2007年12月09日

コンテンツ規制 「舶来信仰」から脱却を

 総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」(座長・堀部政男一橋大名誉教授)が6日、
最終報告書をとりまとめ、公表しました。
通信・放送関連の9つの法律を見直して「情報通信法(仮称)」として一本化することや、
通信と放送を別々に規制する現行法体系を再編し、
伝送設備、伝送サービス、コンテンツなど事業別の法体系とすること、
地上波以外の放送(CSなど)については表現規制を変更し、
ネットについては表現規制を強化することなどを提言しています。

通信・放送の総合的な法体系に関する研究会 報告書のポイント(PDF)

通信・放送の総合的な法体系に関する研究会 報告書(PDF)

 CSなどについて規制を変更するというのは、
1つは従来、地上波同様に政治的中立などを義務付けた放送法が適用されていたことについて、
これを除外しようということです。
広告について、広告であることが明確に分かるようにしなければならないということを除き、
ネットと同じ程度の規制となります。

 報告書では、放送法の規制が継続される放送を「特別メディアサービス」、
規制が除外される放送を「一般メディアサービス」、
ネットなどを「オープンメディアサービス」としていますが、
通信と放送の垣根がなくなることから、
アクセスの多いサイトが「特別」や「一般」に分類される可能性もあります。

 「特別」と「一般」の線引きについては、
「映像/音声/データといったコンテンツの種別、画面の精細度といった当該サービスの品質、
端末によるアクセスの容易性、視聴者数、有料・無料の区別など」によって
「特別な社会的影響力」があるかどうかを判断基準にするそうですが、
少なくとももう1つ、「電波を独占的に使用しているか」という基準は加えられるべきでしょう。
一種の国有資源である電波を、政府から免許を受けて独占的に使っているのですから、
そうでない発信者とは明確に区別されるべきだと思います。

 大きな問題となるのはここからで、ネットの表現規制が強化されること、
それに伴ってCSなどについても同様の規制強化が行われることです。
政府による直接介入的な規制は控えるようですが、
表現規制に協力しないISPの法的安全性を脅かすなどといった、
間接的な方法で規制を強化することとしています。

 報告書は「オープン」について規制するべき情報について、
「違法な情報」と「有害な情報」の2つに分けて書いています。
これは上記の報告書(PDF)の21〜23ページに当たる部分なのですが、
「コンテンツに関する法体系の在り方」の「基本的な考え方」や、
「メディアサービス」について書いている16〜21ページと読み比べると、
面白いことに気付きます。

 16〜21ページは日本の現状や問題点、問題の改善案などが書かれているのに対し、
21〜23ページは「〜規律することには憲法上の大きな問題は発生しない」
「米国においては〜、イギリスやフランスでは〜、ドイツでも〜、韓国では〜」
「日本国内では現在、〜諸外国に比して十分とは言い難い」
と、とにかく逃げ腰なのです。
このことは、「オープン」を規制することについて、
総務省とその研究会が、後ろめたさを強く感じていることの証左ではないでしょうか。

 上記の引用部分について、裏を返せば、
「大きくはないけど、憲法上の問題が発生する」
「諸外国と比較するぐらいしか、規制強化の根拠がない」

といえるわけです。

 こうした論調を見るたびに思うのですが、
いい加減、コンテンツ規制の「舶来信仰」はやめるべきではないでしょうか。
上記引用部分の国名を見て気付いた方もいらっしゃると思いますが、
実はコンテンツ規制の「お手本」とされている国は、全てキリスト教国家なのです。
韓国は少し微妙かもしれませんが、韓国でコンテンツ規制を推進しているのは、
勝共連合や統一教会などのキリスト教系の勢力です。

 何故、西欧文明とは違う、
日本文明という独自の文明を持つ日本国民が、
キリスト教国家のコンテンツ規制に続く必要があるのでしょうか。

 外国のコンテンツ規制がどうであろうと、
日本は日本国民に合った規制制度を構築すれば良いのです。
キリスト教国家が規制強化したから強化しよう、緩和したから緩和しようというような、
思考停止としか言いようのない議論から、いい加減に脱却するべきです。
もう、占領下ではないのですから。

関連リンク
外交と安全保障をクロフネが考えてみた。 | 官憲横暴?

情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊) ネット規制に反対するブロガーの声が届いた?!〜が、通信・放送融合法案の致命的欠陥は修正されず…

無名の一知財政策ウォッチャーの独言: 第35回:放送通信融合法制という脅威

あまりにも危険なネット規制法(情報通信法)が再浮上 表現の自由は一体どうなる!?|クリエーター支援&思想・表現・オタク趣味の自由を守護するページ

「知」的ユウレイ屋敷: [時事]放送と通信の融合に関する総務省の方針への違和感



この記事へのトラックバック
 ネットについての規制が政府主導でなされ、ネットの表現の自由が奪われるのではないかというおそれがある、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」の「中間取りまとめ」に対しては、異例の多さのパブリックコメントが寄せられた(※1)。その多くは規制に反対する...
ネット規制に反対するブロガーの声が届いた?!〜が、通信・放送融合法案の致命的欠陥は修正されず…【情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)】at 2007年12月10日 08:07
 堀部政男・一橋大名誉教授が座長をつとめる、総務省の”通信・放送の総合的な法体系に関する研究会”は、6日最終報告書をまとめた。 そこでは、特別な社会的影響力をもつインタ??.
官憲横暴?【外交と安全保障をクロフネが考えてみた。】at 2007年12月11日 23:09
1.規制の対象 先ごろ、総務省が、現行の通信、放送関連の法律を「情報通信法(仮称)」として一本化して、2010年の通常国会に提出す??.
コンテンツと規制について考える【日比野庵 離れ】at 2008年03月15日 19:29