2006年02月21日

バカリズム「トツギーノ」完全解剖?(ネタバレ上等)

そもそもこのネタ、タイトルがおかしい。

「トツギーノ」

“嫁ぐ”という人生の重要事項を、○○しいの(○まるしながら)と表現している時点で、このネタは変なのである。嫁ぎながら何かをするというより、何をしながら嫁ぐつもりなのか、というような語り口調。そして本来おめでたい出来事を、升野さんは厳格な表情かつ厳しい口調で言う。まるでピラミッドの奥から聞こえてくる苦悶の声のような感じに。そのギャップもまたオカシイ。いつもここからの「悲しいとき」に似ているかもしれない。黒いスーツで真面目な顔で叫ぶ内容がヘン、という感じに。


まず最初、このネタは以下の進行を見せる。

「朝起きーの」

「トイレ行きーの」

「歯ぁ磨きーの」

「着替えーの」

「時計見ぃーの」

「焦りーの」※時計を見ながら焦っている女性の絵

「家を出ぇーの」

「嫁ぎーの」


一見、唐突に見える進行状況だが、違和感は無い。自然なストーリーである。結婚式に遅刻になりそうな女性が急いで家を出て、結婚式を無事に済ませる。その流れが少し端折って披露されているだけであって、この流れ自体には大きなボケはない。それでも、その唐突さで客が笑う。これが基本形、ということを客に披露したと考えて良いでしょう。

「風邪引きーの」

「医者行きーの」

「受付済ませーの」

「待ちーの」

「名前呼ばれーの」

「嫁ぎーの」


ここでは、さっきの唐突さに拍車をかけたものを披露。『さっきまで病院にいたのに、なんで嫁いでいるの?』という違和感で、客は笑うのである。ただ、この展開は頭の固いタイプの人間は対応しづらいところがあるようで、会場(というか、おそらく宮迫)から「えー」という声が上がっていた。笑い声も、先程と比べると少なくなっている。また、宮迫が更に何か言って、それに対して客が笑っている。コメント自体はジャマをしているようにも思えるが、それで客が笑うということは、客も同様のことを思っていたという事なのだろう。微妙にナイスアシストとなってしまったみたい。

「ある日森の中ぁーの」

「熊さんに出会いーの」

「花咲く森の道ぃーの」

「熊さんに出会いーの」

「熊さんの言うことにゃーの」

「嫁ぎーの」


ここの流れはバカリズムがシュールと言われている所以が感じられる。明らかに某童謡の歌詞が組み込まれている。そのことに気付いた客は、その妙なシンクロに笑ってしまう。また、イラストもここでは効果的。最初のイラストは森の中を歩いている女性を描いているのだが、あまりにも現代的普段着を着ているのである。普通、普段着で森の中を歩く女性はいないだろう、と心の中でつっこませるため、わざとそうしたのかもしれない。ここもまた唐突な展開に、客が笑う。

「豪華客船乗りーの」

「貧乏な画家に出会いーの」

「先端立たされーの」

「船座礁しーの」

「船沈みーの」

「画家沈みーの」

「嫁ぎーの」


童謡で味を占めた升野さんは、更に某映画を組み込ませる。「なんであの映画が!」という驚きと発見で客は笑う。また、これまでとは違い具体的に語られる部分があり(「貧乏な画家に出会いーの」の箇所)、客がそこで「あの映画だっ!」と気付くように計算されている。そして「先端立たされーの」のあの場所で、あの名シーンをやることにより「あの映画だっ!」感を、なおも強めるのである。もうこの頃になると、客は升野さんが「嫁ぎーの」と言うことに期待して見ている。どのタイミングで「嫁ぎーの」って言うんだろう。そう思いながら見る。そして、升野さんが「嫁ぎーの」と言う前に見られる、軽く声を荒げる部分で「あー、来るぞ来るぞ」的な気持ちになり、結果「嫁ぎーの」で笑ってしまうのである。

「助走つけーの」

「嫁ぎーの」


これまで版権ネタで笑わせてきた升野さん、ここで思い切った行動に出ます。それまでそこそこの時間をかけて繰り広げられてきた「嫁ぎーの」ドラマが、更に唐突なものに変化したのである。勿論、それまでの流れを予想していた客は笑う。ここで弱冠、間を置いたのは笑い待ちだったようですが、思ったよりも笑いは起きず。やや計算違いか。

「太りーの」

「激太りーの」

「激髪伸びーの」

「嫁ぎーの」


ここはイラストという部分を利点としている。女性が太り、激太り、激髪伸びる様子をイラストにしているのだが、その絵が明らかに不気味でおかしい。その過程で客は笑い、その女性がそのままの姿で嫁いでいる絵で更に笑うのである(注:それまで「嫁ぎーの」の部分は全て同じ絵を使っていた)。ここでも客の一つ上を行く展開を見せている。

「お前を嫁にーの」※さだまさしの絵(右側)

「貰う前にーの」※さだまさしの絵(よりアップ)

「嫁ぎーの」※さだまさしの絵(文金高島田)


ここはまず、さだまさしの絵をしばらく客に見せた後で「お前を嫁にーの」と言っている点。これは、まずイラストでさだまさしと気付いていない人に、この人物をさだまさしだと気付かせるために「関白宣言」の歌詞を言って気付きの笑いを得るためである。更にさだの顔が大きく描き、まるでさだが迫ってきているように見せて笑いを取る。そして最後に「嫁ぎーの」。ここは『さだの文金高島田で笑いを取るなんて、単純じゃないか』という意見を読んだが、それは間違っている。いや、少なからずそれを笑いの要因にしてはいるが、そこがメインではない。ここもやはり、唐突さが笑いになっているのである。「関白宣言」の歌詞を繋げて読んでもらいたい。「お前を嫁にーの、貰う前にーの、嫁ぎーの」。この流れは明らかに唐突。この唐突さで笑いを取っている部分が大きいと思われる。

「お前を嫁にーの」※さだまさしの絵(左側)

「貰う前にーの」※さだまさしの絵(よりアップ)

「ジョルジーニョ」※ジョルジーニョの絵

「ジョルジーニョ」※ジョルジーニョの絵(更にアップ)

「嫁ぎーの」※ジョルジーニョの絵(文金高島田)

「終わりーの」


まず、再びさだが出てきた時点で面白い。これまでのイラスト群は、再び同じものが披露されるという流れが無かったのに、ここで二度目のさだ、しかも反対方向から迫ってくるように描かれては、もう笑うしかない。両側から迫ってくるように描かれたさだに、客は笑う。そして二度目のさだ文金高島田が来ると思ったところで「ジョルジーニョ」。再び意外な展開に笑う。それまでそういうダジャレネタは無かったのに、と。そして二度目のジョルジーニョで、さだまさしと同様に「迫る」笑いが起きる。で、最後にジョルジーニョが嫁ぐ。ここは文金高島田の髪型をしたジョルジーニョの絵が映える。男性外国人選手が文金高島田をしている姿は、思った以上に笑える。

こうして考えると、バカリズムの笑いは常に客の考えの一つ二つ上を行くものであり続けている。コンビの頃からそうであったが、ピンになった現在、それは更に凄まじさを増しているように思う。来年の大会、バカリズムがどういうネタを持って出場するつもりなのかに期待しながら、この話は終わりーの

tokojo at 16:21│Comments(13)TrackBack(0)コラム 

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この記事へのコメント

1. Posted by たならく   2006年05月30日 02:23
この解釈には異議がある。このトツギーノにストーリーなんてない。笑いどころはまず一番最初のトツギーノ、これはトツギーノ自体の意味が『嫁ぎーの』だとわかるところにある。その後はいつトツギーノが来るのか?その期待感と巧みな間のずらし方で笑わせるものだと考えられる。ということで最初のトツギーノとその後のトツギーノでは笑いの質が違うと言っていいと思う。まあ個人的意見だが・・・
2. Posted by 菅家@   2006年05月30日 04:46
最初、バカリズムとしては『トツギーノ』の流れを客に提示する必要があるんですね。だから、最初の部分は基本形を客に提示しなくてはいけません。つまり、オチの「嫁ぎーの」までの流れは意外性があるけど、極端に破綻しない展開を見せなくちゃならないわけで。で、最初の展開。女性が家を出てから嫁ぐまでの部分を唐突にすることで、笑いを作ります。これをとりあえずの言葉を代用して“ストーリー”と称しておるわけです。実際は“ストーリー”というよりは、“矛盾の無い流れ”と書くべきだったのかもしれません。

それからタイトルの『トツギーノ』で客が笑っているという点に関して。これは同意以外の何物も無いです(笑) 確かに『トツギーノ』というタイトルに対して疑問を覚えていた客はいたでしょうし、それが発覚したことで笑った人も多かったでしょうから。にゅ。

とりあえずの返信でした。む。
3. Posted by ほっ   2007年01月02日 15:38
勘違いされてるようですが、「○○しーの」というのは
「○○してから」or「○○して、」ぐらいの意味です。
「○○しながら」という意味はないです。
4. Posted by ほんと寒い。   2007年02月19日 12:00
ギャグとかシャレを説明されるのってほんと寒いよね。
あの感覚に似てるね。このブログ。
ほんと寒い。
5. Posted by 菅家ロキソニン元管理者   2007年02月19日 22:26
>>ほっさん
あ、そうなんですか。どうも雰囲気で書いちゃったモノで…また機会があれば、そのように文章を修正させていただきます。…やらないかもしれません。僕のやる気次第です。あいあい。

>>ほんと寒い。さん
まー、そうでしょうね。僕も正直、他人のネタを分解して説明するのは、どうかと思います。ただ、世の中には「これのどこが面白いんだ?」「これが面白い理由を教えてくれ」という、デリカシーの欠片も無いことを言う人がおりまして。これを書いた当時の僕は、そういった人たちに憤慨していたわけです。笑いなんて、個人個人で感じれば良いんですよね。本当は。

ついでに。トツギーノでググったら上から四番目に表示されるまで、このブログに訪れていただいています読者の皆様に、深く御礼申し上げます…っつーか、もう一年か…早いなァ…。
6. Posted by ほっしゃん、   2007年02月20日 23:50
3  なっはははははははははははっははははっははははははははははははっはっははははは。
7. Posted by コメりーの   2007年02月24日 14:25
4 こういったことをするサイトがあってもいいと思いますよ。
あまりネタバレが過ぎるのもどうかと思いますが、言ってることはおおむね的を射てますから。
8. Posted by 菅家ロキソニン元管理者   2007年03月13日 02:55
>>ほっしゃん、さん
楽しそうで何よりです。

>>コメりーのさん
どうもありがとうございます。いや、そもそもこのサイトはそういうことをするサイトではないのですけどね。本来の道筋を外れた行為として、やってみただけなのです。その為、他の記事は非常に退屈だと思われますが、その辺はご了承願いたいと思います。
9. Posted by 匿名   2007年03月20日 23:56
この解説、分析力は凄いですね。
笑いをこのように見るとまた見方も変わります。

ただ、想像欲を湧かせるような間のテンポとタイミングがある笑いは、やはり見ていても想像出来るし、深みがありますね。
勢いで笑わせようとする芸人さん方には見習ってもらいたいものです。
10. Posted by あかつきえにし   2008年07月10日 13:32
3 こんにちは
バカリズムを調べていてたどり着きました
あのシュールな笑いが最近はまtってきました。
私は弱視なのでイラストなどを使ったもの
動きで笑わせるものというのは
わかりづらいのです。
で、このネタ、見たことがあっても
絵は細部まではわかっていない。
でも、なんとなくの言葉の間で面白かったとおぼえております。
それをこのようにイラストのことも細かく説明していただけたので
嬉しかったです
趣旨とは違うのかもしれないけど
とっても役立ちました
ありがとうございました
11. Posted by 23   2008年07月14日 23:33
障祉祉
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綵冴帥∝純茹c鐚羂э
冴膃
ф膣≪<障

膃鴻cс祉祉祉

茹h障
12. Posted by 23   2008年07月14日 23:34
すいません・・・
私もお笑いがすきなのですが
本当にバカリズムのネタの面白さが解らなくて(本気で)
バカリズム 笑いどころ
で検索してこちらにたどり着きました。
そういうところに魅力を感じて
笑う方がいらっしゃるんですね・・・。

解説ありがとうございました。
13. Posted by 名無しさん+   2016年01月07日 17:26
ココで解説されていることは初見で十分に理解できた上で、なぜ面白いと評価されるのか理解できない。
・笑いを起こすフォーマットガチガチで教科書通りすぎるから意外性が弱くてボケも想定の範囲内
・演出がそんなに効果的に伝わってきていない
あたりだと思うけど。

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