東京法律事務所blog

6月20日(土)、午後3時~4時、KENPOウェブセミナー「都知事選挙で何が変わる?~新型コロナ対策から見る憲法と都政~」を開催しました。

告知期間が短かったにもかかわらず、多数の方にご試聴いただきました。
ありがとうございました!
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4つにわたるテーマについて、それぞれ概要を報告します。

テーマ① 「自粛と補償はセット」と憲法(弁護士 本田伊孝)
 「緊急事態宣言解除後も、東京都では休業要請は全面解除されず、先週12日にカラオケ店やパチンコ店などの遊興施設への休業要請が解除、昨日、キャバレーなどの接待を伴う飲食店やライブハウスへの休業要請が解除されました。休業要請が全面的に解除されるまで、2か月以上にわたって、店舗、施設は都の休業要請に応じてきました。」
 と、休業要請に応じて営業停止したホストクラブの例を紹介。
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 休業要請に応じて営業を止めた場合には、憲法29条3項によって、「正当な補償」が認められるはず。インフルエンザ特措法の成り立ちからしても、補償がなされる「特別な犠牲」にあたる、と解説しました。

 そして、「来月5日投票の都知事選は、
東京都は都民を個人として尊重しているのか、を問い直し、『みんなの命や健康を守るために、必要な負担はみんなで分かちあおう」』という観点からコロナ対策を考え直す機会です。」「東京都の政策を改めさせ、『休業要請に対する補償の徹底』をする政策に変えていきましょう。」と呼びかけました。

テーマ② 緊急事態宣言と緊急事態条項(弁護士 加部歩人)
 「
新型コロナ拡大の最中の今年4月、安倍総理や自民党議員から、憲法を改正して『緊急事態条項』を盛り込むべきだ、という発言が相次ぎました。」
 そして、緊急事態条項とは何か、歴史上の経験から明らかにしていきます。 
 ドイツでは、ワイマール憲法にあった緊急事態条項を使って、「『民族と国家を防衛するための大統領緊急令』『ドイツ国民への裏切りと反逆的策動に対する大統領令』を当時の大統領に出させて憲法上の基本的人権を停止させました。ナチスはこの大統領令のもと、約10万人ものナチス反対派を逮捕令状なしで拘束するという激しい弾圧を行いました。」「これらの大統領令による圧力を背景に保守・中道勢力を懐柔し、悪名高い『全権委任法』を…可決させ」、「この全権委任法によって、ヒトラー内閣は憲法違反の立法をすることが可能となり、ワイマール憲法は骨抜きにされ、独裁体制完成へ大きく前進しました。」
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 歴史上、悪用されてきた緊急事態条項を、「安倍総理も自民党も、今回のコロナへの対策を口実に緊急事態条項を憲法に入れた方がいいと言っているのです。しかもこの自民党案、諸外国の緊急事態条項と比べても、悪用に対する歯止めを全く欠いている非常に危険なものなのです。
 ①まず国会の承認を得るまでの期間が曖昧です。『法律で定めるところにより』と書かれていますが、これでは国会多数派の都合で期間をいじることができてしまいます。
 ②また、『法律で定めるところにより、…政令を制定することができる。』とありますが、法律で定める内容が白紙委任になる可能性が否めません。
さらに、
 ③『大地震その他の異常かつ大規模な災害により、』という部分も大事です。国民保護法という法律で『武力攻撃災害』という言葉が使われていることから明らかなように、自然災害でなくても、例えば戦争を理由に内閣の強力な権限を発動できてしまう内容になっているのです。この間安倍政権が憲法9条を改正して戦争をできる国づくりを推し進めようとしているという事態がありますが、この緊急事態条項導入という議論も、実は戦争をできる国づくりの一環ということができるかもしれません。」
と、警鐘を鳴らします。
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 そして、コロナ対策は、今ある法律でもできるし、法律を改正して対応することもできる、と力説。政府・自民党は今後もしぶとく緊急事態条項を含めた改憲を進めようとしてきます。
「『緊急事態宣言→緊急事態条項』という連想ゲームのような安易な発想に騙されてはいけない」「当事務所でも、9条が中心になりますが安倍総理による改憲発議に反対する全国緊急署名に取り組んでいますので、是非ご協力ください。」

テーマ③ 都立病院独法化問題(弁護士 長谷川悠美)
 新型コロナウイルス感染症に関連して、まずは都立病院・公社病院の役割を説明。
 「
都立・公社病院は、民間病院でも行っている通常の治療に加えて、『行政的医療』を提供しています。この『行政的医療』とは、今回の新型コロナウィルス肺炎のような感染症医療をはじめとして、災害医療、救急医療、周産期医療など社会的に必要な医療です。

 このような医療行為は、社会的には必要だけれども、病院経営の観点からすると採算の取れる医療ではありません。そのため、民間病院が担うことには限界があるため、税金で支えて公共の医療を守ろうという発想で、都立病院・公社病院が設けられ、法令等によって行政医療を担っています。

 新型コロナウィルス肺炎の治療も、病院経営の観点からすると赤字の部門です。感染者をいつでも受け入れられるように病床を空けておかなければなりませんし、感染対策のために病床数を減らさなければならないので、満床にすることができないからです。

それでも感染者を受け入れるのは、都立・公社病院が『行政的医療』を担っているからであり、それが都立・公社病院の使命でもあるのです。」
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 「このような都立・公社病院が、なぜ『地方独立行政法人化』されようとしているのでしょうか。

それは、都立・公社病院が『赤字経営』であるとして、経営の自助努力を求めるためです。東京都は、都立・公社病院に対して、一般会計から『繰入金』を支出しており、これを問題としているのです。

しかし、「繰入金」は、行政的医療のための費用であり、これがなければ採算の取れない行政的医療を都民に提供することはできません。」

として、2006年に独法化した大阪府では、運営負担金をこれまでに半減させているという例を紹介。

「東京都の繰入金や運営負担金も年々削減されていくことが予測され、行政的医療を維持・拡充していくことは困難になります。」

「また、地方独立行政法人となると、自助自立の財政が求められます。」「3年ごとの中期経営計画とその達成度合いに対する評価をもとに、病院の経常収支および医業収支が改善されなければ、補助金は減らされる可能性があります。」

「それをおそれれば、病院自身の取り組みとして不採算部門の切り捨て、収益構造の改善のための取り組みをすることとなります。」

「実際、『東京都健康長寿医療センター』では、独法化された後、病室の25%である141室が有料個室とされました。」

「新型コロナウィルス肺炎患者を受け入れられる病床数が減っていくことになります。」
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 「日本では年々公的医療の病床数は減っており、平成19年に230,823床だったのが、平成29年には209,293床になっています。10年間で2万床以上が減らされています。」

さらに、「都立・公社病院が『行政的医療』といういわば不採算部門を扱っている以上、地方独立行政法人となり経営について自助努力しなければならなくなると、経費を削減せざるを得ません。一番大きい経費というのは、人件費です。」
 「都立・公社病院の医療従事者が、『行政的医療』という大変な役割を、低賃金で担わざるを得なくなります。耐え切れなくなって退職してしまう方が多く出ることが予想されます。そうすると、都民に現在の質の医療を提供できなくなります。」


 「イタリアでは新型コロナウイルスの感染拡大によって、医療崩壊に直面しています。」「過去5年間に約760の医療機関が閉鎖され、医師5万6千人、看護師5万人が不足しているといいます。EUが求めた財政緊縮策として、政府が公立病院の統廃合や医師の給与カットなどの医療費削減策を進めた結果、多くの人材が国外に流出し、緊急事態に対応できなくなったと指摘されています。同様のことが日本でも起こりかねません。」


 「
都立・公社病院の独法化には、都民から1,511件の意見が寄せられ、多くが独法化に反対するものでした。3月には、独法化準備をやめ直営の堅持を求める署名3万8,000人分以上が都議会に提出されました。」

しかし、「この新型コロナウィルス肺炎の状況下でも、都の方針は変わっていません。」
 都知事選で、独法化を止めましょう!

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テーマ④ 都知事選の争点はここだ(弁護士 中川勝之)
 「都民の要求は様々ありますが、地方自治法の条文にもあるように、『住民の福祉の増進を図ること』が基本です。すなわち、私たちの衣食住、暮らしを守ることです。
 国の政治との関係でいえば、昨年10月に消費税率が10%にアップとなったり、社会保障の給付の削減が続いたりという中で、都政がその悪政からの防波堤となる役割が求められます。
 同時に、現在の新型コロナの問題で私たちの生存権がおびやかされるかもしれないという状況では、新型コロナへの様々な対策も都民の切実な要求になっています。」
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 「では、この視点で今の都政はどうかを見てみましょう。」
 「東京都は国内で新型コロナの感染者数が一番多く、累計で全国の約3分の1を占めています。人口も国内で一番多いからといっても、多すぎる感が否めません。」「「東京オリンピック・パラリンピックを開催するために対策が後手後手となったからにほかならないと思います。」
 「特にPCR検査については国が制限するという方針を取る中、積極的に検査をする他の自治体はありましたが、東京都は国の方針に無批判に従っていました。しかし、先日の6月都議会でも小池さんは『必要な検査が実施されている』と強弁していました。そもそも、小池さんは新型コロナ対策は都政の仕事と思っていないかのようです。」
 「同じく6月都議会で『このウイルスの拡大を防ぐ手立ては、私たち自身の強い意思と行動のみ』と言ってみたり、その後もこれからは自粛から自衛である旨発言しています。要するに自己責任論です。皆さん、新型コロナで自己責任論をふりまく方を都知事にしたいでしょうか。こんな調子ですので、自粛等で大打撃を受けた営業に対する補償も、国からも不十分ですが、東京都からも不十分です。」
 「新型コロナに関連して保健所が注目されましたが、これも1994年には東京全体で71か所あったのに現在では31か所に減らされています。」「小池さんも受け継ぐ新自由主義の考えによる選択と集中の結果です。」「つまり小池さんは公約として『稼ぐ』東京の実現等を掲げていますが、稼ぐ部門に選択して集中させるという新自由主義に基づく政策を取っているわけです。医療・福祉とか、防災対策とか、平時の場合には金が出るだけで無駄なわけです。だから新自由主義の考えからはできるだけ削減したいということになります。しかし、平時でなくなれば、緊急事態になれば、病院や施設等が完全に不足してしまうわけです。ですので、ある意味、新型コロナの問題から、政治のあり方が見えてきたと言う方がいましたが、まさしくその通りなのだと思います。」
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 続いて、都政に対する政治姿勢という見地から、市場問題とオリンピック問題を見ていきます。
 「豊洲新市場の開場が2016年11月7日に決まっていたのですが、小池さんは、当面延期して、安全性等の見地から検証することにしました。これ自体は評価できるものですし、その後、『築地は守る』と言って市場機能を残すことも約束していました。しかし、結果的には2018年、豊洲新市場の開場、築地市場の廃止を強行してしまいました。小池さんは、豊洲新市場の土壌も地下水も環境基準以下にして開場するという約束もしたのですが、それも撤回してしまったのです。しかも、豊洲新市場は使い勝手が悪く、事故等が多発していると聞いています。取扱量も築地市場の時に比べて激減しています。」
 「東京オリンピック・パラリンピック問題でも同じです。経費負担が膨れ上がってしまったので、小池さんは『五輪関連予算運営の適正化』を公約で掲げました。しかし、結局は、見直しをせず、それどころか追加経費まで受け入れてしまいました。1年延期になった今になって今度は簡素化とか言っていますが、思い付きのようでもあり、信用できません。」
「こうした都民との約束を反故にするような姿勢の小池さんは都知事としてはふさわしくないと思います。」
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 「では、都民のための都政として、皆さん方はどんな要求がありますか。」
 「子供を保育園に預けられるようにして欲しい、教育費ができるだけかからないようにして欲しい、都営住宅に住めるようにして欲しい、特別養護老人ホームに入れるようにして欲しい、首都圏直下地震や台風が怖いから防災対策を十分にして欲しい、ブラック企業をなくして欲しい等、たくさんありますよね。」
 「こういった具体的な政策を候補者が公約として掲げているのかどうか、是非見て欲しいと思います。また、そういった要求に対して、誠実に耳を傾けて聞く姿勢のある候補者かどうか、これは候補者の経歴や実績で分かることが多いと思います。」

 「私ども東京法律事務所では、今の都政を転換して、都民のための都政を実現してくれる都知事候補者として、先日、同じ弁護士で、元日弁連会長であった宇都宮けんじさんを支持する旨の決議をあげました。事務所のホームページにもアップしていますので、ご覧下さい。
 宇都宮けんじさんは、今回の都知事選を「都民の生存権がかかった選挙」と位置付けており、今の都政を転換し、都民のための都政を目指す現実的な政策を多数掲げています。私ども東京法律事務所は最後まで全力で宇都宮けんじさんを応援していきます。」

東京法律事務所の宇都宮けんじさん支持決議はこちら
https://www.tokyolaw.gr.jp/news/2020/tp_326.html


いかがでしたでしょうか?
終了後のアンケートでは、「選挙前に聞けて、考えるきっかけになりました。」「都政の争点がよく理解できました。」などの感想も寄せられました。

本ブログも参考にして、まずは東京都知事選挙の投票に行きましょう!!

下記イベントを開催します。

お気軽にご参加ください!


KENPOウェブセミナー第1回

都知事選挙で何が変わる?

~新型コロナ対策から見る憲法と都政~

主催:東京法律事務所


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2020年6月20日(土)
15時~16時


ZOOM(ウェビナー)にて開催


 コロナ禍でわたしたちの生活が大きな制約を受ける今、国民の自由を守るための憲法が「安全安心のため」と銘打って改悪されようとしています。

 7月5日投開票の東京都知事選挙は、都民の声を都政に反映させるチャンスです。

今こそ、憲法が活かされる都政を実現するために、私たちは何を考えたらよいのか。その材料を弁護士がお話しします!

 

【セミナー内容】

テーマ① 「自粛と補償はセット」と憲法(弁護士 本田伊孝)


テーマ②
緊急事態宣言と緊急事態条項(弁護士 加部歩人)


テーマ③
都立病院独法化問題(弁護士 長谷川悠美)


テーマ④
都知事選挙の争点はここだ(弁護士 中川勝之)

 

https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_1sZ0-Q59SRGNEG3a00WYiw

参加申込はこちらのURLまたはQRコードから

 

★お申込み後、ウェビナー参加に関する確認メールが届きます。

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 弁護士の平井哲史です。緊急事態宣言が解除されたのも束の間、東京では1週間の新規感染者増が100名を超え、「もう第2波が来るのか?」と気が気でならない方も少なくないかもしれません。

 外出自粛要請が続くなか、なんとか皆さん頑張ってこられましたが、対策も支援策も後手に回った結果、ここへきて倒産件数の増大がニュースになるようになっています。

 

 私たちの事務所にも、「解雇された」、「雇止めをされた」、「シフトを減らされた」といった雇用にかかわる相談や、「正社員は給与保障で自宅待機なのに、バイトやパートは出てくるよう指示される」といった格差処遇に関する相談など、いろいろな相談が寄せられています。

 相談を受けていて、これは広く知ってほしいなと思うことを書いてみたいと思います。

 

1、「助成金の積極活用を」

――助成金等を活用しない解雇には解雇回避努力は認められない

 

●助成金等を活用しない焦った解雇が起きている

 

 まず、休業要請が出されていた業種などではやはり雇用にかかる問題が起きていますが、「これは問題だな」と思うのは、「雇用調整助成金」や「緊急雇用安定助成金」(※)などの使用者の経費負担を軽減して事業の存続をはかろうとする助成金や、「持続化給付金」(※※)の申請をすることなく、焦って解雇等に踏み切っているケースです。都内のあるタクシー会社が話題になりましたが、それ以外にも外資系のファッションブランドのショップやある大手ホテルなどでも起きています。

 ※厚労省のサイトをご参照↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

 

 ※※経産省のサイトをご参照↓

 https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka-kyufukin.html

 

●合理的理由のない解雇は違法

 

 こうしたケースでは、売上の減少を理由としていますが、こうした経営上の理由による解雇や雇止めの場合、人員削減の必要性や解雇回避努力、人選や解雇等に至る手続が相当であるか、といったことを考慮し、客観的に合理的であると認められなければ、法的には有効となりません(※)。つまり、裁判になると使用者側が敗訴になります。

※ 整理解雇の法理。厚労省のサイトご参照↓

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/keiyakushuryo_rule.html

 

 コロナウイルスの影響で売上が極端に落ちたのだから合理性はあるでしょうという見方もありますが、即断は禁物です。実際には個々の裁判ごとに判断は変わりえますが、政府がわざわざ助成金をいくつも設け、あるいは枠を拡大して支援策を用意しているのに、これを利用せずに解雇等に踏み切れば、解雇回避努力が不十分との評価を受けるでしょう。

 

●雇用調整助成金の活用で解雇は回避できる

 

 少し具体的に見てみますと、仮に100人の労働者をかかえるホテルで、仕事が減ってしまったので、1か月自宅待機(休業)してもらうことにし、給与月額の60%の休業手当を支払うことにしたとします。中小企業ですと。この支払った休業手当の90%までは雇用調整助成金が出ます(今の国会で補正予算が成立すれば1日の上限額が1万5000円まで上がる見込み。)。労働者の給与が一人平均で30万円だとすると、休業手当は概算で18万円/人になります。その90%を雇用調整助成金でまかなえると、1万8000円/人が使用者自身の負担分となります。100人だと180万円になります。そして、中小企業ですと、持続化給付金は200万円出ますので、おおざっぱにいえば、雇用調整助成金と持続化給付金で100人の労働者の休業手当1か月分がまかなえる計算となります。これならば、売上が大きく落ちたとしても解雇までする必要はまずないでしょう。

 

 ですので、使用者の皆様にはぜひ積極的に助成金を活用し、雇用を維持できるよう頑張っていただきたいなと思いますし、労働者の皆様は、「コロナで売上落ちたからしょうがない。」とあきらめないで相談にきていただければと思います。

 

●小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇について

 

 なお余談ですが、保育園から小学校まで(まとめて「小学校等」と言います。)の小さいお子さんのいるご家庭では、小学校等が臨時休校になると、お子さんだけを家においておくわけにいかず、共働き家庭ですと、夫婦のどちらかが仕事を休まざるを得ないのが一般かと思います。

 そうしたときに、「仕事に出てこらないなら辞めてくれ」と無体なことを言う使用者は少ないだろうとは思いますが、小さい子を抱える共働き家庭の労働者に安心して休んでもらえるようにする助成金があります。厚生労働省の事業で、「新型コロナウイルス感染症に係る小学校等の臨時休業等に伴う保護者の休暇取得支援(新たな助成金制度)」(※)がそれですが、臨時休校(休園)に際して仕事を休まざるを得ない労働者に有給の特別休暇を付与する使用者にはその給与分100%を助成するというものです。こういう制度もありますので、使用者は簡単に辞めさせることを考えず、労働者は、あきらめて仕事を辞めてしまうことのないよう頑張っていただければと思います。

※厚労省のサイトをご参照

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html

 

2、「よくわからずにサインするのは『ちょっと待った~』」

 ――サインする前に相談を

 

●退職届を出させるケースが頻発

 

 次に、今の情勢下でなくても起きていることですが、解雇や雇止めをするときに、リップサービスで「状況がよくなったらまた雇うからね。」と言われることがあります。ニュースにもなった某タクシー会社もこのケースでした。この場合に、解雇や雇止めであれば、離職票では「事業主都合」での離職となり、失業給付は待期期間なしにもらえるようになるのですが、中には、リップサービスとともに、「退職届」や「退職合意書」を渡して、「これにサインして」と言うケースがあります。

 

●退職届を出してしまうと争うのは困難

 

 しかし、これ簡単に応じてしまうと後で大変なことになりかねません。

 というのも、解雇や雇止めであれば、後で冷静になって考えたときに、「やはり納得できない」と思えば、「解雇(あるいは雇止め)は無効だ!」と言って裁判で争うことはできますが、退職届や退職合意書を出してしまうと、「自分の意思で辞めたんでしょ。解雇じゃないから争えないよ。」とされてしまいます(厳密には、真意に基づくものではなかったと言って争う道もあるのですが、裁判所はその主張は簡単には採用しません。私も辞表を書かされた方の依頼で退職届の効力を争った裁判をやって煮え湯を飲まされたことがあります。)。

しかも「退職届」だと、自己都合退職扱いにされてしまいますから、失業給付をもらうのにも3か月の待期期間を設けられてしまいます。

 

●絶対にその場でサインはしない!

 

 ですから、「辞めてくれ」と言われたときには、たとえ「しょうがないかな。」と内心思ったとしても、その場でサインすることはせずに、サインしちゃっても大丈夫か相談してからにするようにしていただければと思います。まじめに提案をしている使用者であれば、持ち帰って検討したいと言うのを制してその場で書いてなどとは決して言わないはずです。何が何でもその場で書かせようとするのは何か後ろめたいことがあると思ったほうがよいでしょう。

 

3、「シフト削減は使用者の都合になります」

 ――休業手当は払い(もらい)ましょう

 

 よく飲食店勤務の方で、「シフトが減らされた」と言うのを聞きます。マクドナルドのようにデリバリーでやれるところはよいのですが、そうでないところは本当に来客が減ったため大変です。

 こうしたところでは、バイトやパートの方のシフトを減らすことが普通におこなわれていますが、中にはその削減したシフトの時間分給与をまるまる支払わないというところがあったりします。

 ですが、「休業手当」はきちんと払い(もらい)ましょう。

 

 たとえば、通常、週4日、6時間勤務でシフトに入っているところを、週2日にシフトが減らされた場合、その使用者の都合で減らしたシフト時間については、コロナウイルスの影響による顧客の減少が原因ですから、使用者に全責任があるわけではないとしても、休業手当の支払いを定めた労働基準法26条の言う「使用者の責に帰すべき事由」にあたります。このため、その減った時間分の休業手当は支払われなければなりません。(使用者は、売上が減ったために解雇や雇止めの代わりにシフトを減らしたのであれば、雇用調整助成金の申請をできるでしょう。)

 

 「バイトはシフトで決めた時間だけ働くのだから、シフトに入っていない時間については給料を払う必要はない」と考える使用者が少なからずおられますが、そうやって開き直って休業手当の支払いを拒むと労働基準法違反となります。働いている皆様のほうでは、「シフトに入ってないから給料はもらえない。」と誤解して給料をもらい損ねないようご注意を。

 

4、「店に出ていてコロナに感染したら労災になります」

 

 店舗勤務で不特定多数の人と接する機会の多い方は、特に医療や介護従事者の方は、「いつ誰から感染するかわからない」という恐怖とたたかいながら日々勤務されておられると想像します。もし感染してしまった場合、自身が入院や、そこまで至らずとも隔離されて治療を受けることになります。当然、出勤は停止となります。この場合、有給の病気休暇制度が用意されている職場であればともかく、そうでなければ欠勤扱いとなってしまい、治療費は自己負担で、給料もカットされてしまうのか?ということが心配になります。

 

 ですが、医療や介護従事者は業務外で感染したことが明らかでないかぎりは業務上感染したものと扱われ、労災となります。それ以外の労働者でも、勤務中に感染者と濃厚接触したことが判明した場合のほか、感染経路が不明でも不特定多数と接する職場においてコロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染者との濃厚接触があったことがなければ労災として認定を受けやすいでしょう(※)。今のところ、申請例は少ないようですが、申請があったものはすべて労災認定を受けているようです。

 ですので、コロナウイルスに感染してしまい、しばらく休業をせざるを得なくなった方は労災申請の相談をなさってみるとよいかと思います。

 

※厚労省のQ&Aご参照↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html#Q5-3

 

☆ここにあげなかったものも含めて日本労働弁護団が想定される様々な疑問に答えるQ&Aを公表していますので、そちらもご参照ください。

http://roudou-bengodan.org/covid_19/

 

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