2009年06月15日

東京声明 青少年をゼロリスク症候群から保護せよ

 6月2日から2日間、財団法人日本ITU協会と総務省が「安心・安全なインターネット環境整備に関する戦略対話」を開催し、
「安心・安全なインターネット環境整備に関する東京声明(以下、東京声明)」を宣言しました。

livedoor ニュース - ネット上の青少年保護に国際的指針「東京声明」を宣言--総務省など

 財団法人日本ITU協会(ITU)と総務省は、6月2日、3日の2日間、東京都内で「安心・安全なインターネット環境整備に関する戦略対話」を開催した。この中で、オンライン上の青少年における安心・安全に関する取り組みの国際的な指針となる「東京声明」が宣言された。

 声明文では、ITUメンバーによる今後の青少年保護計画について、(1)安心を実現する基本的な枠組み整備、(2)民間における自主的取り組みの推進、(3)利用者を育てる取り組みの推進――を柱に推進していくことを提言。今後は、2009年10月5日から9日にかけて開催が予定されている「ITUテレコム・フォーラム」で声明の議論が続けられるとしている。

 東京声明の全文がこれ(英文和文仮訳)ですが、
全体的に「安心・安全」を口実にしたネット規制を世界規模で推進する内容となっています。
特に問題と思われるのが「青少年が違法・有害情報に触れる機会を最小化する」という部分で、
「最小」のリスクとはゼロリスクに他ならないわけですから、
青少年をインターネットから完全に排除するまで、規制強化が続けられることになってしまいます。

 子供を無視する教育再生懇談会で書いたように、
子供にとって最大の脅威となっているのは「違法・有害情報」でも「ネットいじめ」でもなく、
管理教育思想に染まった親や教師です。
ゼロリスク症候群に罹患すると管理教育思想に染まる危険性が高く、
子供のみならず親や教師をゼロリスク症候群から保護することは、
子供の利益を守る上で極めて重要となっています。

 つまり、目標に設定すべきなのは違法・有害情報に触れる機会の「最小化」ではなく、
インターネットから得られる利益とリスクを勘案した「最適化」なのです。
そのためにすべきことはいたずらにネット規制を強化することなどではなく、
「違法・有害情報」がもたらす損害とは具体的にどのようなものなのか、
どの程度の確率で損害が発生するのか、
逸失利益を最小限に抑える損害回避手段とはどのようなものなのかを調査することです。
東京声明のように、ゼロリスク症候群の蔓延を助長しかねない宣言を出すことは、
子供に不信感を与えることこそあれ、「安心」を与えることなど決してできないと断言できます。

 尚、フランスで「違法ダウンロード」停止警告を3回受けると最高1年間インターネット接続を禁止される、
いわゆる「スリーストライク法」が成立しましたが、
成立からわずか1ヶ月後、「人権宣言」で定めた通信権を侵害するとして、
フランス憲法院に違憲判決を下され、施行禁止となりました。

「仏憲法会議、ネット規制を「違憲」と判断」:イザ!

 フランスの違憲審査機関、憲法会議は10日、同国議会で5月に成立した違法ダウンロード取締法が、憲法を構成する「人権宣言」で定めた通信権を侵害するとして、施行禁止とすることを決めた。

 著作権の保護を目的とした同法は、インターネットで違法なダウンロードを行った者に対し、警告やネット契約の解除命令などの罰則を設けていた。

 憲法会議は「ネット通信へのアクセスの自由は裁判所が決定した場合にのみ制限される」として、行政機関の裁量で通信回線の切断などを可能にする同法を違憲とした。(共同)

 外国の判決とはいえ、インターネットを利用することは通信の自由で保護された権利であることが、
より明確になったといえます。
強制フィルタリングや日本版グレートファイアウォール(GFW、金盾。警察庁は「ブロッキング」と呼称)の設置についても、
インターネット利用を制限する点では同様であり、
人権侵害になるということを啓発する必要があります。