東京法律事務所blog

2017年03月

弁護士の菅俊治です。
3月23日、籠池氏の証人喚問に世間の注目が集まるなか、もう一つの注目の労働事件の判決が言い渡されました。
メトロコマース事件です。

残念ながら東京地裁は労働者側敗訴の判決を言い渡しました。労働組合が弾劾声明を発表しています。
http://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/45902f695fcd653a945c3b70b3a6c885
原告労働者たちが、団体交渉により自分たちと正社員との労働条件の「差」を初めて知ったときいかに驚いたか、以前、このブログでも書きました。
http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1064298874.html 

判決文を読んで、違和感を覚えたことがあったので、とりいそぎその点を書きたいと思います。

本件では、売店業務に従事している契約社員の労働者が、正社員との労働条件の差は労働契約法20条に違反しているとして訴訟を提起しました。

契約社員(有期契約ではたらく労働者)と、正社員(無期契約で働く労働者)の労働条件には、いろいろな違いがあります。その違いが、
「不合理と認められるものであってはならない。」
といっているのが、労働契約法20条です。

ところで、なにか物事を比較するときには、
「他の条件はできるだけ同じにする」
という発想が自然ですよね。

だから、契約社員と正社員の労働条件の差を比較するなら、「職務の内容」ができるだけ同じで、「職務や配置変更の範囲」もできるだけ同じ正社員を見つけて、その差に合理性があるかを判断するものと思っていました。
メトロコマースの場合なら、「売店の仕事に専従している正社員」がいるなら、その労働条件と比較するのが自然です。

たとえば、仮に10年売店の仕事をした正社員Aと、10年売店の仕事をした契約社員Bがいたら、その二人の退職金の差を比較して不合理と認められるかを審査すべきということになる、等々ということです。
同じく売店の仕事を10年してきたのに、一方には退職金が支給され、他方は退職金ゼロって、不合理と認められるんじゃないかと。

でも、今回の判決はそのような比較は駄目だというんです。
広く「正社員一般」と比較するのが相当だと。
そこに違和感を覚えましたね。

判決は、「売店業務に専従している正社員」の存在は認めています。比較不能なのではなくて、比較はやろうと思えば可能なのです。が、そのような比較は失当だというのです。
その理由は、そのような正社員は「ごく一部」で、契約社員から登用されたりという経歴があるから、だというのです(50頁)。

でも、契約社員からの登用だからといって比較しない理由がよくわからないです。
むしろその人たちの労働条件とこそ比較するのが妥当ではないかという気がします。

土田道夫教授の『労働契約法』(2版)793頁を読むと、
① 職務内容・人材活用の仕組みが同一の無期契約労働者と比較し、
② 職務内容・人材活用の仕組みが異なる無期契約労働者と比較する。
この結果、
②との間で不合理性が否定されても、
①との間で不合理性が肯定されれば、20条違反と評価される。
とあります。

僕の考えもこれに近いです。
 
①の比較対象を見つけられるか否かが労働者側の実務上の課題である。
 
①と②の間にくる場合、つまり「職務内容は同じだけど、人材活用の仕組みは微妙〔形式的には違うが実際の運用は同じ)」という場合は判断が難しく、それをどうするかが理論上の課題であり、立法上の課題でもある
 
と思ってました。

判決は、土田さんの整理でいうところの①の判断をすることそのものを「失当」と言っているように読めます。

違和感を覚えます。 


この事件は、非正規労働者の権利のために頑張ってきた仲間たちが必死の思いで訴えた裁判です。
労働契約法20条という条文は、平成24年にできたのですが、そのような立法につながる、たくさんの非正規労働者の苦難の歴史のうえに闘われている裁判です。
しかも、私にとっては、東京法律事務所の同僚弁護士が担当した事件であっただけに、正直、落胆しています。
4000万円の請求で、4000円ばかりの請求認容とは。

この悔しさをばねに、原告団・労働組合・弁護団はきっと頑張ってくれるでしょう。
私も、引き続き、訴訟に、立法に頑張ろうと思っています。 

東京法律事務所の弁護士 【菅 俊治】のプロフィール

 弁護士の笹山尚人です。


 今回は、今国会に提出されている法案について、考えるところを紹介します。


 総務省所管ということで、政府は、現在開催されている第193回国会に、地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案(3月7日)、地方自治法等の一部を改正する法律案(3月10日)を提出しました。
 地方自治体の仕事のあり方、および地方公務員の労働条件についてがテーマです。地味かもしれませんが、結構大事な問題ではないかと考えています。


1 提出法案
(1)3月7日提出法案は、総務省の研究会報告に基づくが、逸脱した部分も
 2016年12月27日、総務省は、「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会報告書」(以下、「研究会報告書」といいます。)を発表しました。3月7日提出法案は、基本的には、この研究会報告書に基づいています。

 研究会報告は、自治体の非常勤職員のうち、「特別職非常勤」を専門的な場合に限定し、「会計年度任用職
員」という一般職非常勤職員制度を設ける、などの内容です。

 これは、地方の厳しい財政状況が続く中、多様化する行政需要に対応するために臨時・非常勤職員が増加しているが、適正な任用ができていないから行う、というのが理由とされています。

 しかし、研究会報告と全く同じかというとそうでもありません。ここでは、会計年度任用職員に、パートとフルの区別が設けられています。
「1週間あたりの通常の勤務時間に比し短い時間であるもの」=パートタイム会計年度任用職員には、生活保障的な要素を含まない報酬と費用弁償に加えて期末手当を支払うとしています。一方、「一週間当たりの通常の勤務時間と同一の時間であるもの」=フルタイム会計年度任用職員には、勤務に対する反対給付で生活給としての給料、手当(扶養手当、退職手当等)を支払う、としています。

(2)3月10日提出法案は、窓口業務の委託が問題
 3月10日提出法案は、様々な内容が含まれますが、私が問題意識を持っているのは、戸籍謄本等の発行等についての自治体の窓口業務を地方独立行政法人へ委託できるという内容にする、という部分です。
 この委託は、「地方公共団体等における適正な事務処理等の確保並びに組織及び運営の合理化を図るため」「地方独立行政法人について、その業務への設立団体である市町村等の申請等関係事務の処理業務の追加及び適正な業務を確保するための規定の整備を行う等の措置を講ずる。」というのが理由です。


2 私の問題意識
 私は、この2つの法案を併せ考えると、これは、地方公務員のあり方を根本的に変更し、民営化自治体リストラが進むのではないかと危惧しています。そうなると公務労働者の職場が奪われるとともに、利益度外視で行われるべき福祉等の公共サービスが利益事業となって国民の社会権が脅かされる結果になるのではないか、という問題意識を持っています。
 また、パートとフルをわけるという法案段階で設けられた区別は、パート職員の労働条件を期末手当のみに限定してその他の手当の支給やそのための処遇改善を阻むものになっていると思われ、この点にも問題意識を持ちます。


 以下で、その内容を具体的に説明します。


3 研究会報告書の言う「本格的業務」「常勤職員が行うべき本格的業務」?
 いまや、自治体には多くの非常勤労働者が就労しています。自治体によっては5割近い非常勤職員がいるところもあるようです。いまや非常勤抜きには自治体の業務はまわらないわけです。

 研究会報告書では、臨時、非常勤職員の業務の中には、「常勤職員と同様の本格的な業務を行う職が存在する」とし、その上で、「本格的業務に従事することが可能である任期付職員制度の活用について検討する事が必要である」として、「会計年度任用職員」制度の創設が提案されています。

 研究会報告書は、「常勤職員が行うべき業務である本格的業務」として、「組織の管理・運営自体に関する業務や、財産の差押え、許認可といった権力的業務」を例としてあげています。

 しかし、「本格的業務」と言うなら、それは常勤職員をもって対応するのが地方公務員法の本来の在り方のはずです。2010年11月11日、第176国会の参議院総務委員会で、山下芳樹議員の「公務の継続性、安定性、公平性ということからいっても、本来、公務というのは任期のない常勤職員で運営するというのが基本であるべきだと考えますが、いかがでしょうか。」という質問に対し、片山総務大臣は、「基本的認識は今、山下議員がおっしゃったことと私は全く同じであります。」と答弁しました。

 自治体業務のうちの「本格的業務」というのを、なにをもって「本格的業務」というのか定かではありませんが、本格的業務というのなら、今の地方公務員法の考え方からすれば、それは常勤職員が担当することにしかならないのではないか。それが常勤でなくてもできるというのは、地方公務員法の考え方の根本的変更ではないでしょうか。


 実際に多くの非常勤職員が自治体の本格的業務を担っている実態があるのだから、これをきちんと法制化しようというのであれば、それはなんだか憲法9条に違反する自衛隊が現実に存在して活動している実態があるのだから、憲法9条を変えて自衛隊を認める規定を設けようという意見と同じではないかと思えます。


 別の例で言うと、派遣労働者がいっぱいいるから労働者派遣法を変えようということで、労働者派遣法の「臨時での活用」との本来の基本理念を結局放棄していったたのと、同じ現象ではないでしょうか。


4 「常勤職員が行う本格的業務」は狭い
 また、「常勤職員が行うべき本格的業務」なる区分けは、常勤職員の担当業務を著しく狭く捉える発想に基づくものです。
 これは、福祉に関わる職場の業務などについては、本格的業務であっても常勤職員が行うべき業務ではないとし、こうした業務を非常勤職員や、民営化して民間にゆだねていくことを推進していく発想と考えられます。


5 本来、自治体業務を「本格的業務」とそうでない業務とに分けるべきなのか
 しかし、自治体業務のうち、「本格的業務」とそうでない業務、そして「本格的業務」のうち「常勤職員が行うべき業務」とそうでない業務を区分けする考え方自体、なんの根拠もありません。かえって福祉の業務を自治体の常勤職員が行う業務ではないとするのであれば、それは社会権を定め国と自治体に福祉事業を行うことを求める憲法からして許されない発想ではないかと考えます。
 つまりこの考え方は、結局自治体職員が担う自治体業務を中枢機能にまで限定して、自体業務の多くを民営化したり、解雇しやすい非常勤職員にゆだねる「自治体リストラ」の手法そのものだと私には思えます。


6 軌を一にする地方独立行政法人への判断権移譲を伴う民営化
 3月10日提出法案は、自治体の窓口業務を地方独立行政法人に委託する内容が含まれています。


 この点、東京都足立区では、戸籍課の窓口業務の民営化が行われたことがありました。その際、民営化受託会社が自治体が行うべき判断業務を行和ざるを得ない実態にあることが問題になりました。
 戸籍や住民票には、プライバシー情報が多数含まれます。交付請求に対して、応じてよいのか、判断を求められる場面があります。この自治体としての判断業務が、受託者にゆだねられるのは、それ自体大きな問題です。地方公務員が法律上の守秘義務を負って責任もって管理することが求められる情報が、ダダ漏れすることになりかねません。
 足立区当局がぶつかったこの問題を解決するために、地方独立行政法人への判断権を伴う事業処理を行える改正をするのではないか。この懸念どおりなら、自治体事業の委託化、ひいては民営化への道筋が、大きく推進されることになるわけです。
 この法案の改正案と軌を一にするように、地方公務員法・地方自治体法の改正案が提出されているのは、自治体の常勤職員の行う業務を狭め、自治体業務を非常勤や民営化にゆだねていくやり方を進めるものではないでしょうか。


7 パートとフルの処遇を異なるものにしてこれまで勝ち取られてきた権利を奪うもの
 また、3月7日に閣議決定された法案では、フルには給料と手当、パートには報酬・費用弁償と期末手当を支払えるとしたのですが、これはこれまでの裁判例の流れに反するものといえます。

 枚方市非常勤職員一時金等支給事件(大阪高判平22・9・17)では、「常勤職員の週勤務時間(38時間45分)の4分の3に相当する時間以上」勤務している非常勤職員について「常勤の職員」と判定し、給料・手当が支給される対象としました。東村山市事件(東京高判平20・7・30)では、「嘱託職員は勤務時間のみならずその職務内容も常勤職員と同様であり、勤務実態からみて常勤職員に該当する」とし、常勤職員と同じ仕事をしていれば「常勤の職員」と判定しています。
 成案では、判例上「常勤の職員」と認められてきたパートの非正規公務員から、将来に渡って退職手当をはじめとする様々な手当受給の権利を奪ったことになると考えられます。


8 法案実現の結果
 もし法案が成立すると、次の現象が起こるのではないかと考えています。

(1)本来利益ベースで検討してはならないナショナルミニマムを図るべき部分の業務を利益を追い求める事業体の競争の渦中におく道を開き、公共サービスとしての質的劣化を招く。

(2)公務員の働く職場を奪うことにもなり、公務員労働組合の組織そのものに対する攻撃となる。

(3)非常勤の労働者にとっては、大きな問題として、雇用の保障がなされない、という問題がある。さらにこれまで裁判例で勝ち取られてきた手当を受けられる権利が狭められることになる。

(4)労働組合法の適用が認められている特別職非常勤が限定されることにより、公務員から労働基本権がはく奪される動きがますます進む。


9 自治体労働者を中心に、大きな議論を
 というわけで、これは、今国会に提出されている法案の話なので、関係各所で、とくに自治体の労働者、労働組合を中心に議論を早急に進め、検討すべき課題ではないかと考えます。少なくとも、国民的議論のないまま、進めて良い話ではないと考えます。
 
 私は、今回のような改正案ではなく、現状の臨時・非常勤問題の抜本的改善、具体的には正規職員化と、任期の定めのない均等待遇に基づく一般職短時間公務員制度の確立、が必要ではないかと考えています。



弁護士の今泉義竜です。
 3月21日、共謀罪法案(組織的犯罪処罰法の改正案)が閣議決定されました。


「共謀罪」法案を閣議決定 今国会で成立目指す(3月21日朝日新聞)
法務省ウェブサイト(要綱、法律案等)


報道によれば、菅義偉官房長官は法案について「対象となる団体を限定し、一般の会社や市民団体、労働組合などの正当な活動を行っている団体が適用対象とはならないことを明確にした」と言っています。
 しかし、法文上は、以下の行為が共謀罪に問われる危険があります。



・労働組合の組合員が,団体交渉で社長が要求に応じるまでは帰さない覚悟で交渉に臨むことを執行委員会で確認し、会議室を予約。しかし実際には予定していた交渉時間が過ぎると社長が席を立って帰ってしまった。


→組織的監禁の共謀罪は成立。


・労働組合が、裏の取れていない事実をもとに会社を非難するチラシを作成したものの、顧問弁護士から止めておくように注意されて結局チラシ配布は断念した。


→組織的信用毀損の共謀罪は成立。


・高層マンション建設に反対する住民が,建設会社の門前で宣伝を行ったり、ロビーで座り込みを行ったりすることを計画しチラシ用の紙を購入したが住民同士の予定が合わずに実行しなかった。


→組織的信用毀損、組織的威力業務妨害の共謀罪は成立。


・勤務する会社が不正を行っていることを知り、告発のために会社の営業秘密が記載された資料を持ち出すことを信頼できる同僚と計画して記録の保管庫に入ったが、怖くなってやめた。


→不正競争防止法違反の共謀罪は成立。


・新聞社の社内会議で,汚職の疑惑のある政治家に対して,行く手を実力で阻んででも食らいついてコメントをもらうことで合意したが、実際にはSPに阻まれてコメントはとれなかった。


→組織的強要罪の共謀罪は成立。


・消費者団体の会議で,悪徳業者の広告を掲載している雑誌の不買運動によって圧力をかけることを計画し、資料のため掲載雑誌を購入した。


→組織的信用毀損の共謀罪が成立。


・文化系サークルの大学生が数名でお金を出し合って高価な専門書を1冊購入し、大量にコピーしてコピー代相当額で販売することを計画したが、法学部在籍のメンバーが違法になるかもしれないと注意してやめた。


→著作権法違反の共謀罪は成立。


・アパレル会社の会議で,ライバル社の売れ筋のブランドものジャケットとそっくりのジャケットを販売することを決定して生地を仕入れたが、顧問弁護士から止められた。


→商標法違反の共謀罪は成立。


・会社社長が、会社の業績が思わしくないことから、脱税をすることを計画して顧問税理士に相談したものの、税理士から諫められて結局納税した。


→法人税法違反の共謀罪は成立。    
   

他にもいろいろあると思いますが、
テロ等準備罪という表題からこのような話し合いまで
適用対象になるということは想像できますでしょうか?

表題にだまされることなく、多くの人に中身を見ていただきたいと思います。



**********


資料:「共謀罪」の対象となる法律と罪名一覧(3/21付朝日新聞より転記)


【刑法】内乱等幇助(ほうじょ)▽加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等▽あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持▽公印偽造及び不正使用等▽偽証▽強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄▽事後収賄▽あっせん収賄▽傷害▽未成年者略取及び誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽人身売買▽被略取者等所在国外移送▽営利拐取等幇助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身の代金被拐取者収受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽窃盗▽不動産侵奪▽強盗▽事後強盗▽昏酔(こんすい)強盗▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲受け等


【組織的犯罪処罰法】組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開張等図利▽組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身の代金目的略取等▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な威力業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽組織的な建造物等損壊▽組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等▽不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿


 


【爆発物取締罰則】製造・輸入・所持・注文▽幇助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所持・注文(第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき)▽爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等


 【外貨偽造法】偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の行使等


 【印紙犯罪処罰法】偽造等▽偽造印紙等の使用等


 【海底電信線保護万国連合条約罰則】海底電信線の損壊


 【労働基準法】強制労働


 【職業安定法】暴行等による職業紹介等


 【児童福祉法】児童淫行


 【郵便法】切手類の偽造等


 【金融商品取引法】虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等


【大麻取締法】大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等


 【船員職業安定法】暴行等による船員職業紹介等


 【競馬法】無資格競馬等


 【自転車競技法】無資格自転車競走等


 【外国為替及び外国貿易法】国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的の無許可取引等


 【電波法】電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等


 【小型自動車競走法】無資格小型自動車競走等


 【文化財保護法】重要文化財の無許可輸出▽重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等


 【地方税法】軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税


 【商品先物取引法】商品市場における取引等に関する風説の流布等


 【道路運送法】自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等


 【投資信託及び投資法人に関する法律】投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為


 【モーターボート競走法】無資格モーターボート競走等


 【森林法】保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の運搬等▽他人の森林への放火


 【覚醒剤取締法】覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等


 【出入国管理及び難民認定法】在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等


 【旅券法】旅券等の不正受交付等


【日米地位協定の実施に伴う刑事特別法】偽証▽軍用物の損壊等 


【麻薬及び向精神薬取締法】ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲渡等


【有線電気通信法】有線電気通信設備の損壊等


 【武器等製造法】銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造


 【ガス事業法】ガス工作物の損壊等


 【関税法】輸出してはならない貨物の輸出▽輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等▽偽りにより関税を免れる行為等▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等


 【あへん法】けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲渡し等


【自衛隊法】自衛隊の所有する武器等の損壊等

 

【出資法】高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等


 【補助金適正化法】不正の手段による補助金等の受交付等


 【売春防止法】対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供


 【高速自動車国道法】高速自動車国道の損壊等


 【水道法】水道施設の損壊等

 

【銃刀法】拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲渡し等▽営利目的の拳銃等の譲渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の所持▽拳銃実包の譲渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供


 【下水道法】公共下水道の施設の損壊等


 【特許法】特許権等の侵害


 【実用新案法】実用新案権等の侵害


 【意匠法】意匠権等の侵害


 【商標法】商標権等の侵害


 【道路交通法】不正な信号機の操作等


 【医薬品医療機器法】業として行う指定薬物の製造等


 【新幹線特例法】自動列車制御設備の損壊等


 【電気事業法】電気工作物の損壊等


 【所得税法】偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による所得税の免脱▽所得税の不納付


【法人税法】偽りにより法人税を免れる行為等


 【海底電線等損壊行為処罰法】海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊


 【著作権法】著作権等の侵害等

 

【ハイジャック防止法】航空機の強取等▽航空機の運航阻害


【廃棄物処理法】無許可廃棄物処理業等


 【火炎瓶処罰法】火炎瓶の使用


 【熱供給事業法】熱供給施設の損壊等


 【航空危険行為処罰法】航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み


 【人質強要処罰法】人質による強要等▽加重人質強要



【生物兵器禁止法】生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器等の所持等


【貸金業法】無登録営業等


【労働者派遣法】有害業務目的の労働者派遣


【流通食品毒物混入防止法】流通食品への毒物の混入

 

【消費税法】偽りにより消費税を免れる行為等



【出入国管理特例法】特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持


【麻薬特例法】薬物犯罪収益等隠匿


【種の保存法】国内希少野生動植物種の捕獲等


【不正競争防止法】営業秘密侵害等▽不正競争等


【化学兵器禁止法】化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の所持等▽毒性物質等の製造等


 【サリン人身被害防止法】サリン等の発散▽サリン等の製造等


【保険業法】株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為


【臓器移植法】臓器売買】

 

【スポーツ振興投票法】無資格スポーツ振興投票


【種苗法】育成者権等の侵害


【資産流動化法】社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為


【感染症予防法】一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等▽二種病原体等の輸入


 【対人地雷禁止法】対人地雷の製造▽対人地雷の所持


 

【児童買春・児童ポルノ禁止法】児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対るる提供等


 【民事再生法】詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等


【公衆等脅迫目的犯罪資金処罰法】公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等


【公的個人認証法】不実の署名用電子証明書等を発行させる行為


 【会社更生法】詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等


【破産法】詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等


【会社法】会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為


 【国際刑事裁判協力法】組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証


 【放射線発散処罰法】放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核燃料物質の窃取等の告知による強要


 【海賊対処法】海賊行為


 【クラスター弾禁止法】クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持


 【放射性物質汚染対処特別措置法】汚染廃棄物等の投棄等

以上


 


 


弁護士の今泉義竜です。
3月16日昼休み、法律家7団体で共謀罪反対のデモを行いました。

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朝日新聞が記事にしてくれました。
「共謀罪」反対デモ、法律家ら約300人 集会も相次ぐ(朝日新聞)


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衆議院本会議開始直前に来てくれた、左から民進党逢坂議員、共産党畑野議員。

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参議院前では、左から民進党真山議員、共産党山添議員、仁比議員。

共謀罪の問題点については、ブログ記事
共謀罪(テロ等準備罪)の3つの問題
に以前簡単にまとめました。

しかし、

犯罪の未然防止には必要じゃない?
犯罪の計画なんて思ったこともない一般人である私には関係ないでしょ?

という声は、まだまだたくさんあるようです。

弁護士は、刑事弁護を経験する中で捜査機関という組織が
恣意的な捜査をし、自白を強要し、場合によっては平気で法律を破る、ウソをつくということがあるということを
現場で肌感覚で身に着けます。

そのような経験から、「話し合い」の段階にまで処罰を広げ、捜査機関に権限をあたえることが
どれだけ危険なことかが共通認識として持ちやすい面があります。
例え身に覚えがなくても、一般人が「共謀をした」容疑で犯罪をでっち上げられるということは
容易に想像がつきます。

しかし、事件とは無縁の一般の人にとっては、そのような感覚はなかなか理解しづらいかもしれません。
そうした方には、私が担当した築地国賠訴訟の事案を知っていただきたいと思います。

築地公務執行妨害でっち上げ国賠事件、勝訴!!(今泉)
築地公務執行妨害でっち上げ国賠事件、東京都が上告断念

この事件は、すし店を経営し、少し頑固であるという点を除いては
正真正銘の一般人であった二本松さんが、駐車違反の指摘に対して反論しただけで、
公務執行妨害をでっち上げられて、逮捕・勾留されたという事件です。

警察官二人のウソが発端となったものですが、組織ぐるみでウソが作り上げられました。
裁判では、警察官のウソに従って整理された証拠がだされました。
しかし、ウソには必ず矛盾があります。弁護団は、証拠に現れた矛盾を徹底的に追及し、
警察官二人の供述のウソを暴きました。
結果、裁判所は、警察官の供述の信用性を否定し、東京都に賠償を命じました。
判決は確定し、賠償金は支払われましたが、
その後東京都や警察官からは一言の謝罪もありません。
賠償金は税金から払われますので、ウソをついた警察官やウソを塗り固めるのに加担した
関係者には何の痛みもありません。

「気に入らない」と思えば、犯罪を作りだして逮捕することも平気でやる、
警察というのはそういうことをする組織だということなのです。
(もちろん、現場で頑張っている良心的な警察官もいますが、組織としてどうか、というと、
そういう方は主流ではないと思います。)

共謀罪が導入されれば、
「話し合いをしてただろう(明示の共謀)」
「目くばせしただろう(黙示の共謀)」
「既読スルーしただろう(黙示の共謀)」
という容疑で
いともたやすく「気に入らない者を逮捕する」ということが
できるようになるでしょう。

それでもあなたは「自分には絶対に関係ない」と言っていられますか?


弁護士の菅俊治です。
安倍首相が「働き方改革」と称してきた時間外労働の上限が、実は過労死ラインの月100時間であったことがはっきりしてきました。今回は、安倍首相の労働時間の上限規制案が、がっかりな内容である上に、非常にわかりにくいのはなぜなのか、について書いてみたいと思います。
(書いていることは、所属事務所や所属団体の見解とは関係がありません)

1 評判の悪い安倍内閣の「月100時間残業裁定」

安倍内閣が、繁忙期の残業の規制について「月100時間未満」とするよう裁定したとのことです。
経団連が「月100時間以下」と譲らず、安倍内閣は経団連をそれ以上説得しようとしませんでした。

この裁定は、非常に評判が悪いようで、早速、諸方面から批判の声があがっています。
電通事件の高橋まつりさんのお母さんの幸美さんも、過労死遺族の一人として強く反対するコメントを発表しました。
このような長時間労働は健康にきわめて有害なことを、政府や厚生労働省も知っているにもかかわらず、なぜ、法律で認めようとするのでしょうか。全く納得できません。
月100時間働けば経済成長すると思っているとしたら、大きな間違いです。人間は、コンピュータでもロボットでもマシーンでもありません。長時間働くと、疲れて能率も悪くなり、健康をそこない、ついには命まで奪われるのです。
人間のいのちと健康にかかわるルールに、このような特例が認められていいはずがありません。
繁忙期であれば、命を落としてもよいのでしょうか。
命を落としたら、お金を出せばよいとでもいうのでしょうか。
娘のように仕事が原因で亡くなった多くの人たちがいます。死んでからでは取り返しがつかないのです。
どうかよろしくお願いします。
安倍首相は、3月14日の会見で「極めて画期的で、労働基準法70年の中で、歴史的な大改革だ」と誇らしげに語ったようですが、記者も白けムードのようです。

どこが働き方「改革」ですか?看板倒れでしょ。。。
これじゃ今までと働き方は変わらないね。
というのが大方の見方ではないかと思います。

2 「過労死ライン」を無理矢理持ち込んだ経団連・安倍首相
ところで、3月13日(月)に公表された内閣官房働き方改革実現推進室の説明資料(「時間外労働の上限規制の状況 説明資料」3月10日付。以下「説明資料」)を読んでみると、36協定の時間外労働の上限の議論と、休日労働も含めた広い意味での時間外労働の上限の議論とが、区別されず、ごちゃごちゃにされています。
記者や弁護士仲間からも、「これどうなってるの?」と質問を受けます。

なんでそんなことになったかというと、経団連・安倍首相サイドが、「過労死ライン」さえ超えなければいいという姿勢で、36協定の時間外労働の上限規制の議論に、労災認定に関する過労死ラインという本来異質なものを持ち込んだからですね。

そのおかげで、安倍首相の「説明資料」は、「内容がよろしくない」ことに加えて、「非常にわかりにくい」ものになっています。

「わかりにくい」ということは、「使いづらい」ということとほとんど同義ですので、その点でも安倍首相には「一度撤回して、再検討したほうがよい」とお奨めします。

すこし解説してみましょう。

(1)36協定の限度時間=原則月45時間、年360時間
「説明資料」はまず、
週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、月45時間、かつ、年360時間とする。
とします。
労基法は、1日8時間、1週40時間以上働かせてはならない(労基法32条)と禁止していますが、36協定があるとそれを超えて働かせてもよい(労基法36条)ことになりますね。
しかし、36協定で超えていい時間にも限度がある。
その限度は、月45時間、かつ、年360時間が原則だというわけです。

ここでいう「時間外労働」には、休日労働は含んでいません。休日労働は、これとは別に協定しなくてはさせてはならないし、割増率も35%以上と高く設定されています。

(2)36協定の限度時間の例外
ただし、「説明資料」は、この限度時間にも例外があって、「臨時的な特別な事情がある場合」には、時間外労働は1年720時間までは許されるとします。特に根拠は示されていません。
臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない年間の時間外労働時間を1年720時間とし、かつ、1年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設けることとする。
ここでいう「時間外労働」にも休日労働は含まれていません。
休日労働を含まず、「時間外労働」だけで年間720時間って、異常に長いと思います。
年間2700時間というレベルです。
月の所定労働時間を170時間とすると、4か月+1週間分余計に働く計算です。
「臨時的な特別な事情」とはいえないはずです。「臨時」ってせいぜい1年に1か月か2か月でしょ。

重大な争点なんですが、本稿はそこに触れるのが主題でないので、先に進みます。

「かつ」以下の具体的な数字は、まだ触れられていません。

(3)突然、労災認定基準「時間外労働+休日労働」が持ち込まれる
問題は、その次です。
「説明資料」は、以下の上限を設定しています。
この上限について、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月の平均で、いずれにおいても、80時間以内を満たさなければならないとする。
今般の労使合意に従い、単月では、実効性と実現可能性の双方に鑑み、100時間を基準としなければならない(この点は、「未満」か「以下」で見解が異なり、労使間でセットされていない)こととするが、他方、労使が上限値までの協定締結を回避する努力が求められる点で合意したことに鑑み、さらに可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設けることとし、行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言・指導を行えるようにする。
1ヶ月あたり100時間、2~6ヶ月間に1ヶ月あたり80時間というのがいわゆる「過労死ライン」(脳・心臓疾患に関する労災認定基準)で、逆にいえば、これを超えないかぎり、ぎりぎりまで働かせることを認めよ、という考えなわけです。

ところで、「この上限」という文章の流れからすると、ここでいう「月100時間」「1ヶ月あたり80時間」には、休日労働が含まれていないように読めます。
しかし、記者から伝え聞くところによると、官邸は「時間外労働+休日労働」の総量を制限したものだと説明しているということです。「過労死ライン」は「時間外労働+休日労働」の総量で判断するからです。
つまり、この部分だけ、「時間外労働+休日労働」の話をしています。

<追記>
この過労死の認定基準を、日常の労働時間の量的規制に用いるのは、あまりにも面倒で実用に耐えないのではないかと思います。
労災認定の場合は、「発症日」が特定の日に決まり、そこから遡って直近はどうか、1か月はどうか、2か月平均はどうか、3か月は平均は・・・6か月平均はという作業をします。
面倒ですけど、一回やればいい。

しかし、今回、設けようとしているのは日常の労働時間の量的規制です。
2か月平均、3か月平均、・・・6か月平均は、といちいちチェックしますかね?
<追記おわり>

(4)月45時間を上回ってよいのは年6回まで
「説明資料」は、また「時間外労働」(休日労働は含まず)の話にもどります。
月45時間を超えていいのは年6回までであると。
加えて、時間外労働の限度の原則は、月45時間、かつ、年360時間であることに鑑み、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう、年6回を上限とする旨、労働基準法上、義務づける。
なぜ「6回」かの根拠はありません。おそらく7回みとめると、さすがに「臨時的な特別の事情」「一時的に事務量が増加する場合」とはいえないからでしょう。

(5)安倍首相の考え方
 要するに、「説明資料」の考え方は、
  •  1年のうち半分は、時間外労働月45時間を守りなさい。
  • 残る期間は「過労死ライン」の極限までは働かせてもいいですよ。 
  • ただし、時間外労働は年間720時間は超えてはいけません。 
 ということになります。
これのどこが、「歴史的大改革」なんでしょうね。。。
しかも、非常にわかりにくい。

3 せめて「月75時間」とすべきであった
わかりにくい原因は、「経団連・安倍首相サイドが労災認定基準を無理矢理持ち込んだからだ」と書きました。

この「過労死ラインさえ違反しなければよい」という腐った根性を取りさっただけでも、かなり見通しのよい制度になります。
  • 1年のうち半分は、時間外労働の上限月45時間を守りなさい。
  • ただし、時間外労働は年間720時間は超えてはいけません。
という命題は維持したうえで、
  • ある月だけ突出して長く働くというのは危ないので避ける。わかりやすくする。
という考え方に立つと、以下の図のように整理できます。
screenshot.png
★所定労働時間(一番下の薄いブルー)
わかりやすくするため、
1ヶ月の所定労働時間は概算170時間(年2040時間)としました。

★月45時間規制(その上のブルー)
その上の45時間が1ヶ月の標準限度時間(年540時間)。

★月75時間規制(一番うえの濃いブルー)
年間720時間を超えてはならないので、年間あと180時間の「余裕」がある。
月45時間を超えていいのは年6ヶ月までなので、180時間÷6か月=30時間
よって、多い月でも月75時間が限度。

いずれも「時間外労働」であり、休日労働は含みません。
これを違反すると罰則を科すという量的上限規制です。

★「過労死ライン」
その上の赤い「80時間ライン」、黒い「100時間ライン」は、労災認定基準です。
こちらは「時間外労働+休日労働」です。
結果としてこれを超えないようにしなければならないのは当然です。
そうしないと安全配慮義務違反(民事上の債務不履行)になりますから。
しかし、さしあたり労基法違反の罰則には持ち込まないこととしておく。

以上のように、
「時間外労働」(休日労働含まず)は原則月45時間
多い月でもせめて最大75時間。最大年6か月まで。

せめてこのように設定しないと、
  • 休日労働を含めて1ヶ月あたり80時間、100時間という過労死ラインも容易にオーバーしかねないし、
  • なによりもわかりにくくて仕方が無い。
実は、この議論、
「働き方実現会議」の議員のおひとりである白河桃子さんが、会議で発言されています。
白河さんは、さらに月間65時間は2ヶ月連続禁止、月間45時間は3か月連続禁止など、傾聴に値する提案をされています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai7/siryou3.pdf
月間75時間って、やっぱり長すぎますからね。。。「せめて75時間」と書きましたけど、私もなんらかの付加的な規制が必要で、白河さんの案はひとつの考え方だと思います。

しかし、安倍首相は、白河さんのような建設的な(ある意味妥協的な)意見にすら、耳を傾けようとしません。

4 中身のない「勤務間インターバル」
白河さんは、月間12時間の勤務間インターバルの義務化を提案しています。

他方、安倍首相の「説明資料」は、単なる努力義務でお茶を濁しています。
勤務間隔時間について数字を示しておらず、中身がありません。
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法を改正し、事業者は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課し、
制度の普及促進に向けて、労使関係者を含む有識者検討会を立ち上げる。
また、政府は、同制度を導入する中小企業への助成金の活用や好事例の周知を通じて、取り組みを推進する。
白河さん以外にも、働き方改革実現会議では、さまざま建設的な意見があがっていましたが、安倍首相の「説明資料」は、経団連に遠慮をし、働き方改革に対して及び腰といわざるをえません。

5 「5年を経過した後の適当な時期」の見直しか、「5年の経過措置」か
安倍首相の「説明資料」は、
政府は、この法律の施行後5年を経過した後適当な時期において、この法律による改正後の規定の実施状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。
としています。
「5年を経過した後適当な時期」ですから、いつになるとも約束していません。
どんな方向の見直しなのかも、はっきりしません。
これでどうして、「今回の合意は大きな一歩だが、最初の一歩にすぎない」(安倍首相の14日会見発言)などといえるのでしょうかね。

働き方「改革」と称するならば、「経過措置」を設定して、大胆な提案をすべきです。
この記事では多く触れませんでしたが、時間外労働を年720時間まで許容するところが異常です。
限度時間の適用除外業種(建設、運転、研究開発など)も手つかず。
実労働時間の把握(労働時間隠し)についても触れず。

ちなみに、私の所属する日本労働弁護団は、2014年11月28日に、「あるべき労働時間法制の骨格〔第1次試案〕」を発表しています。将来、このような議論になることを見越して、労働時間の量的上限規制(1日2時間、協約で4時間まで延長可。1週48時間、協約で55時間まで延長可。1年220時間)、勤務間インターバル(連続11時間)に絞って提案しています。
私たちは、労働時間の量的上限規制については、「激変緩和措置」として「5年の経過措置」を提案しています。5年後には完全実施するという趣旨です。
http://roudou-bengodan.org/proposal/post_76/

(私は「75時間&45時間」と提案しているわけではないので、誤解されないようお願いします。)

菅の写真

弁護士 菅俊治
東京法律事務所
https://www.tokyolaw.gr.jp/lawyer/suga_s.html
 

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