い「ケンカ」は愛情たっぷりに続くのです。
講談社文庫から『世界SF大賞傑作選』というアンソロジーが出ているのですが、これにはエリスンの作品が多数収録されています。そして、必ずアシモフの解説がついています。これを読むだけでも、このアンソロジーのエリスン収録巻、集める価値があります。

さて、幸運なことに、エリスンの作品集は、現在3冊手に入ります。
上述の『世界の中心で愛を叫んだけもの』のほか、『死の鳥』『ヒトラーの描いた薔薇』いずれも早川文庫から出版されています。
1530569589711

エリスンは、悪や敗残者、はぐれ者を描くことが多い作家です。
そして、彼らをとても魅力的に、多面的に描きます。悪を賛美するのではないのですが、それを決して排除しない。むしろ、それを排除し、自分の埒外に置く権威や人間の醜さを描き出します。エリスンの作品で素晴らしいと思う点の一つです。
今回特にご紹介したいのは、「ヒトラーの描いた薔薇」。
主人公は、ある資産家の召使の女性。ある日、その資産家一家が惨殺され、その犯人とされた、唯一の生き残りのこの女性は、リンチにかけられ殺されます。そして、死後、地獄に落とされるのです。ある日、地獄の門が開き、女性は外に出ることができます。向かう先は、真犯人がいる天国。そこで、真犯人と出会い・・・。というお話。
この小説では、最初と最後にヒトラーが印象的に登場します。地獄の門に、ただひたすら薔薇の絵を描く画家として。何も語らず、何も動かず、ただ美しい薔薇の絵を描き続けます。
これをどういう風に読むのか。もちろん、それは読者の自由です。
でも、私は、このヒトラーの姿に、やはり一面では語れない小説の魅力を感じます。画家としての夢を諦めなかったヒトラーの姿に、そのあり得たかもしれないもう一つの歴史を感じてしまいます。ヒトラーの恐ろしい悪行と、それを止めることが出来なかった人類。ヒトラーのやったおぞましい悪は、もちろん全く許されない歴史の事実だとしても、「正義」の側に、それに加担したものはいなかったのだろうか?私は、この小説の主人公の物語を読むことで、「正義」の旗印の恐ろしさを感じてしまうのです。
特に、ヒトラーの描いた絵を見た「権威」が放つ小説のラストシーンの言葉。我々は、こんな言葉を言い放つ「権威」を正義だと思ってはいないだろうか。
「悪」とされるものを、自分の埒外に置いてはいけない、そんな風にエリスンに言われているような気がします。
それにしても、このような形で、悪ではないヒトラーを描くことは(特に欧米圏では)相当の覚悟がいることではないでしょうか。エリスンの本領が発揮された小説だと思います。
まだ未読の方は、ぜひ読んでみてください。
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。


●今日のお勧め作品は、ダグラス・ダーデンです。
Past the present Ten Worksより 1991ダグラス・ダーデン
『Past the present: Ten Works』より
1991年
オフセットリトグラフ
シートサイズ:84.3×59.3cm
Ed.300  サインあり
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●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18〜24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜〜土曜の平日11時〜19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第11回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第11回

突然ですが、サボテンはお好きですか? サボテンを飼ったことがありますか? サボテンって植物なので正しくは「育てる」だと思うのですが、なんとなく「飼う」の方がしっくりくる気がするのは僕だけですか? いや、もはや「飼う」ですらなくて、サボテンと共に「暮らす」、ともに「歩む」でしょうか?
かくいう私は、サボテンを二度ほど枯らしたことがあります。サボテンって意外に難しくて、水をあげすぎてもダメで、もちろんあげないのもダメなんです。気付くと、サボテンの表面の張りが失われて、クタクタになってしまいます。
そんな気難しいサボテンを生涯愛し、まさに共に歩んだ作家、龍膽寺雄。昭和初期に佐藤春夫、谷崎潤一郎などに絶賛され文壇にデビューしたモダニズムの作家です。とある作品をきっかけに当時の文壇とは距離を置き、その小説もなかなか読まれなくなってしまいます。
戦後、龍膽寺先生が生活の糧としたのは、趣味であったサボテン。自身で栽培するのはもちろんですが、研究者として、またサボテン(龍膽寺先生の本では「シャボテン」)栽培の伝道師として、多くの本を遺しています。

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今回、当店に入荷したのはこの2冊。
『流行の多肉植物』のほうは、育て方や品種の説明など、どちらかと言えば実用的な側面が強い一冊です。しかし、序文はさすが。
「人生は砂漠だ、とよくいわれる。本当に人生は砂漠だろうか。」から始まり、砂漠化する地球と「ドライな若者」像を重ね合わせ、その砂漠化する地球の前衛で戦っている多肉植物こそ「人生の砂漠にあって、(中略)オアシスを求め」た時に我々を癒す存在と言う。
かなりギリギリの飛ばした文章は、さすがとしか言いようがないです。
二冊目は、龍膽寺先生のシャボテン愛に満ちた文章により一層触れられます。
「地球はまだ当分、かわく一方と考えられている。シャボテンが得意顔をしているはずである。」なんていう文章は、先生の愛情を感じて微笑ましいですが、「火星にはえているシャボテン」という文章は、この本の白眉であり、愛情が狂気的でもあるすさまじい文章。火星=砂漠=シャボテン(!)という発想の下、その雨季と乾季の地球との違いを心配し、こう締めくくられます。
「なにしろ早く火星から植物をとってきて、奇異な姿のその宇宙植物を、私たちのシャボテン温室の中で栽培して、ながめたいものである。いずれにしろ、火星の植物を地球へ持ってきて、じょうずに育てられるのは、私たちのほかにはないだろうから。」
先生に伝えたい。「火星への有人飛行は、2030年代の計画だそうです! 火星のシャボテンに会えるのも、もうすぐかもしれません!」
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●今日のお勧め作品は、蛯名優子です。
20180219_ebina_01_e-12蛯名優子
"01. e-12"
2001年
水彩、紙
61.0×79.0cm
サインあり

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◆小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
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2018年から営業時間を19時まで延長します。
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JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第10回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第10回

桜は散りましたが、春になると何かをやりたくなります。なんだかそわそわしませんか?新生活のそわそわでしょうか?この新生活感は、新入学生を迎え入れる学校や、今年から働きだした方々と、こんな町の古本屋でも同じもの。春になると「何かやったろうじゃないかー!」という気持ちになるのです。
というわけで、今年はこんなフェアを仕込んでみました。
「平凡社ライブラリーフェア」
「凡ラブッ、春のホン祭り♪(ヤマザキッハルノパンマツリッノリズムデ)」(平凡社ライブラリー公式ツイッターより引用)です!

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当店では、定期的にこういった出版社さんとの新刊書籍のフェアを立ち上げているのですが、ひとつ心がけていることがあります。
それは「1冊しか仕入れをしないこと」です。
もちろん、アクセントも兼ねて特におすすめの商品を数冊仕入れてカバーを見せる配置をしますが、基本的には1冊ずつしか仕入れず、売切れたら追加なし!です。
こうすることにより、よりたくさんのアイテムを展開できます。写真をみてください。まるでローマの石畳を見るかのような、本の並びを・・・。
そして、さらに、フェア棚にお客様との真剣勝負が生まれます。一冊しか入れずに、売り切れても追加しないルールなので「あの本は売れちゃいましたか?」と言われたら店主の負け。「これを数冊仕入れておけば・・・」と後悔することになります。
新刊書籍も、古本と同じように一点物の気分を味わって欲しい。「新刊書籍ならどこで買っても同じ」なのではなく、価格は一緒でも(だからこそ)、どこで、どんな気分の時に買ったかを大切なのだ!という思いを込めたフェアなのです。

そんな「平凡社ライブラリーフェア」からおすすめの一冊をご紹介します。
ジョナサン・スウィフト『召使心得』です。

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スウィフトは、解説不要の、あの『ガリヴァー旅行記』の作者。
『ガリヴァー』の持っているおとぎ話的な側面ばかりに注目していると、彼の持っている超一級の「風刺」の刃にグサリとやられるように、この一冊は現代を生きる我々にさえ、深く深く刺さる一冊。特に有名なのは当時のアイルランドの貧困を世に問うために出された「慎ましき提案」。彼は、貧困の救済策として、「アイルランドの幼児を食卓に供すること」を提案するのです。「悲惨な事態を引き起こしている邪悪なる政治に対して邪悪なる方法を提案し、それによって問題状況の深刻さを露悪的に示す」(訳者解説より)このスウィフトの論集は、我々の持っている想像力を試しているような何とも不敵な一冊です。
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●今日のお勧め作品は、難波田龍起です。
20180205_nambata_50難波田龍起
《(コラージュ)》
1974年
紙にグワッシュ、コラージュ
16.9×14.9cm
サインあり
裏にサインと年記あり

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●ときの忘れものは5月3日(木・祝日)〜5月7日(月)まで休廊です。
ブログは年中無休なので、どうぞお楽しみください。

◆小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
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JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第9回

小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第9回

今年は須賀敦子さん没後20年の節目の年。タブッキやウンベルト・サバなどイタリア文学の翻訳家でもあり、『コルシア書店の仲間たち』などのエッセイもロングセラーの作家です。
記念の年ということもあり、須賀さんにまつわる新刊も相次いで発売され、当店にも自然と「須賀敦子コーナー」が出来上がりつつあります。

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そんな中から、まずは、「ときの忘れものブログ」でもおなじみの大竹昭子さんの『須賀敦子の旅路 ミラノ・ヴェネツィア・ローマ、そして東京』からご紹介。
もともとは三冊に分かれていた作品を合わせ、さらに加筆修正の上で文庫化された、決定版の須賀敦子論。

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須賀さんと親交があった大竹さんが、須賀さんの文章を引用しながら辿る彼女の足跡は、入門書として読むのも良いですが、須賀敦子を十分に読んできた読者にとっても新しい風景が見えるかのよう。ある作家の書いたエッセイをもとに、さらにもう一人の作家がその作家自身の歩みを追体験していく。そして、またそれを読者が読む。二重の作品を読んでいく刺激がなんとも心地よい作品です。当店でお求めの方には、大竹さんの須賀さんとの思い出が書かれたレシピカードがついております。

つぎは須賀敦子の新発見の詩を一冊にまとめた詩集『主よ 一羽の鳩のために』です。

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須賀敦子の作家としての活動は、実はわずか8年。(翻訳はそれよりも長く手掛けています)この8年の間に『ミラノ 霧の風景』をはじめ、今でも多くの人に愛される本を書き上げたのです。まさに奇跡的。でも、それよりもずっと前から、彼女は「詩人」でもあったわけです。その言葉の感性に我々が触れられる美しい一冊です。

最期はこちら。『塩一トンの読書』。

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私にとって須賀敦子は、やはり名翻訳家であり、深く作品を味わう「プロ」のような存在でした。その彼女の読書論、書評を集めたのが本書です。どの章を読んでも、本質をズバッととらえ、短く、けれど印象的に語っていく彼女の文章に惹かれます。

6月からは「須賀敦子の本棚」と題し、彼女が愛した作家や作品でコレクションを作るという素晴らしい企画も。

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翻訳家・須賀敦子の未発表作品も収録されるというのだから、これは買わないわけにはいかないでしょう。
まだまだ須賀敦子は生きているなぁ、と実感します。
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●今日のお勧め作品は、安藤忠雄です。
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安藤忠雄
"Koshino House"
2015年
紙にクレヨン、コラージュ
イメージサイズ:20.7×61.0cm
シートサイズ:23.6×63.6cm
サインあり

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