2009年06月20日

石川県携帯禁止条例案 「管理教育」は通用しない

 6月17日に、小中学生から携帯電話を取り上げる「努力義務」を保護者に課すことを盛り込んだ
「いしかわ子ども総合条例」の改正案が、
自民党25人、公明党2人、新進石川1人の共同提案として石川県議会に提出され、
自民党、公明党などの賛成多数で6月29日に可決される見通しとなっています。

「「子供に携帯持たせないで」親に努力義務条例 石川県議会」:イザ!

 小中学生に携帯電話を持たせない「保護者の努力義務」を盛り込んだ条例の改正案が17日、石川県議会に提出された。「県いしかわ子ども総合条例」の改正案を議員提案。自民、公明などの賛成多数で議会最終日の29日に可決される見通しで、県によると、全国初となる。ただ、実効性や解釈をめぐり保護者らの困惑を招く可能性もある。

 改正案では新たに「防犯や防災、その他特別な目的以外で持たせないよう努める」という条文を設ける。罰則規定はなく、施行は来年1月としている。

 また、議員提案とは別に、携帯電話会社に18歳未満の子供の携帯にフィルタリング機能が義務付けられたことに関連し、石川県は、保護者が断る場合、携帯会社に理由書を提出するよう義務付ける条例改正案を提出。

 例によって「児童保護」「努力義務」「罰則なし」といった美辞麗句を並べ、
更に対象から高校生を外し、小中学生に的を絞って狙い撃ちにすることで、
管理教育思想を普及促進する内容です。
子供を無視する教育再生懇談会で書いたように、このような条例案が提出されること自体、
大人全体に対する不信感を与えるだけであり、
子供の利益を損なわせるのはもちろんのこと、リスク管理の上でも逆効果となります。
そもそも管理教育思想とは、子供を利益の主体とは考えず、
一部の大人の利益の客体として捉える思想である以上、当然のことではありますが、
「児童保護」に真っ向から対立する思想に基づく条例案であり、直ちに取り下げるべきです。

 また、6月15日に谷本正憲石川県知事が提出した、
フィルタリング解除の際に理由書提出を義務付ける条例改正案についてもこれまでに触れてきた通り、
子供の人権を侵害するものであるのみならず、
最終的には大人の人権保障をも脅かすものです。
現に児童ポルノを口実に始動する日本版GFW構想で書いたように、
警察庁のセキュリティ対策会議は「検索結果の非表示化」や「ISPによるブロッキング」とともに、
青少年ネット規制法により18歳未満の国民に半強制適用することに成功したフィルタリングについて、
次は年齢制限を取り払って全国民に適用していくことも明確にしているのです。

つまり、ネット規制推進派にとって、
子供は国民全体の人権保障を脅かすための踏み台以外の何者でもなく、
そこに「児童保護」などという価値観は存在しません。
よって、議員提案の条例改正案と同様に、直ちに取り下げるべきものです。

 地方自治体が人権侵害条例を制定する事案については、
2005年に鳥取県人権侵害救済条例が全国的な問題となりましたが、
結局9月12日に成立してしまい、施行前に凍結、廃止とはなったものの、
成立そのものを阻止することはできませんでした。
地方の暴走を如何にして止めるかは今でも重要な課題であることが改めて認識されますが、
決め手がないのが実情のようです。
警察庁が子供を踏み台に国民全体の人権保障を脅かす戦略を描いているのと同様に、
地方自治体を各個撃破していく戦略についても啓発を進め、
他地域にも悪影響を与えそうな条例について、全国レベルで情報共有していくことが、
当面の対処になると思われます。

関連リンク
全国初!携帯電話を持たせない条例・・・ - 森政人的日々 〜石川県商工会青年部連合会会長・蠖垢海鷯鑢骸萃役・3児のパパな日々〜

石川県の携帯電話規制に関する報道について: 藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

楽なログ : 子供の携帯で努力義務なら



この記事へのトラックバック
学校裏サイトなどにおける「ネットいじめ」が問題になっています。また、携帯電話依存が問題となり、大阪府府知事は学校への携帯電話持ち込み禁止の徹底などを児童・生徒らに呼び掛けました。≫「いしかわ子ども総合条例」改正案に関する情報を追加しました。
中高生の携帯サイト事情、学校裏サイト、ネットいじめ【ぱふぅ家のホームページ】at 2009年06月29日 17:05
この記事へのコメント
  1. 携帯電話なくてもいいんじゃないの?
    なんで携帯電話を持たせないことが問題なのか分からない。

    授業中での携帯でのネット、不法サイトへのアクセス。
    まだ判断力がしっかりしていない子供に携帯を持たせること自体、子供の未来を奪う行為であると思う。そんなに早いうちから携帯電話を大人同様持たせているから、携帯電話なんてものに依存するようになってしまうんじゃないかと思う。

    あくまでも携帯電話は道具であって、我々が携帯電話に使われるようなことがあってはならないと思う。
  2. Posted by 匿名希望 at 2009年06月26日 23:39
  3. それはあまりにもマイナス面に偏った見方ではないでしょうか。
    どのようなことでもプラス面とマイナス面があり、
    双方を勘案することが大切です。

    記事中にも書いている通り、子供から携帯電話を取り上げることは人権侵害になるとともに、
    大人全体に対する不信感を与えることにもなります。
    このことは、子供に人権の重要性を認識させる上で障害になるだけでなく、
    問題を親や教師に相談せずに、1人で抱え込んでしまうことにもつながります。

    それに対し、携帯電話を使うことによる問題は大きなものとはなっておらず、
    例えば子供から携帯電話を取り上げる口実としてよく利用される「ネットいじめ」についても、
    いじめ全体の5.8%しかない上、当の被害者でさえ、ネットいじめの加害者よりも、
    管理教育思想に染まった親や教師の方が脅威と考えているケースが少なくないのが現状です。
    世界中の情報にアクセスできるインターネットから得られる利益を考えれば、至極当然といえるでしょう。

    こうしたことを考えれば、子供から携帯電話を取り上げるというのは、
    あまりにも過剰な反応といわざるを得ません。
    また、「子供には判断力がない」というのもよく見かける理屈ですが、
    そもそも判断力などというものは多様な価値観や知識に触れることによって獲得していくものです。
    このことは、国民が判断力を持つことを忌避する独裁国家が、
    ネット規制に躍起になっていることを見れば分かると思います。
  4. Posted by 筆者 at 2009年06月27日 02:11