バンコクに着きました。路線定期審査は無事に終了。まあ、フライトは普通に飛んで終わりなんだけど、口述審査がちょっと心配でした。でもCHECKERは良く知っている優しい方で、口述審査というよりディスカッションのように最近の変更点の問題になっているところなどを教えてくださいました。一通りの勉強はしているんだけど、やっぱり突っ込まれてみるといろいろと知らなかったことやよく理解できていなかった部分が出てきますね。さらに深く勉強しなければいけないということを実感しました。

最近の重要トピックスとしては、『通信機故障の場合の措置』の航空法改正、RNAV運航の正式導入がありますが、これについても問題だらけですね。以後はちょっと専門的なお話になりますが、復習をかねて自分なりにまとめてみます。航空関係者の読者の方対象ということでお願いします・・・。

『通信機故障の場合の措置』については、概ね以下の点が変更になりました。
1)IFRの航空機に限定して航行方法が定められていたが、全ての航空機を対象として規定される。
2)従来有視界気象状態にあっては有視界気象状態を維持して安全に着陸できると思われる最寄りの空港に着陸するということになっていたが、そのときは有視界気象状態でも着陸するまでずっとVMCを維持することはできない場合もありうる。そういう時は計器気象状態のときの方法に従っても良いことになった。
3)高度・速度に関する規定が明確になった。
4)RADAR誘導等、管制指示により経路から外れて飛行している場合における飛行方法が規定された。

3)の高度・速度に関しては以下のように規定されました。

承認されていた高度もしくは最低高度(MEA・MCA・MRA、制限高度)のいずれか高い高度/指示速度を以下の時間まで維持し、以後FLIGHT PLANの高度/速度を維持する。
(1)レーダー管制業務が行われていない空域では、
  義務位置通報点における通報ができなかった時点から20分間
(2)レーダー管制業務が行われている空域では、
  顱ゾ鞠Ч眦戮泙燭郎把禮眦戮謀達した時間
  髻ゥ肇薀鵐好櫂鵐澄爾7600にセットした時間
 のうちいずれか遅い時間から7分間

問題となっているのが下線を引いた部分です。施行規則では正確には『通報した飛行計画による高度および速度を維持して飛行すること』となっています。速度はいいとして問題は高度。これは承認された高度ではなく、飛行計画で提出した高度、つまり要求した高度ということです。管制から一つ上や下の違う高度を承認されて出発しても、その高度ではなく飛行計画で要求した高度に最終的に上がれということ。従来我々PILOTは要求した高度にそれほどこだわりを持っていません。それよりも承認された高度を守ることを重視しています。それなのに通信機故障の場合だけは管制指示に関わりなく飛行計画で要求した高度に上がれというのは非常に違和感があります。要求した高度をくれなかったのはそこにTRAFFICがいるからであって、いくら一定時間(7分または20分間)経過することによりTRAFFICの回避をさせるとは言ってもPILOTとしては通信機故障の状態でそんな高度には行きたくないものです。それに要求高度の変更も5分前通報のときに変更したり、ディスパッチで変更を言ってあってもディスパッチャーが入力を忘れたり、入力したのが遅くて管制側のデータに反映されていなかったりすることがしばしばあります。つまり「要求高度」の認識がPILOTと管制側で違うケースが有りうるということです。そういう時はどうするんでしょうね。クリアランスで承認した高度、またはEXPECTで指示した高度とするほうがずっと合理的だと思うんですが・・・。

もう1点、レーダー管制業務が行われていない空域では、となっていますが、これもレディオ空港から離陸した場合などは含まれないそうです。日本国内では高度を上げれば全てRADAR COVERAGE内にあるので、レーダー空域と考えてよいということなんですが、施行規則やこの文章だけではとてもそんな解釈はできません。考えてみれば意味はわかるんですけどね。もう少し書き方を工夫するか、丁寧な解説をして欲しいものです。

現在のエアラインの飛行機では3台のVHF通信機、ACARS、国際線仕様機ならSATCOM、HF通信機など多彩な通信手段を持っています。現実的にこれら全ての通信手段が故障するというケースは極めて稀で、この法律が前提としているような機器の故障は中型機以上では聞いたことがありません。よくあるのは周波数の変更を間違って違う周波数を聞いていたり、他の飛行機が送信を押しっぱなしの状態にしてしまって周波数がブロックされてしい一時的に通信不能になるケースです。こういうときは離着陸に関わるようなときで一刻を争う場合が多く、7分間のんびり様子を見ている場合じゃありません。個人的には「なんてありえないケースを想定した、現実味のない法改正だろう。」と思います。実際にはそういう時間的余裕のない状況での通信不能、また国際線などの長距離便で通信ができなくなったときの対処方法などの方がずっと重要だと思うんですけどね。そういうところは結局現場の当事者任せになっちゃうんですよね。規則だけ知っていても飛行機の安全は守れないということなんですね。

今後もっとわかりやすい形に変更される可能性はありますが、もう少し最初から合理的なものを作ることができなかったんですかね・・・。困ったものです。RNAVに関してもわけのわからないことがたくさんあるんですが、長くなったのでそれはまた次回にします。