特撮ソング好き

懐かしい曲から熱い曲、少し変わった曲など、大好きな特撮ソングをご紹介します

カテゴリ: 挿入歌

1990~1991年に放映された「特警ウインスペクター」の挿入歌を紹介します。

主題歌に比べて使用頻度が低い挿入歌は埋もれてしまいがちです。
しかしアルバムを購入してくまなく聴くと、凄い曲を発見することがあります。
この曲はネットやファンの間でもあまり話題になることがない曲ですが、スゴい曲です。
ぜひ、この曲の「リズムの妙」を聴いて欲しいと思います。

ソウル、ファンク、R&Bという音楽のジャンルは、もはや日本でも一般的になりました。
1980年後半、その流れを汲む「ニュージャックスウィング」というスタイルが一部で流行しました。
この曲は、おそらく特撮ソング唯一のニュージャックスウィングの曲なのです。

曲はまず「W・S・P! W・S・P!」というボーカルで始まりますが、これはイントロだけの変化球。
本格的に始まる前のプロローグのような調子です。

0:16からの演奏、特にリズムセクション。
軽快で、グルーヴ感があり、時に外したりずらしたりするその調子は特撮ソング界はかなり異質です。
日本音楽界にR&Bの流れを作った久保田利伸の「Dance if you want it」(1988年)。
その影響を色濃く感じるドラムのビートとキーボードのメロディです。

ブラックミュージックのグルーヴを親しみやすく変化させた、当時では最先端の「ノリ」。
ウインスペクターヒット曲集の8曲目にそんな曲が入っているとは、かなりの挑戦です。

水木一郎のボーカルは変わらぬ「水木節」のように聞こえます。
メロディの親しみやすさと水木節、それがリズミカルな演奏と合体します。

それぞれ歴史のある、それぞれのジャンルならではの響きや曲調が、このように混ざり合うことが新しい文化を生み出していきます。

対象とする客層を考えると、なかなか理解されにくい挑戦をしているように思えます。
この曲を聴いた人が久保田利伸やニュージャックスウィングを即座に連想するとは思えません。
しかし、このようにして新しい文化というのは伝播していくのです。

「振り向くな 立ち止まるな」の部分で流れるドラムのリズム。
低音が活きたリズムながら、ドスドスと力任せに低音の強さで押すわけでない斬新なグルーヴがこの世界にも現れたのです。

一方、ボーカルと歌詞は曲調に反してまっすぐ。
大人の音楽というと、斜に構えたり、あきらめたような世界観が強いことがありますが、そこは特撮ソング。
正義のために、平和のために、戦い抜く姿勢が貫かれています。
「真実はひとつ 正義」という歌詞は、その最たるところでしょう。

女声コーラスの盛り上げと、水木の声が絡み、ボーカルは定番の熱さ。
0:43「Wake up!」の叫びに対し、続く「悪魔の雄叫びが」の低く太い声のつややかさ。
緩急とりまぜた水木の歌唱は、当時最新のリズムにのってもブレることがありません。

この曲について私は偉そうに紹介していますが、アルバムを購入した当時は気づきませんでした。
「ドラムの刻み方が面白いな」ぐらいの感想でしたが、改めて聴くとそのリズムが強く引っかかります。
当時は久保田利伸ですら「なんか新しい」ぐらいの認知でした。
そういう意味では、この曲の演奏は特撮ソング界にとっては早すぎた曲調だったのかもしれません。

特撮ソングというジャンルはその客層もあって軽んじられることがありますが、この曲のように挑戦的な曲が現れることがあり、あなどれません。
特撮ソングでは1つの番組に対して10曲以上の歌唱曲が作られることがよくあり、このような曲に出会う機会が生まれます。それは特撮ソングのひとつの醍醐味なのです。

特撮ソングのイメージに収まらないグルーヴを聴いて、音楽世界の広がりや変化が楽しくなる曲です。


曲名:ファイヤーハリケーン
作詞:宮下隼一
作曲:瑞木薫
編曲:埜邑紀見男
歌:水木一郎
番組名:特警ウインスペクター(挿入歌)

1992~1993年に放映された「特捜エクシードラフト」の挿入歌を紹介します。

特撮ソングには主人公以外をモチーフにした曲があります。
防衛軍やロボット、敵の組織が主題になることが多いのですが、曲数はそれほど多くありません。

タイトルからわかるように、この曲はエクシードラフトの桂木重吉本部長を題材にしています。
服装はスーツ、平時は寝ていて放任、滅多に現場には出らず、有事の際も本部で指揮を執る役割です。
そんな地味な人物が歌になるのはかなり珍しい。しかし素晴らしい曲です。

もう少し背景をご紹介します。
エクシードラフトは3名の男性実動部隊に、女性データ分析官、桂木本部長の5名体制。
この歌は女性データ分析官の日向愛が、普段の本部長を見て歌っているという体裁です。
サポート部隊ならではの「のんびりした雰囲気」に包まれた明るく楽しい曲です。

明るい音のキーボードが奏でる楽しく弾むようなイントロ。
メルヘン色が強く汚れのない、1980年代女性アイドルの曲のようです。

それもそのはず。作編曲の信田かずおはデビュー当初の松田聖子の編曲を数多く手掛けた編曲家。
まさに王道と言っていいその手腕が存分に活きています。

そしてボーカルは橋本潮。
アニメ「ドラゴンボール」のエンディングテーマ「ロマンティックあげるよ」のボーカルと言えば、美しく艶やかな女声ボーカルとわかっていただけるかと思います。

少しも力みを感じさせない伸びやかで弾むような橋本のボーカルには、女声ならではの明るさと楽しさが満載。
まるで男たちが戦っているのがウソのように、穏やかで安らぐ雰囲気に満ちています。

明るいメロディに楽しい声、コミカルでのんびりした歌詞。
戦いに明け暮れるヒーローを称える勇ましい曲が多い特撮ソングにおいては、まるで砂漠の中のオアシスのようです。

「いつも本部の片隅で パイプくわえてひと眠り」という始まりから、早くも平和ムード満点です。

0:29「やさしい笑顔 たよりないかな?」は、特に柔らかく優しいボーカル。
0:36「うちの本部長 あやしいね」は少しイタズラっぽく弾むように。
リズミカルに「う、ち、のぅ!」と歌ったあとの「あやしいね」の滑らかな対比が楽しい。

そもそも司令官のことを部下が「あやしいね」と言ってしまうところが楽しい。
信頼しているからこその冗談というところに安らぎます。

0:47「走るレッダー・ブルース・キース」は橋本の滑らかな伸びの真骨頂。
ぶるぅ~す」の伸びあがるような感じに、もう充分高い音に来ているのに「キース」とさらに上に伸びる調子なんて最高です。
続く0:50「若さが激しくぶつかるときの」は、語尾を弾ませて「ときのッ!」と歯切れよく。
伸びて弾んで、楽しい空気でいっぱいになります。

そして最後の締めが「たよりにしてます本部長」ときます。
こんな穏やかな終わり方をする特撮ソングは他にないように思います。

しかも語尾は「ほんぶちょぅうぉ~」と、まるで青空を見上げるような爽やかさ。
危機や危険に対比するように、かけがえない平和が描かれています。

心がすさんだ時でも明るさを取り戻せるような、心癒される曲です。


曲名:たよりにしてます 本部長!
作詞:江口水基
作曲:信田かずお
編曲:信田かずお
歌:橋本潮
番組名:特捜エクシードラフト(挿入歌)

1996~1997年に放映された「ビーファイターカブト」の挿入歌を紹介します。

勢いよく駆け抜けるような感じがすることを「疾走感」と表現することがあります。
この曲は聴いていると何事もスピードアップせずにはいられない、疾走感のかたまりのような曲です。

イントロから速いテンポを明確に感じる乾いたドラムの音が鳴り響きます。

疾走感を言い換えると、加速感とも言えるでしょう。
高速道路をスムーズに走っているといくらスピードが速くても退屈するように、時には加速し、時にはぶれたりする方がより速度を感じるでしょう。
この曲にはその要素が満載です。

イントロもそうです。
まず強弱を交えた速いドラムが鳴った後、高音で緩やかなメロディがかぶります。
ここで緩んだところを、すかさずまたドラムが高速連打するのです。
緩急をとりまぜ、最終的に急に持っていくことで高速感がでます。

そして「決め」です。
イントロの最後はドラムが大きく3音、叩きます。
まるで高速で走ってきた車が目の前で音を立てて急停止するようです。
このように決めて見せることで、前後の速度が際立ちます。

歌が始まると、今度は合いの手が加速します。
歌詞の合間に脇からトランペットが速い調子で「ぱぱぱーぱ!」と入ります。
ボーカルもドラムもトップスピードになっているところを更に後押しするのです。
中盤になると、コーラスも合間に入ります。
「フォーメーション」「ビーファイター」と言うワードを早口でまくしたて、スピードが落ちるのを許しません。

そして最初のハイライトが来ます。
0:34「真っ向勝負」です。
んまっ こおしょおぶ」と歌っています。
この「んまっ」と「こお」の間の一瞬の空白がとてもカッコイイ。
高速で走っている車が、ちょっとした段差でジャンプして一瞬宙に浮いたような感じです。

続く「俺が挑む」の後は再びトランペットが高速で勢いのある演奏。

そしてすぐ2つ目のハイライトが来ます。
0:43「クワガー!テントウ!」です。
ここは決めの要素です。
「クワガ」はまだ速く、しかし力を込めつつ。
続く「テントウ」は思いっきり区切って「テ・ン・トウ!
このテントウの決めが、曲の一番の決めになっています。

続くパートは演奏の区切り感とリズムを前面に押し出してきます。
まるでノリのいい手拍子のような音で、明快なリズムが刻まれます。

たたみかけるような高速ドラムが1、2秒入ったと思ったらスッと無音になったり、トランペットが吹かしてみたりと、息つく間もなく走り続けます。

単純にテンポが速い曲は世の中にたくさんありますが、このように終始加速しっぱなしの疾走感が味わえる曲はそうそうありません。

聴いているとどんどん加速したくなりますが、時折入る「決め」ではビシッと決めたい、そんなカッコイイ曲です。


曲名:無敵のフォーメーション!ビーファイター!
作詞:前田耕一郎
作曲:石田勝範
編曲:石田勝範
歌:石原慎一
番組名:ビーファイターカブト(挿入歌)

1989~1990年に放映された「高速戦隊ターボレンジャー」の挿入歌を紹介します。

この曲は挿入歌なのですが、最終回ではエンディングテーマとして使用されました。
主演でこの曲のボーカルでもある佐藤健太の意見なのだそうです。
とても爽やかで楽しい曲調に若い友情を描いた歌詞は、高校生戦隊の卒業に似合っています。

キーボードのエレクトリックな音色で始まる80年代の洋楽ディスコのリズム。
バナナラマの「第一級恋愛罪」-Love In the First Degree-を思い出します。
思い出すというか、ほぼ同じような気もしますので、聴き比べてみるのもおススメです。

この曲が心に残る理由はいくつもありますが、なにより歌詞の甘酸っぱさが格別です。
友情で結ばれた仲間と夢や悩み事について語り合い、そして踊る。
大人にはできない青春の1ページです。

1番の「また夢の続き語り合おう」
2番の「夕陽の降りる静かなグランドで」
なんて、大人には縁遠いシチュエーションです。

作詞の松本一起は80年代のアイドルからCMソングまで多くの作品を生み出し、その数は数千曲とも言われています。
class「夏の日の1993」や、鈴木雅之「ガラス越しに消えた夏」など、甘酸っぱくてほろ苦い想いのある世界はまさに「松本ワールド」と言えるでしょう。この曲もその仲間です。

先に紹介したようにボーカルは本作主演の佐藤健太。
本作ではオープニング曲、エンディング曲はもちろん、挿入歌も多数歌唱していて、ターボレンジャーといえば佐藤健太と思うぐらいです。

爽やかな歌唱はどの曲にも共通しているのですが、この曲では少し声色が面白い箇所があります。
まずは0:51「優しい微笑が好きさ」の「ほほえミィー!」というところ。
同様に1:53「夕陽の降りる」も「おリィー!る」と、「ィー!」が強烈に響きます。
両手を上にあげて背のびでもしているような上方向への伸びが変化をつけて面白いところです。

そしてもうひとつは「あ」段の発音です。
鼻から抜けるように響かせる音が、この曲では特徴的になっています。

「どんな」「好きさ」「静かな」「だめさ」「ないさ」の最後の「あ」
「背中」「必要ない」の中間の「あ」
どの音も鼻から頭頂部への意識した響きで、丸みを帯びた音です。

これは中高などでよくある合唱での歌唱法。
これは偶然でしょうけど、そういう部分も青春を感じさせる一端となっています。

歌詞の最後は「千年かけ今 出会った君と」ですが、この部分は誤解しやすいので注意が必要です。
「千年」という言葉から、ターボレンジャーと妖精シーロンの出会いだと思うかもしれませんが、違います。
人間と妖精が暴魔百族を封印したのは2万年前。シーロンとターボレンジャーの面々が出会ったのは数か月前。
どちらも違います。
「千年」というのは「長い時間」という意味で、転じて「運命的な友との出会い」を意味すると思われるからです。
よってこの部分をもって「ターボレンジャーと妖精の出会いの歌」と解釈するのは誤りでしょう。

80年代バブルの象徴とも言えるディスコ音楽に、青春そのものの歌詞、爽やかなボーカル。

自分の青春を思い出し、キュンと来て学校の水道で顔を洗いたくなるような甘酸っぱい曲です。


曲名:DANCE ときめく心
作詞:松本一起
作曲:井上ヨシマサ
編曲:米光亮
歌:佐藤健太
番組名:高速戦隊ターボレンジャー(挿入歌)

1973年に放映された「ジャンボーグA」の挿入歌を紹介します。

高音が強いトランペットのしびれるような音で目が覚める始まり方をするこの曲は、昭和特撮ソングの勢いと強さの要素が満載です。

とにかくボーカル子門真人の強烈な個性が心に残ります。
クレジットは「谷あきら」という名義ですが、後年子門真人名義で歌い直していますので「歌:子門真人」という音源をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

出だしの「走れ」は、ほぼ「あーしれぃ!」となっており、一歩目から炎を噴くような勢を感じます。

続く歌詞は「ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!」かと思っていたのですが、歌詞は「ジャン ジャン ジャン」でした。
走った後なのでジャンプなのかと思ったのですが、ジャンボーグの「ジャン」だったみたいです。
確かによく聴くと、ボーカルも「プ」とは一言も言っていません。

0:41「怪獣共をぶっ飛ばせ」では「ブッ」だけが突出しており、音として面白いばかりか、どこまでぶっ飛ばしたのかと心配になるほどの凄い「ぶっ飛ばし」だったと感じます。

2番の同じ場所では、1:50「怪獣どもを追っ払え」となりますが、ここでは「おっ」が強いのではなく、「ぱら」が強調されています。
1番と同じ歌い方だと「オッぱらえ」となるところが、「おっパラえ」となるのです。
この辺の力のかけ方の違いは、子門真人の真骨頂。
音の変化も、怪獣をなぎ払うような様子も、とても面白いです。

0:45からはジャンボーグ9の必殺技を連呼します。
こういう技名の連呼は勢いだけになったり、単調になったりと、難しいものですが、子門真人は違います。
サビでもないところで大爆発です。
「クロスショット」は「くろーす」と落ち着いてタメて狙ってから、急にデカイ声で勢いよく「ショット!
ちょっとビックリするほどの急展開。

そして「スワニービーム」は「」の抜ける音を強調した後に「わにぃ」を艶っぽく丸く歌って変化。

「ミラクルフラッシャー」は「みぃらぁくぅるぅ」と階段を一段一段のぼるように歌った後、「ふラッしゃー」の「ラッ」をこれまた急に勢い良く。
ここの必殺技連呼は、メロディ、息づかい、強弱など、様々な変化が楽しい節です。

しかし最大の力点は最後に待っています。
新しい戦力となった2号ロボの名前を叫んで、歌が終わりかと思った瞬間です。

わぁああーおぅ!
突然の雄叫びに、また心が揺さぶられます。
力強いけれど野太くなく、高音が活きるその雄叫びは、ジャンボーグ9の登場や勝利を喜ぶ声のよう。

しかし2番の終わりでは、「わぁお!」と短く軽い雄叫びになっていて、一瞬「おや?」と思わせます。

まあ、そんな軽く終わらせる訳はありません。
演奏も終わった最後の最後、ひとり舞台がまっているのです。

エコーの効いた強烈な「わぁああーおぅ!」が響き渡って、曲は終了します。
余韻が強く心に残る雄叫び。これこそが特撮ソングの熱い良さなのです。

エレキギターの軽妙な音や、木琴のリズムの効いた演奏もあり、あらゆるパートの勢いと強弱が気持ちよく聴いている者の心を盛り立ててくれます。

「わぁああーおぅ!」と叫べばなんとかなると、勢いだけで説得されてしまいそうな曲です。


曲名:戦え! ジャンボーグ9
作詞:清瀬かずほ
作曲:菊池俊輔
編曲:菊池俊輔
歌:谷あきら
番組名:ジャンボーグA(挿入歌)

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