東京法律事務所blog

カテゴリ: 共謀罪

弁護士の笹山尚人です。
 当事務所の最高齢弁護士、渡辺正雄弁護士(9期。87歳)が久しぶりに事務所の総会にお見えになりました。
 
 総会の中で、渡辺弁護士がご挨拶された内容が、とても印象的なお話だったので紹介します。
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「かつて、昔のソ連に渡って活動した人に、佐藤三千夫さんという人がいる。
佐藤さんは、シベリア出兵に反対し、日本軍兵士に『故郷に帰って畑を耕せ』というチラシを配布した。
22歳で病死し、ソ連で国葬扱いで葬られた。

そのことを顕彰するということで、佐藤さんの郷里の宮城で顕彰碑が建立された。
私の父が、たまたま佐藤さんと郷里が同じ同級生ということで、
顕彰碑建立の際に招かれ、その際記念写真が撮影された。
その写真は、父が顕彰碑を抱きしめている図式のものだった。

 

私の司法修習が終わるとき、試験官であった検察官から、父のその写真を示され、    
   
『この建立碑を知っているか?ここに写っているのが、あなたの父親だというのはわかるね?』   
   
といった質問をされた。
私は黙秘して答えなかった。

 

写真の下には、私や父の交友関係などを詳細に調査したと思われる、分厚い記録があった。

 
私が司法試験を受けたのは、今の憲法下でのことだ。    
そのときでさえ、こんな思想調査が行われていた。

     
いま、共謀罪が成立してしまったら、いったいどうなるのだろう。
こんな非道なことが大手をふって許されることにならないか。」

 

渡辺弁護士からこんな話を聞いたのは初めてのことで、大変衝撃を受けました。

しかし、大先輩の重い一言です。

大事にしていきたいと思いました。

 

あとからメールでこのようなメッセージをいただいたので、紹介します。

       
私にはまったく関係のない70年前の事柄でした。
私の親父が中学時代、宮城県登米町で、親の同級生だった佐藤三千夫氏(徳永直著・文庫「日本人サトウ」新日本出版に詳しい)の、 戦後暫く経った顕彰墓新設のとき、酒造店をやっていた父が呼ばれ、酒瓶を提げて挨拶に行ったという話。


親父が新しい佐藤三千夫氏の墓に手をおいて、大勢と映っていた写真のことです。

私は、親から、
「この男は仲間で良い奴だった。中学で別れたきり行方知れずだったが、ロシヤに渡り20何歳かで死んでしまっていたそうだ」
と話され、その佐藤氏を顕彰する墓建立に呼ばれたという写真を見せられた覚えがありました。        
       

それがなんと、60年前の司法研修所卒業時・二回試験の口述試験のなかで試験官から、何の関わりが無い事柄なのに、唐突にこの写真を突きつけられての質問、
「この写真を知っているだろう」って。

驚天動地、これが「試験」だとはねえ 本当にビックラしたなあ!

たぶん、司法修習生の二年間、私は、独断か誤解によって、秘密警察に付きまとわれ、おそらく交友関係や私の行状などが探られ、机上にあったぶ厚い記録がつくられていたものと思われます。
(品行方正、夜遊び遊興ちっとも無しでね)        
       

秘密警察が、新憲法下でも機能していたことに、わたしは愕然とした覚えがあります。

・・・「共謀法」が成立すれば、特高(公安)警察のこうした活動が、いま以上に、公然と復活しかねない。


「法の現場実行者」警察機構等の知られざる実態の考察なども求められていると考えられるなあ、ってことですね。

 

6月4日           渡辺じじい 

 

 

※注:佐藤三千夫は、1900(明治33)年宮城県生まれの反戦運動家で、ウラジオストクにわたってマッチ工場ではたらき、社会主義思想に共鳴して、パルチザン部隊に入隊、シベリア出兵の日本軍に戦争反対をよびかけた。1922(大正11)年にハバロフスクにて22歳で病死し、ソ連で国葬扱いとされた。

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宮城の明治村ウェブサイトより
http://www12.plala.or.jp/aburahu/toyoma/sansaku/


弁護士の今泉義竜です。

著名ジャーナリスト・山口敬之氏の不起訴に対し、被害者である女性が検察審査会に不服申立をしたという記事がありました。
「私はレイプされた」。著名ジャーナリストからの被害を、女性が実名で告白
被害者が実名で声をあげるというのは大変勇気のいる、貴重なことだと思います。
検察審査会は真摯に受け止めて公正な判断を下してほしいと思います。

ところで、週刊新潮などの報道によると、
この準強姦罪もみ消しの疑惑がもたれているのが中村格氏という方で、
共謀罪摘発を統括する予定の警察庁組織犯罪対策部長とのことです。
(高山佳奈子先生のフェイスブックからの情報)
警察庁人事

実は、「共謀罪」と「もみ消し」というのは親和性があります。

というのも、共謀罪(テロ等準備罪)法案には、「偽証の共謀罪」も含まれています。
捜査機関の見立てと異なる証言をしようとする者とその支援者(弁護士含む)を
「偽証の共謀容疑」で逮捕することも不可能ではありません。
冤罪を晴らすための第三者の証言についても、証言する前に偽証の共謀で摘発される危険が指摘されています。実際、真実を述べようとする第三者に対する捜査機関による圧力はこれまでにも多く報告されています。

加害者が政権と関係する重要人物である場合にも、
事件をもみ消す目的でこの偽証の共謀罪が濫用される危険は非常に高いと思われます。

共謀罪というのは捜査機関による事件もみ消し、権力の不正隠蔽にも好都合なツールなのです。

弁護士の江夏大樹です。(※以下は私の個人的感想です)
昨日(5月19日)に強行採決されたテロ等準備罪(以下、「共謀罪」といいます)ですが、
これに先立ち(5月16日)行われた法務委員会に参考人随行員として参加してきました。
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参考人として
木村圭二郎弁護士、椎橋隆幸教授、海渡雄一弁護士、加藤健次弁護士、指宿信教授がそれぞれ意見陳述を行いました。

(加藤健次参考人は、意気揚々と法務委員会に姿を現しました。)
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加藤健次参考人の意見は、今も行われている警察による市民監視の実態から、共謀罪法案の問題に切り込みました。
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(加藤)「まじめな警察官ほど、あるもの・道具を使って、全力で捜査する」
加藤健次参考人は、決して警察という組織自体を問題にしているわけではありません。
共謀罪法案という無制限の道具を警察に与えることによって生じる人権侵害に目を向けなければならないという加藤健次氏の言葉には、これまで堀越事件等数多くの無罪判決を勝ち取られ、警察の不当捜査の事実をその目で見てきたからこそ言える重みがありました。

他方で、木村参考人・椎橋参考人は、それぞれTOC条約の批准及びテロ対策等から国民の安全を守るために必要なものである旨の意見を陳述されました。
しかし、誠に残念ながら、その意見の中身は、抽象的に犯罪の抑止を訴えるにとどまり、「犯罪主体の定義が曖昧なこと」・「対象犯罪数があまりに多くテロ対策に直結しないこと」という大きな問題に答える内容とはなっていませんでした。
テロ対策に賛成するが、今回の法案には反対の人が多数います(僕もその一人です)。
木村参考人・椎橋参考人のご意見は、今回の法案に反対する人達の疑問に答える内容ではありませんでした。

次に、海渡雄一弁護士(右から2番目)の意見陳述です。
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「刑法は、犯罪の要件を定めているが、これは裏を返せば、人の行動の自由の範囲を定めている」との一言から始まりました。
共謀罪は、犯罪処罰の範囲を大きく変える制度改革ですが、
これは、裏を返せば、社会自由の基礎的制度のあり方を変える非常に重要な問題です。
海渡参考人が提起されたように、共謀罪創設は、極めて重要な問題です。
しかし、これを軽視し、強行採決を行うことなど言語道断のはずですが・・・。

維新の推薦参考人である指宿信教授の意見陳述は、捜査手法に関するもので、
最新の捜査手法を示す他に、
「共謀を認定するには、自白の獲得しかなくそれ自体問題である上に、取調の可視化すらされていない。」
旨の意見が述べられ、共謀罪法案の問題点を捜査手法の観点から浮き彫りにするものでした。
(共謀罪に反対する刑事法学者の意見書にも名を連ねています。)
昨日の強行採決を主導した維新さんは、自ら参考人として呼んだ指宿教授の意見に耳を傾けようとは思わなかったのだろうか。

かくして、法務委員会の参考人意見陳述では、共謀罪法案に問題があることが5人中3人の参考人から指摘される事態になりました。
しかしながら、昨日の強行採決・・・

(ぼやき)せめてさ、議論だけでも尽くそうよ。






弁護士の今泉義竜です。
5月19日に衆議院法務委員会で採決が強行された共謀罪(テロ等準備罪)について、国連から日本政府に対して懸念を示す書簡が届いています。

「恣意的運用」国際視点から警告 国連報告者、首相に書簡 「共謀罪」採決強行/東京新聞
プライバシー制約の恐れ 国連報告者、政府に書簡/毎日新聞

政府は、TOC条約締結のために共謀罪(テロ等準備罪)が必要だという国内向けの嘘を押し通してきましたが、
国連報告者は、「新法案は、国内法を『国境を越えた組織犯罪に関する国連条約』に適合させ、テロとの戦いに取り組む国際社会を支援することを目的として提出されたとされます。しかし、この追加立法の適切性と必要性については疑問があります。」
と述べています。

日本政府は国連からの懸念と質問にどう答えるのでしょうか。

東京共同法律事務所の海渡雄一弁護士の解説及び海渡雄一・木下徹郎・小川隆太郎各弁護士による書簡の翻訳を転記します。


 

 

2017.5.20

国連プライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏による

日本政府に対する質問状について(解説)

           海渡 雄一(共謀罪NO!実行委員会)

 

国連プライバシー権に関する特別報告者であるジョセフ・ケナタッチ氏が、518日、共謀罪(テロ等準備罪)に関する法案はプライバシー権と表現の自由を制約するおそれがあるとして深刻な懸念を表明する書簡を安倍首相宛てに送付し、国連のウェブページで公表した。

書簡の全文は次のところで閲覧できる。

 http://www.ohchr.org/Documents/Issues/Privacy/OL_JPN.pdf

書簡では、法案の「計画」や「準備行為」、「組織的犯罪集団」の文言があいまいで、恣意的な適用のおそれがあること、対象となる277の犯罪が広範で、テロリズムや組織犯罪と無関係の犯罪を多く含んでいることを指摘し、いかなる行為が処罰の対象となるかが不明確であり刑罰法規の明確性の原則に照らして問題があるとしている。

 さらに、共謀罪の制定が監視を強めることになることを指摘し、日本の法制度において、プライバシーを守るための法的な仕組み、監視捜査に対する令状主義の強化や、ナショナル・セキュリティのために行われる監視活動を事前に許可するための独立した機関の設置など想定されていないことを指摘している。また、我が国の裁判所が、警察の捜査に対する監督として十分機能していないとの事実認識を示している。

 そのうえで、政府に対して、法案とその審議に関する情報の提供を求め、さらに要望があれば、国連から法案の改善のために専門家を派遣する用意があることまで表明している。

 日本政府は、この書簡に答えなければならない。

 また、日本政府は、これまで共謀罪法案を制定する根拠として国連越境組織犯罪防止条約の批准のためとしてきた。同じ国連の人権理事会が選任した専門家から、人権高等弁務官事務所を介して、国会審議中の法案について、疑問が提起され、見直しが促されたことは極めて重要である。

日本政府は、23日にも衆議院で法案を採決する予定と伝えられるが、まず国連からの質問に答え、協議を開始し、そのため衆議院における法案の採決を棚上げにするべきである。そして、国連との対話を通じて、法案の策定作業を一からやり直すべきである。

 

プライバシーに関する権利の国連特別報告者 ジョセフ・ケナタッチ氏

共謀罪法案について安倍内閣総理大臣宛の書簡全体の翻訳

 

翻訳担当 弁護士 海渡雄一・木下徹郎・小川隆太郎

(質問部分の翻訳で藤本美枝弁護士の要約翻訳を参照した)

 

 

国連人権高等弁務官事務所

パレスデナシオンズ・1211ジェネバ10、スイス

TEL+ 41229179359 / +41229179543FAX+4122 917 9008E-Mailsrprivacy@ohchr.org

 

 

プライバシーに関する権利に関する特別報告者のマンデート

 

参照番号JPN 3/2017

2017518

 

内閣総理大臣 閣下

 

私は、人権理事会の決議28/16に基づき、プライバシーに関する権利の特別報告者としての私の権限の範囲において、このお手紙を送ります。

 

 これに関連して、組織犯罪処罰法の一部を改正するために提案された法案、いわゆる「共謀罪」法案に関し入手した情報について、閣下の政府にお伝え申し上げたいと思います。もし法案が法律として採択された場合、法律の広範な適用範囲によって、プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性があります。

 

 入手した情報によりますと次の事実が認められます:

 

 組織的犯罪処罰法の一部を改正する法案、いわゆる共謀罪法案が2017321日に日本政府によって国会に提出されました。

 

改正案は、組織的犯罪処罰法第6条(組織的な殺人等の予備)の範囲を大幅に拡大することを提案したとされています。

手持ちの改正案の翻訳によると、新しい条文は次のようになります:

 

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(テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)

次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ) の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

 

 

安倍晋三首相 閣下

内閣官房、日本政府

 

 さらにこの改正案によって、「別表4」で新たに277種類の犯罪の共謀罪が処罰の対象に加わることになりました。これほどに法律の重要な部分が別表に委ねられているために、市民や専門家にとって法の適用の実際の範囲を理解することが一層困難であることが懸念がされています。

 

 加えて、別表4は、森林保護区域内の林業製品の盗難を処罰する森林法第198条や、許可を受けないで重要な文化財を輸出したり破壊したりすることを禁ずる文化財保護法第193条、195条、第196条、著作権侵害を禁ずる著作権法119条など、組織犯罪やテロリズムとは全く関連性のないように見える犯罪に対しても新法が適用されることを認めています。

 

新法案は、国内法を「国境を越えた組織犯罪に関する国連条約」に適合させ、テロとの戦いに取り組む国際社会を支援することを目的として提出されたとされます。しかし、この追加立法の適切性と必要性については疑問があります。

 

政府は、新法案に基づき捜査される対象は、「テロ集団を含む組織的犯罪集団」が現実的に関与すると予想される犯罪に限定されると主張しています。

 しかし、「組織的犯罪集団」の定義は漠然としており、テロ組織に明らかに限定されているとはいえません。

新たな法案の適用範囲が広い点に疑問が呈されていることに対して、政府当局は、新たな法案では捜査を開始するための要件として、対象とされた活動の実行が「計画」されるだけでなく、「準備行為」が行われることを要求していると強調しています。

しかしながら、「計画」の具体的な定義について十分な説明がなく、「準備行為」は法案で禁止される行為の範囲を明確にするにはあまりにも曖昧な概念です。

 

これに追加すべき懸念としては、そのような「計画」と「準備行動」の存在と範囲を立証するためには、論理的には、起訴された者に対して、起訴に先立ち相当程度の監視が行われることになると想定されます。

このような監視の強化が予測されることから、プライバシーと監視に関する日本の法律に定められている保護及び救済の在り方が問題になります。

 

 NGO、特に国家安全保障に関する機密性の高い分野で活動するNGOの業務に及ぼす法律の潜在的影響についても懸念されています。政府は、法律の適用がこの分野に影響を及ぼすことがないと繰り返しているようです。

しかし、「組織的犯罪集団」の定義の曖昧さが、例えば国益に反する活動を行っていると考えられるNGOに対する監視などを正当化する口実を作り出す可能性があるとも言われています。

 

 最後に、法律原案の起草に関する透明性の欠如と、今月中に法案を採択さえようとする政府の圧力によって、十分な国民的議論の促進が損なわれているということが報告で強調されています。

 

 提案された法案は、広範な適用がされる可能性があることから、現状で、また他の法律と組み合わせてプライバシーに関する権利およびその他の基本的な国民の自由の行使に影響を及ぼすという深刻な懸念が示されています。

とりわけ私は、何が「計画」や「準備行為」を構成するのかという点について曖昧な定義になっていること、および法案別表は明らかにテロリズムや組織犯罪とは無関係な過度に広範な犯罪を含んでいるために法が恣意的に適用される危険を懸念します。

 

法的明確性の原則は、刑事的責任が法律の明確かつ正確な規定により限定されなければならないことを求め、もって何が法律で禁止される行為なのかについて合理的に認識できるようにし、不必要に禁止される行為の範囲が広がらないようにしています。現在の「共謀罪法案」は、抽象的かつ主観的な概念が極めて広く解釈され、法的な不透明性をもたらすことから、この原則に適合しているようには見えません。

 

プライバシーに関する権利は、この法律の幅広い適用の可能性によって特に影響を受けるように見えます。更なる懸念は、法案を押し通すために早められているとされる立法過程が、人権に悪影響を及ぼす可能性がある点です。立法が急がれることで、この重要な問題についての広範な国民的議論を不当に制限することになります。

 マンデートは、特にプライバシー関連の保護と救済につき、以下の5点に着目します。

 

1 現時点の法案の分析によれば、新法に抵触する行為の存在を明らかにするためには監視を増強することになる中にあって、適切なプライバシー保護策を新たに導入する具体的条文や規定が新法やこれに付随する措置にはないと考えられます。

 

2 公開されている情報の範囲では、監視に対する事前の令状主義を強化することも何ら予定されていないようです。

 

3 国家安全保障を目的として行われる監視活動の実施を事前に許可するための独立した第三者機関を法令に基づき設置することも想定されていないようです。このような重要なチェック機関を設立するかどうかは、監視活動を実施する個別の機関の裁量に委ねられることになると思われます。

 

4 更に、捜査当局や安全保障機関、諜報機関の活動の監督について懸念があります。すなわちこれらの機関の活動が適法であるか、または必要でも相当でもない手段によりプライバシーに関する権利を侵害する程度についての監督です。この懸念の中には、警察がGPS捜査や電子機器の使用の監視などの捜査のために監視の許可を求めてきた際の裁判所による監督と検証の質という問題が含まれます。

 

5 嫌疑のかかっている個人の情報を捜索するための令状を警察が求める広範な機会を与えることになることから、新法の適用はプライバシーに関する権利に悪影響を及ぼすことが特に懸念されます。入手した情報によると、日本の裁判所はこれまで極めて容易に令状を発付するようです。2015年に行われた通信傍受令状請求のほとんどが認められたようです(数字によれば、却下された令状請求はわずか3%以下に留まります。)

 

私は、提案されている法改正及びその潜在的な日本におけるプライバシーに関する権利への影響に関する情報の正確性について早まった判断をするつもりはありません。ただ、閣下の政府に対しては、日本が1978年に批准した自由権規約(ICCPR171項によって保障されているプライバシーに関する権利に関して国家が負っている義務を指摘させてください。

自由権規約第17条第1項は、とりわけ個人のプライバシーと通信に関する恣意的または違法な干渉から保護される権利を認め、誰もがそのような干渉から保護される権利を有することを規定しています。

さらに、国連総会決議A/RES/71/199も指摘いたします。そこでは「公共の安全に関する懸念は、機密情報の収集と保護を正当化するかもしれないが、国家は、国際人権法に基づいて負う義務の完全な履行を確保しなければならない」とされています。

 

人権理事会から与えられた権限のもと、私は担当事件の全てについて事実を解明する職責を有しております。つきましては、以下の諸点につき回答いただけますと幸いです。

 

1.上記の各主張の正確性に関して、追加情報および/または見解をお聞かせください。

 

2.「組織犯罪の処罰及び犯罪収入の管理に関する法律」の改正法案の審議状況について情報を提供して下さい。

 

3.国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関して情報を提供してください。

 

4.法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうかを含め、その詳細を提供してください。

 

要請があれば、国際法秩序と適合するように、日本の現在審議中の法案及びその他の既存の法律を改善するために、日本政府を支援するための専門知識と助言を提供することを慎んでお請け致します。

 

最後に、法案に関して既に立法過程が相当進んでいることに照らして、これは即時の公衆の注意を必要とする事項だと考えます。したがって、閣下の政府に対し、この書簡が一般に公開され、プライバシーに関する権の特別報告者のマンデートのウェブサイトに掲載されること、また私の懸念を説明し、問題となっている点を明らかにするために閣下の政府と連絡を取ってきたことを明らかにするプレスリリースを準備していますことをお知らせいたします。

 

閣下の政府の回答も、上記ウェブサイトに掲載され、人権理事会の検討のために提出される報告書に掲載いたします。

 

閣下に最大の敬意を表します。

 

ジョセフ・ケナタッチ

プライバシーに関する権利の特別報告者

 


5月16日午前中の衆院法務委員会参考人質疑で、当事務所加藤健次弁護士が意見を述べました。

東京新聞が記事にしています。
「共謀罪法案 5識者が意見 維新参考人も反対」

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以下に発言の速記録をご紹介します。

 
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【速記録より】

本日は、意見陳述の機会を与えていただき、ありがとうございます。私は今、自由法曹団という全国約二千百名の弁護士が加入する団体の幹事長を務めております。きょうは、共謀罪を創設する法案に反対する立場から意見を述べさせていただきます。

 

本法案に対する重要な論点の一つに、共謀罪の創設がいわゆる監視社会をもたらすのではないかという点があります。政府の方からは、例えば捜査機関において適切な運用がなされるとか、あるいは一般人が対象となることはないという答弁がなされております。しかし、これらの答弁は、法案の規定の内容からも、また警察等が現に行っている活動に照らしても、説得力のあるものではないというふうに考えます。

 

私たち弁護士は、具体的な事件を通じて捜査機関の具体的な活動内容に触れる機会がたくさんあります。今回、法案の審議に資するために、警察による市民監視が問題となった具体的事例を紹介することによって審議を深めていただこうと思いまして、事例集をつくりました。本日は、資料③ということで、今も行われている市民監視の実態事例集、そういう資料を配付させていただいております。そういう具体的な事実に基づいた議論をしていただきたいということで、以下、意見を述べさせていただきます。

 

まず、この事例集の具体的な事件を紹介する前に、市民の側から見た場合に警察というのは一体どういう活動を行っているのかという、特に情報収集にかかわる活動について、資料①、②を作成いたしました。よく国会の議論を聞いておりますと、いつ逮捕されるのかとかいう議論がされておりますけれども、実際に我が国の警察の活動は、警察法二条一項に基づく公共の安全と秩序の維持という、この目的のための情報収集活動、いわゆる行政警察あるいは予防警察と呼ばれる側面と、それから、実際に犯罪の嫌疑が生じた場合の犯罪捜査、いわゆる司法警察に大別をされます。そして、捜査の中には、令状を必要とする強制捜査、令状を必要としないいわゆる任意捜査と呼ばれているものに大別をされているわけですが、ここで確認をしていただきたいのは、警察による情報収集というのは、行政警察、司法警察を通じて、いわば切れ目なく、シームレスに行われているということです。そしてもう一つは、逮捕とか捜索・差し押さえ実はプライバシーを大きく侵害しかねない活動が現に行われております。この点は、いわゆる行政警察における情報収集においても同様の活動が行われていることをまず注意していただきたいというふうに思います。

 

結論から言いますと、共謀罪を創設するということは、犯罪の成立時期を、具体的な結果発生、あるいは結果発生の危険性がある段階よりも前に前倒しをすることになります。

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 この表でいいますと、①、②を比べていただくと、捜査の開始時期がかなり早まるということが御理解いただけるというふうに思います。しかも、この前倒しというのは単に時間的に早くなるというだけではなくて、客観的な結果が発生していない、あるいは客観的に見て結果の発生の危険性、そういうものを示すものがない、そういう段階での捜査の開始になりますから、極めてハードルが低くなり、濫用の危険が多くなる。そういう意味で、この共謀罪の創設は、警察の情報収集活動、捜査権限の拡大につながるということは明らかだというふうに考えます。

 

幾つか具体的な事例を御紹介いたします。事例集の二ページに、大垣市における大垣署の市民監視事件を紹介してあります。これは、風力発電に反対する運動が広がる、そういう見込みのもとに、大垣警察がさまざまな市民の情報を収集し、風力発電を計画している会社に提供したというものであります。この中で、大垣警察の署員は、大垣警察署としても回避したい行為、つまりこの反対運動が広がることを回避したい、そして、今後情報をやりとりすることによって平穏な大垣市を維持したい、それで協力をお願いするというふうに述べています。しかも、岐阜県警は、当事者からの質問状あるいは抗議に対して、大垣警察署員の行為は、公共の安全と秩序の維持に当たるという責務を果たす上で、通常行っている警察業務の一環であると判断いたしましたというふうに明確に回答しております。

 

それから、四ページの、イスラム教徒、いわゆるムスリム監視事件においては、警察が、我が国に居住するイスラム諸国会議機構に加盟する五十七カ国の出身者全員の身元把握を目標にして、大使館員を含むムスリムに対する情報収集活動を行ったというものです。これはまさに、犯罪の嫌疑も何もない段階でムスリム全体をテロ予備軍というふうに勝手に決めつけて情報収集を行う、プライバシーを侵害するというものでした。

 

そして、三ページにある別府の盗撮事件。これは実は、警察の弁解によりますと、公職選挙法違反の捜査という名目で労働組合事務所の人の出入りを盗撮していたという事案です。このときの犯罪の嫌疑というのは何かというと、この労働組合事務所には公務員の労働者が出入りしている、そうすると、この公務員労働者が公職選挙法違反をする可能性があるから、それを捜査するために盗撮したというのが警察の言い分です。そして、この事件が発覚した後、警察庁は、要するに無断で敷地に入って設置したのが間違っていた、そういう総括をいたしまして、令状なしの盗撮をもっと、見つからないようにというか、問題にならないようにやれ、そういう通達を出しております。

 

こうしたいわゆる警察の市民監視の事件は、たまたま一人、二人の警察官が思いつきで行ったとか、突出して行ったというものではありません。いずれも、警察の組織方針に基づいて、日常活動として行っている活動です。そして、このときに警察が何をもって公共の安全と秩序に反するものとみなすのか、あるいは公職選挙法に違反する人たちとみなすのかというのは、結局、監視をする警察の判断に委ねられている、そういうことがこの事例からもおわかりいただけるというふうに思います。ぜひこの点を前提にした議論をお願いしたいというふうに考えております。

 

次に、事例集にも掲載されておりますが、私が直接関与しました、堀越さんという方の国家公務員法事件。これは、国家公務員であった堀越さんが休日に赤旗号外を配布したことが政治的行為の禁止規定に反するということで逮捕、起訴された事件です。約九年にわたる裁判を経て、最高裁は、二〇一二年十二月七日に、この堀越さんの機関紙配布行為は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められない、そういうふうに判断をしまして、無罪判決を言い渡しました。

つまり、法益侵害の危険性がない、そうい活動の自由として保障されるべき行為でありますが、この行為を把握するための捜査と称して、どのような形で堀越さん本人、それから関係者のプライバシー侵害がされたかということです。

お手元に資料④というのを配ってあります。これは行動確認実施結果一覧表と申しまして、警察というのは尾行のことを行動確認といいますが、その結果の一覧表であります。この出所は、この裁判で裁判所の勧告に応じて検察から提出された資料の一部をコピーしたものですから、出所は明らかであります。

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全部を紹介している暇はないのですが、例えば一枚目の十月十二日の欄を見ていただきたいと思います。この日は休みで、日曜日なんですけれども、自宅を出てから、最後はカラオケ屋に入るんですけれども、そこまでびっちり捜査員六名が尾行し、行動を確認しています。この中で、堀越さんが演劇を見に行く、一緒に行った人、それからその後一緒に飲食店に入った人、さらにはその後カラオケに入った人、この人たちは全部監視の対象となっております。そして、この中で、居酒屋に入った後も尾行を続けておるんですね。この点について、実際にこの尾行をした警察官に、なぜ居酒屋に行った後も尾行を続けておるんですかと聞いたところ、いや、飲んだ後だってビラをまく可能性があるというふうに明確にお答えになりました。

結局、この堀越さんの事件では、三日間の配布行為だけが起訴の対象となっているんですが、二十九日間にわたって、捜査員延べ百七十一名、少なくとも四台の車両と六台のビデオカメラが使用され、堀越さんの行動は、こうやって記録に残されるだけではなく、ビデオカメラにもおさめられておりました。ここで強調したいのは、堀越さんというターゲットを決めた瞬間に、本人のプライバシーがまず丸裸にされるだけではなくて、これと接触するあらゆる人が監視の対象、プライバシーの侵害の対象となる、この現実が実際にあったということです。

この事件は、最終的には無罪になりました。しかし、こうした堀越さんの権利侵害に対する謝罪等は全く行われておりません。

詳しいことは後で資料を読んでいただきたいのですが、こうした事例からわかることは、一つは、警察というのは、法律上与えられた権限を抑制的に使うということはないということです。真面目な警察官ほど、使えるものは全て使うというのが警察の実態です。

それからもう一つは、そのときに何を監視の対象とするか、例えば先ほど言っている公共の安全と秩序の維持に反する動き、あるいは反する人は誰なのか、あるいは犯罪を犯したと思われる人は誰なのか、この判断が極めて恣意的かつ主観的に行われていることです。

とりわけ、今の政府に反対の意見を持っている、そういうグループあるいは人に対しては警察は極めて厳しい目で監視をしているということが、これらの事例からわかるというふうに思います。

 

それから、あと、事例集の六ページに高層マンション建設反対の事例を挙げました。実際、私たちも弁護士の仕事をしておりますと、高層マンションが建って環境が破壊される、何とかしたいという相談を受けることはたくさんあります。当然、住民の皆さんは、何とか建設をやめてもらいたいということで、どうやったら建築をとめられるかということを一生懸命考えます。そして、現場でいろいろなやりとりをするわけですけれども、威力業務妨害に当たるかどうかというのは、現場でのやりとりを通じながら、その場で判断をしながら進めていくというのが実際のやりとりなんですが、共謀段階で犯罪の対象となるということになると、威力業務妨害をやろうとした、つまり、マンション建築を何としても阻止するぞ、こういうことを話し合っただけでこの犯罪の対象になり得る、そうすると、意見表明自体が犯罪の対象となるというゆゆしき事態になります。

そうではないという意見をよく聞きますけれども、この法律の規定を見ますと、別に、その人がある暴力団等の組織集団に属しているかどうかは問題ではありません。二人以上が法律に決められている犯罪をやろうと計画をし準備行為を行った、そしてその際にその二人以上の集団がその犯罪をいます。

 

最後に申し上げたいのは、今言いましたように、共謀罪の新設というのは、極めて強力な意見表明に対する抑止力をもたらします。この点に関して、法案審議の中で、よく政府が一般人という言葉を使います。しかし、法律の中にはこの一般人などという言葉はないんですね。私が言いたいのは、政府が、あなたは一般人、あなたは一般じゃないという仕分けを平気でしゃべっているこの状況、これ自体が非常に、憲法の個人の尊厳だとかいう点から見て問題ではないかというふうに思うわけです。

したがって、私は、共謀罪の創設というのは、単に新しい法律が一つできるということではなくて、警察の活動領域そのもの、活動の仕方そのものを大きく拡大していく。そして、犯罪の発生も、あるいは、結果、危険の発生もない段階で捜査をするためには、話し合い自体、あるいは準備行為と言われる行為が何を目的としているかということを探らなければいけなくなります。

そうすると、既に警察からは盗聴法の拡大、会話の傍受、あるいは潜入捜査などを要望する意見が出ておりますけれども、必ずそういう、さらに権利侵害の高い捜査手法を求める可能性は否定できないというふうに思います。皆さんが、ぜひ、こういう具体的な今の警察の活動、そして共謀罪の創設がもたらす状況を具体的に考えていただいて、一体どういう法律をつくろうとしているのかについて責任を持った議論をお願いいたしまして、私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)

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