GI日本ダービー(5月28日/東京・芝2400m)へ向けて、出走メンバーの顔ぶれがそろってきた。主力と目されるのは、GI皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)の上位組や、トライアルで権利をつかんだ馬たちだが、それらとはまったく異なる臨戦過程にありながら、密かに注目されている馬がいる。


 栗東トレセン(滋賀県)の池江泰寿厩舎に所属するサトノアーサー(牡3歳/父ディープインパクト)である。

 デビューから2連勝を飾ったあと、続くGIIIきさらぎ賞(2月5日/京都・芝1800m)とGIII毎日杯(3月25日/阪神・芝1800m)では、いずれも1番人気を背負いながら2着と惜敗した。それでも同馬は、皐月賞をパスして、直行でダービーに参戦することを早々に表明した。

 力があるのはわかっているが、トップレベルとの対戦が乏しい。予想するファンからすれば、なんとも能力比較の難しい1頭となるのではないか。

 翻(ひるがえ)って、管理する池江調教師は、この馬に多大な期待を寄せているという。同厩舎には、皐月賞でワンツーを決めたアルアインとペルシアンナイトもいるが、同師は皐月賞前から「うちの横綱はサトノアーサー。アルアインとペルシアンナイトは大関」とさえ言っているのだ。

 詳しい話を、関西競馬専門紙のトラックマンが伝える。

「デビュー前、そして初戦の時点では、サトノアーサーに対する評価はそこまで高くなかったんです。ただ、2戦目の前に動きが一変し、調教師の評価も急上昇。その後、3戦目、4戦目と連敗し、さらに同厩舎の2頭が皐月賞でワンツーを決めても、『厩舎の横綱』という評価は変わっていません。池江師から出てくる言葉は、『この馬の使命はダービー』と一貫していて、ダービー制覇へ相当力が入っているようです」

 とはいえ、きさらぎ賞と毎日杯で連敗したのは事実。それをどう見るかが勢力図を考えるうえでのポイントとなるが、陣営は「2戦とも負けた理由ははっきりしている」と意に介さないようだ。先述のトラックマンが続ける。

「きさらぎ賞は苦手な重馬場になり、陣営は『まったくフットワークが違った』と言っています。毎日杯は、とにかく溜めに溜めて直線だけの競馬。展開的に『届かなくても仕方ない』という陣営の解釈でした。今考えれば、毎日杯を勝ったアルアインはのちの皐月賞馬で、その馬に直線だけで追い詰めて半馬身差まで迫りましたからね。負けて強し、でしょう。

 毎日杯で後方待機の競馬にこだわったのも、ダービーを勝つためのレースを覚えさせたかったから。もとから皐月賞はパスする公算が大きかったようで、本当にすべてダービーから逆算した計画を立てています」

 昨年のダービーでは、同じく池江厩舎のサトノダイヤモンドがわずかハナ差で2着に敗れた。馬名からもわかるように、オーナーはサトノアーサーと同じ里見治氏である。

 陣営とすれば、今年こそダービータイトルをオーナーにプレゼントしたいという思いもあるだろう。それが、「この馬の使命はダービー」という言葉と、早くからそこ一本に絞った調整に現れているのかもしれない。

 池江調教師が認める素質の持ち主は、競馬界最高峰の舞台でその力を証明することができるのか。悲願成就へ向けて、サトノアーサーがダービーへと歩を進める。


引用:
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