東京法律事務所blog

2017年01月

私(江夏大樹)は、本日、最高裁判所第三小法廷で行われたKMタクシー(国際自動車)残業代裁判の弁論に行って参りました。
IMG_2021


★この事件で問われていること!
労働時間は原則1日8時間、週40時間。
それを超えた時間外労働については、割増賃金(=残業代)を払わなければいけないというルールが、労働基準法37条です。
本件では「時間外労働をしたタクシー労働者に、割増賃金(=残業代)を支払わない仕組みの可否」が問われました。

★残業代を払わない仕組みとは、このような仕組みです!
タクシー乗務員が残業をすれば、
 ①基本給+②歩合給+③残業代 =給料 
※歩合給とは、タクシーで言えば、その日の売上に比例するものです。
 (例)売上×0.6=②歩合給
しかし、KMタクシーでは、②歩合給の計算が以下のようになっていました。

【KMの賃金の仕組み】
①基本給+②歩合給=歩合部分-③残業代③残業代
つまり、③残業代を形式的に支払っていますが、②歩合給の計算{}において、③残業代分を控除(マイナス)している
↓↓
労働者の手元に残業代がない!!という結果に。
脱法行為とは、「一定の行為が法律上禁止されている場合に、形式上別の行為によって同一目的を達成しようとすること」(コンメンタール)ですが、これまさに見事な脱法行為!!

★会社の言い分
さて、この問題について、
会社主張の一つに以下のものがあります(AさんとBさんの比較)
~AさんとBさんを比較してみよう~
【Aさん 残業せずに3万円売り上げた場合】
 給料=①基本給+②歩合給{3万円×0.6}
【Bさん 残業して、3万円売り上げた場合】
 給料=①基本給+②歩合給{3万円×0.6}+③残業代

おいおい、これだと、時間内に3万円稼いだ優秀なAさんよりも、
残業したBさんの方が③残業代の分多く給料もらうなんておかしいだろ!?
だから、残業代は控除しよう!⇒この賃金の仕組みはOKだ!

★裁判所においても結論が分かれている
なお、東京地方裁判所(労働部)でも結論が分かれました!!
地裁民事11部・高裁23部(残業代支払え)
     vs
地裁民事19部(この賃金の仕組みはOK)

★労働基準法37条の趣旨目的に反しています
しかし、会社の上記主張は、労働基準法37条の制度趣旨・目的に沿わない、おかしなものです!!

そもそも、労働基準法37条の制度趣旨・目的は、下記の2つです。
1.使用者(社長や上司)に対して、残業代支払を義務づけることで、労働時間抑制を図った
2.残業代をもらう労働者も、過重労働の疲れを癒やす

この目的と上記賃金の仕組み(歩合給の計算)を見ると、
1.使用者は、残業代支払義務を負わない(だって、歩合給から引かれる)から、労働時間抑制に取り組まない
2.残業代をもらえない労働者は、くたびれるばかり
と言う風に、法の趣旨・目的に真っ向から反しています。

実際にも、この賃金の仕組みが利用され、会社は乗務員にたくさん残業させて、タクシー労働者の売上を会社の売上として確保しているという実態もあります。

さらに・・・と
他にも書きたいことは山ほどあるのですが、とりあえず問題の所在を示すのみで、終わります。

★この問題はタクシー乗務員だけの問題ではありません。
問題となっているのは、
「残業代を、その他の給与から控除する仕組みの可否」

であり、タクシー乗務員に限られない問題です。

上記問題の最高裁の判決は、今年の2月28日に出ます。
追って、結果を報告します。

※高裁で労働者が勝った判決について、最高裁で弁論が開かれています。
 したがって、最高裁で結論がひっくり返ることになるのですが、
 労働者全部敗訴(賃金の仕組みOK)
        or
 一部認容(賃金の仕組みダメ。但し、再計算。※私の予想はこっち)
のどちらになるのかが、その結論が注目される事案です。

 文責 弁護士 江夏大樹
https://www.tokyolaw.gr.jp/lawyer/enatsu_t.html

 弁護士の笹山尚人です。

 福島原発被害弁護団に所属しています。

 

福島第一原発事故被害とそれに対する訴訟の取り組み

 

 20113月に発生した東日本大震災に伴い発生した福島第一原発の過酷事故によって、福島県浜通り地域の住民を中心に、多くの住民が避難を余儀なくされ、帰宅ができないままの過酷な避難生活が継続しています。また福島県を中心とした多数の住民が、避難を選択しなかった場合でも、放射性物質の影響が判然としないまま、従来の生活を継続してよいのかについて深刻な懸念を抱えています。

 こうした福島第一原発事故によってもたらされた様々な被害に対しては、全国で、国や東京電力株式会社に対する損害賠償請求等の訴訟が提訴されています。

 

福島の被害現場はいま、どうなっているか

 

 私は、2016年9月30日、担当する避難者訴訟における検証手続で、福島第一原発がある福島県双葉町に入りました。検証とは、裁判官が物体の形状等を直接に知覚・認識し、その結果を証拠資料とする手続です(民事訴訟法232条以下)。要するに、事件の現場に行って、発生した被害について五感でじかに感じてもらい、それをも判断資料にしてもらう手続きです。

 

 福島県双葉町は、現在も帰還困難区域です。高い放射線の影響があります。国は、現在年間20ミリマイクロシーベルトの放射線を対外被ばくすることを危険の基準としています。1日あたりにすると、3.8マイクロシーベルト以上の被ばくが危険水域です。

 

私はこの日、約2時間の滞在で3マイクロシーベルトの被ばくをしました。

 

DSC_1013

 

 到底、この地域で毎日生活することができないことがわかります。

 

 ここでの被ばくを避けるために、帰還困難区域に入るためには、写真のような防護措置をすることが必要です。

 

DSC_1007

 

 今回は、双葉町で養蜂業を営んでいたOさんのお宅と養蜂施設、それから双葉南小学校を検証しました。

 自宅内は、事故当時のまま。地震のために家財が倒れ、物が散乱した後、Oさんたちは直ちに避難することになりました。そのまま長期間自宅に戻ることができず、自宅は放置されたまま。その期間内に、泥棒や動物の侵入が繰り返され、自宅は荒れ放題になってしまったのです。

 

DSC_1009

 

 養蜂場は、かつての養蜂用の籠が放置され、雑草が生い茂った状態。

 

 双葉南小学校は、廃墟と化してシーンとしていました。かつては、子どもたちの元気な声が響き渡ったのでしょう。弁護団は、かつて双葉南小学校とその子どもたちが、地域の行事を担うなどして、また子どもたちが地域ぐるみで大切に育てられていた様子を写真を使って説明しながら、現状との対比を示して、裁判官に理解してもらうための説明をしました。

 

DSC_1010

 

福島第一原発事故に対する賠償訴訟

 

 自宅を、暮らしを、ふるさとを、こんなふうにメチャクチャにしてしまったのは誰だ。

元の暮らしを、生業を、返せ。苦しめたことには、完全な賠償を。

 こんな思いで、福島原発事故被害の裁判は、全国で取り組まれています。

 避難によって全国に散らばる原告たちのうち約1万人は、「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」を結成し、損害賠償請求等訴訟を担当する弁護団も、弁護団全国連絡会議を結成して、相互の情報交換や訴訟体制の相互支援活動を行っています。

 当事務所でも、私と岸朋弘弁護士、川口智也弁護士が福島地裁いわき支部で行われている「避難者訴訟」「いわき市民訴訟」に取り組んでおり、また、青龍美和子弁護士が、福島地裁で行われている「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(「生業訴訟」といいます。)に取り組んでいます。

 これらの訴訟では、訴訟ごとに差異はありますが、多くの場合、被害者たちが受けた自宅や避難や元の生活形態や環境を失ったことに関する経済的損失や精神的苦痛に対する賠償、避難しない生活での放射性物質の影響による精神的苦痛に対する賠償、放射性物質の影響を被った地域の原状回復を求めるものとなっています。

 

賠償請求訴訟は大詰めに

 

 これらの裁判は、2017年、大きな山場を迎えます。

 全国で取り組まれている訴訟のうち、群馬訴訟が3月17日に判決を迎えます。千葉訴訟が1月31日に結審。そして、当事務所の青龍弁護士が参加する「生業訴訟」が3月21日に結審。千葉と生業は、2017年中の判決が見込まれます。

 これらの裁判での判決の動向は、私が担当している避難者訴訟、いわき市民訴訟を含め、後から判決を迎える裁判に大きな影響を与えるものといえます。

 このように、裁判は大詰めを迎えつつあるのです。

 ぜひ多くの皆さんに関心を持っていただき、ご支援をお願いしたいと考えています。

 

 事務所では、「生業訴訟」が裁判所に提出する公正な判決を求める署名について、みなさまのご協力をお願いしております。
shomei1
shomei2
shomei3

 ぜひともご協力を、お願いいたします。作成後は、事務所あてにお送りいただけますと幸いです。署名用紙は以下のサイトからダウンロードできます。

『生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟原告団・弁護団Webサイト

 

弁護士の平井です。
昨年8月に報告をさせていただいた世田谷区の 障がい者自立支援施設の職員
2名(勤続5年目の分会長と10年目の副分会長)の解雇・雇止め事件で、1月12日、東京高裁で和解が成立しました。

 この事件は労働組合員を職場から排除しようと画策してなされたものといえま
す。2014年9月に労働組合が立ち上がると、法人の施設長を中心にことごと
く労働組合と敵対し、同年11月に法人の監事も務める代理人弁護士名で副分会
長に対し詐欺による労働契約の取消通知をおこない、同年12月には分会長に対
し、前理事長に対して暴言がはき同理事長を辞任に至らしめたなどとして期間途
中での解雇を通知してきました。

 これに対し、副分会長は労働審判を申し立て、2015年2月には副分会長の
請求を認める労働審判が出されました。ところが法人側はこれに対し異議を申し
立てることなく確定させておきながら、審判の翌日には、今度はこの副分会長が
過去に施設利用者に対して暴行をふるっていたなどと難癖をつけて雇い止めをお
こなってきました。このため、副分会長は、先に地位確認請求訴訟を提起してい
た分会長に続いて提訴をすることになりました。

 また、分会長が地位確認請求訴訟の途中で申し立てた賃金仮払いを求める仮処
分手続で、東京地裁民事第36部は分会長に対する解雇は無効として賃金の仮払
いを認める命令を出しました。法人側はこれに異議を唱えませんでしたが、本裁
判では自らの主張を繰り返し続け、さらには、訴訟の途中から、組合が施設利用
者の家族に対して事情を説明する手紙を送付したことを名誉毀損だなどと称して
両名の解雇理由として加えてきました。

 文字通りなりふりかまわず理由をこじつけておこなった解雇・雇い止めでした
が、東京地裁民事第11部は、2016年8月、両名に対する解雇・雇い止めに
は客観的に合理的な理由はなく無効であるとして両名の請求を認容する判決を下
しました。

 この東京地裁判決に対して、法人側は控訴をしましたが、地裁判決前に代理人
が辞任し、高裁段階では新しい代理人が就くことになりました。法人側に新しい
代理人が就いたもとで新たな展開が起こりました。それまでかたくなに原告らの
復職を拒絶していた法人でしたが、副分会長の復職は応じると態度を変更させて
きました。この変化を受けて、労働組合と原告も争議の早期解決のために和解に
踏み切ることになりました。

 和解内容の詳細は控えますが、①副分会長は平成29年4月から復職する。そ
れまでは自宅待機とし、給料は支払われる、②分会長は合意退職することとす
る、③法人は両名に対して計1000万円を超える解決金を支払う、が主な内容
です。解決金は、両名のバックペイの元利合計よりも多額になるもので、経済的
損失をカバーするほかに慰謝の趣旨を含んだものと言えます。その代わりに、和
解条項において謝罪文言は入りませんでした。

 今回の和解は、不当解雇をはねかえして副分会長の復職を勝ち取り、かつバッ
クペイ相当分を上回る解決金を得ることができました。単純に判決を求めただけ
では得られないこの結果は、原告らと弁護士の頑張りだけでなく、原告らを支え
る職場の仲間がいて、さらにそれを取り囲む支援の輪が労働組合の単位を超えて
広がり、地域の様々な方々からの応援の声が広がったことにより法人も決断をす
ることになったものと言えます。私自身、何度も争議支援の集会や催しに参加さ
せていただきましたが、やるたびに規模が大きくなっており、この争議は必ず勝
つと確信しました。労働側の弁護士として貴重な、そして楽しい体験をさせてい
ただきました。

 ですが、争議はこれですべて終わったわけではなく、まだ労働委員会にかかっ
ている事件もあります。手綱を緩めず最後までしっかりやりきりたいと思います。
 弁護団は、地裁段階では私単独で、高裁からは裁判と労働委員会の手続の両方
に長谷川悠美弁護士に入ってもらいました。

菅の写真
弁護士の菅俊治です。


昨年12月22日に超党派の議員で構成される非正規雇用対策議員連盟の総会が開催されました。

「ワークルール教育推進法案(仮称)骨子(素案)」が承認され、各党が持ち帰り党内の正式ルートに載せて検討することになりました。

「対「ブラック労働」小中から教育 超党派議連 法案提出へ」(東京新聞2017年1月8日我那覇圭記者)http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201701/CK2017010802000114.html


  非正規雇用対策議連第2回総会(議員その1)

私は、非正規雇用対策議員連盟が結成した法律案作成作業チーム(全6回)にアドバイザーとして招かれ、全ての回に出席して意見を述べてきました。

  非正規雇用対策議連第2回総会

そこで、今日は「ワークルール教育推進法」について書きたいと思います。


1 「法案骨子」のポイント
(1)「法案骨子」の内容

法案骨子はわずか4ページです。

  *「ワークルール教育推進法案骨子」(全4ページ)

   ワークルール教育推進法案骨子.pdf

法案骨子は、概ね以下のような内容です。

・国民の間にワークルールについての理解を深め、職業生活の充実・企業の健全な事業活動を促進する

・ワークルールとは、職業生活に必要な労働に関する法令・社会保障制度及びその活用方法をいう

・国はワークルール教育基本方針を定める

・地方公共団体は国と協力してワークルール教育の施策を策定、実施する

・学校、大学、職域、地域などでそれぞれの特徴を活かしてワークルール教育を推進する

・教材の開発、調査研究を行う

・厚労省にワークルール教育推進会議を置く(都道府県にワークルール教育推進地域協議会を置ける)


(2)「法案骨子」のポイント

私の考える法案骨子のポイントは以下のとおりです。

 ⅰ 与党も財界もワークルール教育の必要性を認識

与野党の参加議員が一致して、ワークルール教育が必要だという意見でした。

作業チームの第1回会合の時から、自民党の鴨下一郎さんは、「日本経済が成熟していくためには、特に若い人たちの権利が守られる必要性がある」「このままでは働く者が次々に病気になっていく。日本の企業の技術はこれでは継承されない」という危機感を常々強調されていました。

第2回会合では、日本経団連、連合からのヒアリングを行いましたが、双方から前向きな意見が出されました。

昨年11月5日に、札幌弁護士会主催のワークルール教育シンポジウムでも、中小企業同友会の宇佐美さんがワークルール教育の必要性を熱心にお話しされていました。
 〇 法案骨子は、立法目的で次のようにうたっています。

「この法律は、国民の間にワークルールについての理解を深めることがその職業生活の充実及び企業の健全な事業活動の促進に資することに鑑み、〔中略〕もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」 

 ⅱ 「まじめな使用者を守る」=事業者の公正競争の為にも必要

立法目的の「国民の」という文言には、労働者だけでなく、使用者に対してもという意味が込められています。法律を守らないブラック企業との競争に、まじめな事業者が敗れてしまうことは防がなくてはならない。事業者間の公正競争を確保するためには、ワークルール教育が必要なのです。

この点について、作業チームのキーメンバーでもあった、自民党の穴見陽一さんは、ご自身が経営者でもあり、最近のインタビュー記事には実感のこもったお話をされています。

「みんなが同じルールのもとで、同じだけの時間で戦える土壌をつくらなければフェアではない。それでコストがかかるとしても一斉に値上げができる。世の中のルールが変われば、『せーの』で構造改革できる。単独の企業努力ではできないことです」

「ビジネスマンだった僕が政治の世界に入ったのは、ルールメイキングのためです。政治は予算をつけることだけではない。国民が求めているのは、ルールを変えてほしいということなんです。国民の生命を守るために最も重要なルールです」

「「働かせすぎは人権侵害だ」ファミレス経営の国会議員がルールづくりにこだわる理由」

(BuzzFeed 2016.12.27 小林明子記者)

ワークルールを実現するには、一企業の経営努力ではどうにもならないということです。

(注)「国民の」とは、日本で働く外国人の方を排斥する趣旨ではありません。

〇 法案骨子は、基本理念につぎのような規定を設けています。

「① ワークルール教育を受ける者の将来にわたる充実した職業生活の実現に資することを旨とすること」

「② 使用者及び労働者が遵守すべき法令並びに労働契約に基づく権利及び義務に関する理解を深めることにより、企業の健全な事業活動の促進に資することを旨とすること」
「④ 使用者がそのワークルールに関する知識の向上を図ることのできる環境の整備が図られること」


 ⅲ 実際に役に立つ「知恵」を

「ワークルール」という言葉の中には、単なる知識ではなく、問題解決のための実践的なスキルの習得が含まれます。
法律の知識だけあっても、職場に生じた問題を実際に解決することができなければ意味がありません。
そのためには、労働基準法のような最低基準・強行法規だけでなく、契約法的な考え方や社会保障に対する理解も必要です。職場の状況を分析する力、交渉力、コミュニケーション力も重要です。
 〇 法案骨子は、基本理念につぎのような規定を設けています。

「③ 労働者が労働に関する権利侵害等に対する実践的な救済方法に関する知識を含むワークルールに関する知識を習得することできる環境の整備が図られること」

 ⅳ 学齢期から高齢期まで、学校、職域、地域その他様々な場の特性に応じて

「ワークルール教育」は、学齢期から高齢期まで、また、学校、職域、地域その他様々な場の特性に応じて行われます。
〇 法案骨子は、基本理念に次のような規定を設けています。
⑤ 学齢期から高齢期までの各段階に応じて体系的にワークルール教育が行われること
⑥ 学校、職域、地域、家庭その他の様々な場の特性に応じた適切な方法により、かつ、それぞれの場におけるワークルール教育を推進する多様な主体の連携を確保しつつ、効果的にワークルール教育が行われること
 

2 「非正規雇用対策議員連盟」が大きな役割をはたす

ところで、法律は普通、各省庁で法律案が作られ、最終的に内閣で承認して上程されます(「閣法」呼ばれます)。

これに対し、超党派議連による法律案作り(「議員立法」)は、それとはちょっと違います。通常は所轄委員会の委員長が提案します。

そもそも超党派議連って、どんな活動をしているのでしょうか。


(1)発足は2014年11月
「非正規雇用対策議員連盟」は、2014年11月6日に発足しました。

与野党問わず、非正規雇用対策が必要という目標を同じくする議員が参加しています。

衆参あわせ約80人くらいの国会銀がメンバーになっています。


議連の「仕掛け人」の一人、事務局長の民進党石橋通宏さんのウェブサイトがわかりやすいです。

 〇 「画期的!国会に超党派「非正規雇用対策議連」が発足!」

    http://www.i484.jp/archives/1343

「少し報告が遅れましたが、11月6日(木)、国会で画期的な出来事がありました! なんと、非正規雇用問題に対処することを目的に、自民党を含む超党派の国会議員が結集した議員連盟『非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を考える議員連盟(略称:非正規雇用対策議連)』が結成総会を開催したのです。はい、そして私も、結成呼びかけ人(仕掛け人?)の一人です!」
「議連結成の話は、今年の夏からスタート。日本社会の中で、今や、雇用全体に占める非正規雇用の割合が40%、2,000万人近くまでに拡大し、そのことが、いわゆるワーキングプア層の増加、社会格差の拡大を進行させ、経済成長や税収にも悪影響を及ぼし、さらには日本社会の未来を担う貴重な人的資源の損失にもつながっているという強い問題意識を共有した有志議員が集まって、検討を始めたのです。」
「そして、今の非正規雇用のあり方を抜本的に見直し、将来に希望の持てる生活が確保できるような雇用へと改革していくことをめざし、超党派の議員連盟を立ち上げることを正式に決定し、この日の結成総会につながったというわけです。」

(2)非正規雇用対策議連との意見交換

非正規雇用対策議連は、発足後しばらくは、東大の水町勇一郎さんや、慶応の清家篤さんなど有識者の方を招いた学習会などを行なっていました。

しかし、次第に勉強ばかりでは駄目だ。
せっかく熱意あるメンバーが集まったのだから、なにかできることに取り組もうということが話し合われたようです。
議連の会長をされている尾辻秀久参議院議員から、そのような話があったと伺いました。
 

僕が議連の皆さんと関わりを持つようになったのは、2015年ころです。非正規雇用対策議連と日弁連との意見交換の機会が持たれることになり、労働法制委員会の委員だった私は、その日たまたま日程があいていたため会合に出席しました。

会合では、尾辻秀久会長から、単刀直入に、

「非正規雇用対策議連も、勉強ばかりしているだけではダメではないか。何かできることを見つけて実践に移す必要があるんじゃないかと考えているんです。」
「非正規雇用対策議連として取り組むことができるものとしてどんなことがあるか」

と意見を求められました。

私は、そのとき、ワークルール教育、公契約法 、仕事と生活の調和などは候補になるのではないかと答えました。

2015年は、ちょうど派遣法などが国会で審議され、非正規雇用対策が国政でも大きな焦点となっていた時期でした。与野党が真っ向から対立する状況下で、非正規雇用対策議連でなにを扱うのか、難しい舵取りだったと思います。


(3)議連、塩崎厚生労働大臣に申し入れを行う
そうした中でも、非正規雇用対策議連は、課題を見つけて積極的な活動を行います。 


まずは、2015年8月6日の塩崎厚労大臣への申し入れです。

これも石橋議員のブログがわかりやすいです。

  〇「超党派「非正規雇用対策議連」が塩崎厚生労働大臣へ申し入れを行いました!」

   http://www.i484.jp/archives/2533 

「8月6日(木)夕刻、厚生労働省の大臣室において、私が事務局長を務めている超党派「非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を考える議員連盟」から塩崎厚生労働大臣に対して、『平成28年度予算概算要求及び税制改正要望に向けた緊急提言』を手交しました。」
 「申し入れに参加したのは、尾辻会長(自民党)をはじめとする議連メンバー8名です。このブログでも随時、紹介してきましたが、昨年秋に議連を設立し、今年度 に入ってから、有識者を招いた勉強会を開催してきたました。その過程で、ぜひ勉強会の成果を踏まえて政府の来年度予算編成および税制改正作業に具体的な要望を提出しようということになり、7月30日に議連役員会で提言案を取りまとめ、8月5日の議連総会で最終決定したのが、この日大臣に申し入れした提言です。」
 「日頃、厚生労働委員会では徹底的にやり合っている塩崎大臣ですが、この日は超党派議連からの申し入れということもあってか、大変神妙な面持ち。かつ、私たちの提言の各項目について、大変丁寧にご所見をいただきました。とりわけ、「不本意非正規社員ゼロ&学卒全員正社員就職実現キャンペーン(仮称)」の全国展開や、給付型奨学金の創設、非正規雇用労働者の雇用の実態に関する調査・研究の実施の3点については、大臣から想定以上に前向きな回答を頂くことができました。「非正規雇用労働者が増えることを良いと思っているわけではない。賃金格差も広がっていて、対策が必要だと考えている。提言をいただいた、給付型の奨学金の創設を含む一人親世帯への支援や、調査研究の充実など、関係省庁との調整も含めて事務方にしっかり検討させたい」との大臣答弁、しかと受け止めました。」
少し話がそれますが、この「不本意非正規社印ゼロ&学卒全員正社員就職実現キャンペーン」は、実行に移されました。

2016年12月22日には厚生労働省が議連に対して進捗状況を報告しました。
2017年から無期雇用転換ルールがついに発動されますが、厚生労働省は濫用的な雇い止め抑止に取り組んでいます。
(つづく)

続きを読む

菅の写真

弁護士の菅俊治です。
今年もよろしくお願いします。

経済産業省が、「雇用契約によらない新しい働き方」に関する研究会を開催しています。
昨年12月19日に第2回が開催され、その研究会の資料がアップされていました。
http://www.meti.go.jp/press/2016/12/20161219004/20161219004.html

2017年は、僕たちもこのテーマを考えていく年になるでしょう。

「労働者」(この場合はフリーランサーを含めて)の正当な権利保障とか、産業経済の健全な発展とか、
の見地は、こうした会議に参集している人たちと一致できるはずの目標なので、折に触れて何か意見発信ができたらと思います。

掲載されているいくつかの資料を読んで、改めて感じたのは、企業がこれまで行ってきた業務をクラウドを通じて外部化していくとしても、以下のような課題があり、すでにいくつかの萌芽も見られることです。

(1)受注側の権利保護(適正な取引慣行や生活できる賃金保障と言ったほうが良いかも)は実現していない。
   「労働者性」概念の拡大による労働法の保護の拡張適用なのか。
   下請法の強化なのか、フランチャイズ基本法的な制定法なのか。
   何らかの法的な保護が必要である。

(2)受注側のクラウドワーカー達には「交流」が必要(スキルアップという点でも、「労働」条件の確保・向上という意味合いでも)である。
   労働組合法上の「労働者」の拡大による「労働組合法」の適用なのか。
   何れにしてもそういった「集団」を「組織」することが必要である。


(3)業務配分や進捗を管理する「プロクラウドワーカー」的な存在が必要である。そして、発注者ないしプラットフォーマーは、こうしたプロクラウドワーカーを通じて、「労務指揮」を行っている。
   労働法的な規制を裏付ける根拠の一つとなりうる。


(4)発注側にもスキルアップが必要。社外人材に頼めばなんとかなるということではない。ワークライフバランスを本当に実現し、なおかつ、有能な人材を食わしていかなくては、システムが成立しない。
   これを肯定的に捉えるならば、これまで、しばしば企業内部で顕在化してこなかった、無駄な仕事の排斥による生産性の向上の可能性を開くだろう。また、仕事と生活のバランスを無視したような業務指示のあり方を捉え直すきっかけともなりうる。
   しかし、企業内部の労務指揮管理のあり方(家族的責任を無視するような遠隔地配転や、本人のキャリアを無視するような異業種配転、あるいは正社員の長時間労働など)も、合わせて改める必要がある。

雑感としては、とりあえずこんなところでしょうか。



文責:菅俊治
https://www.tokyolaw.gr.jp/lawyer/suga_s.html  

↑このページのトップヘ