弁護士の今泉義竜です。

テロ等準備罪(共謀罪)の制定に賛成が6割以上という世論調査がありました。

一般の人にとっては、「テロを準備段階で検挙するのは当たり前じゃん!」ということでしょう。

 

その感覚自体はもっともだと私も思います。

 

ただ、この法案は非常に危険な内容です。

まずは、内容を知ったうえで、判断をしてほしいと思います。

私が問題と思う点を3つだけ挙げます。

 

1 対象犯罪が広い

テロ等準備罪は「テロ」を対象としているわけではありません。以下のような類型も対象となります(長期4年以上の刑を定めている犯罪)。

・会社の社長が税理士に節税の相談(所得税法、消費税法違反の共謀)

・住民団体が高層マンション建築に反対する座り込みを計画(組織的威力業務妨害の共謀)

・消費者団体が不買運動を組織しようと相談(組織的業務妨害の共謀)

・労働組合が団体交渉で要求が通るまで社長を帰さないようにしようと相談(監禁罪の共謀)

もっとも、「自分はそんな計画しないから関係ない」と思う方もいるかもしれません。

 問題は、「そういう計画をしただろう」という疑いで、捜査機関が逮捕や捜索・差押えをすることができてしまうということです。

冤罪はだれの身にも降りかかります。身に覚えがないことでも、「おまえと共謀したと言っている奴がいるぞ」ということで、逮捕されることがあり得るということです。


  また、そうした共謀の証拠をつかむためとして、盗聴、メール・SNSの監視、各種団体への捜査官の潜入捜査がこれまで以上に広範にやられることになるでしょう。

 

2 「組織的犯罪集団」は限定されていない

 法律の対象となる「組織的犯罪集団」とは、「犯罪を実行する団体に一変したと認められる場合には、組織的犯罪集団に当たり得る」というのが政府見解です(2017年2月16日衆院予算委員会理事懇談会での法務省見解、安倍首相答弁)。

すなわち、いかなる団体でも、上記のような犯罪の共謀をしたと捜査機関が認定した段階で「組織的犯罪集団」に該当するとされます。

ですので、あまり意味のある概念ではありません。

 

3 「国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を批准するために必要」は誤り

テロ等準備罪(共謀罪)を作らないとTOC条約を批准できないと政府は説明しています。

しかし、TOC条約に関する国連の立法ガイドでは、TOC条約はテロリストグループや暴動グループを対象としたものではない(This would not , in principle , include groups such as some terrorist or insurgent groups , provided that their goals were purelynon-material. )と明確に説明されています。


  つまり、この条約はマフィアなどによる国際的経済犯罪についての条約で、国連自身がテロ防止のための条約ではないと説明しているわけです。それを、「条約を批准するためにテロ等準備罪が必要」であるというのは、誤った情報で国民を混乱させるものだといえます(共産党藤野議員の追及)。

なお、日本は、国際テロ対策のための13の条約を既に批准しています。

 

3月7日にも閣議決定、10日に法案提出といわれています(TBS)。

多くの人に、この法案の問題点を共有してほしいと思います。