東京法律事務所blog

カテゴリ: 雇用によらない働き方


 弁護士の菅俊治です。

 2018年2月14日、公正取引委員会の競争政策研究センター内に設置されていた「人材と競争政策に関する検討会」が報告書を公表し、フリーランサー、ギグエコノミーの就労者、スポーツ選手、芸能人に対する独占禁止法を使った保護もありうることを指摘し注目を集めました。
 http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/feb/20180215.html

 この報告書について2018年3月16日までパブリックコメントが募集されていましたので、私と東京共同法律事務所の川上資人弁護士と連名で、検討会に対して意見書を提出しました。

 「雇用によらない働き方」「雇用類似の働き方」の就労者の保護が、今、重要な課題となっています。労働関係法令の適用を受ける「労働者」の範囲についても、再検討が必要な時期がきていると思います。公正取引委員会の今回の提起を前向きに受け止め、私たち実務家も、業界関係者、市民、研究者の皆さんと一緒に、より良い公正な社会に向けて具体的な改善につなげていきたいと思います。

 意見書の作成にあたっては様々な方々からご指導・ご助言をいただきました。御礼申し上げます。
 
___________________________

「人材と競争政策に関する検討会」報告書に対する意見

 

2018年3月16日

 

弁護士 菅 俊治(日本労働弁護団全国常任幹事)

弁護士 川上資人(日本労働弁護団事務局次長) 

 

 公正取引委員会は、競争政策研究センター内に「人材と競争政策に関する検討会」を設置し、人材の獲得競争をめぐる競争に対する独占禁止法の適用関係及び適用の考え方を整理するため平成29年8月から6回にわたり会議を開催し、平成30年2月14日に報告書(以下「報告書」)を公表した。

 当職らが所属する日本労働弁護団は、労働者及び労働組合の権利擁護のため活動する法律家団体であり、会員弁護士は、競業避止義務、秘密保持義務に関する紛争や、請負形態の就労者、芸能人・スポーツ労働者に関する紛争の相談や事件処理も手がけてきた。こうした経験を踏まえ、報告書に対して以下のとおり意見を述べる。

 

1 はじめに

(1)全体的な評価

 近年、個人の就労形態がますます多様化しており、インターネット上のプラットフォームを介して仕事を請負わせるギグエコノミーにみられるように、雇用によらずに労働力を調達する動きが拡大しつつある。この中には、形式的には雇用でないとされながら、実態としては雇用として労働法の適用がありうるものも多数含まれる。他方で、雇用か否かが曖昧なものもあり、さらには実態としても個人請負であるもののも存在する。こうした広がりの中で、従属的な立場に立つ個人の就労に対して法的保護の必要性が痛感されている。

 本報告書が、こうした個人の就労者に関し、使用者の人材獲得行為について独占禁止法の適用があるとしたことは、就労者に新しい紛争解決手段を提供するものとして積極的に評価できる。

 特に本報告書が、「労働者は当然に独占禁止法上の事業者には当たらないと考えることは適切でなく、今後は、問題となる行為が同法上の事業者により行われたものであるかを個々に検討する」とし、「労働法と独占禁止法の双方の適用が考えられる」ことを認めた点は重要である。

 言うまでもなく、形式的に雇用ではないとされている場合であっても、労働実態によっては使用従属関係が認められる場合がある。本報告書が「雇用的自営等」とする就労者について、一律に労働法の適用を放棄したものではないことは注意を喚起する必要があろう。


(2)スポーツ選手・芸能人の権利について

 次に、本報告書が、特に「スポーツ選手、芸能人」に関して、「役務提供者に不利益をもたらし得る発注者(使用者)の行為」に独占禁止法を適用するとしていることも評価できる。

 我が国では、スポーツ選手・芸能人の権利が十分保護されていない[1]。特に移籍の自由が保障されていないこと、仕事を不当に制限されること(いわゆる「干される」こと)によって、スポーツ選手・芸能人の交渉力が奪われている。

 報告書は、こうした芸能・スポーツの慣行に対しても明示的に独占禁止法による法的規制の可能性を認めたものであり、今後、具体的な適用により業界慣行が是正・修正されていくことが期待される。

 但し、芸能人・スポーツ選手の権利を保障するためには、独占禁止法・公正取引委員会による法的規制のみでは十分でない。不当な契約を是正する約款規制のアプローチや、米国のタレント・エージェンシー法のように芸能事務所の事業規制のアプローチなど、さまざまなアプローチを駆使することが重要であり、今後立法的な解決も望まれる。また、芸能人・スポーツ選手の地位向上のための労働組合の結成や組織化も重要な課題である。

 

2 「第3 労働者・労働組合と独占禁止法」について

 本報告書は、労働法と独占禁止法の双方の適用が考えられる場合に、それらの適用関係について検討するとして要旨以下のとおりのべている。

 まず、使用者に対して弱い立場にある労働者保護のために各種の労働法制が制定された意義自体は現在も変わらないとした上で、第1に「伝統的な労働者」、典型的には「労働基準法上の労働者」は、独占禁止法上の事業者には当たらず、そのような労働者の行為は独占禁止法の問題とはならないとしている。

 第2に、労働組合法に基づく集団的労働関係に基づく労働組合の行為や使用者の行為も、原則として独占禁止法上の問題とならないとしている。[2]

 第3に、就業規則の作成といった労働基準法・労働契約法等により規律される個別的労働関係における労働者に対する使用者の行為も、同様に原則として独占禁止法上の問題とはならないとしている。

 いずれも概ね妥当と考える。

 但し、第1に関しては、実態としては「伝統的な労働者」(労働基準法上の労働者)に該当する可能性がある場合も、形式的に請負形式を採用しているようなケースは多く存在する。そのような場合に、労働者保護という趣旨に照らし、「労働者」であることを理由に間口のところで独占禁止法の適用を排除することは妥当でない。

 実態は雇用であるにもかかわらず、あえて請負形式の契約を締結する行為は横行しているが、これらは事実と異なる取引条件提示するものであり、優越的地位の乱用の観点から役務提供者に不当に不利益を与えるものとして独禁法上の問題ともなりうるだろう。

 

3 「第4 独占禁止法の適用に関する基本的な考え方」について

 報告書が、人材獲得競争が不当に制限されることにより、「人材を利用して供給される商品・サービスの水準を低下させ消費者利益を損なう弊害もあると考えられる。」と指摘していることは重要な指摘である。

 芸能人やスポーツ選手の場合、その人材獲得競争の不当な制限は、芸能・芸術の「水準を低下させ」、「消費者利益を損なう」だけにとどまらず、我が国の文化・スポーツそのものの水準を低下させるものであることも指摘されてよい。

 

4 「第5 共同行為に対する独占禁止法の適用」・「3 「移籍・転職」に係る取決め」について

 報告書が、事業者間での移籍・転職を制限する取決めについて、育成費用の回収という目的からこれを正当化することができるか検討し、「移籍・転職を制限する以外に育成費用を回収するよりもより競争制限的でない他の手段は存在しないのか、といった内容,手段の相当性の有無も併せて」考慮するべきとし、「通常,育成費用の回収という目的を達成する手段として他に適切な手段が存在しないということはないものと考えられる」と述べて、育成費用の回収という目的を達成するためには、他により制限的でない手段があり、移籍・転職を制限する取決めを育成費用回収目的から正当化することはできないとした点は評価できる。

 ただし、このような結論が、芸能事務所等の「事業者」による役務提供者に対する費用回収を目的とする安易な損害賠償請求を正当化しないことも指摘される必要がある。

 実際に、わが国のスポーツ界では、使用者の所属・加盟する競技団体が、スポーツ選手の移籍や転職を制限する規定を、その規程中に設けている例が散見される。例えば、一般社団法人日本実業団陸上競技連合は、陸上スポーツ選手が、所属する法人と資本関係のない法人のチームへ移籍する場合、元のチームの陸上競技部長と監督連名の退部証明書を交付されなければ、新チームで登録申請を行うことができない、との規定を定めており(一般社団法人日本実業団陸上競技連合登録規程第6条[3])、過去には、上記の退部証明書が発行されなかったことから、移籍をめぐる紛争が発生している[4]。当該ルールは、一般社団法人日本実業団陸上競技連合に加盟する陸上スポーツ選手の一切の活動を禁止しうる点で、陸上スポーツ選手の活動制限の程度が非常に高いといえる。既に、日本プロサッカーリーグ[5]やラグビーのトップリーグ[6]では移籍制限のルールが撤廃・緩和されているが、わが国のスポーツ選手の活動に対する不当な制限全般を撤廃する上では、本報告書の作成・公表を契機として、貴委員会が、他の競技団体の移籍・転籍にかかるルール[7]についても、独占禁止法上の問題の有無を調査し、独占禁止法上の問題がある場合は、注意等の措置を実施することが期待される。

 

5 「第6 単独行為に対する独占禁止法の適用」

 報告書が、事業者の単独行為のうち、「役務提供に係る条件を十分に明らかにせずに取引することで、他の発注者との取引を妨げることとなる場合には、独占禁止法上の問題となり得る」、「役務提供に係る条件として、他の発注者に対して役務提供を行うことを制限し、あるいは、行わないことを義務付ける内容が含まれる場合がある。そのときに、前記のような役務提供者に対して実際と異なる条件を提示する、又は役務提供に係る条件を十分明らかしないどの行為が行われた場合は、それが役務提供者の選択自由を制限することになるという意味において、通常の商品・サービスに関する競争で同様のことが行われた場合に比べてその問題の重大性は大きく、なおさら独占禁止法上問題となりやすい考えられる」と指摘し、競争手段の不公正さの観点、優越的地位の濫用の観点から独占禁止法上の問題となるとしていることは評価できる。

 スポーツ選手、芸能人を含むフリーランサーは、事業者に対して弱い立場にあり、役務提供の条件・情報を十分に明らかにされないまま専属義務を課され、選択の自由を制限されていることがある。


(1)スポーツ選手について

 スポーツ界における専属義務や選択の自由の制限の一つの例として、プロ選手に対するアマチュアへの役務提供の制限がある。例えば、わが国の野球界においては、プロ野球選手、元プロ野球選手等は、日本学生野球協会の承認を受けない形で学生野球団体等と練習、試合、講習会、シンポジウムなどの活動を行うことを制限されているが[8](学生野球憲章13条)、同じプロスポーツでも、サッカー界やバスケットボール界ではこのようなアマチュアに対する役務提供の制限は存在しない。上記野球界のアマチュアに対する役務提供の制限のような、イベントの組織体による役務提供の制限は、報告書にいう専属義務に類似する行為として、独占禁止法に抵触する疑いがあると考えられる(本報告書32頁注78)。

 もう一つのスポーツ界における典型的な選択の自由の制限として、競技団体による肖像権の独占的利用やその対価が事前協議されていないという問題が挙げられる(本報告書34頁から37頁、40頁)。わが国の競技団体は、国際オリンピック委員会や各種競技の国際統括競技団体を起点としたヒエラルキー構造の中に組み込まれており、わが国の競技団体の下で公認された活動を行おうとするスポーツ選手は、当該競技団体が定める登録にかかる規程に完全に同意した上でなければ、競技活動を行うことができない。そのため、スポーツ選手は、当該規程中に、肖像権を独占的に所属競技団体に帰属させる旨の規定があったとしても、当該規定に関する同意を余儀なくされている[9]。また、当該肖像権の利用にかかる対価は、一切支払われないとされていたり[10][11]又は分配されるとしても分配割合についての事前協議が行われていないのが一般的である。

 そもそも、こうした競技団体は、スポーツ選手の肖像権のライセンシーとして当該選手に対価を支払う立場でありながら、当該選手の肖像権の権利管理者(代理店)としての立場を併有しているため、当該選手と利益相反関係にあり、時に選手の利益を最大化しない取引(選手に対する対価が少なくなる取引)が行われやすい構造になっている。本報告書においても、既に、ドイツ連邦カルテル庁が、オリンピックに参加する選手が、オリンピック期間中及びその前後の一定期間、広告目的での選手の名前、写真の利用を禁止することを内容とするオリンピック憲章40条及びその付属規程(通称ルール40)につき、ドイツオリンピック連盟及び国際オリンピック委員会が市場支配的地位を濫用している疑いがあるとして、調査を進めていることが指摘されているが、2020年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会を迎える我が国においても、貴委員会が、当該オリンピック憲章の規定がわが国の独占禁止法上の問題がないかを調査することが望ましいといえる。本報告書の作成・公表を契機として、貴委員会が、このようなスポーツ界の競技団体のスポーツ選手の肖像権にかかる取引について、独占禁止法上の問題の有無を調査し、独占禁止法上の問題がある場合は、注意等の措置を実施することで、不当な選択の自由の制限が緩和・撤廃されることが期待される。


(2)芸能人について

 また、芸能界における専属義務や選択の自由の制限については、すでに報道等で注目を浴びている芸能事務所との契約のみならず、その先にある大きな影響力を持つメディア、すなわち、①歌手やバンドなどのアーティストとレコード会社との専属契約、②テレビ局との取引における独占禁止法上の問題についても指摘されなければならない。


 ア アーティストとレコード会社との専属契約について

 まず①のアーティストとレコード会社との契約は、現在ではアーティストが所属する芸能事務所とレコード会社との間で締結されることが実務上多いが、アーティストが所属芸能事務所を移籍することがあり得るなどの理由で、同時にその契約内容についてアーティストからも同意書を徴求することが通常であり、その意味では、レコード会社とアーティストとの間の契約であるという性質も有する。一部の大手事務所や大物アーティストを除いては、通常は、レコード会社が取引上優越した地位にあり、さまざまな競争制限的条項が契約に盛り込まれることが多い。例えば以下のような条項である。

・   レコード会社側が、いわゆるオプション権を持ち、不当に長期間にわたって、アーティスト側の意思にかかわらず、一方的に契約を延長・更新できる権利を持つ条項(「オリジナル・フルアルバム 7 枚」を出すまでの間一方的に更新できる、など。新人アーティストの場合などに多く見られる。古くは、レコード会社がそうした契約とともに相応の契約金や、事務所援助金を保証していたが、昨今はそうした保証すらも撤廃または減額されるようになってきているため、この条項の不当性が高まっている)

・   レコード原盤に基づく収入が、従来のようなCDから、インターネット配信に移行してきており、レコード会社に入る権利収入の割合が従来に比べて高まっているにもかかわらず、アーティストへの分配(アーティスト印税)については、CD時代の料率を適用することによって、アーティストの取り分を不当に安価にしている条項

・   レコード会社との契約終了後、一定期間(たとえば6ヶ月間)、他のレコード会社と契約してはならないという条項(古くはレコード会社側が、契約締結時に一定の契約金を保証するなどしていたが、最近はそれも少なくなっているので、この条項の不当性が高まっている)


イ テレビ局との取引について

 次に②のテレビ局との取引については、総務省の「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン(第3版)」の「7 放送番組に用いる楽曲に係る製作取引に関する課題」[12]にも記載されている、アーティスト(楽曲の作詞作曲者)とテレビ局系音楽出版社との契約における独占禁止法上の問題点が指摘されなければならない。

 この事例は、テレビ局が自社の番組のテーマソング等に、あるアーティストが作詞または作曲した楽曲を採用する際の条件として、著作権を自らの系列会社である放送局系音楽出版社に譲渡させることを下請法上問題視したものであるが、独占禁止法上の問題でもあることは当然であり、またガイドラインに関する総務省のフォローアップ調査[13]においても、なぜか番組製作者と放送事業者にしかヒアリングがなされておらず、楽曲を提供する側であるアーティスト側のヒアリングが一切行われていないため、このような取引慣行は、全く是正される気配がない。公正取引委員会が積極的に調査に乗り出すべき事例といえる。

以上


[1] 芸能人と芸能事務所との間で交わされる契約では、芸能人側が負う義務の内容が具体的に特定されていない。そのため、意に反した仕事や危険な業務に従事させられたり、長時間の拘束を余儀なくされたりといった深刻な実態が一部に存在している。他方、芸能事務所側の負う義務は漠然としており、芸能事務所が十分にサポートしてくれず契約を解除したいと感じた場合も、債務不履行を主張することは困難である。出来高払いの報酬については報酬の計算根拠が不明確であることがほとんどである。さらに、報酬の一方的な減額や不払いも珍しくない。さらにほとんどの場合、肖像権などの権利も芸能事務所側に包括的に譲渡させられ、契約交渉の対象とすらされていない。

[2] 労働組合法に基づく集団的労働関係については、例えば音楽家の労働組合(日本音楽家ユニオン)と民間放送キー5社(日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビ、TBS、テレビ東京)との間の演奏家のギャランティー(基準演奏料と呼ばれる最低演奏料)に関する労働協約を1970年代から締結してきたところ、2018年3月に至り独占禁止法を根拠に5社での締結はできず各社対応とするといった対応も生じている。これらの集団的労働関係に基づく労働組合や使用者の行為については独占禁止法の問題とはならない点について理解を広める必要がある。

[3] 一般社団法人日本実業団陸上競技連合は、労働契約が満了し、使用者側から契約更改の申し出がなく退職した場合は、第6条の移籍制限は受けないとする附則を定めているが、使用者側からの更改の申し出がない場合は、第6条の移籍制限が適用されるため、一般社団法人日本実業団陸上競技連合に加盟する実業団に所属する労働者は、やはり、転籍・移籍の制限を受けていると言える(http://www.jita-trackfield.jp/entry/)。

[4] 同種紛争の概要については、公益財団法人日本スポーツ仲裁機構「アスリートのためのスポーツ仲裁・調停ガイド!!」を参照(http://www.jsaa.jp/guide/sports/1112_sports.pdf)

[5] サッカーJリーグでは、過去には、契約期間満了後の移籍であっても、新チームから元チームに対し、年齢に応じた移籍金の支払いが必要であったため、サッカー選手の移籍の自由が制限されていた。

[6] 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会は、本報告書の公表から5日後、トップリーグ(TL)の規約を改定し、前所属先の承諾がない場合に移籍先での選手登録を1年間認めないとしていたルールを、平成30年4月1日から緩和することを発表している。

[7] 例えば、一般社団法人日本バレーボールリーグ機構は、前所属チームの承諾なく、離籍または退職した選手は、離籍または退職の日の早い方から1年を経過するなどしなければ、新チームで、Vリーグへの登録・出場ができないとしている

(Vリーグ間の移籍手続きに関する規程9条、http://www.vleague.or.jp/files/user/blog/2014miseiri/trade_manual_code_2016.06.01.pdf

及びVリーグ機構登録規程13条http://www.vleague.or.jp/files/user/blog/2015_oshirase_topics/23tourokukitei(20160615).pdf)

[8] 現在、元プロ野球選手は学生野球資格回復研修制度の受講により一部指導が可能になっているが、現役プロ野球選手には認められていない。

[9] 例えば、公益財団法人日本体操協会は、競技者規程第8条第2項において、「2 本会は、本会の目的の範囲内であれば、競技者の肖像等(画像、動画、イラスト、名前、通称、手形、足形等)を無償にて使用することができる。」とあらかじめ定めているが、競技者は、当該競技者規程に同意せずに、同協会の統括する体操競技を行うことができない(https://www.jpn-gym.or.jp/wp-content/uploads/2013/04/jgareg06.pdf)

[10] 例えば、公益財団法人日本サッカー協会が定める全選手に統一的に適用される「選手契約書」には、以下の規定のとおり、「選手の肖像等の使用およびその許諾」につき、クラブの書面による承諾を得なければならないとされ、選手が自らの裁量で肖像等を使用することは一切できないとされている。しかもクラブの承諾を得て肖像等を使用した場合の選手への対価は予め定められていないことも多く、結果的に無償とされたり、クラブのロゴ等を使用しない肖像のみの使用の場合であっても、クラブに一定の手数料等を支払わなければならないとされることも多い。(https://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/06/01.pdf)。

第8条 〔選手の肖像等の使用〕

①クラブが本契約の義務履行に関する選手の肖像、映像、氏名等(以下「選手の肖像等」という)を報道・放送において使用することについて、選手は何ら権利を有しない。

②選手は、クラブから指名を受けた場合、クラブ、協会およびリーグ等の広告宣伝・広報・プロモーション活動(以下「広告宣伝等」という)に原則として無償で協力しなければならない。

③クラブは、選手の肖像等を利用してマーチャンダイジング(商品化)を自ら行う権利を有し、また協会、リーグ等に対して、その権利を許諾することができる。

④選手は、次の各号について事前にクラブの書面による承諾を得なければならない。

(1) テレビ・ラジオ番組、イベントへの出演

(2) 選手の肖像等の使用およびその許諾(インターネットを含む)

(3) 新聞・雑誌取材への応諾

(4) 第三者の広告宣伝等への関与

[11] 公益財団法人日本バスケットボール連盟が定める基本規程にも、日本代表チームの選手等の肖像権の「管理運用」一切の権利が協会に帰属することが、あらかじめ定められている(http://www.japanbasketball.jp/wp-content/uploads/rule_07_20170308.pdf)。

第153条〔日本代表チームの肖像権〕

① 日本代表チームの選手等の肖像、氏名、略歴、似顔絵、アニメ、音声、署名等(以下「肖像等」という)を管理運用する権利(以下「肖像権」という)は、次項以下に定めるところに従い、本協会に専属的に帰属するものとする。

② 日本代表チームの選手等は、日本代表チームの活動中の選手等の肖像等が報道、放送されることおよび当該報道、放送に関する選手等の肖像等につき何ら権利を有するものでない。

③ 本協会は、日本代表チームの選手等の肖像等を、本協会の広報・広告宣伝活動等のために無償で使用することができる。

[12] http://www.soumu.go.jp/main_content/000284511.pdf

[13] http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu04_02000049.html

弁護士の今泉義竜です。

4月26日、「シェアリングエコノミーってなんだ!?~ライドシェアから考える~」が衆議院第一議員会館大会議室にて開催されました(日本労働弁護団と交通の安全と労働を考える市民会議の共催)。
以下、発言の一部をご紹介します(メモに基づくまとめですので、実際の発言とは異なります)。
シンポの動画は、労働弁護団ウェブサイトより見ることができます。

 
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マーク・グルバーグ氏(Mark Gruberg・サンフランシスコ・タクシーワーカーズ・アライアンスの創設メンバー。現理事)基調講演


 ウ―バーやリフトの革新性は、都市をまたいで、また国をまたいで違法な操業を行い、規制がされる前に政治家にキャンペーンを打って味方につけるというビジネスモデルにある。「ライドシェア」という用語は規制潜脱のための誤用であり、「Eヘイリング」が正確。公共交通としての規制がなく安全面でも環境面(規制によりサンフランシスコのタクシーの95%はハイブリッド車だがウ―バーには規制が及ばない)でも問題がある。消費者にも悪影響がある。ウ―バーは災害時やシドニーでの人質事件があったときには運賃を高く設定した。底辺に向かった競争のためサンフランシスコのタクシー運転手の収入は40%から50%さがり、複数のタクシー会社が倒産するに至った。

タクシーサービスがアプリによって効率化することは間違いないが高品質のサービスがすでに存在する場合、そこにアプリを組み込めばよいだけ。壊れてないものを直すな(If it’s not broke, don’t fix it)。

独立事業者モデルはアメリカで広がっている。多くの労働者を危険な労働条件にさらしている。

 

―パネルディスカッションー
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山崎 憲(労働政策研究・研修機構 国際研究部 主任調査員)


 企業経営と言う観点からいうと、シェアリングエコノミーは遊休資産の有効活用という側面がある。様々な企業の中に個人も請負として入って、個人が埋め込まれていくときにどうやってリーダーとの力関係のつり合いをとるかという問題。どこの産業でも起こりえること。ドイツでは2016年11月にアルバイト(労働)4.0という報告書を出し、インダストリー4.0により働く人たちの労働条件が悪くなる可能性を示唆している。行政や組合などが協力して規制する必要性がある。インディペンデントワーカーについて社会保障や労働条件維持のためのセイフティ―ネットが必要。

マッキンゼーのインディペンデントワーカーに対する調査では、収入が不安定、収入が低いという二つが大きな問題として上がっている。

企業側とまとまって話をする機会がどうしてもなくなってしまう。賃金や労働条件を引き上げる手立てを失っている。

実は日本でも以前より業務委託や下請けなどという形で同じようなことをやってきた。ただそうはいっても日本は雇用を中心に据えていた。9割が雇われて働いているという状態を壊す必要があるのか。

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戸崎 肇(首都大学東京教授 都市環境学部 交通政策専門)
 シェアリングエコノミー概念自体は昔からある。技術変化によって新たな形で出てきたに過ぎない。新しいルールが必要になってくる。

交通分野については、安全輸送という観点で、消費者にとって幸福なのかと言う観点。情報共有がないもとで商品を選べるのかという問題がある。

一方で、既存の公共交通機関をもっと魅力あるものにする必要がある。反対と同時に、地方の公共交通体系をどうやって作っていくか考えて提示していかないといけない。

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棗一郎(日本労働弁護団幹事長)

シェアリングエコノミー=ギグエコノミーは個人の労働力を雇用関係によらない労働力として一時的に自由に使うもの。働き方の未来2035にも切り貼りの労働、必要なときだけ部分的に取りだして利用するということが書かれている。

雇用とは言えない関係性を作り労働者を安く使うことを目指すような社会。そんな雇用社会を作っていくのかという問題意識がある。

ベルコでは正社員が30名で7000人が業務委託で働いている。
  労務提供型のギグエコノミーには規制をかけるべき。許可制にし、入り口規制でコントロールする。また、雇用労働とみなすという新法を作る。現場では労働者性を認めさせるたたかいに取り組む。

 
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マーク

アメリカでは技術の動きが早すぎて人々は絵を描けていない。技術の魅力に取り込まれて重大な影響に目が向いていない。問題に対するコントロールが効かない状況。

独立事業者問題、労働者性をどうとらえるのかは世界中で問題となっている。労働者の尊厳は使用者と対等にあることで保たれる。真に独立事業者以外は労働者性が認められるべきだ。ウ―バーは労働者の労働条件、安全性、環境に悪影響を与えている。日本は防ぐことができる。

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菅俊治(日本労働弁護団常任幹事)

彼らは莫大な利益のためにやっているが、利益を生み出しているのは実際に働いている労働者。こういう働き方を世界中に広げてはいけない。
 海外でこういった働き方が広がっている実態を広く知らせなければいけない。雑誌「労働者の権利」2016年10月号でライドシェア問題を特集した。シェアリングエコノミーの広がりも知らせていかなければいけない。
 低賃金不安定な労働実態、サービスの低下の実態を伝えていく必要がある。
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宮里邦雄(日本労働弁護団常任幹事)

 広がる前に水際で強く反対をして健全な雇用社会を守る必要がある。

「シェアリングエコノミー」は「連帯」ではなく個々の労働者を「分断」するものだ。

労基法の労働者概念は狭すぎる。新しい時代にふさわしい労働者概念の拡大を立法改革によってすべきだ。事業規制と労働者保護の両方をトータルにやることが必要だ。

 

菅の写真

弁護士の菅俊治です。
今年もよろしくお願いします。

経済産業省が、「雇用契約によらない新しい働き方」に関する研究会を開催しています。
昨年12月19日に第2回が開催され、その研究会の資料がアップされていました。
http://www.meti.go.jp/press/2016/12/20161219004/20161219004.html

2017年は、僕たちもこのテーマを考えていく年になるでしょう。

「労働者」(この場合はフリーランサーを含めて)の正当な権利保障とか、産業経済の健全な発展とか、
の見地は、こうした会議に参集している人たちと一致できるはずの目標なので、折に触れて何か意見発信ができたらと思います。

掲載されているいくつかの資料を読んで、改めて感じたのは、企業がこれまで行ってきた業務をクラウドを通じて外部化していくとしても、以下のような課題があり、すでにいくつかの萌芽も見られることです。

(1)受注側の権利保護(適正な取引慣行や生活できる賃金保障と言ったほうが良いかも)は実現していない。
   「労働者性」概念の拡大による労働法の保護の拡張適用なのか。
   下請法の強化なのか、フランチャイズ基本法的な制定法なのか。
   何らかの法的な保護が必要である。

(2)受注側のクラウドワーカー達には「交流」が必要(スキルアップという点でも、「労働」条件の確保・向上という意味合いでも)である。
   労働組合法上の「労働者」の拡大による「労働組合法」の適用なのか。
   何れにしてもそういった「集団」を「組織」することが必要である。


(3)業務配分や進捗を管理する「プロクラウドワーカー」的な存在が必要である。そして、発注者ないしプラットフォーマーは、こうしたプロクラウドワーカーを通じて、「労務指揮」を行っている。
   労働法的な規制を裏付ける根拠の一つとなりうる。


(4)発注側にもスキルアップが必要。社外人材に頼めばなんとかなるということではない。ワークライフバランスを本当に実現し、なおかつ、有能な人材を食わしていかなくては、システムが成立しない。
   これを肯定的に捉えるならば、これまで、しばしば企業内部で顕在化してこなかった、無駄な仕事の排斥による生産性の向上の可能性を開くだろう。また、仕事と生活のバランスを無視したような業務指示のあり方を捉え直すきっかけともなりうる。
   しかし、企業内部の労務指揮管理のあり方(家族的責任を無視するような遠隔地配転や、本人のキャリアを無視するような異業種配転、あるいは正社員の長時間労働など)も、合わせて改める必要がある。

雑感としては、とりあえずこんなところでしょうか。



文責:菅俊治
https://www.tokyolaw.gr.jp/lawyer/suga_s.html  

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