2009年08月02日

マニフェスト公表 「安心」路線の見直しを

 8月30日に投開票される衆院選に向けて、各党がマニフェスト(政権公約)を公表しました。

各党マニフェスト一覧(暫定版を含む。)

自民党(PDF)

民主党(PDF)

公明党(PDF)

共産党(PDF)

社民党

国民新党(PDF)

新党日本

 衆院選 政党に拘らず議員本位で投票しようで書いた通り、
政党という「外箱」に拘らず、国会議員という「中身」を吟味して投票するべきだというのが、
私の基本的な考え方です。
それではマニフェストが無意味なものなのかといえばそうではなく、
現状の「中身」を寄せ集めると、どのような「外箱」が構成されるのかを判断する上で、
重要な資料になります。

 もちろん、「中身」はこれから国民の手で変えるのですから、
投票を終えた段階で、マニフェストの価値はほとんど失われるといえ、
「事後検証」して「公約違反」を追及するなどというのは愚の骨頂です。
落選した議員の声は反映されていても、新人議員の声は一切反映されていないマニフェストに、
新政権が縛られるべきではありませんし、
そもそもマニフェストに書いてあろうがなかろうが、
良いことは評価され、悪いことは批判されて然るべきだからです。

 公表された各党のマニフェストを見てまず思うのは、
右から左まで判で押したように「安心」を並べ立てていることです。
各党のマニフェストが似たものになること自体は、
民意の統合という観点からしてみれば歓迎すべきことですが、
その結果が「安心」というのは困りものです。

 政治に「安心」を求める愚を始めとする記事で何度も書いているように、
「不安」はマスコミが作り出す「感覚」でしかない以上、政策的対応は限られ、
小さな問題に対して過剰な対応を取ることによって「旬」が過ぎるのを待つか、
マスコミに圧力を掛けて黙らせるぐらいしか手がないのです。
具体的方策といえば、事件・事故などの「警察ネタ」のテレビ報道自粛要請を行うことぐらいですが、
これだけでもマスコミや警察庁の猛烈な反発を受けることは目に見えており、
実現は極めて困難でしょう。
そうなるとマスコミが次々に作り出す「不安」に右往左往せざるを得なくなり、
結局それが更に「不安」を増大させるという悪循環に陥ります。

 最近「閉塞感が日本に蔓延している」という類の言説を見かけますが、
絶対に実現できないような無理難題を平然と政治に要求して、
いつまでたっても実現されないと分かると勝手に絶望してしまう人
が増えていることが、
背景にあるのではないのでしょうか。
その結果として各党が公表したのが、
ばらまき財政の拡大と各種規制の再強化を盛り込んだマニフェストだとしたら、
国民がしっぺ返しを受けるのは致し方ないことです。

 しかし、このまま「安心」路線を突き進んでいけば、
日本という国が、落ちるところまで落ちることになるのは避けられないでしょう。
経済的には巨額の負債を抱えてどうにもならなくなったところで、
小泉改革の比ではないような大改革を断行せざるを得なくなるでしょうし、
それを批判する声は「ガス抜き」程度になるように、「フィルタリング」されることになるでしょう。
国民を「安心」させようと躍起になっている中国の後を追うような政策が目立つ昨今ですが、
果たしてそこに国民の幸福はあるのでしょうか。
誰もが反対できなくなりつつある「安心」路線の是非を、この機会に見直すべきです。

関連リンク
自民党の実質マニフェストが出ての雑感: 極東ブログ

外交と安全保障をクロフネが考えてみた。 日本の閉塞感の原因

在野のアナリスト:自民党のマニフェストについて

「【主張】税財政公約 ばらまき競争にはするな」:イザ!

自民と民主は成長戦略の具体策で競え(日本経済新聞社説)

社説:’09衆院選 自民マニフェスト さあ公約を比べよう - 毎日jp(毎日新聞)

自民党政権公約 「責任力」に見合う具体策示せ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

asahi.com(朝日新聞社):社説 2009年8月1日(土)自民党の公約―気迫が伝わってこない



この記事へのトラックバック
 最近マスメディアで”閉塞感”(へいそくかん)という言葉を良く目にするようになった。 そして”識者”と呼ばれる人達が、「現在の日本??.
日本の閉塞感の原因【外交と安全保障をクロフネが考えてみた。】at 2009年08月03日 23:48
この記事へのコメント
  1. TB有り難うございます。

    不安はメディアだけでなく、体制に批判的な組織が煽るものなので、
    逆に安心を強調する、というのは自らが安心を売る側になる、政権与党に
    なることを睨んで各政党もアピールに用いている面はありますね。
    ただ閉塞感は、少子高齢化、年金、税制の不公平感など、日本が
    低成長に喘ぐ中で個人ではどうすることも出来ない問題を、国家が改善
    してくれない限り、解消はされないでしょうね。将来展望を持てる
    国家になる、それが最大の解消策であり、高い経済成長の達成でも良い
    ですし、何か明るい材料を政治の側から提起することが必要なので
    しょうね。昨今の流れからすると、人々は高望みをしているというより、
    悪いことをしている人間を取り締まれないことや、悪い制度と知り
    つつ受容せねばならない、そうしたことに向かう傾向にあり、解消も
    案外容易なのではないかと考えていますね。
  2. Posted by 在野のアナリスト at 2009年08月03日 00:13
  3. こちらこそ、コメントを頂きありがとうございます。

    将来展望を持てるようにすべきというのは私も同感で、
    だからこそ「安心」の名の下に、
    ばらまき財政の拡大や各種規制の再強化が行われていくことに反対しているのです。
    このままだと、日本経済は悪化の一途を辿らざるを得なくなってしまいます。

    明るい材料を政治に求めても、利権拡大の口実に使われるだけなのでやめた方が良いと思います。
    既に経済が成熟している以上、もう高度経済成長は望めないのですから、
    現状でいかにして経済成長を保っていくか、
    その中でどのようにして生きていくのかを考えるしかないでしょう。
    例に挙げられた少子高齢化対策、年金、税制のいずれにしても、
    経済成長の実現というよりは、所得再配分の性格が強く、
    どのような制度にしても、基本的に全体のパイは不変かそれ以下になるので、
    とても「閉塞感を打破」することはできないと思います。

    多少なりとも状況を「明るく」しようとするのであれば、構造改革路線に復帰して、
    成功者は称えられこそすれ、逮捕されるようなことがないようにするべきなのですが、
    成功者が出たら出たで「格差」が声高に叫ばれ、
    些細な法令違反を取り上げて逮捕されてしまう現状では、
    もうかつてのような挑戦者は日本では現れないでしょう。
    僅かな明るい材料さえ、自ら政治的圧力を掛けて潰してしまうのですから、
    この状況で「閉塞感を打破」するというのは、非常に難しいのではないかと思います。
  4. Posted by 筆者 at 2009年08月03日 02:00