弁護士の今泉義竜です。
12月14日、グレン・ウッドさんを原告、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を被告として、
東京地裁に損害賠償と賃金を求める本裁判を提訴し、本日15日に記者会見をしました。
江夏大樹弁護士と担当しています。
各社に報道していただきました。
Bloomberg /三菱モルガンの外国人幹部がパタハラで本訴訟、損賠など4000万円
Business Insider Japan/ 三菱UFJモルガンをパタハラで提訴 —— 休職命令を受けた幹部、安倍首相に書簡
HuffPost Canada / A Canadian Single Dad Says He Was Harassed For Taking Paternity Leave In Japan
弁護士ドットコム/「パタハラ」で三菱UFJモルスタ証券を提訴、カナダ出身男性「最高裁まで戦う覚悟」
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(写真は弁護士ドットコムより)
(※なお、各社記事中で4000万円などとあるのは、訴額のことであり、これは説明が面倒なので割愛しますが必ずしも請求額とは一致していません。)

 

ー請求内容-
請求している内容は以下のとおりです。

1 損害賠償請求

⑴ 当初の育休申請の拒否:慰謝料100万円。

⑵ 育休取得後の不利益扱い:慰謝料100万円。

⑶ 育休取得後の賞与ゼロ査定:前年同程度の賞与相当損害金。

2 賃金請求

 2017年10月18日付休職命令は違法・無効なので、10月18日以降も賃金を支払え。


―経過―
こちらの主張する事実の経過及びそれらについての法的評価は以下のとおりです。

1 育児休業取得拒否

 グレンさんは2015年11月24日からの育児休業を取得する旨の申請をしたものの、会社は母子手帳が無いことなどを理由に拒否し、育休許可が出たのはグレンさんが息子との父子関係を示すDNA鑑定を出した後の2015年12月25日であった。
→育介法5条、6条違反
※育介法5条 労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。
※育介法6条 事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。

2 育児休業から復帰後の仕事外し

 グレンさんは育休を経て2016年3月から仕事に復帰した。
 しかし、上司は従前のマネジメント業務に戻さず会議にも呼ばないなど不利益扱いをした。
 従前の仕事を奪われたグレンさんの健康状態は悪化しうつ状態となり2017年1月17日から休職に至った。
→育介法10条違反
※育介法10条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

3 2016年4月~2017年3月の期間についての賞与ゼロ

 グレンさんには2015年(2014年4月~2015年3月)には7か月分程度、2016年(2015年4月~2016年3月)には育休取得もあったが5か月分程度が出ていた。
 しかし、2017年賞与(2016年4月~2017年3月)はゼロとされた。
 育休復帰直後の2016年4月~9月についての被告によるグレンさんの業績評価は5段階中3で標準的な評価であった。
 査定期間のうち2017年1月~3月については休職しているという事情はあるとはいえ、いくらなんでも賞与ゼロというのは会社に許される裁量の範囲を越えた不利益扱いである。
→育介法10条違反、裁量権の逸脱・濫用

4 休職命令→基本給の半減の提案

2017年1月17日からの療養後、7月11日に復職可能との診断書を得て会社に復職を申し出、産業医も復職可能と判断した。
 しかし、会社人事部は体調が十分ではないとして年俸を半減させる別業務での復職を提案。
 グレンさんが原職への復帰を求め続けたところ、会社は2017年10月18日付でグレンさんに休職命令を発し、現在に至っている。

休職命令は以下の点で違法である。

①主治医・産業医とも復職可能と診断しており、原告は治癒しておりそもそも休職事由が消滅している。

②人事部は主治医・産業医にほとんど聞き取りをしておらず、独断で復職不可と判断しており、休職命令に至る手続きに問題がある。

③会社が代わりに提案した業務が給与半減の事務教務という、全く異なる業務でありその提案自体が極めて不合理。


―仮処分手続きを取り下げるに至った経過―
 なお、本件については弁護団は当初本裁判ではなく、「賃金の仮払いを求める仮処分手続き」という保全の手続きを選択しました。
 というのも、グレンさんは休職したままであると、息子の事実上の母親代わりを担っている看護師の本年末に更新期限を迎えるビザの更新許可がされないこととなります。そこで、迅速なペースで審理がされる仮処分手続きを利用しつつ、実質的には会社との話し合いによる早期復職を目指したのです。
 仮処分手続きでは、10月26日の申立から12月13日までの間に、4回の審尋期日が開かれました。

しかし、審尋のなかで、会社はハラスメントは一切ないと主張し、すべてはグレンの「被害妄想」「誇大妄想」であり、病気が回復していないことの裏付けである旨主張しました。
 さらに、会社は、和解により原職復帰をさせるための絶対条件は、「メディアで述べたことがすべて誤解に基づくものであったことを公表すること」であるなどと述べました。

このような会社の強行な態度から、裁判官からは、話し合いによる解決が困難であること、また、原告の生活が直ちに困窮するという状態にあるとは言い難い状況で、母親代わりの看護師の在留資格更新のためというだけでは、保全の必要性は弱く、仮処分手続きの枠内でこれ以上の審理を続けることは困難との見解が示されました。
 裁判官には、復職に向けた話し合いの場を粘り強くもっていただきましたが、仮処分手続きによる解決は断念し、本訴提起に至ったものです。

本件では、グレンさんは、育休復帰後に仕事を奪われたと主張しているのに対し、
会社は仕事は全く変わっていない、と主張しており、
そこが本件では決定的に言い分が食い違っている点です。
裁判では主にそこが争点になっていくと思われます。

私は弁護士としてだけではなく、子育て世代の仲間の一人として、
グレンさんと未来ある小さなお子さんのために、
江夏弁護士とともに本件の勝訴のために全力を尽くす覚悟です。

ぜひご支援をお願いいたします。