弁護士の中川勝之です。

 

次のとおり、労働判例1166号に担当事件の判決①が掲載されました。
同じ号に今泉義竜弁護士が担当していた事件の判決②も掲載されました。
ちなみに、両事件とも、元所員の山添拓弁護士(現参議院議員・日本共産党)も担当しておりました。

① 医療法人社団E会(産科医・時間外労働)事件(東京地裁平29.6.30判決)

② Chubb損害保険事件(東京地裁平29.5.31判決)
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今泉弁護士が担当していた判決②については、本年6月1日付けのブログ「Chubb損保(チャブ損保)事件勝訴~グレード降格・減給を人事権濫用で無効とした東京地裁判決~」及び季刊・労働者の権利2017年秋号で紹介されていますので、そちらをご覧下さい。

 

私からは、判決①について簡単に紹介します。

ある産科に2年弱、当直の非常勤医師をしていた原告が当直を含む常勤医師になったところ、常勤医師時代の23か月の残業代を請求した事件です。

一般的に残業代事件の争点は大きくいって2点、労働時間と賃金です。
労働時間については、タイムカード等の客観的証拠の有無、労務提供の実態等が問題になってきます。
また、賃金については、残業代の対価の有無、区分等が問題になってきます。
さらに、本件では、常勤契約の前に非常勤契約が存在していたことが問題となりました。すなわち、当直の非常勤契約は存続したまま常勤契約が加わっただけで、当直は時間外労働等に該当しない、また、常勤契約の賃金を基礎賃金として単価を計算すべきではない等の反論がありました。

しかし、別個の契約で労働時間規制を免れることは不当です。当然ながら、常勤契約は非常勤契約を取り込んで成立し、労働時間は通算すべきものであり、また、常勤契約の賃金を基礎賃金として単価を計算すべきと判断されました。

そして、タイムカード等はなかったのですが、産科の開業時間、原告が担当していた患者の医療記録といった客観的証拠に加え、本人のメモが主たる証拠となり、また、労務提供の実態も本人尋問で十分明らかとなって、原告主張の大部分について労働時間性が認められました。特に、日勤中及び当直中の休憩時間が契約書上明記されていない中、証拠上個別に休憩時間と認められる時間を除いて休憩時間なしと判断したことは重要です。

安倍内閣の「働き方改革」の長時間労働是正はそれ自体不十分ですが、医師に対する規制はさらに不十分となっています。安心して受けられる医療体制の構築のためにも、医師の長時間労働是正は急務と言えましょう。