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2016年05月23日

PT-45 『 三塚松理の人生は上々だ 』

tokuuri

 二十五歳で会社勤め、と事前に相手からはそう聞かされていたが、実際に会って話をしている内に実のところは三十六歳の専業主婦だと判明した。

 二十四歳、大学院生だと伝えていた自分もまた本当は高校生なのだと男が告白すると、薄々気付いていたとその主婦は、経験の差を匂わせた。当然の事、百発百中潮吹きさせる俺の凄テク、だの、これまでに相手をした四十六人中三十五人がリピーター化、といった武勇伝もはったりだとばれていた。

 まさに、インターネットマッチングサービスの功罪が凝縮され、明暗が浮き彫りとなった、これは俗に言う面接、ブラインドデート現場だった。





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2016年03月18日

PT-15 『 軽音部壊滅す 』

tokubai

 全47話を数えるテレビアニメ版「機動警察パトレイバー」、その内のお気に入りのエピソードを互いに出し合う流れとなり、果たして三塚松理が、第29話「特車二課壊滅す」のタイトルを挙げるとこれが満場の賛同を得、三年生の神代国見や同じく三年生で生徒会副会長の海野花、通称花乃らが大いに盛り上がる。

「後に「ケータイ捜査官7」で再現された時は、ま、俺は痺れたね」

 始業前の市立宝町高校、直線型校舎三階の南端、音楽室。

 表向きは軽音楽部の朝練とされながら、実際は軽音部周辺人脈の屯所として働いているその場所に、隻腕隻眼の大男、三年生の小龍包虫男、通称小虫が現れ、皆に刮目するよう呼び掛けた。

「年収三、四百万にも満たないお前ら下層民共に命令を下すぜ」

 持ち上げた口角で頬を歪めたお得意の、凶悪な笑みを小虫は浮かべた。





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2016年03月12日

PT-32 『 一之瀬綾子のいきなり告白とかしない方がいいと思う 』

tokubai2006

「あたしたちがこんな恋愛ものの映画を観ちゃっていいのかな。似合わないからって死刑になったりしないかな」

「死刑になったらなったで逃げ方はその時に考えるとして、とりあえずはきょろきょろなどせず堂々としておけばいいよ」

 整髪料の存在を知らないみたいなもっさりとした頭髪、量販店で購めたと思しきポロシャツとジーンズ、好きなミュージシャンのスタイルを真似たと言うサンバイザー、双見のその普段の姿に綾子は、脇目も振らず対象に没頭する趣味人、という印象を持つ。

 或いは、これからは本番だとして気負った部分のある自分とは違い、今までの助走期間から然程変わらずに見えるその様子に触れ、安心感を得て落ち着きを取り戻す。

 喧嘩別れと再会を繰り返す男女が二十年越しに結ばれるまでを客観的に、ドライに描いた映画は、主役の男女を演じる二人の役者の相性の好さも奏功し、軽妙な味わいがあった。

 これを綾子も双見も存分に楽しみ、選択を間違っていなかったと口を揃えた。





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2016年02月28日

PT-39 『 三塚一家の語らいの夕べ 』

tokubai2004

「さて問題です、るるは誰でしょう」

「うん、問題になってないね、名乗っちゃってるしね」

「さて問題です、るるは誰でしょう」

「あと、仕事の邪魔は出来ないからお前がバイト中の時は普段通りには出来ないからって、いつも言ってるよな」

「さて問題です、るるは誰でしょう」

「分かった、じゃあコーンポタージュでいいな。クルトンもたっぷりで」

「クルトン。ぽーんこたーじゅ。るるは誰でしょう」

「ほら見ろ、最初に着地点を決めとかないから迷走する」

 そう言いながら松理が、るるの為に丸椅子を用意し、インスタントのコーンポタージュを作ってやる。その甘い匂いに釣られるように、宙ぶらりんになった恨み節を素知らぬふうに遣り過ごして着席したるるが、いそいそと手袋を外して松理が差し出したマグカップを両手で受け取り、コーンポタージュを一口啜って。

「美味しいね。クルトンがいっぱいで嬉しいね」

 と言ってにっこりと笑った。





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2015年12月07日

PT-36 『 千葉明日美の奇天烈な趣味と冬季限定メニュー 』

tokubai3

 或いは一つのイヤホンで一緒に聴いたあのバンドの新曲。

 或いは思い付きで飛び込んだ映画館で一緒に観た酷く詰まらない映画。

 或いは待ち合わせ場所の図書館に貼られていた休館日を知らせるポスターに描かれた余りに似ていないアニメキャラクターの似顔絵。

 そういった想い出が水面に気泡を立たせるみたいに。

「例えば小野ちゃんが言った一つのジョークが作用するんだって、ま、俺はそう信じてるよ」





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