http://www.rondan.co.jp/html/mail/0810/081014-27.html

論壇より
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産科医療対策:周産期医療での必要医療リソースの計算の一案

http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/09/post_eef0.html

http://www.pref.nagano.jp/eisei/imu/teigen/teigen.pdf

先日産科の医療対策についてのプレゼンを聞いてきました。
”長野モデル”とか言って、産科医が減ったので地域でうまく協力したら、
周産期医療がなんとなくうまく回りましたという内容でした。
今では行政のモデルになりつつあるらしいです。

”地域有力者が地域の医師をまとめて囲い込んで行った”という内容なのですが、
たいてい実際は利益対立が先に立ちなかなか難しいので、
みんなが強力なリーダーシップが取れればいいなと思いました。

でも、そもそも、その地域の本当なに必要な医療リソースってどれくらいなんだ?
と思って、試算してみたところ、
”実は少ないリソースでもまわせました。”
(安全性は担保にしている部分があるでしょうが、)
ということを指摘してるだけのような気もしてしまいました。

もちろん、飯田の件はとてもすばらしい政策例だと個人的には思っていますが、
ついつい”本当に必要な医療リソースを計算のしてみたい。”という思いに駆られて、
今回はその周産期医療の医療リソースの計算方法を提示してみます。

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周産期医療での必要医療リソースの計算の仕方

1、地域における周産期医療のリソースはある程度既に決まっている。

周産期医療の原則
"ほとんどの出産は安全に行われる。"
”出産にはかならず一定数の合併症がおきる。”
”周産期医療は産科医だけではまわらない!”

2、産科医の役割
”天につばするとどうなるのか”

3、実際の医療リソースの計算

・産科医一人が見れるのは年間100人から200人
・最大瞬間風速(瞬間における同時分娩取り扱い数)がキー。
・周産期医療全体のスタッフと医療リソース
・産科医と助産師の役割
・周産期医療スタッフのニーズ
・重症例対応の必要性

4、以上を踏まえた分析

・数字が読めないのでどうしても安全域が必要。コストダウンはリスクヘッジと同意義。
・値段相応、値段相応のシステムしか作りようがない。
・ぴんぴんコロリを実装するべきなのかどうなのか。
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1、地域における周産期医療のリソースはある程度既に決まっている。

人口と年間出産数のデータさえあれば、地域に必要な周産期医療の医療リソースは決まる。
”産科医”がいない。
のではなくて、
”地域が産科医に必要なニーズを満たせない”の間違いではないか。

経済やインフラが成り立てば、人は集まる。産科医は開業したがる。
”産科医だけがいても何も出来ない。”

そんな簡単なこともわからない素人がお金や権力を握るからおかしなことになる。
じゃぁどうすればいいか?(怒)
ということを、順に追って説明する。
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周産期医療の原則その1

"ほとんどの出産は安全に行われる。"

お産の統計を見ると、ほとんどのお産は安全に行われる。
研修医でもお父さんでもおばあさんでも、経験がある人がいれば、大概は大丈夫。
ほとんどの人(全出産のうち、90−95%くらい)はなんとか無事に生まれてきます。
(もちろん何かあったらうまく対処できるという前提です!救急車は5分ですぐ来るし、うまいところ病院に搬送してくれて、医療機関は転院処置を即決し、即決で患者を受けて、地域のどこにいても30分以内に帝王切開となる理想環境。全部がうまいこと行くと思いますか?その状況をご存知なのに、医療機関をうまく活用できないのは、いったい誰の責任ですか?)

もちろん、それを誤らないようにやるのが産科医や助産師のプロフェッションです。
周産期医療が発達した現在では、昔のこの数字では満足いく数字ではありません。
事故を出来る限り低く、しないといけません。
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http://iseki77.blog65.fc2.com/blog-entry-1162.html
助産院の完遂率から数字をみてもだいたいあってますね。
(”95%のお産は問題なくいく”というのはよく聞きます。)
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助産院出産の割合は1%程度
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2007/03/post_d6f6_7.html
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そのリスクを何とか減らそうと、産科医や助産師は、長期にわたって外来でリスク回避に努めています。
血液検査をしたりエコーをしたり、他科専門家にもいろいろ相談して、事前に外来してそのリスクを減らしています。
(だから、とびこみ出産はとてもリスクが高く、自己責任でリスクは回避してくださいというしかない。)

でも、逆に言えば、

周産期医療の原則その2

”出産にはかならず一定数の合併症がおきる。”

ということです。
お産は決して全部が全部安全ではないんです。
全出産の5−10%にはかならず重篤になりうる合併症がおきうるということです。

(一昔前ならば、出産で亡くなる人は非常に多かったはずなのに、
医療技術が進歩して、失敗しなくなったとたんに、人々は医療のありがたみを忘れて事故を非難する。)

ちょっと難産だったりすると、帝王切開が必要になったりすることがあります。
(帝王切開の割合は施設によりますが、15%〜30%と言われています。)
(きっと腕の問題もありますし、高レベルな施設の問題もあります。)
(この点を非難してくる助産師や助産院もいます。)
(もちろん医師や助産師の技術も問題になりますので、日本にあるかどうかわかりませんが、
開業医、開業助産師オープン性の病院を選ぶといいかもしれません。)

帝王切開には麻酔科医も必要です。新生児のために小児科医(NICU医)も時に必要になります。
そして麻酔科医がいても、時に大出血して死に至る合併症もあります。

重篤な合併症が起きた時、麻酔科医、集中医療医がいないで、
どうやって対処するのでしょうか?

複雑な胎児奇形が発覚した場合、小児科医、小児外科医、ICU医がいないでどうやって救命できるのでしょうか?

つまりは、

周産期医療の原則その3

”周産期医療は産科医だけではまわらない!”

周産期医療は産科医だけではなく、主に小児科医、麻酔科医、助産師、そして、内科医、外科医、集中治療医、産科看護師、NICU看護師、手術看護師、そして救急隊など、各分野の連携で支えるもので、産科医だけに押し付けるものではありえません。

つまりは、
”オラの村に産科医いないだ。”>”金で引っ張るだ。”
と一本釣りで産科医を町に引っ張っていっても、
その人のリスクをお金に物を言わせて負わせてるだけなのです。
合併症がおきる人のことや、先天性疾患を持つ子供を見捨てていることに他なりません。
それどころか、
”自分らさえよければ、他はどうなってもかまわない”
という日本全体に横たわる身勝手でしょうがないメンタル的な問題も見え隠れします。

大きな病院のインフラを整え、スタッフを整えるだけで、何とかなる問題を、
どうして地域で協力できないんでしょうか。
どうして地域に予算を集められないんでしょうか。

地方自治体は一旦、痴呆自治体と名乗ったほうがよいと思われませんか?
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2、産科医の役割

5%の地雷をどうやってみわけて踏まないようにするのか、
つまりは選択したくない帝王切開をどうやって判断して安全なお産を心がけるか、
そして、もし地雷を踏んでしまった場合に、どう対処するかという専門家が、

産科医の先生です。

もっと産科医を大切にして、効率よく、彼らを助けてサポートして、
日本全体に元気をあげていく方針をどうして誰もうちたてないのか不思議でしょうがありません。

産科医が減ったのは、産科医に都合の悪い環境をみんなで準備したのが原因であるので、
”天につばする”と
どうなるのかということをよく示していると思います。

ということで、地域における医療インフラの計画を立ててみようと思います。

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3、実際の医療リソースの計算

たとえば年間出産数が1000件くらいの町があったとします。
必要な医療のリソースを計算します。

ここでは、年間1000件出産がある町(自治体)のことを考えることにします。

1、産科医一人が見れるのは年間100人から200人

一人の産科医がみれる最大数は200件/年間くらいです。
ただし、年間200人は相当きついです。どの数字が適正なのかは、産科医しか判断できませんが、
当然産科医一人では達成できません。
安全なお産は助産師、研修医、家庭医などに担当してもらう仕組みが必要になります。
(日本ではほとんど産科医、助産師以外は携わりませんが、、)

少し緩めてみて、100−150件くらいにすれば、何とかなるかもしれません。
ですから、単純計算では、1000件の出産に産科医は5人−10人程度必要になります。
ただし、これで終わりではないところがミソです。

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http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/gyne/nyukyoku/message.html
適正とされる数(120件/年  /千葉大学
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2、最大瞬間風速(瞬間における同時分娩取り扱い数)がキー。

1000件の出産があるとすれば、月平均の出産数は83件程度になります。
ただ、毎月出産は平均しないので、ばらつきます。
ばらつきは60件−100件程度でしょうか、場合によると、2倍程度に広がることもあります。
でも今回は最大で月100件ということにしましょう。

月100件のお産を考えるとわくわくしてきました。
実はお産を待ち構えるのは非常にエキサイティングです。
なぜなら、お産は通常月の満ち欠けなどと関係するので、一気にドバット来ます。
そして決まって深夜から早朝の緊急時間帯です。
病院は閉まっていて通常業務の体制ではありません。
産科の業務の基礎は、その緊急性にあります。

月平均60件くらいの病院でも、満月1日5人くらい生まれることもあります。
満月周辺で合計出産数が10人くらいの場合もあります。
毎日コンスタントで予想がつけばいいのですが、それが出来ないのが産科医療の醍醐味です。
満月の前後には10%が重なると言われている論文もあります。
つまりは、単純計算で、満月の時は一日に最低、10件のお産に耐えうるシステムを稼動しなければいけません。
(統計の平均なので、当然オーバーします。)
(大げさすぎますか???データください☆)

産科というのは平均値で求めても意味が無くて、常に最大値で話をしないと、
キャパシティが過剰な時の対応が出来ないので、リソースの計算は難しいですが、
つまり1.5倍を安全域として取ると最大で15件くらいとして、考えてみてもいいかもしれません。
(かなり乱暴ですが、、、データください☆)

まぁ、一気にこれだけの数が同時並行というのはなかなかないと思いますので、
もう少し現実的には下降修正してもよいと思われます。
でも今回は、この前提では1日最大15件のお産に耐えうるシステムをそろえることにします。

(もちろん計画分娩を進めるという政策があってもいいように思われます。)
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参考データ
http://www.ito-sanfujinka.com/deli.html
緊急帝王切開の割合が5%ですね。 )伊藤産婦人科
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3、周産期医療全体のスタッフと医療リソース

必要なリソースを計算してみます。

1、産科医と助産師
2、周産期医療スタッフ
3、重症例対応
4、合計
5、人的リソースの維持
6、インフラの維持

1、産科医と助産師が妊婦を直接見る役割をしている。

15件のお産で、助産師が一人で2件持つとすると、
最低8人の助産師、
一人の産科医で3人分見れると仮定すると、
5人の産科医、
15室のLDR、15室の産科ベッドが必要になります。
(休憩、勤務交代のことはさっぱり考えていません★)
(もちろん出産時間も勘案していません★)
(満月なので3−4日くらい前後するので、もう少し余裕があるかもしれませんが、、、)
(開業産科医や助産所の組み合わせでもう少し”経済”効率は良くなるかも。)

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千葉大学産婦人科
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/gyne/nyukyoku/message.html
わが国の分娩のうち、半分の50万件あまりが病院で取り扱われている。病院では、4,000人の医師と15,000人の助産師とが診療に当たっている。一方、残り50万件の分娩が、診療所で取り扱われている。この診療所では、3,000人の医師が、助産師3,000人とともに分娩管理に当たっている。したがって、診療所で働く助産師は少なく、全国で10,000人の助産師が不足している。
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2、帝王切開には、周産期医療のスタッフが必要

15人のうち、25%が帝王切開であれば、
4人の産科医、4人の研修医、4人の麻酔科医、4人の小児科医(NICU医)、
4人の助産師(もしくはNICUナース)、4人の手術室ナース、

が追加に必要となります。
そして、4のフリーな救急対応手術室、4床のフリーなNICUベッドが必要になります。

もし助産院やクリニックの時は、
緊急麻酔科呼び出しや、救急車が必要になるかもしれません。

もちろん予定の帝王切開の方が多いでしょうから、緊急は1/2か1/3くらいかもしれません。

3、帝王切開には重症例がかならずまぎれこむ。

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http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/gyne/nyukyoku/message.html
250人に一人が高度救急救命処置が必要 )千葉大学産婦人科
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そして、5%、つまり最低1件の”重症”を取りうる施設が無いといけません。
重症患者さんは、上記とダブりますが、
妊婦には産科医、研修医、麻酔科医、麻酔科研修医、集中治療医、新生児には小児科医(ICU医)、助産師(もしくはNICU看護師)、手術室ナース(2人)、救急対応手術室、そしてGICUとNICUが必要になります。

この割合に関しては不明ですが、全体的に捕らえると、期待値としては、
緊急帝王切開の人の割合から言えば、誤差範囲になるのかもしれません。

(重症例のデータが欲しいのと、正確なデータもいいのですが、数字を多めに見積もる価値も概ねご理解ください。)

4、合計してみると

あわせると、15件のお産には、”平均で”(ココ重要)、

医療スタッフ

産科医 5人+4人+1人  9人
研修医 4人+1人 4人  (>計算はあいまい。研修内容については議論対象外★)
小児科医(NICU医) 4人+1人 4人
麻酔科医 4人 +1人(2人?) 5人 >(重症例には応援欲しくないですか?)
助産師 8人 4人 1人 12人
NICUナース 4人
手術室ナース 8人
集中治療医 1人
4件の救急搬送スタッフ(場合によっては)

(診療所での新生児仮死はどうするんだろ。。。助産師NRP受けてるか?)
(という点においては、クリニックでの出産はやはりリスク。)

医療リソース
LDR 15
(開業助産所、開業産科医なども組み合わせる。)
緊急手術室 4
GICU 1床
NICU 4床
4件の救急搬送の車(救急車に限らず) 
場合によっては輸血などの緊急車両

この前提では、緊急時には最大これだけの医療資源が必要になります。
つまり、平時でもこれらを維持する計算が必要となります。

5、医療リソースの維持のコスト計算(人的リソース)

定点での必要人数 機能維持人数 最大人数

産婦人科医 3人 >待機で10人
(10人だとぎりぎりのこともありえます。大病院の1人と開業医の1人では価値と質が違います。)
(当直に応援とか、待機とかをうまく使うことも考えてもいいですね。)
看護師(助産師含む)は、5人 >待機で12人
(看護師は交代性なので人数は最低3−4倍は必要です。パートやコールをうまく組み合わせる必要があります。)
小児科医(NICU医) 1人 >緊急時は4人
(NICUができる小児科医ですね。)
(当直の小児科医の数がキーとなります。)
NICUナース 1人 >緊急時は4人 + 待機で6人程度必要
GICUナース 1人?
麻酔科医 待機で常に2人 最大で待機で5人は必要。
手術室ナース 待機で常に2人 最大で待機で8人必要。

(集中治療医は他科の関係があると思いますが、もう少し大きな地域でないとペイしない可能性があります。)
(助産師が不足しているので、現状では看護師に勉強していただくしかない状況が多いですね。)

という、試算をしてみましたが、、、、

・・・・・これまでのとおり、周産期医療はかなり数字が読めません。
計算しようにもなかなか難しいのが本音としてあります。
(もっとデータください。)

必要な予算は、
産科医13人、助産師20人、小児科医8人、NICUナース8人(どこかで共有の必要あり?)
麻酔科医 8人 手術室ナース 16人 くらい必要?

人件費 
1500万円×13人 助産師600万円×20人 小児科医 1500万円×8 NICUナース 500万円×8 
麻酔科医 1500万円×8 手術室ナース 16人 (他科との共同運用)

2億円、1億円、1億円、5000万円、1億円、5000万円、人件費で 約6億円くらい、
余裕を見れば、これくらいは周産期医療の維持費としてかかるかもしれません。

1000人につき、60万円程度の予算です。ちょうど給付金の予算くらいでしょうか。
(出産はもちろん、人経費以外にも予算はかかりますけど。)

本当に、小さな自治体が、産婦人科に3000万円払ってすむ問題なのですか?
たらいまわしが解決されますか?
と思ってしまいます。

(もちろん、開業助産所や、開業産科をうまく取りこむのも必要だと思われます。)

6、医療リソースの維持のコスト計算(インフラ)

年間出産平均1000件では、月平均約80件です。

前提条件として、平均日数を定義すると、

普通分娩で、平均入院3日
帝王切開で平均入院5日
重症例で平均入院14日とします。(7日GICU)
重症の新生児で平均入院28日、帝王切開で平均入院14日とします。
(数字はかなりいいかげんなのでデータください。)

入院日数も考えないといけません。

重症は平均14日間入院とすると、4人で、28日病院に滞在します。
(GICUは7日です。)
帝王切開は平均5日間入院とすると、15人で、75日間病院に滞在します。
普通分娩は平均3日間入院とすると、65人で195日病院に滞在します。
NICUは平均14日間の入院とすると、4人で、56日病院に滞在します。

(上の数字は仮定です。データして各自計算してください。)

・GICUは平均でも最低1床必要で、2-3床くらい余分に必要な時もあるかもしれません。

・産科病棟は月平均で合計300くらいの病床が必要なので、30で割ると平均10床くらい必要になります。
緊急時(満月の時は緊急?毎月予定緊急ですか?)にはもっと必要になるので、
一般病棟(もしくは婦人科病棟)と数を合わせる必要があります。
全部LDRだと、採算が取れない可能性がありますから、LDRを病床と別に作ったほうが効率がよいかも知れません。
LDRを個室の婦人科病室にしてしまってもいいのかもしれません。

・NICUは平均で約2床必要で、最大で10床くらい必要かもしれません。
(NICUはわりと読めません。長引く人は長引くから。)

出産1000件に必要な周産期医療リソース

インフラ

産科病床
LDR(一般病床としても使用可能) 5
産科病床(婦人科・外科と件) 5
婦人科・外科などと合同病床枠 5

GICU病床
GICU 1
ICU +2

NICU病床
NICU 4床 >最大10床に増床可能

総合病院は最低1つは必要でしょうか?
クリニックは、地域で相談して、
”どういうように緊急時に運用するか決めてから開設。”
というほうがいいような気がします。

(ちょっと大きい病院の病床数などを参考にすると年間1000件出産の場合は整合性がとりやすいと思われます。)
(個人的には手術の可能なLDRを1つ準備して麻酔器をおいて、緊急帝王切開に備えるのも推進してほしいです。)
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4、以上を踏まえた分析

1、数字が今ひとつ読めない。

ここまで読んできて思うのは、
安全に周産期医療を行うには、わりと無駄に(”余分に!”と書かねば殺されます。。)医療リソースを食うということです。
その割りに、月一回の満月などにどっと仕事が押し寄せます。

もちろん半月時に仕事が重なったり、他の要因も絡むので、
満月だけに照準を合わせられません。

つまり、一つの病院や地域だと、リスクヘッジしないと、採算が非常にとりにくいのです。
だから、採算を上げるには、リスクをあげてみたり、
全体として、地域、またもうひとつ、大きな行政区域での枠組みを作ったりしています。

(”ピンピンころり”という人生観も受け入れなければいけないのかもしれませんが、、、)
(多分行政側が行政の数字をうまく導き出せれば、優秀な皆さんなら必要リソースの計算はすぐできると思います。)

2、値段相応のシステムしか作りようがない。

USの周産期医療は一極集中型ですし、日本は小さな医療機関が集まっています。
周産期医療はどうしてもリスクが避けられない分野なので、

開業医の産科や助産院は、

”大病院への搬送”
”大病院への紹介”

という社会資源がないと開業できませんし、
(ひとりしか産科医がいない施設からどろどろの仮死で生まれた子供を送りつけられてはまるケースもありますね。)
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脳性まひについて@千葉大学産婦人科
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/gyne/nyukyoku/message.html
脳性小児麻痺のうち分娩時の異常に起因するものは2割もある。
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http://www.jaog.or.jp/japanese/jigyo/JOUHOU/H11/net.htm
本ネットワークの運営がスタートして以来1年間における香川医大の母体搬送症例は30例。3病院からの母体搬送は8例(26.6%)。その他の施設はほとんどが診療所であり、これら3病院にかなり多くのハイリスク妊婦が集まっているものと考えられる。
これら3病院からの症例はすべて、本ネットワークによる早い時期での情報交換と、それによるスムースな母体搬送により全例救命可能であった。一方他の診療機関からの母体搬送は22例中4例(18%)に周産期死亡が認められ、本システムで接続されていればさらに予後が改善されたと思われる症例が認められた。
(こういうデータに対する助産院の反応は決まっています。多分”香川の産科のレベルは低い”。としか言わない。)
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搬送に関係して、必ずいろいろなリスクを負っています。

一般の人は入院中のフランス料理やお土産で出産する場所を選んでいる人もいましたが、
出産のリスクを鑑みた場合には、どういう感覚なのか理解しかねます。

自己責任でハイリスクな状況に陥り、社会資源を大幅に使った挙句に、
結果が伴わないと訴訟をするというのは、
個人の勝手で社会リソースを使用しすぎだと思うのです。
もっとそういう状況になってしまった自分の責任を追求するべきではないかと思います。

(ここでは直接関係ないですが、実は料金も踏み倒す人なども最初に何とかして欲しかったりもします。)

USではNICUやGICUのある病院での出産は約300万円以上かかるそうですし、
入院も長く入院を許可してくれません。

どうやって、この社会リソースのすくない日本で、
みんなが納得する医療システムが作れるのかは、

国民一人一人が身をもって痛みを感じて政策を変えるのではなく、
国民一人一人が、想像力を持って、解決してほしい問題だと思います。

他にもいろいろ問題はありますが、
多分自分たちで考えて解決するしかない問題です。

どうか産科医の先生を国民みんなでうまくバックアップできるように
政策決定をして欲しいものです。

唯、システム全体の見直しと、大病院への支援しか道はないと思います。

・大病院周囲への妊婦滞在施設の援助
・よきサマリア人法での救済
・産科医、助産院と大病院との嘱託医契約義務化
・出産一時金を個人ではなく医療機関へ支払う
・産科看護師への一定の理解
(政策サイドは内診禁止をして、あの時期に敢えて産科を崩壊させたかったんでしょうか。)
・NRPなどの教育プログラムの徹底
・人材の確保、開業の制限
・大病院での産科医、小児科医、助産師、看護師の給与の支援
・病院関係者への24時間オープンの託児所の徹底補助

などを提案してみます。