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<バーバラさんシリーズ#6>
2022
12月に来日したバーバラ・マデローニさん(レイバーノーツのオーガナイザー、元マサチューセッツ教員組合委員長)の記事紹介です。
訳:菅俊治

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2020113日/バーバラ・マデローニ

 photo1 Dedham Education Association cropped

ストライキに打って出るためには勇気を必要とすることは、どんなに強調してもしすぎることはない。写真:デッダム教員組合

 

 

その学校の駐車場入り口のピケットラインには、初めてストライキに参加する7人の教員が立っていました。

マサチューセッツ州では公務員のストライキは違法です。しかし前夜、2年にわたる交渉が実を結ばなかったため、デッダム教員組合の300人のメンバーは、圧倒的多数決でストライキを決行しました。

今、組合員たちは大通り沿いに、高校から中学校まで並び立ち、応援のクラクションを鳴らす車が通るたびに祝福を返しています。

「緊張しています。私はこの地区で2年めの新任教師です」とある教員が言いました。

「私たちは皆、新任なのです。ストライキ投票が可決されたのは嬉しいですが、怖さも感じています」と別の教員が言います。

 

恐怖と爽快さと

 

ストライキは大変です。怖いし、疲れます。

それは経験者であっても同じです。シカゴでは昨年(2019年)秋、教員組合が11日間にわたり、7年ぶり2回目の無期限ストライキを実施しました。組合員はピケットラインを築き、集会に参加し、市民的不服従の罪で逮捕される覚悟で臨みました。

勝利から数週間後、シカゴ教職員組合の教職員立ちはまだ疲労困憊していると言っていました。

今年の初め、私はUFCW1459支部のストライカーたちとともに、ストップ&ショップという食料品店の前に立ちました。30年以上のベテラン労働者は、経営側の要求にうんざりしており、組合がついに立ち上がったことを喜んでいると話していました。若い労働者は、買い物客に慎重に声をかけ、ビラを手渡し、ストライキ期間中は店で買い物をしないように頼みました。

ベテランも新人も、ピケラインに立つのは不慣れなことでした。興奮や誇りを感じつつも、同時にどうなるのだろうと不安を感じていました。

ストライキに打って出るには勇気を必要とすることは、どんなに強調してもし過ぎではありません。給料を失ったり、職を失ったり、職場に戻れば報復を受けたりするという危険があるのですから。

昨年1月のロサンゼルスのストライキ中は、雨が止みませんでした。足はずぶ濡れ、冷気に震えながら、ロサンゼルスにも寒さがあるのかと初めて知りました。

それでも、ストライキに参加した教職員は、踊ったり、歌ったり、行進したりして、暖をとっていました。暫定合意が発表された集会に太陽が顔を出したとき、それは最高のご褒美でした。

これらのストライキはすべて勝利したといえます。全米の労働者に、自分たちの力を結集し、もっと要求し、ボスに反撃するよう鼓舞したのです。

新しい運動の波が来ようとしているのです。おそらく、数十年にわたる無気力状態を経て、あらゆる業界の労働者が、ストライキという手段を用いて、私たちのもつ力(パワー)をもういいちど活用し、勝利する準備をしようとしているのかもしれません。

確かに、労働者は互いに学び合っています。ストライキは、私たちの力(パワー)をフルに発揮すれば何が可能かについての新たな理解を可能にしています。

 

ベテランも新人も、ピケラインに立つのは不慣れなことだった。興奮と誇りを感じるとともに、不安と不確実性を感じていた。

ストライキに突入し、給料を失い、職を失い、職場に戻れば報復を受けるというリスクを冒す勇気を、過大評価することはできない。

昨年1月のロサンゼルスでは、雨が止みませんでした。私は、ずぶ濡れの足から冷気が伝わってくるまで、ロサンゼルスが寒いということを知りませんでした。

でも、ストライキの先生たちは、踊ったり、歌ったり、行進したりして、暖をとっていました。暫定合意が発表された集会に太陽が顔を出したとき、それは最高のご褒美だった。

これらのストライキはすべて勝利だった。全米の労働者に、自分たちの力を結集し、もっと要求し、ボスに反撃するよう鼓舞したのです。

ある種の運動が展開されているのだ。おそらく、数十年にわたる無気力状態を経て、あらゆる業界の労働者が、労働を差し控えることによって破壊する力を再び活用し、勝利する準備ができているのだろう。

確かに、労働者は互いに学び合っているし、ストライキは、私たちの力をフルに発揮すれば何が可能かについての新たな理解を開いている。

 

真剣に取り組む

 

最近、シカゴ教職員組合を招いてストライキについて対談をしたところ、一部のリスナーから全米規模のストライキについて検討するのはいつか知りたいという反応がありました。厳しい時代に大きな勝利を勝ち取ると、私たちはもっと大胆なことを考えられるようになります。

しかし、成功したストライキの話を聞いたからといって、そこに至るまでにかかった労力に十分耳を傾けているとは限りません。シカゴ教員組合とSEIUローカル73の組合員たちは、強力な市長に立ち向かうために協約行動チームと地域連携組織を立ち上げました。困難な闘いを戦い抜くために必要な支持、信頼、集団的パワーを構築するのに何年もかかりました。

全米規模のストライキをするには長期にわたる闘争が必要です。それには真剣な準備が必要です。本格的なパワーが必要です。一歩一歩、積み重ねていくものです。

1日ストライキによって力を発揮すれば、新しい人たちが闘いに参加してくれるようになります。それは素晴らしいことです。しかし、私たちは参加してもらうだけで満足しません。私たちが根本的に生まれ変わることを求めているのです。

私たちを変えるのは、興奮やひらめきの高揚感ではありません。それは、闘いが困難な状況に陥ったときであっても持続できるような、勇気、不屈の精神、献身性、揺るぎない連帯の「貯蔵庫」を自分自身の中に発見し続けることなのです。毎日、そして次の日も、またその次の日も、組織化という仕事を分かち合うことなのです。

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組織化について学ぶのにおすすめ
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<バーバラさんシリーズ#5>
202212月に来日したバーバラ・マデローニさん(レイバーノーツのオーガナイザー、元マサチューセッツ教員組合委員長)の記事紹介です。
訳:菅俊治
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2019
1025 / バーバラ・マデローニ


photo1 Dedham Education Association cropped

労使関係局のストライキ差止命令に逆らえば罰金や懲役刑の可能性がある。教員組合は、医療保険料の削減とセクハラ対策の強化を望んでいる。

写真:デッダム教員組合

 

マサチューセッツ州では、公務員労働者のストライキは違法とされています。しかし、デッダム教員組合(DEA)は、昨夜2482(組合員280人中)という圧倒的な数のストライキ投票を行った後、今朝、ストライキを決行しました。

ボストン郊外のデッダム市の教員たちは、自分たちの賃金から控除される高い健康保険料や、賃上げなしに勤務時間や専門能力開発の時間を増やせという教育委員会の要求に対して、不満の声を挙げています。また、教員たちは、セクシャル・ハラスメントに対する実効性のある対策を労働協約の中に盛り込むよう要求しています。

「私にとって一番大事な課題は、健康保険料の値上げです。家計は大変苦しくなりました。年間4,000ドルもの保険料が控除されるようになりました。娘たちには健康上の問題があり、控除される保険料は年4,000ドルに達しました。市は、健康保険制度を改めた際、保険料が高くなる分は賃上げで埋め合わせると説明していました。ところが、賃上げは実施されませんでした。」と、デッダムの高校教員のマイケル・メデイロスは言います。

メデイロスは、利益相反なしに施行できる実行的なセクハラ対策がないとも話しました。組合が問題なしといえるような対策が取られない苦情が数多くあるといいます。組合は、労働協約で定める苦情処理手続の対象にセクハラに関する苦情も加えるよう要求しています。

 

2年にわたって断続的に行われた団体交渉の間、怒りがふつふつと渦巻いていました。

教育庁は、81日以来交渉のテーブルに着いていませんでした。教育庁は、セクハラに関する苦情処理手続については、審理手続に出席する組合側メンバーは、組合交渉チームのメンバーから教育庁が選ぶと要求しました。しかも、手続への出席を許可された場合も年間2日間保証されている休暇の権利のうち1日を全て使わなければならないと要求しました。

ついに、怒りは爆発しました。

 

 

違法ストライキ

 

マサチューセッツ州法は、ストライキをすることだけでなく、「ストライキを勧奨すること及び容認すること」も禁止しています。この法律は、1919年のボストン市警察官のストライキ(*)以来、労働者の反乱を抑圧するために使われてきました。当時の州知事カルヴァン・クーリッジは、その後まもなくアメリカ大統領になりましたが、公務員労働者のストライキを違法化して、これに対抗してきたのです。

マサチューセッツ州では、こうした歴史は親から子に語り継がれています。「祖父は決して職場に戻らなかった」と、人々は語ります。今朝のピケットラインでは、カルヴァン・クーリッジの名前をここ数十年で一番多く耳にしました(私はいま彼の故郷に住んでいます)。

 

デッダム高校の教育補助職員であるテレサ・カルデローネは、なぜ違法なストライキを支持するのかについて次のように話しました。

「中学2年生の時に、カルヴァン・クーリッジとボストン市警察のストライキについて学んだのを覚えています。まだ子供だったけれど、私にはとても不公平に思えました。なぜ、警察官にはストライキをする権利がないのでしょう?警察官がIBEW(国際電気労働者友愛会)の組合員より劣る理由はありますか。なぜ教員は工場労働者より劣るというのでしょう。私には理解できません。理解できないことに対しては、自分の常識を働かせなければなりません」

 

マイケル・ウェルチ教育長がデッダム教員組合委員長のティム・ドワイヤーを人格攻撃しようとしたことで、組合員は違法ストライキに立ち上がる決意をますます強く固めました。ウェルチ教育長は、ドワイヤーの教室に立ち寄って交渉のテーブルについたと嘘を言いました。また、ドワイヤーの指導力のなさを示す証拠だと言って、ドワイヤーが進歩的コーカス(Educators for a Democratic Union)の一員としてマサチューセッツ州教職員組合の執行部選挙に立候補した際に書いた綱領を送りつけました。

EDUが作成したQ&A形式で7ページにも及ぶこの綱領には、一般組合員による組織化や公教育の民営化に立ち向かうといった目標が含まれています。そして、「すべての戦いに勝つ必要はない。率直に言って、血が流れたり歯が折れたりするような激しい喧嘩を一度経験させておけば、管理者は対立する場面で私たちと関わりをもつのを避けるようになるだろう」とも書いてあります。

 

教育長の攻撃は裏目に出ました。組合員は、ドワイヤーを委員長に選出し、ストライキ投票を行い、ピケットラインで強く訴え、これは組合委員長の闘いではなく、全組合員の闘いだと主張しました。

 

闘う学生たち

 

生徒たちや地域の住民たちからの支援も強いものがありました。高校生のダニエル・パシュートは、今朝、ピケラインに参加した理由を次のように語りました。

「私は生徒として、先生を支援するためにここにいます。先生が安心して働ける職場が必要です。健康確保も大事です。まっとうな賃金も支払われる必要があります。もし、法を冒そうという人が誰もいなければ、歴史は何も変わりませんでした。私たち生徒はもしかするとトラブルに巻き込まれることになるかもしれませんが、この場合は良いタイプのトラブルです」

 

教育補助職員のカルデローネは、同じ組合員として教員たちから学んだことを次のように話しました。

「数年前、私たち教育補助職員が労働協約交渉中に支援を必要としていたとき、いま一緒にピケにいる教員たちが、別に誰から強制されたわけではないのに、私たちと一緒にピケラインを歩き、良い手本を示してくれました。今度は、私たちが同じことをする番です」

 

組合の枠を超えた支援も強力です。マサチューセッツ州のAFL-CIO、国際電気労働者友愛会(IBEW)、看護師、チームスター労組はすべて、ピケラインや集会に参加し、ソーシャルメディアで支援を表明しています。バーモント州のバーニー・サンダース上院議員、マサチューセッツ州のエド・マーキー上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員は、いずれも支援の声明を発表しています。さらに、マーキー上院議員の対抗馬として上院選に出馬を予定しているマサチューセッツ州選出のジョー・ケネディ下院議員も、集会に数分間姿を見せました。

 

教育庁は、組合委員長としてのドワイヤー、個人としてのドワイヤー、さらにデッダム教員組合のそれぞれを相手方にして、労使関係局に申し立てをし、ストライキ差止命令を獲得しています。週末に和解が成立せず、組合員がストライキを決行すれば、罰金や懲役刑の可能性もあります。ドワイヤー委員長は、自分たちの要求が満たされるまで、組合員は仕事に戻らないと説明しています。

全米から連帯の声明が届いています。ここマサチューセッツ州では、長年ストライキはできないと言われてきましたが、デッダム教員組合の勇気によってそれがひっくり返されようとしています。私は、マサチューセッツ教員組合の前委員長として、今日デッダムで目撃したのと同じ勇気と連帯を胸にいだきながら、教員組合がこの難題に答えてくれることを願っています。

 

 

*ボストン警察ストライキ

https://www.bpstrike1919.org/timeline/
https://revolutionarycorridor.org/the-1919-boston-police-strike/

1919年9月9日、ボストン警察官1,100人以上(約8割)が、公正な賃金、適正な労働条件、団結権を求めてストライキに突入した。


ボストンの警察官の賃金は、市内の熟練労働者のほとんどよりも低く、数十年にわたって昇給がなかった。通常のシフトは10時間から13時間。月に数回、不潔な宿舎での宿直勤務があった。制服や靴は自分たちで買わなければならなかった。


警察庁長官のエドウィン・カーティス(Edwin Curtis)は、警官の要求を無視した。カーティス警察長官とクーリッジ知事は、アイリッシュ系移民が政治的に力をもってきたことに警戒を強めていた。当時、社会主義者や労働組合による革命が起きるのではないかということをおそれてもいた。


警察官たちは、労働組合の結成とアメリカ労働総同盟(AFL)への加盟を計画していたが、カーティス長官は、警察官が外部の団体に加盟することを禁じた。しかし、警察官たちはAFLに加入することを決めた。8月21日、カーティスは8人の警官を命令違反で起訴した。9月8日には、さらに11人の警官を停職処分とし、合計19人の組織化運動のリーダーを逮捕した。その翌日、1,100人以上の警官がストライキを決行した。


ボストンのダウンタウンでは、この事態に乗じて略奪や窓ガラスを割るなど無秩序状態が生まれた。ボストン市長のアンドリュー・ピータースは、クーリッジ知事にマサチューセッツ州兵と地元の民兵の出動を要請し、要請に応じた州兵らが群衆に発砲し、5人が死亡。暴力は沈静化した。


ボストン市民の多くは、無法な群衆や軍の攻撃的な対応よりも、街を無防備にした警察を非難した。カーティスはストライキ参加者の再雇用を拒否し、新たに雇用した警察官には長年拒否してきたはずの賃上げを与えた。
これを機に、マサチューセッツ州では公務員のストライキやそれを勧奨したり認める行為が違法とされることとなった。
ボストン市警の組織化が認められ、全米で再び警察のストライキが起こるのは、それから50年近く後のことだった。


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<バーバラさんシリーズ#4>
2022
12月に来日したバーバラ・マデローニさん(レイバーノーツのオーガナイザー、元マサチューセッツ教員組合委員長)が、米国における労働運動の高揚、組織化の原則や方法、米国での教員組合の組織化について講演をされました。
バーバラさんの承諾を得て、2020年のマサチューセッツ教員組合の活動に関してバーバラさんがレイバーノーツ誌に掲載した記事を翻訳しました。
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2020年11月03日 / バーバラ・マデローニ
https://labornotes.org/2020/11/massachusetts-teachers-sick-out-six-feet


Brookline-sickout-6feet-BEU

マサチューセッツ州のブルックライン教員組合の組合員たちは、「Safer@6Feet」というSNS上のキャンペーンの一環として、写真をオンラインに投稿した。
写真:ブルックライン教員組合


2020年11月3日の今日、マサチューセッツ州ブルックライン教員組合1,000人のうち915人が、教室での人と人との距離を6フィートに保つことを要求するシックアウト(使用者が安全衛生の責任を果たしていないことを理由に職場放棄をすること)に参加しました。
ブルックラインの教育庁は、覚書でこの安全衛生の条件を守ることを約束していました。しかし今、教育長がこの条件を変更できるようにしようとしています。
「教育庁は、学校長にソーシャルディスタンスを一方的に変更できる権限を与えるため、覚書を破棄しました」
ブルックライン教員組合のジェシカ・ウェンダー=シュボウ委員長は言います。

ウェンダー=シュボウ委員長は副委員長とともに、シックアウト行動を支持したという理由ですでに文書による警告を受けています。マサチューセッツ州では、公務員のストライキは違法だからです。
「教職員は、教育庁が安全性を「ごまかし」、建物への復帰を急がせていることいついて不満を持っていました。私たちは、真実を語り、いたるところでコンプライアンスが欠如していることを明らかにすることから始めました」とウェンダー=シュボウ委員長は言います。

ハイブリッドモデルで再開した学校もある中、ブルックラインの教員組合は安全衛生対策が遵守されていない例を一つ一つ書き出し、教育委員会に100通以上の文書を送りました。中には、教育委員会で手紙を読み上げる教育者もいました。

9年生の教員が中心となって

ある学校では、特に組織的・先導的な取り組みが行われました。10月中旬、自分たちの学校にいる9年生を担当する教員たちが、ハイブリッドモデルによる対面学習に戻る日を突然早められました。
その学校の組合員は、ハイブリッド授業の開始日を1週間遅らせるよう要求し、要求署名運動を開始しました。彼らは、教育委員会に要求書を提出する前に、教職員の90%以上の署名を集めました。そして、実施延期を勝ち取ったのです。
しかしその後、教育庁は9年生のハイブリッド・モデル(生徒の半分が月曜から火曜、残りの半分が木曜から金曜で対面授業を受けることとなっていた)を変更し、新たに水曜日にもすべての生徒に対して対面で短縮授業を行うと発表したのです。
組合員は激怒しました。これでは生徒も教員もウイルスにさらされる機会が増えてしまいます。教員組合は、水曜日を完全なリモート授業にするよう要求しました。組合員はもう一度、お互いに話し合いました。そして水曜日は校舎に入らず、リモート授業にする覚悟を決めました。ところが、組合の計画が実行される前に教育庁側が折れました。

一対一の対話


ブルックラインの教員組合は、春に行われた一時帰休や一時解雇(レイオフ)との闘いで、コミュニケーションのネットワークを構築していました。「すべての組合員が組合の職場代表や組合で起こっていることを話せる人を知っていました。一時帰休やレイオフとの闘いによって私たちは危機に追い込まれ、勝つためには組合員を完全に組織化するしかありませんでした」と、9年生の理科教師で職場代表のグラシエラ・モハメディは言います。そして、組合員は勝利したのです。

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組合執行部は、学校の中には、リストを3年間も更新していないところがあることに気づきました、とウェンダー=シュボウ委員長は言います。協約行動チームのメンバー16人は、新しく選出された職場委員と力を合わせ、その学校の組合員全員に電話をかけました。
シックアウトの投票時には、全組合員が準備を整えていました。800人以上の組合員が総会に出席し、この行動について議論し、投票した結果、90%以上が賛成票を投じました。総会に先立ち、組合の代表は組合員一人ひとりに電話をかけていました。
昨夜、組合員が病欠や私用外出の申請を行う準備をしている間の、午後4時半から10時の間に、全組合員に電話がけが行われました。もう一度、全組合員に電話があったのです。

マサチューセッツでストライキに勝利


ちょうど1年前、デッダム教員組合が違法ストライキを行ないました。彼らはすぐに労働協約を勝ち取り、要求を実現しました。
今年9月初旬、アンドーヴァーの教員組合は、危険な校舎に入ることを拒否し、代わりに屋外で作業を行いました。そのために、後に労働委員会が違法なストライキと呼ぶ事態になりました。アンドーヴァーの教育長は、その後、辞任を表明した。
今、ブルックラインがこれに続いています。ウェンダー=シュボウ委員長によると、「リスクを甘く見る」ことなく、組合員はこの集団行動に圧倒的賛成の票を投じました。
ブルックラインでもアンドーヴァーでも、執行部がこの行動に対して不安を持っていたのは明らかです。しかし、「今こそガッツが必要だ」とウェンダー=シュボウ委員長は言います。
ブルックライン地区の近隣のマサチューセッツ州教員組合の組合員は、今日の午後、ブルックラインの組合員たちと一緒に、ソーシャルディスタンス確保を求める要求を支援する集会を開く予定だ。マサチューセッツで何かが起きている。

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組織化について学ぶのにおすすめ
『職場を変える秘密のレシピ47』
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<バーバラさんシリーズ#3>
2022
12月に来日したバーバラ・マデローニさん(レイバーノーツのオーガナイザー、元マサチューセッツ教員組合委員長)が、米国における労働運動の高揚、組織化の原則や方法、米国での教員組合の組織化について講演をされました。
バーバラさんの承諾を得て、2022年のマサチューセッツ教員組合の活動に関してバーバラさんがレイバーノーツ誌に掲載した記事を翻訳しました。


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2020
930日/バーバラ・マデローニ
https://labornotes.org/2020/09/collective-action-how-we-shake-ourselves-free-pandemic-isolation



Andover-teachersmarch-AndoverEducationAssociation

マサチューセッツ州アンドーヴァーの教師たちは922日、安全な学校復帰の覚書を求めてデモ行進を行った。
写真:アンドーヴァー教員組合(
AEA

 

パンデミックによって、労働者が集団行動をし、集団的に問題を解決することがなぜうまくいくのか、よりはっきりとわかるようになりました。

公的な医療制度がなく、政府も無秩序で無能で現場を無視した対応をしているため、個人は一人でパンデミックに対処しなければならなくなりました。働くべきか否か、つまり自分の健康と安全を危険にさらすべきか否かという決断は、個人的なものとなってしまいました。

家庭で働く人は孤立し、職場で働く人は恐怖を感じています。

 

強まる孤独

 

私は、学校の教職員や保護者が、校舎に戻るべきか、リモートで働くべきか、あるいはその両者を混在させるハイブリッドかという選択を迫られたとき、意見が分かれるのを見てきました。

教育庁は保護者や教育者にアンケートをとり、各自が何を望んでいるかを尋ねました。教員組合は組合員にアンケートを書かせるだけでした。これはつまり「自分で責任をとりなさい。自分のことだけを考えろ」というメッセージを強調しているということです。

だからこそ、今、労働者が集まって議論をするときに、コントラストが顕著にはっきりと現れるのです。

 

マサチューセッツ州アンドーバーでは、教職員たちはハイブリッドモデルで教えるように言われました。教職員は、生徒が学校にいないときでも、校舎で仕事をしなければなりません。

これには、学期が始まる前に学校まで出勤し「専門的能力の開発」研修も含まれていました。研修はリモートで行われるにもかかわらず。

このような教育長の権力行使に憤慨した組合員は、過去最大のバーチャル会議を行いました。専門能力開発研修期間の初日に出勤べきか、それとも校舎外、つまり校舎のとなりの駐車場や芝生で仕事をするという集団行動を行うべきかどうか、議論をし、採決しました。

 

組合執行部は、組合員が賛成したとしても、それを実行に移す人が少なく、この集団行動が失敗に終わるのではないかと心配しました。執行部はもう一度会議を招集し、2回目の投票では反対票を投じるよう働きかけました。

組合員たちは話し合い、議論し、もう一度採決を行い、集団行動を決行しました。当日は、反対票を投じた組合員も、芝生用の椅子とノートパソコンを持って現れました。発電機を持ち込んで、仮設トイレも準備しました。

こうした集団的な議論と行動を通じて、組合員は変身しました。彼らは、教育庁や教員組合の執行部が考えている以上の存在であり、それまで自分が思っていた以上の尊い存在であることを、互いに発見したのです。

 

一人ひとりを根本的に尊重する

 

私たちはよく、「11の会話は組織化の基礎である」と言います。組合員と話をする。組合員が何に関心を抱いているかを知る。そして、その問題を解決するために自分たちに何ができるかを伝えます。何かするよう頼むのです。

このような11の会話は、単に1人の人間が1人の人間に話しかけるものとして扱ってしまいがちです。しかし、個人と職場を大きく変えることができる組合活動の鍵は、組合員が大勢集まって一緒に問題を解決し、一緒に計画を立て、集団行動を起こすことです。

私は、ドラマの脚本ように、決められたとおりに情報が伝達され、ほとんど議論もされないまま議事ルールを適用して採決に移るような会議について話しているのではありません。私が言いたいのは、労働者が根本的に尊重された空間に集まり、自分たちの仕事のあり方を決定するのは自分たち自身であることを知る、そのような議論の場です。

そのような会議では、私たちは共通の利益を見出し、共通の知恵を発見し、共通の行動を通して勇気を育みます。

私たちは、不幸の波に打ちのめされるのは不可避だという感覚から自らを解放し、その波を生み出している構造をどのように変えることができるかを見出すのです。

アンドーヴァーでは、教育庁は「屋外労働日」を違法なストライキと宣言するよう州当局に働きかけました。しかし、それでも組織化は止まりませんでした。

教職員たちは自分たちが力をつけていることを自覚しており、教育庁がそれを押しつぶそうとしたときにも臆することはありませんでした。教員組合は再び集会を開き、標的となった委員長と副委員長を支持する決議を採択し、次の集団行動を計画しました。


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<バーバラさんシリーズ#2>
レイバーノーツ誌から、2022年5月のマサチューセッツ州ブルックライン教員組合のストライキに関する記事を紹介します。この記事を書かれたのは、バーバラさんではなくブルックライン教員組合のマギー・カニフさん。
/弁護士菅俊治
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マサチューセッツ州ブルックライン教員組合は、いかにして違法ストライキを行ったか
2022年7月14日/マギー・カニフ(幼稚園教諭、協約行動チームの共同議長)


Brooklinestrike

マサチューセッツ州では、1919年以来、公務員はストライキを違法とされてきた。しかし、ボストン郊外の小さな町ブルックラインでは、5月16日に教育関係者がストライキを行い、ほぼすべての要求を勝ち取った。
写真 マサチューセッツ州教職員組合


マサチューセッツ州では1919年以来、公務員はストライキは違法とされてきた。しかし、ボストン郊外の小さな町ブルックラインで、私たちはストライキを決行した。
1100人の組合員のうち、900人以上が5月16日、ピケットラインに勢揃いした。ストライキは最高潮に達し、1000人の教職員が州内の支援者とともに市庁舎に集結した。
交渉チームは翌朝未明まで交渉を続けた。朝日が昇ったとき、私たちは協約期間の満了時まで遡る、期間3年の労働協約を獲得した。労働協約には、すべての教員に授業準備時間を保障すること、正当な賃金引き上げ(年功制度への重要な制度変更を含む)、多様性により配慮した採用を実現することをを目的とした条項が含まれている。
端的にいって、私たちは妥協を最小限にとどめ、ほとんどすべての要求を勝ち取った。ただおそらくより重要なのは、私たちが長い間失われてきた教職員への敬意を回復したこと、私たちが集団行動をとる意思があることを示したことである。

学校司書のドミニク・ゴニエは言う。
「教育委員会の委員は、私たち教員が団結すれば何ができるのかを目の当たりにして、教員に対する攻撃を再考するだろう。教育委員会は自らが悪者であることを有権者の前にさらけ出した。世論は私たち教員の側についたのです」

幕を開けた


ブルックライン教員組合が違法ストライキを行う力をどのように築いたか。これを理解するには、数年前を振り返る必要がある。
2016年以来、私たちは2人の教育長と3人の臨時教育長を経験した。これは、「データに基づく学校教育モデル」というとんでもない代物を教員と生徒に押し付けようとした軽率な試みの結果であった。
頻繁な交代人事にもかかわらず、教育委員会は団体交渉の場で攻撃性を着々とあらわにしてきた。教育委員会の姿勢を暴露するため、私たちは交渉の場を組合員と一般市民に開放するよう働きかけた。2019年、私たちはその一歩として、交渉の場に12人の「発言権なしの交渉代表」(サイレント・レップ、silent representatives)を置く権利を勝ち取った。

2019年から2022年までの交渉プロセスを通じて、100人以上の一般組合員がサイレント・レップを務め、教育委員会の露骨に不誠実な交渉態度の目撃者となった。
「私は教育委員会の弁護士の攻撃的な態度、戦術、説明を目撃しました。その時、私は協約行動チームに参加しなければならないと思ったのです。」
 と社会科教員のスーザン・バログは言う。

「(サイレント・レップとなったことで)協約交渉チームの一員であることがいかに困難であるかが理解できました。私はもはや協約交渉チームを疑うことはなくなりました。彼らが集団行動が必要だと判断するのなら(それがどんな行動であれ)私は彼らを支持するつもりです」
と数学教師メーガン・ケネディ・ジャスティスは言う。

いざストライキへ


2021年春、教育委員会は2020-21年度の昇給率を0%にすることを提案した。その一方で、私たちの苦情処理申立権を弱め、無報酬で勤務時間を30分延長するよう要求してきた。
他方、組合側は、生活費の上昇に合わせた公正な賃金調整、非白人教員の採用や雇用維持のための対策の強化、すべての教員のための毎日の授業準備時間、職務上の期待における不公平や行き過ぎを明らかにするための合同委員会などを提案していた。
教育委員会はこれらの提案を無視し、何の回答も示さなかった。そして、交渉は行き詰まったと主張して、私たちを州の調停手続に追い込んだ。
私たちはすでに、遵法闘争、戸別訪問キャンペーン、組合員が多数団結していることを目に見えるように示すための集会、ビラ配りなどを行っていた。3月に調停手続が開始されたとき、私たちは活動をさらに強化する時期が来たと悟った。私たちは協約行動チームの役割を編成しなおし、非常に熱心な200人のメンバーからなるより広範な行動チームを調整した。

私たちは、市民集会、(市議会のように)選挙で選ばれる委員会の会合に出席して資金援助を要求し、教育委員会の会合に多数で参加しで怒りを示す証言をするなど、行動をエスカレートさせる計画を立てた。
これらの行動を通じて、組合員は、これは単なる労働協約闘争ではなく、教員が抱く恐怖と教員軽視の連鎖を断ち切るためのものだと感じるようになった。

一人ひとりへの働きかけ


ストライキ投票までの1週間で、1,100人の組合員に働きかける必要があった。私たちは中央のスプレッドシートを使って、一人ひとりが賛成票を投じる準備がどの程度できているかを追跡した。数学教員のジュリー・ジェイムズは言う。
「連絡を取るたびに、私が一人ひとりに連絡をとることはメールをもらうのとは違うのだと理解しました」
私たちは、ストライキ本部と、一人あたり10人の組合員を受け持つピケの現場責任者(ピケット・キャプテン)との間で常時連絡を取り合うためのコミュニケーションの流れを一つ一つ特定し、構築していった。その甲斐あって、私たちは「闘えば必ず勝てる」と信じることができた。

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