1.人格攻撃にまで手を染める西岡氏
政治的中立を求められる参議院議長の立場にありながら、
政局的な言動を繰り返している西岡武夫氏が、
今度は菅直人首相を「鬼」呼ばわりしました。
西岡武夫参院議長は12日までに、「国難にあたって延命に汲々(きゅうきゅう)とする菅直人首相を辞任させることこそ民主党議員の責任」と訴える論文を発表した。
具体的な提案として、衆院で内閣不信任決議、参院で首相問責決議の両案を同時に提出し、即時退陣を実現すべきだと主張している。
論文の表題は「国難に直面して、いま、民主党議員は何をなすべきか」。首相が打ち出した「脱原発」のスローガンは、福島第1原発事故対応の失敗をごまかすためで、国政選挙の争点にはなりえないとの認識を示し、「首相がいま総選挙を述べること自体、噴飯ものだ」と切り捨てた。同時に、原発周辺への避難指示が遅れたことで、避けることのできたはずの放射線に住民をさらしたとして、「鬼の政治」と非難した。
さらに、8月末の通常国会会期末を迎えても首相が辞職することはないとの見通しを示し、民主党は両院議員総会を開催し、党代表を解任する段取りを進めるべきだと提起。それでも首相が居座るなら、内閣不信任決議案と首相問責決議案を同日に提出すべきだと強調している。
内閣不信任決議案については6月2日の衆院本会議で否決されているが、「(同一の国会中)一度しか提出できないというのは俗論」と強調。「首相交代に必要な時間は首相が居座ることによる壮大な時間の浪費に比べれば微々たるものだ」と結んでいる。
2.真の目的は「憲政破壊」
西岡氏は支持率が低迷している菅政権の打倒を主張していますが、
彼のこれまでの言動を振り返ると、打倒を目指しているのは菅政権ではなく、
憲政そのものだということが強く疑われます。
- 1月11日の記者会見において、仙谷由人官房長官(当時)を辞任させなければ参院本会議開会を拒否することを示唆(参議院)
- 3月1日に衆議院で可決された平成23年度予算案を「受取拒否」し、自然成立の起算日を3月2日だと主張(MSN産経ニュース)
- 7月12日に発表した論文の中で、一事不再議の原則を「俗論」と主張(前節の引用記事)
当たり前のことですが、国会の召集や予算案の受取は憲法で定められた重要な手続きであり、
参院議長に拒否する権限などありません。
また、一事不再議の原則がなくなってしまえば、
内閣総辞職要求の乱発が内閣不信任決議案の乱発に発展し、
国会運営が混乱を極めることは明らかです。
つまり、西岡氏は憲法を無視して権力を乱用するのみならず、
国会運営における重要な原則を葬り去ることにより、
国会を機能不全に陥らせようとしているのです。
憲法で国権の最高機関と定められている国会が機能不全に陥れば、
国民は憲政そのものに対して疑念を募らせることとなり、
最悪の場合、憲政が停止される事態にすらなりかねません。
1930年代に、日本で総理大臣を殺害したテロリストに
ドイツでナチスが全権委任法を成立させることができたのも、
議会が泥沼の政治闘争で機能不全に陥り、
国民から見放されていったことが背景にあるということを、忘れてはならないのです。
3.政局を仕掛けるなら参院議員バッジを外せ
「解散なき衆議院」化を狙う西岡参議院でも取り上げたように、
西岡氏は衆院選で11回も当選したベテラン議員でしたが、
その後の知事選や衆院選で相次いで落選したため、やむを得ず参院選比例区に
参院議員にも関わらず、衆院議員顔負けの政局的言動を繰り返す
西岡氏の個人的な野心で憲政を破壊されては、たまったものではありません。
政局を仕掛けたいのであれば参院議員を辞任し、正々堂々と衆院選に立候補するべきです。
また、西岡氏の言動は、衆院議員から参院議員への「鞍替え組」の信用を、
著しく損なうものとなりました。
衆院と参院が法令上の例外を除き、独立・対等の関係にあるべきだということを考えても、
元衆院議員が参院議長となることは好ましくなく、
今後は鞍替え組を参院議長候補から外すべきです。
参院議長職は、参院の存在意義をよく理解している議員が務めるべきであって、
間違っても参院を衆院の