私(江夏大樹)は、本日、最高裁判所第三小法廷で行われたKMタクシー(国際自動車)残業代裁判の弁論に行って参りました。
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★この事件で問われていること!
労働時間は原則1日8時間、週40時間。
それを超えた時間外労働については、割増賃金(=残業代)を払わなければいけないというルールが、労働基準法37条です。
本件では「時間外労働をしたタクシー労働者に、割増賃金(=残業代)を支払わない仕組みの可否」が問われました。

★残業代を払わない仕組みとは、このような仕組みです!
タクシー乗務員が残業をすれば、
 ①基本給+②歩合給+③残業代 =給料 
※歩合給とは、タクシーで言えば、その日の売上に比例するものです。
 (例)売上×0.6=②歩合給
しかし、KMタクシーでは、②歩合給の計算が以下のようになっていました。

【KMの賃金の仕組み】
①基本給+②歩合給=歩合部分-③残業代③残業代
つまり、③残業代を形式的に支払っていますが、②歩合給の計算{}において、③残業代分を控除(マイナス)している
↓↓
労働者の手元に残業代がない!!という結果に。
脱法行為とは、「一定の行為が法律上禁止されている場合に、形式上別の行為によって同一目的を達成しようとすること」(コンメンタール)ですが、これまさに見事な脱法行為!!

★会社の言い分
さて、この問題について、
会社主張の一つに以下のものがあります(AさんとBさんの比較)
~AさんとBさんを比較してみよう~
【Aさん 残業せずに3万円売り上げた場合】
 給料=①基本給+②歩合給{3万円×0.6}
【Bさん 残業して、3万円売り上げた場合】
 給料=①基本給+②歩合給{3万円×0.6}+③残業代

おいおい、これだと、時間内に3万円稼いだ優秀なAさんよりも、
残業したBさんの方が③残業代の分多く給料もらうなんておかしいだろ!?
だから、残業代は控除しよう!⇒この賃金の仕組みはOKだ!

★裁判所においても結論が分かれている
なお、東京地方裁判所(労働部)でも結論が分かれました!!
地裁民事11部・高裁23部(残業代支払え)
     vs
地裁民事19部(この賃金の仕組みはOK)

★労働基準法37条の趣旨目的に反しています
しかし、会社の上記主張は、労働基準法37条の制度趣旨・目的に沿わない、おかしなものです!!

そもそも、労働基準法37条の制度趣旨・目的は、下記の2つです。
1.使用者(社長や上司)に対して、残業代支払を義務づけることで、労働時間抑制を図った
2.残業代をもらう労働者も、過重労働の疲れを癒やす

この目的と上記賃金の仕組み(歩合給の計算)を見ると、
1.使用者は、残業代支払義務を負わない(だって、歩合給から引かれる)から、労働時間抑制に取り組まない
2.残業代をもらえない労働者は、くたびれるばかり
と言う風に、法の趣旨・目的に真っ向から反しています。

実際にも、この賃金の仕組みが利用され、会社は乗務員にたくさん残業させて、タクシー労働者の売上を会社の売上として確保しているという実態もあります。

さらに・・・と
他にも書きたいことは山ほどあるのですが、とりあえず問題の所在を示すのみで、終わります。

★この問題はタクシー乗務員だけの問題ではありません。
問題となっているのは、
「残業代を、その他の給与から控除する仕組みの可否」

であり、タクシー乗務員に限られない問題です。

上記問題の最高裁の判決は、今年の2月28日に出ます。
追って、結果を報告します。

※高裁で労働者が勝った判決について、最高裁で弁論が開かれています。
 したがって、最高裁で結論がひっくり返ることになるのですが、
 労働者全部敗訴(賃金の仕組みOK)
        or
 一部認容(賃金の仕組みダメ。但し、再計算。※私の予想はこっち)
のどちらになるのかが、その結論が注目される事案です。

 文責 弁護士 江夏大樹
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