2012年06月19日

池玲子

池玲子『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』
監督:石井輝男 東映1973年

 初代ポルノの女王として一時代を画した池玲子。東映のプロデューサーにスカウトされたとき、彼女はまだ16才だったらしい。悪辣非道な映画業界の大人たちは、会社ぐるみで彼女の年齢をごまかし、鈴木則文監督の『温泉みみず芸者』(1971)で主演デビューさせてしまう。もちろん裸もベッドシーンも満載の18禁ピンクコメディ映画だ。もし今そんなことをしたら、「青少年保護育成条例」違反か何かで、監督もプロデューサーも捕まるに違いない。ところが鈴木監督は、逆に映画の中で文部省のお偉方をコケにして挑発する始末だ。それはともかく、玲子はこの映画でタイトルバックからいきなり堂々とした脱ぎっぷりを見せ、大いに注目を集めた。以来、98センチの巨乳と豊満な肉体を武器に、玲子は『女番長ブルース・牝蜂の逆襲』(1971)、『現代ポルノ伝・先天性淫婦』(1971)と立て続けに主演し、あっという間にポルノ女優としての地位を確立する。

 その後、何を血迷ったか一度は「脱ポルノ」を宣言した池だが、さすがに人の道にハズレていたと改心したらしく、すぐにカムバックしている。そして前回のコラムで取り上げた杉本美樹とともに、東映ピンキー・バイオレンス路線の全盛時代を担う。玲子は映画の中で女侠客にも扮しているが、決して取り澄ました清純派ではなく、いわば汚れ役のズベ公派だ。その代表作の一つが、猪の鹿お蝶役で主演した石井輝男監督『やさぐれ姐御伝総括リンチ』(1973)だった。東映女侠客映画の表看板が藤純子の「緋牡丹博徒」シリーズだとすれば、この玲子主演作は“裏傑作”と呼ぶにふさわしい出色の内容なのだ。

 なにしろ冒頭からすごい。雨の中、襲いかかる刺客たちを斬り捨ててゆくうちに、お蝶の着物はどんどん脱げてしまい、最後には長ドスを片手に素っ裸となる。カメラアングルも秀逸で、場末の映画館で初めて見たときの興奮は今でも忘れられない。さらに玲子は全裸でロープに吊され、むしゃぶりつく男たちに指で責められて悶える。また悪玉の親分に身を委ねる場面では、スクリーン一杯に裸体を妖艶にくねらせて延々と喘ぎ、足の指を曲げ、脚を摺り寄せ、相手の性技に昇りつめてみせる。こうした場面を映画館のワイドスクリーンで見ると、実に迫力満点だった。いくら大画面のテレビでも、家で見るビデオやDVDでは決して味わえない、映画ならではの醍醐味だ。そして玲子の裸体は、その成熟度満点の質量感とむき出しのエロスで、観客を圧倒し続けた。しかも事が終わって「どうだ、俺の技は」と満足げな悪玉の親分(こういう役をやらせたらピカ一のエンタツこと遠藤辰雄)に対し、お蝶はスクリーンの中から観客に向かってこっそり「ふん、芝居だよ」と吐き捨てる。かっこいい~。

 やがて東映のピンキー・バイオレンス映画路線が衰退し始めると、玲子はさまざまな作品に助演し、ヤクザの情婦などを演じた。また東映以外でも、日活の『黒い女豹M』(1974)や香港ゴールデンハーベスト社のピンクホラー映画『悪魔の生首』(1974)に主演している。そして彼女の出演機会が減ったころ、お約束通り弱り目に祟り目の事件が起きる。1977年に覚醒剤容疑、賭博容疑と逮捕が相次いだのだ。中島貞夫監督『総長の首』(1979)などでいったんは復帰を果たしたものの、池玲子はまもなく映画界から消えて行った。

rittai_an at 00:18│Comments(0)TrackBack(0)mixiチェック 女優 | 邦画

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