東京法律事務所blog

2018年03月

弁護士の青龍美和子です。

昨日、3月29日に東京都議会で迷惑防止条例「改正」案が可決されてしまいました。
この条例のおかしさについては、以前当ブログに書きました。
3/15 ブログ「『森友』文書改ざん等の陰で・・・超危険な東京都迷惑防止条例改正案」

「森友」問題などで安倍首相や昭恵夫人に対して、ますます批判の声が高まっています。
首相官邸前や国会議事堂前にも大勢の人が集まって、連日抗議行動がおこなわれています。
国や自治体の政治、それを執り行っている政治家や、影響力を持っている個人や法人に対して、批判したり意見を言ったりすること、多くの人に伝えることは、民主主義として当たり前の行動です。
そうした、市民として当たり前の行動が、「改正」された東京都迷惑防止条例で制限される危険性があります。

都知事や警視庁は、「市民運動や労働運動、社会運動には適用しない」「濫用しない」と答弁しました。
だから安心、というわけにはいきません!
過去にも「市民運動や労働運動、社会運動には適用しない」という答弁をしたにもかかわらず、これらの活動をする人たちを逮捕したり処罰したりしたことが何度もあります。
戦前、治安維持法ができた時も、当時の政府は「言論文章の自由」を尊重することを繰り返し述べたそうです。
しかし、実際には、その後適用範囲がどんどん拡大されて、「戦争反対」という言論も取り締まられました。

なので、今後、条例が濫用されないよう監視し、万が一濫用された場合には徹底的に争います!
もちろん「改正」条例の廃止も求めていきましょう!!

条例が成立してしまったからといって、落ち込むことばかりではありません。
今回、都議会には都内外からたくさんの反対意見が寄せられた結果、この条例について各会派から質問がされました。本会議では最終的に、共産党、生活者ネットワーク、維新、立憲民主(西沢けいた都議)が反対しました。
反対の要請FAXは各会派8000に
達したとか!!
こんなにたくさんの声が集まったのに、無視するわけにはいかないですよね。

東京法律事務所も、団体として各会派に要請書をFAXしましたし、私も個人でFAXを送りました。

憲法94条は、
「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」
と定めています。
 

しかし、「改正」条例は、法律によって禁止されていない行為を禁止し、処罰する内容になっています。法律の範囲を超えた条例を制定するのは、明らかに憲法94条違反です。
条例改正に反対した多くの議員は、この点に注目したようです。
国政で野党共闘している会派が、都議会でものきなみ反対した点は非常に大きいです。

 
今回の条例が成立したからといって、「逮捕されるかもしれない」と恐れることはありません。
委縮せずに、自由に表現活動を続けていきましょう。
憲法21条で保障されている当たり前の権利なのですから。


<官邸前見守り弁護団 過剰警備を見直すよう警察庁に申入れ>
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私たち弁護士も、表現の自由を守る活動にますます力を入れていきます!
昨日3月29日は、「官邸前見守り弁護団」が官邸前や国会前での抗議行動に対し、過剰警備を見直すよう求める申入書を警察庁に提出しました。
見守り弁護団を代表して、当事務所の川口智也弁護士が申入書を手渡ししました。

↓↓↓ 申入書全文はコチラ

http://mimamori-ben.jugem.jp/?eid=27

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 弁護士の菅俊治です。

 2018年2月14日、公正取引委員会の競争政策研究センター内に設置されていた「人材と競争政策に関する検討会」が報告書を公表し、フリーランサー、ギグエコノミーの就労者、スポーツ選手、芸能人に対する独占禁止法を使った保護もありうることを指摘し注目を集めました。
 http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/feb/20180215.html

 この報告書について2018年3月16日までパブリックコメントが募集されていましたので、私と東京共同法律事務所の川上資人弁護士と連名で、検討会に対して意見書を提出しました。

 「雇用によらない働き方」「雇用類似の働き方」の就労者の保護が、今、重要な課題となっています。労働関係法令の適用を受ける「労働者」の範囲についても、再検討が必要な時期がきていると思います。公正取引委員会の今回の提起を前向きに受け止め、私たち実務家も、業界関係者、市民、研究者の皆さんと一緒に、より良い公正な社会に向けて具体的な改善につなげていきたいと思います。

 意見書の作成にあたっては様々な方々からご指導・ご助言をいただきました。御礼申し上げます。
 
___________________________

「人材と競争政策に関する検討会」報告書に対する意見

 

2018年3月16日

 

弁護士 菅 俊治(日本労働弁護団全国常任幹事)

弁護士 川上資人(日本労働弁護団事務局次長) 

 

 公正取引委員会は、競争政策研究センター内に「人材と競争政策に関する検討会」を設置し、人材の獲得競争をめぐる競争に対する独占禁止法の適用関係及び適用の考え方を整理するため平成29年8月から6回にわたり会議を開催し、平成30年2月14日に報告書(以下「報告書」)を公表した。

 当職らが所属する日本労働弁護団は、労働者及び労働組合の権利擁護のため活動する法律家団体であり、会員弁護士は、競業避止義務、秘密保持義務に関する紛争や、請負形態の就労者、芸能人・スポーツ労働者に関する紛争の相談や事件処理も手がけてきた。こうした経験を踏まえ、報告書に対して以下のとおり意見を述べる。

 

1 はじめに

(1)全体的な評価

 近年、個人の就労形態がますます多様化しており、インターネット上のプラットフォームを介して仕事を請負わせるギグエコノミーにみられるように、雇用によらずに労働力を調達する動きが拡大しつつある。この中には、形式的には雇用でないとされながら、実態としては雇用として労働法の適用がありうるものも多数含まれる。他方で、雇用か否かが曖昧なものもあり、さらには実態としても個人請負であるもののも存在する。こうした広がりの中で、従属的な立場に立つ個人の就労に対して法的保護の必要性が痛感されている。

 本報告書が、こうした個人の就労者に関し、使用者の人材獲得行為について独占禁止法の適用があるとしたことは、就労者に新しい紛争解決手段を提供するものとして積極的に評価できる。

 特に本報告書が、「労働者は当然に独占禁止法上の事業者には当たらないと考えることは適切でなく、今後は、問題となる行為が同法上の事業者により行われたものであるかを個々に検討する」とし、「労働法と独占禁止法の双方の適用が考えられる」ことを認めた点は重要である。

 言うまでもなく、形式的に雇用ではないとされている場合であっても、労働実態によっては使用従属関係が認められる場合がある。本報告書が「雇用的自営等」とする就労者について、一律に労働法の適用を放棄したものではないことは注意を喚起する必要があろう。


(2)スポーツ選手・芸能人の権利について

 次に、本報告書が、特に「スポーツ選手、芸能人」に関して、「役務提供者に不利益をもたらし得る発注者(使用者)の行為」に独占禁止法を適用するとしていることも評価できる。

 我が国では、スポーツ選手・芸能人の権利が十分保護されていない[1]。特に移籍の自由が保障されていないこと、仕事を不当に制限されること(いわゆる「干される」こと)によって、スポーツ選手・芸能人の交渉力が奪われている。

 報告書は、こうした芸能・スポーツの慣行に対しても明示的に独占禁止法による法的規制の可能性を認めたものであり、今後、具体的な適用により業界慣行が是正・修正されていくことが期待される。

 但し、芸能人・スポーツ選手の権利を保障するためには、独占禁止法・公正取引委員会による法的規制のみでは十分でない。不当な契約を是正する約款規制のアプローチや、米国のタレント・エージェンシー法のように芸能事務所の事業規制のアプローチなど、さまざまなアプローチを駆使することが重要であり、今後立法的な解決も望まれる。また、芸能人・スポーツ選手の地位向上のための労働組合の結成や組織化も重要な課題である。

 

2 「第3 労働者・労働組合と独占禁止法」について

 本報告書は、労働法と独占禁止法の双方の適用が考えられる場合に、それらの適用関係について検討するとして要旨以下のとおりのべている。

 まず、使用者に対して弱い立場にある労働者保護のために各種の労働法制が制定された意義自体は現在も変わらないとした上で、第1に「伝統的な労働者」、典型的には「労働基準法上の労働者」は、独占禁止法上の事業者には当たらず、そのような労働者の行為は独占禁止法の問題とはならないとしている。

 第2に、労働組合法に基づく集団的労働関係に基づく労働組合の行為や使用者の行為も、原則として独占禁止法上の問題とならないとしている。[2]

 第3に、就業規則の作成といった労働基準法・労働契約法等により規律される個別的労働関係における労働者に対する使用者の行為も、同様に原則として独占禁止法上の問題とはならないとしている。

 いずれも概ね妥当と考える。

 但し、第1に関しては、実態としては「伝統的な労働者」(労働基準法上の労働者)に該当する可能性がある場合も、形式的に請負形式を採用しているようなケースは多く存在する。そのような場合に、労働者保護という趣旨に照らし、「労働者」であることを理由に間口のところで独占禁止法の適用を排除することは妥当でない。

 実態は雇用であるにもかかわらず、あえて請負形式の契約を締結する行為は横行しているが、これらは事実と異なる取引条件提示するものであり、優越的地位の乱用の観点から役務提供者に不当に不利益を与えるものとして独禁法上の問題ともなりうるだろう。

 

3 「第4 独占禁止法の適用に関する基本的な考え方」について

 報告書が、人材獲得競争が不当に制限されることにより、「人材を利用して供給される商品・サービスの水準を低下させ消費者利益を損なう弊害もあると考えられる。」と指摘していることは重要な指摘である。

 芸能人やスポーツ選手の場合、その人材獲得競争の不当な制限は、芸能・芸術の「水準を低下させ」、「消費者利益を損なう」だけにとどまらず、我が国の文化・スポーツそのものの水準を低下させるものであることも指摘されてよい。

 

4 「第5 共同行為に対する独占禁止法の適用」・「3 「移籍・転職」に係る取決め」について

 報告書が、事業者間での移籍・転職を制限する取決めについて、育成費用の回収という目的からこれを正当化することができるか検討し、「移籍・転職を制限する以外に育成費用を回収するよりもより競争制限的でない他の手段は存在しないのか、といった内容,手段の相当性の有無も併せて」考慮するべきとし、「通常,育成費用の回収という目的を達成する手段として他に適切な手段が存在しないということはないものと考えられる」と述べて、育成費用の回収という目的を達成するためには、他により制限的でない手段があり、移籍・転職を制限する取決めを育成費用回収目的から正当化することはできないとした点は評価できる。

 ただし、このような結論が、芸能事務所等の「事業者」による役務提供者に対する費用回収を目的とする安易な損害賠償請求を正当化しないことも指摘される必要がある。

 実際に、わが国のスポーツ界では、使用者の所属・加盟する競技団体が、スポーツ選手の移籍や転職を制限する規定を、その規程中に設けている例が散見される。例えば、一般社団法人日本実業団陸上競技連合は、陸上スポーツ選手が、所属する法人と資本関係のない法人のチームへ移籍する場合、元のチームの陸上競技部長と監督連名の退部証明書を交付されなければ、新チームで登録申請を行うことができない、との規定を定めており(一般社団法人日本実業団陸上競技連合登録規程第6条[3])、過去には、上記の退部証明書が発行されなかったことから、移籍をめぐる紛争が発生している[4]。当該ルールは、一般社団法人日本実業団陸上競技連合に加盟する陸上スポーツ選手の一切の活動を禁止しうる点で、陸上スポーツ選手の活動制限の程度が非常に高いといえる。既に、日本プロサッカーリーグ[5]やラグビーのトップリーグ[6]では移籍制限のルールが撤廃・緩和されているが、わが国のスポーツ選手の活動に対する不当な制限全般を撤廃する上では、本報告書の作成・公表を契機として、貴委員会が、他の競技団体の移籍・転籍にかかるルール[7]についても、独占禁止法上の問題の有無を調査し、独占禁止法上の問題がある場合は、注意等の措置を実施することが期待される。

 

5 「第6 単独行為に対する独占禁止法の適用」

 報告書が、事業者の単独行為のうち、「役務提供に係る条件を十分に明らかにせずに取引することで、他の発注者との取引を妨げることとなる場合には、独占禁止法上の問題となり得る」、「役務提供に係る条件として、他の発注者に対して役務提供を行うことを制限し、あるいは、行わないことを義務付ける内容が含まれる場合がある。そのときに、前記のような役務提供者に対して実際と異なる条件を提示する、又は役務提供に係る条件を十分明らかしないどの行為が行われた場合は、それが役務提供者の選択自由を制限することになるという意味において、通常の商品・サービスに関する競争で同様のことが行われた場合に比べてその問題の重大性は大きく、なおさら独占禁止法上問題となりやすい考えられる」と指摘し、競争手段の不公正さの観点、優越的地位の濫用の観点から独占禁止法上の問題となるとしていることは評価できる。

 スポーツ選手、芸能人を含むフリーランサーは、事業者に対して弱い立場にあり、役務提供の条件・情報を十分に明らかにされないまま専属義務を課され、選択の自由を制限されていることがある。


(1)スポーツ選手について

 スポーツ界における専属義務や選択の自由の制限の一つの例として、プロ選手に対するアマチュアへの役務提供の制限がある。例えば、わが国の野球界においては、プロ野球選手、元プロ野球選手等は、日本学生野球協会の承認を受けない形で学生野球団体等と練習、試合、講習会、シンポジウムなどの活動を行うことを制限されているが[8](学生野球憲章13条)、同じプロスポーツでも、サッカー界やバスケットボール界ではこのようなアマチュアに対する役務提供の制限は存在しない。上記野球界のアマチュアに対する役務提供の制限のような、イベントの組織体による役務提供の制限は、報告書にいう専属義務に類似する行為として、独占禁止法に抵触する疑いがあると考えられる(本報告書32頁注78)。

 もう一つのスポーツ界における典型的な選択の自由の制限として、競技団体による肖像権の独占的利用やその対価が事前協議されていないという問題が挙げられる(本報告書34頁から37頁、40頁)。わが国の競技団体は、国際オリンピック委員会や各種競技の国際統括競技団体を起点としたヒエラルキー構造の中に組み込まれており、わが国の競技団体の下で公認された活動を行おうとするスポーツ選手は、当該競技団体が定める登録にかかる規程に完全に同意した上でなければ、競技活動を行うことができない。そのため、スポーツ選手は、当該規程中に、肖像権を独占的に所属競技団体に帰属させる旨の規定があったとしても、当該規定に関する同意を余儀なくされている[9]。また、当該肖像権の利用にかかる対価は、一切支払われないとされていたり[10][11]又は分配されるとしても分配割合についての事前協議が行われていないのが一般的である。

 そもそも、こうした競技団体は、スポーツ選手の肖像権のライセンシーとして当該選手に対価を支払う立場でありながら、当該選手の肖像権の権利管理者(代理店)としての立場を併有しているため、当該選手と利益相反関係にあり、時に選手の利益を最大化しない取引(選手に対する対価が少なくなる取引)が行われやすい構造になっている。本報告書においても、既に、ドイツ連邦カルテル庁が、オリンピックに参加する選手が、オリンピック期間中及びその前後の一定期間、広告目的での選手の名前、写真の利用を禁止することを内容とするオリンピック憲章40条及びその付属規程(通称ルール40)につき、ドイツオリンピック連盟及び国際オリンピック委員会が市場支配的地位を濫用している疑いがあるとして、調査を進めていることが指摘されているが、2020年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会を迎える我が国においても、貴委員会が、当該オリンピック憲章の規定がわが国の独占禁止法上の問題がないかを調査することが望ましいといえる。本報告書の作成・公表を契機として、貴委員会が、このようなスポーツ界の競技団体のスポーツ選手の肖像権にかかる取引について、独占禁止法上の問題の有無を調査し、独占禁止法上の問題がある場合は、注意等の措置を実施することで、不当な選択の自由の制限が緩和・撤廃されることが期待される。


(2)芸能人について

 また、芸能界における専属義務や選択の自由の制限については、すでに報道等で注目を浴びている芸能事務所との契約のみならず、その先にある大きな影響力を持つメディア、すなわち、①歌手やバンドなどのアーティストとレコード会社との専属契約、②テレビ局との取引における独占禁止法上の問題についても指摘されなければならない。


 ア アーティストとレコード会社との専属契約について

 まず①のアーティストとレコード会社との契約は、現在ではアーティストが所属する芸能事務所とレコード会社との間で締結されることが実務上多いが、アーティストが所属芸能事務所を移籍することがあり得るなどの理由で、同時にその契約内容についてアーティストからも同意書を徴求することが通常であり、その意味では、レコード会社とアーティストとの間の契約であるという性質も有する。一部の大手事務所や大物アーティストを除いては、通常は、レコード会社が取引上優越した地位にあり、さまざまな競争制限的条項が契約に盛り込まれることが多い。例えば以下のような条項である。

・   レコード会社側が、いわゆるオプション権を持ち、不当に長期間にわたって、アーティスト側の意思にかかわらず、一方的に契約を延長・更新できる権利を持つ条項(「オリジナル・フルアルバム 7 枚」を出すまでの間一方的に更新できる、など。新人アーティストの場合などに多く見られる。古くは、レコード会社がそうした契約とともに相応の契約金や、事務所援助金を保証していたが、昨今はそうした保証すらも撤廃または減額されるようになってきているため、この条項の不当性が高まっている)

・   レコード原盤に基づく収入が、従来のようなCDから、インターネット配信に移行してきており、レコード会社に入る権利収入の割合が従来に比べて高まっているにもかかわらず、アーティストへの分配(アーティスト印税)については、CD時代の料率を適用することによって、アーティストの取り分を不当に安価にしている条項

・   レコード会社との契約終了後、一定期間(たとえば6ヶ月間)、他のレコード会社と契約してはならないという条項(古くはレコード会社側が、契約締結時に一定の契約金を保証するなどしていたが、最近はそれも少なくなっているので、この条項の不当性が高まっている)


イ テレビ局との取引について

 次に②のテレビ局との取引については、総務省の「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン(第3版)」の「7 放送番組に用いる楽曲に係る製作取引に関する課題」[12]にも記載されている、アーティスト(楽曲の作詞作曲者)とテレビ局系音楽出版社との契約における独占禁止法上の問題点が指摘されなければならない。

 この事例は、テレビ局が自社の番組のテーマソング等に、あるアーティストが作詞または作曲した楽曲を採用する際の条件として、著作権を自らの系列会社である放送局系音楽出版社に譲渡させることを下請法上問題視したものであるが、独占禁止法上の問題でもあることは当然であり、またガイドラインに関する総務省のフォローアップ調査[13]においても、なぜか番組製作者と放送事業者にしかヒアリングがなされておらず、楽曲を提供する側であるアーティスト側のヒアリングが一切行われていないため、このような取引慣行は、全く是正される気配がない。公正取引委員会が積極的に調査に乗り出すべき事例といえる。

以上


[1] 芸能人と芸能事務所との間で交わされる契約では、芸能人側が負う義務の内容が具体的に特定されていない。そのため、意に反した仕事や危険な業務に従事させられたり、長時間の拘束を余儀なくされたりといった深刻な実態が一部に存在している。他方、芸能事務所側の負う義務は漠然としており、芸能事務所が十分にサポートしてくれず契約を解除したいと感じた場合も、債務不履行を主張することは困難である。出来高払いの報酬については報酬の計算根拠が不明確であることがほとんどである。さらに、報酬の一方的な減額や不払いも珍しくない。さらにほとんどの場合、肖像権などの権利も芸能事務所側に包括的に譲渡させられ、契約交渉の対象とすらされていない。

[2] 労働組合法に基づく集団的労働関係については、例えば音楽家の労働組合(日本音楽家ユニオン)と民間放送キー5社(日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビ、TBS、テレビ東京)との間の演奏家のギャランティー(基準演奏料と呼ばれる最低演奏料)に関する労働協約を1970年代から締結してきたところ、2018年3月に至り独占禁止法を根拠に5社での締結はできず各社対応とするといった対応も生じている。これらの集団的労働関係に基づく労働組合や使用者の行為については独占禁止法の問題とはならない点について理解を広める必要がある。

[3] 一般社団法人日本実業団陸上競技連合は、労働契約が満了し、使用者側から契約更改の申し出がなく退職した場合は、第6条の移籍制限は受けないとする附則を定めているが、使用者側からの更改の申し出がない場合は、第6条の移籍制限が適用されるため、一般社団法人日本実業団陸上競技連合に加盟する実業団に所属する労働者は、やはり、転籍・移籍の制限を受けていると言える(http://www.jita-trackfield.jp/entry/)。

[4] 同種紛争の概要については、公益財団法人日本スポーツ仲裁機構「アスリートのためのスポーツ仲裁・調停ガイド!!」を参照(http://www.jsaa.jp/guide/sports/1112_sports.pdf)

[5] サッカーJリーグでは、過去には、契約期間満了後の移籍であっても、新チームから元チームに対し、年齢に応じた移籍金の支払いが必要であったため、サッカー選手の移籍の自由が制限されていた。

[6] 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会は、本報告書の公表から5日後、トップリーグ(TL)の規約を改定し、前所属先の承諾がない場合に移籍先での選手登録を1年間認めないとしていたルールを、平成30年4月1日から緩和することを発表している。

[7] 例えば、一般社団法人日本バレーボールリーグ機構は、前所属チームの承諾なく、離籍または退職した選手は、離籍または退職の日の早い方から1年を経過するなどしなければ、新チームで、Vリーグへの登録・出場ができないとしている

(Vリーグ間の移籍手続きに関する規程9条、http://www.vleague.or.jp/files/user/blog/2014miseiri/trade_manual_code_2016.06.01.pdf

及びVリーグ機構登録規程13条http://www.vleague.or.jp/files/user/blog/2015_oshirase_topics/23tourokukitei(20160615).pdf)

[8] 現在、元プロ野球選手は学生野球資格回復研修制度の受講により一部指導が可能になっているが、現役プロ野球選手には認められていない。

[9] 例えば、公益財団法人日本体操協会は、競技者規程第8条第2項において、「2 本会は、本会の目的の範囲内であれば、競技者の肖像等(画像、動画、イラスト、名前、通称、手形、足形等)を無償にて使用することができる。」とあらかじめ定めているが、競技者は、当該競技者規程に同意せずに、同協会の統括する体操競技を行うことができない(https://www.jpn-gym.or.jp/wp-content/uploads/2013/04/jgareg06.pdf)

[10] 例えば、公益財団法人日本サッカー協会が定める全選手に統一的に適用される「選手契約書」には、以下の規定のとおり、「選手の肖像等の使用およびその許諾」につき、クラブの書面による承諾を得なければならないとされ、選手が自らの裁量で肖像等を使用することは一切できないとされている。しかもクラブの承諾を得て肖像等を使用した場合の選手への対価は予め定められていないことも多く、結果的に無償とされたり、クラブのロゴ等を使用しない肖像のみの使用の場合であっても、クラブに一定の手数料等を支払わなければならないとされることも多い。(https://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/06/01.pdf)。

第8条 〔選手の肖像等の使用〕

①クラブが本契約の義務履行に関する選手の肖像、映像、氏名等(以下「選手の肖像等」という)を報道・放送において使用することについて、選手は何ら権利を有しない。

②選手は、クラブから指名を受けた場合、クラブ、協会およびリーグ等の広告宣伝・広報・プロモーション活動(以下「広告宣伝等」という)に原則として無償で協力しなければならない。

③クラブは、選手の肖像等を利用してマーチャンダイジング(商品化)を自ら行う権利を有し、また協会、リーグ等に対して、その権利を許諾することができる。

④選手は、次の各号について事前にクラブの書面による承諾を得なければならない。

(1) テレビ・ラジオ番組、イベントへの出演

(2) 選手の肖像等の使用およびその許諾(インターネットを含む)

(3) 新聞・雑誌取材への応諾

(4) 第三者の広告宣伝等への関与

[11] 公益財団法人日本バスケットボール連盟が定める基本規程にも、日本代表チームの選手等の肖像権の「管理運用」一切の権利が協会に帰属することが、あらかじめ定められている(http://www.japanbasketball.jp/wp-content/uploads/rule_07_20170308.pdf)。

第153条〔日本代表チームの肖像権〕

① 日本代表チームの選手等の肖像、氏名、略歴、似顔絵、アニメ、音声、署名等(以下「肖像等」という)を管理運用する権利(以下「肖像権」という)は、次項以下に定めるところに従い、本協会に専属的に帰属するものとする。

② 日本代表チームの選手等は、日本代表チームの活動中の選手等の肖像等が報道、放送されることおよび当該報道、放送に関する選手等の肖像等につき何ら権利を有するものでない。

③ 本協会は、日本代表チームの選手等の肖像等を、本協会の広報・広告宣伝活動等のために無償で使用することができる。

[12] http://www.soumu.go.jp/main_content/000284511.pdf

[13] http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu04_02000049.html

 弁護士の笹山尚人です。

 

 東京都病院経営本部は、都立病院の経営に関し、「都立病院新改革実行プラン2018(仮称)素案」を発表し、これについて都民の意見が集めるいわゆるパブリックコメントを募集していました。

 締切日である2018年3月16日、私は私の見解を意見書にまとめて、メールにて送信して東京都病院経営本部に提出しました。

 

 私がこうした意見書を出そうと考えたのは、都庁職病院支部の活動と交流を通じ、都立病院の貴重な役割を知る一方、東京都病院経営本部の職員に対する非人道的対応も知ることとなり、内部の人を人間として尊重できない経営体が、どんなに言葉を飾っても患者や利用者を大切にすることはできないと思われたことから、「都立病院新改革実行プラン2018(仮称)素案」にはきっとどこかになんらかの問題があるのではないかとの危惧を抱き、読んでみると、「やはり」との感想を抱いたからです。そこには公務の民営化と、それに伴う利用者軽視、及び内部の労働者の労働条件の劣悪化をもたらす害悪が潜んでいました。

 

 また、パブリックコメントという制度は、一般にはなかなか知られることがなく、結局、「都民の声を聞く機会は提供しましたよ」というアリバイとして機能しがちではないかと思います。私たち弁護士も、法律案や条例案といった何らかの法的な制度設計の構想と、それにまつわるパブリックコメントについて網羅しているわけではありませんが、気が付いたときには意見を出して置くということが大切だと思いますし、また、そういう意見表明を実際に行ったという例もまた、多くの人に知る価値のある事柄ではないかと思うことから、このブログで紹介することにします。

 

 以下に、私が、東京都病院経営本部に送った意見書そのものを紹介します。

 

 こんな問題があるんだということや、こんな意見表明ができるんだ、ということを知っていただけたら幸いです。

 

 

 

東京都病院経営本部 御中

 

2018年3月16日

笹山 尚人

(東京都大田区在住。男性、47歳、弁護士)

 

 

 私は都内の法律事務所で働く弁護士です。また、自治体の労働者の労働相談や事件も担当した経験があり、都立病院や公社の病院で働く労働者のみなさんで組織する東京都庁職員労働組合病院支部の皆さんからもご相談を受けたり、学習会の講師を務めたり、機関紙に原稿を寄稿したりした経験があります。

 今回、都立病院を独立行政法人化する計画が東京都病院経営本部(以下、単に「病院経営本部」と言います。)から持ち上がっているということを病院支部のみなさんから聞きました。そのあと「都立病院新改革実行プラン2018(仮称)素案」(以下、「素案」と言います。)とこれに関する意見募集があることを知りました。

 そこで自分なりに考えをまとめて意見募集に応じ、素案について意見を提出しようと考えるに至り、本意見書をまとめました。

 以上の経緯ですので、私の意見は、素案の第5章(122ページ以下)において、「一般地方独立行政法人を含めた経営形態のメリット、デメリットなどの検証を行い、経営形態のあり方について、本計画期間に検討する」としている点についての意見となります。

 以下に、その詳細を述べます。

 

1 パブリックコメントそのものあり方の問題について

 今回病院経営本部が募集しているパブリックコメントは、242頁にわたる計画書について、平成30年2月26日から3月16日までの19日の期間内に意見を上げてほしいというものですが、まずこの募集の仕方そのものに問題を感じます。

 行政手続法においては、パブリックコメントを募集するに際して、「行政機関が命令等(政令、省令など)を制定するに当たって、命令等の案の公示の日から起算して30日以上でなければならない。」としています(行政手続法39条)。

 この趣旨は、広く民意を集約するにあたり、行政が検討している内容について国民に十分な検討期間を設けることにあります。

 今回病院経営本部がパブリックコメントの募集を行うにあたっては、この法の趣旨を十分に斟酌するものであるべきです。

 この点19日間という意見集約期間は、それよりはるかに短いものです。しかも検討の対象が大部にわたるものです。この期間に一般の都民がこれらの文書を読み込み、自らの意見をまとめ、それを文章にまとめることができると、このパブリックコメントを計画された部署のみなさんは本気で考えていらっしゃいますか。日常の労働と生活に追われる多くの都民にとって、それは相当に困難なことです。そうしますと、こうしたやり方でパブリックコメント募集を行うこと自体、真意として、都民の声を考え聞くつもりがあるのか、大いに疑問を覚えます。

 私は、改めて法の趣旨に則り、それに対応する期間を設けて、パブリックコメントの募集自体やり直すべきと考えます。

 

2 独立行政法人化の弊害について

(1)必要な事業の廃止、縮小に結び付かないか

 独立行政法人化とは、言葉の響きはともかくとして、要するに「公務の民営化」です。公務を民営化するということは、当該事業の運営にあたり、経済的な効率を優先していくことになるということです。経済的な効率を優先すると発生する弊害として考えられるのは、経済的に見合わない事業の廃止、縮小、ということになります。

 第一に、都立病院を民営化することでこうした弊害が発生しないかという問題を考えなければなりません。

 この点で、私が居住している大田区では、公社化した荏原病院の産科の問題が思い起こされます。

 かつての都立荏原病院においては、公社化に伴い産科縮小という事態が発生しました。

 都立荏原病院が、東京都保健医療公社に移管されたのは2006年4月です。「より地域に根ざした、弾力的かつ効率的な運営」をするということが目的とされました。ところが、2007年10月、産科は医師不足などの原因により、妊婦受け入れ縮小に追い込まれました。

 荏原病院では、都民の強い要求などがあり、その後産科の妊婦受け入れが再開しましたが、かつて年間1000人の出生を取扱い、大田区では5人に1人は荏原病院で出生したと言われている荏原病院の産科は、現在でもこれに遠く及びません。

 荏原病院のある大田区では、お産のできる個人病院がほとんどなく、出産の可能が産科を持つ病院は、荏原病院のほかには2つしかないと承知しています。大森日赤病院と東邦大学付属大森病院です。人口が70万人を超える大田区で、荏原病院とあわせてたった3つしか、お産のできる病院がないのです。極めて異常なことであり、少子化を問題にするならこの点の改善は不可欠と考えます。そのことは東京都だけの課題ではありませんが、少なくとも病院経営本部としては、大田区とその周辺自治体の住民のお産の維持のために、産科を堅持するということは必須の事業と考えられます。しかし、公社化にともない、産科が縮小されていったことは、独立行政法人化は、住民にとって必要な事業の維持に役立つものでなく、むしろ縮小廃止を生むものであるということを示しています。

 

(2)独立行政法人=民営化による経済的な効率優先によって発生する弊害として考えられる第二は、職員の労働条件の劣悪化です。

 私は、国立大学の独立行政法人化によって独立行政法人となった高専機構における賃下げ事件において、賃下げされた職員のみなさんの代理人として裁判を担当しました。これは、東日本大震災に伴ってその復興財源確保のため国家公務員の給料を引き下げる法律が制定されたことに伴い、文部科学省が各国立大学法人等に対して、運営費交付金の引き下げとともに職員の賃下げを求め、各国立大学法人等はそれに呼応して就業規則を改訂して賃下げを強行した事件です。私は、高専機構の職員のみなさんの相談を受けたのですが、高専機構では、少ない人でも月2万円程度、多い人になると月5万円弱の賃下げを受ける人も出ている状況で、極めて大きな被害が出ることに驚きました。

 担当した裁判では、被害の大きさそのものについては極めて深刻であることを認めながら、運営費交付金が絶対的に減少していることをとらえて、必要性が強いということで就業規則の改訂の合理性を認め、私たちの訴えを認めない結果となりました。

 私がこの裁判で学んだことは、「国立大学法人では、結局文科省の意向に拘束されるのに、形としては大学法人と文科省は別組織なので、大学法人は「自分たちではいかんともしがたい」と言い訳し、文科省は、「自分たちはお願いしただけで決めたのは大学法人だ」と言い訳して、結局は現場の職員が不利益を被るだけの結果になる。独立行政法人化とは、こうした職員への不利益押しつけを法の網目をかいくぐって合法化するシステムだ」ということでした。

 都立病院を独立行政法人化するとおそらくこれと同じことが起こるでしょう。職員の労働条件を改悪したければ、病院経営本部の予算から独立行政法人への交付金を減額すればいいのです。するとそれを理由に独立行政法人は職員の労働条件を改悪し、抗議する労働者や労働組合に対し、「私たちにはどうしようもない、お金がないんだから。だから争っても無駄だよ」と回答して、諦めさせようとするのです。

 私は経験から得たこの理解から、独立行政法人化とは、職員の労働条件の劣悪化をもたらすものにしかならないと考えます。

 

(3)そもそも病院経営本部当局に独立行政法人化を語る資格があるのか

 話は多少脇道にそれますが、私はそもそも病院経営本部当局に独立行政法人化を語る資格があるのかという点でも疑問を覚えます。

① 当然、病院経営本部は、独立行政法人化によって職員が労働条件上の不利益を被るものではない、ということをおっしゃるのでしょう。

 しかし、現在の都立病院において、職員は労働条件上の不利益を被っているのが現実です。病院経営本部はそうした実態を放置しています。そのような機関がたてた計画が、どうして職員に不利益を与えないと言えましょうか。

② ここで私が職員に労働条件上の不利益が発生しているということについては、都立病院で働く職員のみなさんから多数にわたっておうかがいする相談の事例に基づきますが、ここではその中の一つの事例として、労働時間の管理と超過勤務手当の点を指摘します。

 この点は労働基準法が適用される場面なので、病院経営本部は、労働基準法の労働時間の規制を遵守する運用を行わなければなりません。そして、厚生労働省は、労働時間の管理にあたっては、使用者が労働時間について現認や機械的方法などによって厳格に管理すべきことを求める基準を発しています。

 しかし、都立病院の労働時間管理はどうなっているでしょうか。タイムレコーダーで管理するなどの方法を取っているでしょうか。そして、その把握した労働時間に対応して全額超過勤務手当を支給しているでしょうか。

 私の知る限り、都立病院では、黙示の指示によって行われている病棟の事前情報把握活動を労働時間と把握せず、また超過勤務手当の支給を現場で抑制させる措置が横行しています。それによって多数のただ働きが発生し、多額の給料の不払いが発生しています。

 

 病院経営本部は、こうした運用を改め、労働基準法のとおりに労働時間の把握と超過勤務手当の支給を行うこと、それこそがまず真っ先に行うべきことではないでしょうか。

 これなしに独立行政法人化を提言してみても、発生するのはますますの職員の労働条件の劣悪化であると私は考えます。

 

3、独立行政法人化の必要性について

 以上の1,2だけを見ても、独立行政法人化はいかなる必要性があろうと現時点では保留すべき案件と考えますが、一応その必要性について検討します。

 しかし、これは病院経営本部の計画は抽象的と言わざるを得ません。

 素案122ページ以下には、「地方公営企業法の財務規定の適用によって都立病院の運営を行っているが、迅速かつ柔軟な病院経営の意思決定や業務執行において、組織や人事給与、予算等における制度的な課題を抱えています。」とし、だから、「一般地方独立行政法人が制度的に最も柔軟な経営形態であ」り、「今後の都立病院にとってもっともふさわしい経営形態である」との指摘があります。

 この指摘は抽象的過ぎて、具体的にどんな事態を想定して現状の弊害を語り、それが独立行政法人になればなにゆえ解消されることについての具体的な説明がありません。その説明なしには、この論はにわかには首肯できるものではありません。

 私が推察するところ、おそらく「変化に適合した合理的で迅速な対応が必要である」「医療に対する都民のニーズが専門化・高度化するなかで、求められる医療サービスを迅速に提供するためには、より柔軟な運営体制にする必要がある」「自治体病院の経営は大変厳しい状況にあり、一層効率的な経営構造にする必要がある」といったことが必要性の理由として考えられるところです。しかし、これらがあるから独立行政法人化が必要ということはまだ説得的ではありません。

 独立行政法人化の必要性とは、利用する都民にとってメリットのあるものでなければなりません。しかし、都立病院の独立行政法人化によって、病院が迅速に意思決定し、職員の労働条件も含めて迅速に対応できることによって、都民にいかなるメリットがあるのでしょうか。その具体的な実像が全く判然としません。むしろ、1で記載したようなデメリットの発生が危惧される以上、メリットを具体的に展開してもらい、かつ、デメリットの心配についてそれがないことを具体的に示していただく必要があると思われるところ、東京の計画にはそうした内容がないと思われます。

 

4、結論

 以上見てきたところからすると、都立病院の独立行政法人化は、弊害が発生しそうなことは相当程度はっきりしているのに対し、必要性の内容は不明確であること、パブリックコメントの募集の仕方自体のおかしさもあることも踏まえ、私は、都民にとって利益のある事項ではなく、かつ職員のみなさんにも不利益を与えるだけと考えますので、素案の第5章で独立行政法人化を構想することには反対し、撤回するべきと考えます。

 以上を私のパブリックコメントとし、病院経営本部への意見とします。

 

                                   以 上

 

弁護士の中川勝之です。

 

 日本大学経済学部において、就業規則の制定に際して必要な労働者代表の意見聴取のための労働者代表選出のやり直しが判明した等と今月2日付けの記事を投稿したところですが、不正確でしたので、やり直します(訂正します)。経緯は次のとおりです。

 

 日本大学経済学部は、2018年4月1日施行の「日本大学非常勤講師規程」及び「日本大学非常勤講師就業規則」の「制定」について、不信任投票により2017年12月27日、労働者代表が選出されたとしていました。

 その後、2018年2月28日付けの「労働者代表の選出について」を始めとする書面が非常勤講師に届き、そこには、前記手続とは異なり信任投票の実施が予定されていたので、 2018年4月1日施行の「日本大学非常勤講師規程」及び「日本大学非常勤講師就業規則」の「制定」についての労働者代表選出のやり直しと勘違いしてしまいました。

 実際には、やり直しでなく、2018年2月2日付けの「日本大学非常勤講師規程」の「改正」を始めとした多数の規程類の改正、制定のための意見聴取、さらには、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)の締結のための労働者代表選出の手続となっているようでした。

 

 現在の労働者代表選出の手続の中で、首都圏大学非常勤講師組合の組合員で日大ユニオン準備会の一員が、労働者代表選出となるべく立候補しており、「日大経済学部の労働者代表選 専任・非常勤が統一候補」(2018年3月20日しんぶん赤旗)という報道もなされています。

 

労働条件の改善・向上は待っていても実現するわけではありません。労働者自身が要求していく必要があります(告発人ら・申告者ら代理人は私と今泉義竜弁護士)。


労働判例2018.3.15(No.1171)号に、小部正治弁護士、加藤健次弁護士、中川勝之弁護士が担当した社会保険庁職員不当解雇撤回・東京事案の判決(東京地裁平成29年6月29日判決)が掲載されました。

 rouhan

この事件は、2009年12月の社会保険庁廃止に伴って分限免職処分を受けた(全国で525名)原告ら3名が処分取消等を求めて東京地裁に提訴していたところ、原告1人について処分取消の判決が出されたものです。現在、東京高裁に係属しています。

 

詳しくは、自由法曹団通信第1602号(2017年7月11日)「社保庁職員分限免職処分、東京地裁が全国初の取消判決♪」をご参照下さい。

 

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