東京法律事務所blog

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弁護士の今泉義竜です。

本日7月5日に予定されていた三菱UFJモルガン証券・パタハラ事件の証人尋問期日が延期となったことについて、
毎日新聞の今村記者が記事にしてくれました。
パタハラ裁判の証人尋問延期 注目集まり過ぎて

詳細は記事のとおりですが、
本日、延期となった証人尋問の代わりに裁判所にて進行協議があり、
仕切り直しの証人尋問を10月9日(水)10時~東京地裁527法廷にて実施することとなりました。
傍聴券交付の事件となり、抽選とはなってしまいますが、多くの方に来ていただければと思います。

今日の期日ではもう一つ、大きな進展がありました。
こちらがグレンさんに対するハラスメントの目撃者として申請したものの
裁判所が必要性に乏しいとして証人採用をしていなかった(採否留保していた)方について、
10月9日に呼んで証言を聞くという証人採用決定がなされたのです。

この方はニューヨークの関連会社に勤務していて解雇された方ですが、
グレンさんと同じ上司らからハラスメントを受けたとしてアメリカで裁判を起こし、
既に和解で解決した方です。

グレンさん側で証言をしてくれる唯一の重要な証人になります。
引き続きぜひご注目下さい。


※過去記事はこちらをご参照ください。




弁護士の今泉です。
私が関わっている事件ではないのですが、

青年法律家協会大阪支部の中森俊久弁護士が取り組んでいる事件の報告が流れてきたのを見て、
素晴らしい成果だと感銘を受けたので紹介します。


5月27日の大阪地裁での手錠腰縄国賠の判決です。


判決要旨には以下の内容が記載されているようです。

 

 現在の社会一般の受け取り方を基準とした場合,手錠等を施された被告人の姿は,罪人,有罪であるとの印象を与えるおそれがないとはいえないものであって,手錠等を施されること自体,通常人の感覚として極めて不名誉なものと感じることは,十分に理解されるところである。
 また,上記のような手錠等についての社会一般の受け取り方を基準とした場合,手錠等を施された姿を公衆の前にさらされた者は,自尊心を著しく傷つけられ,耐え難い屈辱感と精神的苦痛を受けることになることも想像に難くない。これらのことに加えて確定判決を経ていない被告人は無罪の推定を受ける地位にあることをにもかんがみると,個人の尊厳と人格価値の尊重を宣言し,個人の容貌等に関する人格的利益を保障している憲法13条の趣旨に照らし,身柄拘束を受けている被告人は,上記のとおりみだりに容ぼうや姿態を撮影されない権利を有しているというにとどまらず,手錠等を施された姿をみだりに公衆にさらされないとの正当な利益ないし期待を有しており,かかる利益ないし期待についても人格的利益として法的な保護に値するものと解することが相当である。

  原告Xに関する刑事事件については,判決宣告期日を含む4回にわたる公判期日のいずれについても,弁護人から手錠等を施された被告人の姿を入退廷に際して裁判官や傍聴人から見られないようにする措置を講じられたい旨の申入書が提出され,各公判期日においても,弁護人から同旨の申立てがされたにもかかわらず,担当裁判官は,いずれの申立てについても,具体的な方法について弁護人と協議をすることもなく,また理由も示さないまま特段の措置をとらない旨の判断をし,手錠等を施された状態のまま原告Xを入廷させ,また手錠等を使用させた後に退廷させたものである。これらのことからすると,本件裁判官らの執った措置は被告人の正当な利益に対する配慮を欠くものであったというほかなく,相当なものではなかったといわざるを得ない。

私自身、身体拘束されている刑事事件を担当する際、被告人が手錠と腰縄をつけて傍聴人のさらしものにされるということの理不尽さを常々感じていますが、それに対して仕方がないと受け入れてしまっている自分も一方ではいました。
中森先生たちのように、法律家としておかしいことについてきちんと問題提起して、裁判を起こし、裁判官の対応を裁判官に批判させた、というのは素晴らしいことだと思います。
青法協の先輩の弁護士の方々がそういった取り組みで成果を上げたことを誇りに思います。

弁護士の今泉義竜です。

3月1日‐2日に開催された青年法律家協会弁護士学者合同部会の常任委員会@岐阜に参加しました。
年に1回の総会以外に、年に3回、全国から温泉地などに集まって交流するイベントです。

記念講演は「改めて問う、天皇制とは-2019天皇代替わりを前に」というテーマで
森英樹名古屋大学名誉教授からお話を聞きました。
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天皇制について正面から議論がされることは近年ほとんどなくなったように思われますが、
いろいろと刺激になるお話でした。
代替わりを契機に、改めてこの天皇制・天皇制度についてよくよく考えた方がよいと思わされました。

元号についてだけ言うと、弁護士実務的には、裁判所に合わせて準備書面などに元号を使ったり西暦と併記することをしている
実務家が一般的には多く、裁判例も全て元号表記のため元号に対する感覚が麻痺しがちです。
私は元号が苦手なのもあり(パッと計算できない)、原則として西暦で書面を書きますが、相手方の書面や一緒にやっている弁護士の書面に引きずられて元号も併記したり
結局面倒くさくなって元号だけになってしまうということもままあります。

ただ、この元号というのは使わなければならないというような法的義務があるものではありません。
元号法という、2条しかない短い法律があります。

【元号法】
1条 元号は、政令で定める。
2条 元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。

これだけなんですね。
役所や裁判所など公的機関が使わなければいけないなどという根拠はどこにもなく、
使うか使わないかは自由です。
こないだも裁判所の和解調書における分割払いの支払期日を西暦で作ってもらいました(平成32年とか明らかにおかしいので)。

今後改元でさらにややこしくなることもありますので、
裁判や役所などでも全て西暦で統一していくべきだと思います。


森教授の講演で印象に残った点のメモを記しておきます。

【3月1日の歴史、代替わりフィーバー】

・3月1日といえば、①1919年のソウル3・1独立運動、②1954年のビキニ環礁水爆実験だが、日本ではドイツのような歴史を振り返る報道がほとんどなく、①加害の歴史は継承されず、②被害の歴史も希薄化されている。

・これまで例のない代替わりフィーバーの中で天皇制度についての批判的検討が全くされない。30年前を大幅に上回る145億円の代替わり儀式のための財政支出についても今国会予算審議において争点にもならない状況。

 

【天皇制のそもそも論】

・マッカーサーは占領政策の円滑化のため天皇を利用する道を選んだ。一方で日本帝国復活を懸念する国際世論に対して、憲法第1章で天皇を無力化し、第2章(9条)で軍事なき国にして日本帝国復活を確実に封じようとした。1章と2章はメダルの表裏。

・対する日本政府の示した憲法改正案は、天皇について「神聖」を「至尊」と変更する程度の大日本帝国憲法の一部修正。話にならなかったためにマッカーサー3原則が出される(①天皇はhead of state②戦争放棄、陸海空軍保持・交戦権も禁止③封建制度廃止)。現象的にはGHQによる押しつけ憲法というのは正しい。ただ、GHQが押し付けざるを得ない状況になったのは「国体護持」にこだわった日本政府の失態。

・1章も2章も1948年の占領政策転換で崩されていく。「国事行為」のみのはずの天皇が公費を使って数々の「公的行為」を行い、それをありがたがる国民世論。警察予備隊の創設→自衛隊で事実上の軍備。9条の規範力のもと「Destroyer」を「護衛艦」と翻訳。

 

【天皇という制度を憲法からみる】

・天皇制(the system):睦仁・嘉仁・裕仁 3代

・天皇制度(an institution):裕仁・明仁 2代

・「天皇制」を廃止して「天皇制度」を新設したはずが、「天皇制」は切断されなかった。

・1条で「国民の総意」と規定されながら、2条で世襲とされている枠付け。総意を確認するプロセスがない。皇室典範の改正により代替わりに際して国民による信任投票などしてもいいはずだがそういう議論がない(30年前には国会で議論になった)。

・徹底した男性優位の皇室運営は、男性・年長優位の社会意識を再生産する根源であり、日本社会における女性差別意識を根底で支えている。

・1947年に皇室典範改正で元号は法的根拠を失うが、元号使用継続の政府・官庁・メディアそして国民の意識は継続。その後野党が元号廃止法を用意したが、政府提出の元号法が1979年に成立。

・改元フィーバーはこれらの根本問題を覆い隠すものではないだろうか。

以上

弁護士の今泉です。
2月8日、厚生労働省で開催された第5回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(座長;岩村正彦東京大学教授)を前半だけ傍聴してきました。
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(写真は第4回のものhttps://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-12-28/2018122805_02_1.htmlより)
この解雇無効時の金銭救済制度、いわゆる解雇の金銭解決制度は、違法な解雇であっても一定の金銭を支払えば有効に労働契約を終了させることができる、という制度です。
現在、解雇の金銭解決制度を導入にあたって検討すべき法的な論点について、学者が中心になって議論が進められています。

解消金の上限・下限はどのように決めるか、解消金にバックペイも含めるかといった点について、制度創設にあたって検討する必要のある論点を一つずつつぶしていくという流れで進められており、いろんな論点が整理されつつあります。

今回の議論で印象に残ったのは、訴訟だけではなく労働審判にもこの制度を導入するかという点について、労働側弁護士だけでなく経営法曹(使用者側弁護士)からも反対の意見が出ているにもかかわらず、委員たちは「労働者のために」間口を広げていくべき、という議論をしていた点です。
実際に実務を担当している当事者たちの意見はあまり重視せず、とにかく同制度を広く導入していくという大きな意思に基づいて検討会が動いている印象をうけました。

既に労働審判では多くが金銭解決も含む柔軟な解決が図られています。
そこに金銭解決制度をあえて持ち込むということは、労働者にとっては単に解決金の上限を定めるという意味しかないのではと思われます。しかも、現在の議論では、解雇が違法・無効であっても、労働者に何らかの問題(帰責性)があったなら解決金を下げるということも検討されています。

検討会で解雇の金銭解決制度を固め、夏以降の労働政策審議会を通して、来年の通常国会で成立させる、というスケジュールが見込まれています。
ホワイトカラーエグゼンプション(高プロ)の次は解雇の金銭解決制度、いずれも下からの要求による制度設計ではありません。背景には米国の要求があるという見方もあります。

現場の労働者・実務家の声を無視しながら、あたかも「労働者のため」という美辞麗句ですすめられている様々な規制緩和に対して声を上げていく必要があります。

なお、金銭解決制度導入で解雇が容易になったイタリアの状況については、2016年にイタリア調査に行った小林譲二弁護士の下記記事をご参照ください。


※ これまでの流れ
○厚労省「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方検討会」研究会報告書(2017年5月31日)
○「新しい経済政策パッケージ」(2017年12月8日閣議決定)
-「労働政策審議会において法技術的な論点についての専門的な検討に着手し,同審議会の最終的な結論を得て,所要の制度的措置を講じる。」
未来投資戦略2018(2018年6月15日)
-「可能な限り速やかに、法技術的な論点についての専門的な検討を行い、その結果も踏まえて、労働政策審議会の最終的な結論を得て、所要の制度的措置を講ずる。」

 ○厚生労働省「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」2018年6月12日~


弁護士の今泉です。
自動車保険アクサダイレクトでおなじみアクサ損害保険会社を相手に、昨年末、有期労働者に対する不合理な格差是正を求める裁判いわゆる労契法20条裁判を東京地裁に提訴しました。
岸朋弘弁護士と一緒に担当しています。1月10日が第一回期日でした。

原告のXさんは、別の大手損害保険会社を定年退職した後、200812月に有期雇用契約社員として採用され、従前から長年経験を積んできた人身事故担当業務に従事しました(定年後再雇用ではありません)。


業務内容は、配点された案件について、事故内容を確認した上で、契約者又は運転者、相手方への連絡から始まる様々な事務処理をし、最終的に損害額の積算や示談交渉、賠償金の支払いなどの事故処理を行うというものです。
配点された事件をそれぞれが担当者として責任を持って一人で解決をするというのがこの仕事であり、正社員と有期契約労働者とで仕事内容に異なることはなかったというのがXさんの認識です。


同じ仕事をしているにもかかわらず、Xさんの基本給は正社員の標準給与の7割以下、年度末に正社員に払われた業績賞与がXさんには払われないといった格差がありました。また、正社員には保障されている退職金、特別有給休暇(慶弔休暇、公傷病休暇)、傷病有給休暇や育児休業・介護休業等が有期契約労働者には就業規則上保障されていないという格差がありました。

有期労働者に対する不合理な格差は違法とされており(労働契約法20条)、2018年6月1日に最高裁がこの法律の解釈を示しているところです。

Xさんは70歳で雇止めとなっていますが、これまでの待遇格差は労働契約法20条に反するとして、損害賠償を請求したのが本件訴訟です。

裁判では、正社員と有期契約社員の間で業務の相違がどれほどあったのか、人事異動などの実態がどうだったのか、各種の格差を設けることに合理的な理由があるのか、といった点が争点となるでしょう。


不合理な格差の是正を実現できるよう、取り組んでいきます。

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