東京法律事務所blog

2019年02月

弁護士の長谷川悠美です。

 

2019年2月20日、東京高裁で、メトロコマース事件の判決が出ました。

 

メトロコマース事件は、駅の売店で働く非正規労働者が原告です。同じように駅の売店で働く正規労働者に比べて賃金等がすごく低いので、その是正を求めています。

労働契約法20条で、『非正規と正規の不合理な相違はゆるされませんよ』と定められたので、それを契機に提訴しました。

★どれだけ格差があるのかは、過去ブログをご覧ください

メトロコマース労働契約法20条裁判が、いよいよ判決を迎えます!

労働契約法20条をめぐる判決迫る~メトロコマース事件
 

地裁判決は本当にひどい判決でした…。なんと、売店での販売以外の様々な仕事をしている正規労働者を含む、全正規労働者と比較したのです。

労働契約法20条は、たとえば非正規の仕事が正規の業務内容や責任の8割程度なら、8割の賃金を支給する、全く同じなら同額の賃金を支給するという均等均衡待遇の理念をもとにつくられています。

なので、全く違う仕事の人と比べられてしまったら、格差是正が認められるはずはありません。

 

★詳しくはこちらのブログ記事をご覧ください

メトロコマース事件東京地裁判決を読んでの違和感-ふつう「他の条件をできるだけ同じ」にして比較しませんか?

 

高裁判決では、地裁判決のこの判断を正面から否定しました。

 

“労働契約法20条が比較対象とする無期契約労働者を具体的にどの範囲の者とするかについては、(中略)有期契約労働者において特定して主張すべきものであり、裁判所はその主張に沿って当該労働条件の相違が不合理と認められるか否かを判断すれば足りる”

 

“原告らは、(中略)比較対象すべき(中略)無期契約労働者を、正社員全体ではなく、売店業務に従事している正社員(中略)に限定しているのであるから、当裁判所もこれに沿って両者の労働条件の相違が不合理と認められるか否かを判断することとする”

 

このように、原告が主張する正規労働者(固定販売業務に従事する正規労働者)を比較対象とすると判断したうえで、こう付け加えました。

 

“比較対象すべき(中略)無期契約労働者を正社員全体に設定した場合、契約社員B(注:原告たちの雇用形態)は売店業務のみに従事しているため、それに限られない業務に従事している正社員とは職務の内容が大幅にことなることから、それだけで不合理性の判断が極めて困難になる。”

 

これは明らかに地裁判決への嫌味ですね。

これを前提に、高裁判決がどのような判断をしたのかをざっくり紹介すると、

 

・まず、退職金について一部請求を認めました(各原告の月額賃金を基準に、正社員の退職金規程の計算方法にあてはめて算出した金額の4分の1)。

 

・住宅手当、褒賞相当額は、労働契約法20条施行後について請求を全額認めました。

 

・早出残業手当は、割増率差額分について認めました(なんとこの会社は残業代の割増率にまで正規と非正規で差を設けているのです!)

 

・基本給、資格手当、賞与、慰謝料については請求を認めませんでした。

 

まだまだ不十分な内容ではありますが、非正規格差是正に向けて一歩前進した内容です。

とくに、非正規は退職金をもらえなくても当然だという風潮の中、一部ではあっても退職金を認めたことは大きな意義があります。

 

ただ、その退職金の額は、4分の1にとどまりました(しかも退職金計算のベースになる月額賃金に正規と非正規で格差があるので、正規の4分の1よりもさらに低額になります)。その理由は、判決には何も書かれていません。

 

労働契約法20条の第一人者である東京大学の水町勇一郎教授も、毎日新聞で

“根拠が曖昧なまま支払額を「正社員の4分の1」に限定した点は疑問だ。”

とコメントしています。

 

賞与や基本給も棄却されています。

売店での販売という同じ仕事をしているのに。

 

その結果、請求金額は4人で合計約220万円と低額にとどまっています。

まだまだ不十分な内容なので、原告たちや、原告所属の労働組合は「不当判決」と評価しています。

 

★東部労組とメトロコマース支部の声明はこちら(最後に弁護団の声明も載っています)

 

メトロコマース事件判決の少し前、2月15日には、大阪医科大事件の高裁判決で、労働契約法20条に基づき賞与の一部の請求を認める判決が出されました。

退職金の一部を認めたメトロコマース事件の高裁判決と併せて、非正規労働者の格差是正の足掛かりにしていけたらと思います。

 

メトロコマース事件、これからは最高裁に舞台を移します。
上告審では、退職金はさらに多く、賞与も基本給も認めさせるべく、弁護団も力を尽くして引き続き頑張ります!

 

(弁護団は、東京法律事務所の、弁護士今野久子、井上幸夫、水口洋介、滝沢香、青龍美和子、そして私、長谷川悠美です。)

弁護士の青龍です。

本日、東京法律事務所9条の会は、17~18時、新宿駅南口で、辺野古新基地建設反対!沖縄県民投票を応援する街頭宣伝をおこないまいした。
NBFes(辺野古新基地建設に反対する若手有志の会)と共催です。

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2月24日には、辺野古への基地建設の是非を問う沖縄県民投票がおこなわれます。
本日2月14日は、その告示日でした。
昨年9月、沖縄県民のみなさんは辺野古への基地建設に反対する県知事を選びましたが、政府はその意思をふみにじり、首相が「サンゴは移した」と事実と異なることを言ってまで、違法な基地建設を強行しています。
日本政府は、世界一危険な普天間基地の
しかし、民主主義や地方自治に反する国のやり方は絶対に許せません。
また、辺野古につくろうとしている米軍基地は、普天間基地の代替施設などではなく、日本の防衛とは関係なく、アメリカが敵対する他国に即座に出撃できる最新鋭の基地です。

「辺野古に基地はいらない!」という沖縄の声を、日本の声にしよう!!
と、いうことで、急遽、宣伝をおこなった次第です。

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カエルとパンダも参加し、アメリカ政府に対して辺野古の基地建設を中止する署名への協力を呼びかけたブライアン・メイさんが所属するクイーンの曲を流しながら、リレートークをしました。
道行く人たちの反応はあたたかく、足を止めてスクリーンに投写された映像を見てくれたり、スピーチに耳を傾けてくれました。

バレンタインデーの今日は、辺野古への基地建設の是非を問う沖縄県民投票の告示日でした。
東京にいる人たちからの沖縄への愛を感じた一日でした。

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弁護士の中川勝之です。

 

「晴海選手村土地投げ売りを正す会」の住民訴訟について、シンポジウムが開催されます。

いま東京臨海部の晴海ふ頭で2020オリンピック・パラリンピック選手村整備を口実とした大規模再開発が進められています。この開発のために13.4haもの広大な都有地が、2016年12月、時価相場(100万円/㎡)の1割弱(9万6700円/㎡)で大手不動産業者などに譲渡されました。都民の損害額は1千数百億円(都民1人あたり1万1000円)にも上ります。現在都民33名が原告となり、都知事に激安譲渡価格の是正を求め住民訴訟・裁判が争われています。

ジャーナリストはこの問題をどう見たか、私たちはどう考えるか、みんなで大いに話し合いましょう。

 

パネラーは次のとおりです。

今泉恵孝さん(日刊ゲンダイ)

岡部裕三さん(しんぶん赤旗)

片岡伸行さん(週刊金曜日)

西澤佑介さん(週刊東洋経済)

 

4名ものジャーナリストが一堂に集うのはきわめて貴重な機会ではないでしょうか。

是非ともご参加下さい。

 

日 時:2019年3月5日(火)午後6時開始、午後9時終了(予定)

場 所:「総合区民センター」(江東区大島4-5-1)7階・第5会議室、最寄り駅都営新宿線「西大島」駅A4出口

費 用:資料代500円

申 込:資料準備の都合のため事務局へご一報願います。

事務局:(臨海都民連)市川隆夫(090-1853-5505又は048-882-9476)

メール ichi-kawa@k2.dion.ne.jp

主 催:晴海選手村土地投げ売りを正す会

 

晴海選手村土地投げ売りを正す会」住民訴訟の次回期日は、2019年2月19日(火)午後3時から、419号法廷で行われます。傍聴等のご支援、ご協力、宜しくお願い申し上げます。

弁護士の今泉です。
2月8日、厚生労働省で開催された第5回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(座長;岩村正彦東京大学教授)を前半だけ傍聴してきました。
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(写真は第4回のものhttps://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-12-28/2018122805_02_1.htmlより)
この解雇無効時の金銭救済制度、いわゆる解雇の金銭解決制度は、違法な解雇であっても一定の金銭を支払えば有効に労働契約を終了させることができる、という制度です。
現在、解雇の金銭解決制度を導入にあたって検討すべき法的な論点について、学者が中心になって議論が進められています。

解消金の上限・下限はどのように決めるか、解消金にバックペイも含めるかといった点について、制度創設にあたって検討する必要のある論点を一つずつつぶしていくという流れで進められており、いろんな論点が整理されつつあります。

今回の議論で印象に残ったのは、訴訟だけではなく労働審判にもこの制度を導入するかという点について、労働側弁護士だけでなく経営法曹(使用者側弁護士)からも反対の意見が出ているにもかかわらず、委員たちは「労働者のために」間口を広げていくべき、という議論をしていた点です。
実際に実務を担当している当事者たちの意見はあまり重視せず、とにかく同制度を広く導入していくという大きな意思に基づいて検討会が動いている印象をうけました。

既に労働審判では多くが金銭解決も含む柔軟な解決が図られています。
そこに金銭解決制度をあえて持ち込むということは、労働者にとっては単に解決金の上限を定めるという意味しかないのではと思われます。しかも、現在の議論では、解雇が違法・無効であっても、労働者に何らかの問題(帰責性)があったなら解決金を下げるということも検討されています。

検討会で解雇の金銭解決制度を固め、夏以降の労働政策審議会を通して、来年の通常国会で成立させる、というスケジュールが見込まれています。
ホワイトカラーエグゼンプション(高プロ)の次は解雇の金銭解決制度、いずれも下からの要求による制度設計ではありません。背景には米国の要求があるという見方もあります。

現場の労働者・実務家の声を無視しながら、あたかも「労働者のため」という美辞麗句ですすめられている様々な規制緩和に対して声を上げていく必要があります。

なお、金銭解決制度導入で解雇が容易になったイタリアの状況については、2016年にイタリア調査に行った小林譲二弁護士の下記記事をご参照ください。


※ これまでの流れ
○厚労省「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方検討会」研究会報告書(2017年5月31日)
○「新しい経済政策パッケージ」(2017年12月8日閣議決定)
-「労働政策審議会において法技術的な論点についての専門的な検討に着手し,同審議会の最終的な結論を得て,所要の制度的措置を講じる。」
未来投資戦略2018(2018年6月15日)
-「可能な限り速やかに、法技術的な論点についての専門的な検討を行い、その結果も踏まえて、労働政策審議会の最終的な結論を得て、所要の制度的措置を講ずる。」

 ○厚生労働省「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」2018年6月12日~


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