2009年06月28日

「児童をピンポイントで性欲から外せ」は詭弁だ

 6月26日、児童買春・児童ポルノ禁止法改正案の審議が衆議院法務委員会で始まりました。
実現すれば日本史上初の焚書令(焚書令第一号)となる単純所持禁止規定を盛り込んだ与党案と、
焚書令賛成派と反対派の主張を足して2で割ったような取得禁止規定を盛り込んだ民主党案が提出されており、
審議結果は今後の日本の人権保障の行方を大きく左右するものとなります。

livedoor ニュース - [児童ポルノ禁止法]改正案審議、衆院法務委で始まる

 自民・公明両党と民主党がそれぞれ国会に提出している児童買春・児童ポルノ禁止法改正案の審議が26日、衆院法務委員会で始まった。18歳未満の性的な画像を所持する行為をどこまで処罰するかが焦点となる。

 審議の概要やそのでたらめさについては、既に多くのサイトで取り上げられているので、
当ブログはいつも通り、他サイトではあまり触れられていない点についてのみ取り上げますが、
それでもこの法案には突っ込みどころが多すぎて、とても1つの記事では書ききれませんので、
最も大きな詭弁と思われる点を3つだけ書きます。

詭弁その1:児童(18歳未満の者)だけをピンポイントで性欲の対象から外せ

 全国紙で法務委員会審議を受けて児童ポルノ問題を社説で取り上げたのは産経新聞のみ、
それも焚書令賛成論に立ったものでしたが、
その内容は焚書令賛成派の詭弁を浮き彫りにしてしまうものでした。

「【主張】児童ポルノ 根絶へ所持規制は不可欠」:イザ!

 与党案も民主党案も、子供を性的対象とすることに反対の立場であることは一致している。子供たちを卑劣な犯罪から守る。そのための法規制強化であることを忘れないでほしい。

 当ブログで何度か取り上げているように、かつて数え年で15歳、つまり満13〜14歳で元服が行われ、
現在でも満16歳で婚姻適齢を迎える(女性のみ)日本において、
18歳未満の者を「児童」と呼称し、あまつさえ性欲の対象とすることに「反対」するなどというのは、
全く国情に合わない価値観です。
そもそも18歳未満であっても、通常生殖能力が備わっていることを考えれば、
性欲の対象になるのはむしろ自然であり、ならないという方が不自然です。
そして、「児童」だけをピンポイントで性欲の対象から外すなどということは不可能であり、
やるとすれば大人も含めて全ての異性を性欲の対象から外す、つまり去勢せざるを得なくなります。

 「子供たちを卑劣な犯罪から守る」といえば聞こえは良いですが、
子供に対する性犯罪をゼロにするためなら何をやっても良いというのであれば、
「小児性愛者」は「絶対悪」なのかで書いたように、最終的には全国民に性ホルモン検査を義務付け、
規定範囲外の数値を出した者は化学的に去勢せよという話になるでしょう。

実際、米国の一部の州では性犯罪者限定とはいえ、このような措置が既に実施されており、
日本でも段階的に導入される可能性は否定できません。

 そして何より、子供は成長するにつれて性的魅力を備えていくものであり、
それに「反対」などというのは馬鹿げているというだけでなく、
子供の人間性そのものを否定するものです。
国家権力から自分の性的魅力に「反対」されたらどのような気持ちになるか、
焚書令賛成派は考えたことがあるのでしょうか。

詭弁その2:ポルノ撮影を子供に強要することは人権侵害だが、大人なら問題はない

 これも同じ産経新聞社説から引用します。

「【主張】児童ポルノ 根絶へ所持規制は不可欠」:イザ!

 海外ではポルノ撮影を目的とした児童誘拐まで起きている。知らぬ間に画像が流れた子供たちの精神的被害も深刻だ。

 このような犯罪の被害は子供に限ったことではなく、大人でも同様です。
それにも関わらず子供だけを「保護」対象とし、大人は対象外とするのであれば、
子供にポルノ撮影を強要することは人権侵害でも大人なら問題ないということになり、
かえって人権問題を深刻化させてしまいかねません。
そして利用方法もポルノには限られず、正規軍、非正規軍、工場、農場での利用の他、
物乞いにまで利用されているのが現実です。
子供にポルノ撮影を強要することは人権侵害でも大人なら問題ないというだけでも、
詭弁としかいいようがありませんが、
仮に日本の児童ポルノ対策が奏功して、それが外国の児童ポルノ産業に打撃を与えたとして、
誘拐犯が他産業で利用せずに子供を解放するなどという保証がどこにあるのでしょうか。
むしろ、より利益の低い産業に転用され、より劣悪な待遇の下におかれる危険が高いと考えられ、
とても「児童保護」になどならないでしょう。

 大体、日本人から外国の誘拐組織に流れるカネなど、どれだけあるというのでしょうか。
規制するというならまずは大人の被害も含めて実態を調査することが先決で、
必要であれば成人ポルノや他の産品も含めて規制すべきです。
それをせずにいきなり児童ポルノだけを規制するというのでは、
「児童保護」などは口実に過ぎず、国民の人権保障を脆弱にするための突破口に
児童ポルノ問題を利用しているだけだといわれても仕方がありません。

詭弁その3:「児童保護」を唱えながら「被害児童」の処罰に自ら乗り出す警察庁

 あまり取り上げられていないようですが、警察庁は6月18日、生活安全局少年課に「画像分析班」を設置し、
被害者の特定に自ら乗り出しました。

asahi.com(朝日新聞社):画像分析で製作者捕まえろ 警察庁、児童ポルノ根絶作戦 - 社会

 警察庁は18日、児童ポルノの根絶に向けたプログラムを発表した。児童ポルノ画像を分析して製作者や被害者を特定するため、同日付で画像分析班を発足させた。警察庁が自ら犯罪の端緒を探すチームを設けるのは異例という。

 「被害」を受けても告訴を行っていない「児童」が警察庁の捜査など望むわけがなく、
事実上、風俗犯として処罰することが目的といえます。

また、警察主導で「被害」を声高に訴えても、
肝心の「児童」が告訴も損害賠償請求訴訟もほとんど起こしてくれないのでは、
被害実態がないことが知れ渡るのは時間の問題ですから、
風俗犯扱いされたくなければ「被害者」として法的措置を取れ、と「被害児童」に迫ることも視野に入れていると思われます。

 尚、先述の朝日新聞の記事によると、警察庁が自ら被害者の特定に乗り出すのは異例だそうで、
ここからも児童ポルノ問題をネット規制の突破口にするという戦略に、
警察庁がいかに固執しているかが分かります。

 これらの詭弁を見れば、焚書令賛成派が「児童保護」などまじめに考えているとはとても思えず、
焚書令第一号発令のための口実に過ぎないということが明確に分かるでしょう。
焚書令賛成派が何故子供に目を付けたのかといえば、
それは子供が成長するに従って性的魅力を増していくという、
表立っては口に出しにくい事実を人権弾圧に利用したいというだけのことであり、
これ以上は考えられないぐらい、最低最悪の卑怯極まる政治活動なのです。

衆議院解散・総選挙が近づいてきていますが、
次期総選挙 党首ではなく議員を見極めよを引くまでもなく(読んで頂ければ理解はより深まると思います)、
子供を盾に取る卑怯者は所属政党を問わず落選させるべきです。
児童買春・児童ポルノ禁止法改正案の審議に対して、各議員がどのような態度を取るのか、
注視しなければなりません。

関連リンク
『Santa Fe』を1年間で処分すべしとする与党案に驚く - 保坂展人のどこどこ日記

創作物は理論で性的虐待は実践か? 性的対象化(sexual objectification)=人権侵害

北へ。の国から:法務委員会での児童ポルノ議論 感情論 vs 法律論